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内閣総辞職とは?内閣総辞職が起こる3つのケース

投稿日2020.4.27
最終更新日2020.07.02

内閣総辞職とは、行政の最高機関である内閣のメンバー全員が職を辞する行為です。

内閣は、総理大臣をリーダーにする行政のトップたちでつくるグループです。
総理大臣以外の財務大臣や国土交通大臣などは、国務大臣といいます。

強大な権力を有する内閣が総辞職するルールが設けられているのは、民主主義を守るためです。

この記事では、

  • 内閣に関する基礎知識
  • 内閣総辞職が発生する3つのケース
  • 内閣総辞職によって起きること

などを解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、内閣とは

議会
日本やイギリスには大統領がおらず、その代わりに内閣がある、と考えることができます。
本項では、前提知識として

  • 「内閣の2つの種類」
  • 「内閣総理大臣と大統領の違い」

を明らかにします。

(1)議院内閣制(日本やイギリスのタイプ)

日本やイギリスの内閣は、議院内閣制というタイプの内閣です。
「議院のなかに内閣がある」構図になっているので、この名称になっています。

日本の内閣は、イギリスの制度を模していると言われています。
日本の議院とは、衆議院と参議院のことで「議院は国会」と考えてよいでしょう。

つまり内閣が国会の中にあるという形なのです。
日本では国会を国権の最高機関としており、行政が恣意的な政治を行うことを防いでいます。
この仕組みにより国民の人権を侵害する恐れのある強大な国家権力を抑制しているのです。

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国会は内閣総理大臣の指名を行います。
選挙で選ばれた国会議員(衆議院議員と参議院議員)が総理大臣を選出するので民意を反映できていると言えるかもしれません。

また、国会から指名された内閣総理大臣は、国務大臣を任命します。
国務大臣とは、文部科学大臣や厚生労働大臣などの、総理大臣以外の大臣のことです。
国務大臣の過半数は国会議員から選ばなければなりませんが、それ以外は民間人を大臣にすることができます。

内閣は、行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負う役割があります。
行政権の行使とは、法律で決めたことを実行することをいいます。
そして「責任を負う」とは、結果に伴う責任を問われる、という意味です。

このルールは、憲法第66条により規定されています。

(2)超然内閣制

戦前の、大日本帝国と呼ばれていた日本の内閣は、超然内閣制でした。
議院内閣制より「民主主義の度合い」は低いということです。

この制度の下では、上層部による恣意的な政治が行われていました。
上記の議院内閣制とは対照的と言えるかもしれません。

また超然内閣制のときの内閣は、天皇に対して責任を負っています。
そのため戦前の内閣総理大臣は、天皇が任命していました。

(3)内閣総理大臣と大統領の違い

内閣と大統領は、最高の行政機関という点では同じですが、大統領は機関であると同時に「1人の人間」でもあります。
そのため内閣はグループで行政を行い、大統領は1人で行政を行う、というイメージを持っているかもしれませんがそれは正しくはありません。

内閣でも、総理大臣はかなり強い権限を持っています。
そして大統領制でも、実際はグループで行政を行っています。
議院内閣制と大統領制の最大の違いは、トップの選出方法です。

総理大臣も大統領も選挙で選ばれた人ですが、大統領が「大統領として」国民に直接選ばれるのに対し、総理大臣は「一国会議員として」国民に選ばれた後に、国会にて「総理大臣」として選ばれます。

最初から「総理大臣として」選ばれるわけではありません。
総理大臣を選ぶのは、国会(=国会議員たち)です。

2、内閣総辞職とは

内閣は強大な権力を持っています。
そして権力者が間違ったり暴走したりすると、国民は大きな損害を被ります。

そのため、日本の政治制度には内閣総辞職という「最高行政機関の人たちがその地位を辞する」ルールがあります。

内閣総辞職が起きる3つのケースを元に詳しく見ていきましょう。

(1)内閣不信任決議案が提出される|憲法69条

1つ目のケースとして憲法第69条による総辞職があります。

それは次の3ステップで進みます。

  1. 衆議院で内閣不信任決議案が可決されるか、または、内閣信任決議案が否決され、
  2. 10日以内に衆議院が解散されないとき、
  3. 内閣は総辞職しなければならない

内閣不信任決議案とは、衆議院議員たちの一部が「この内閣は信任(信用)を失っている」と訴えることです。
衆議院の出席議員の過半数が「不信任」に投票すれば可決されます。

内閣不信任決議案が可決されても、内閣が衆議院の解散を助言・承認すれば、内閣は総辞職する必要はありません。
その代わりに、衆議院が解散されます。

内閣が衆議院の解散を助言・承認しない場合は内閣が総辞職しなければなりません。

内閣が助言・承認する相手は天皇です。
また衆議院を解散するのも天皇です。

ただ、天皇はいわゆる「政治」をしてはならないので、実質的には「総理大臣が衆議院を解散させる」ことになります。
ここまでをまとめると、内閣不信任決議案が可決されたら、内閣(実際は総理大臣)は、

  • 総辞職
  • 衆議院の解散

のどちらかを選ばなければなりません。

内閣は(総理大臣は)、自分たちの地位を守るために衆議院の解散を選ぶこともできますし、「不信任決議案が可決したということは、国民も相当反発しているだろうから、諦めるしかない」と総辞職を選ぶこともできます。

これはまさに重大な政治判断になります。

では、内閣が衆議院を解散させれば、内閣のメンバーたちはその地位を守り続けられるかというと、そう簡単にはいきません。衆議院を解散すると、衆議院議員総選挙が行なわれます。

解散すれば、当然衆議院議員の総理大臣も国務大臣も国会議員ではなくなりますが、次の内閣が発足するまで、解散を決めた内閣が存続します。

これは空白期間が出来てしまい、政治が停滞することを防ぐための決まりです。

(2)憲法第70条による内閣総辞職

憲法第70条には、衆議院議員総選挙のあとの最初の国会で、内閣は総辞職しなければならない、と定めています。
つまり上記のパターンで衆議院を解散させても、結局内閣は総辞職します。

しかし注意していただきたいのが、衆議院が解散すると、衆議院議員たちは衆議院議員でなくなるのですが、内閣のメンバーたちは、内閣のメンバーであり続けます。

つまり、解散後から内閣総辞職までの期間は、衆議院議員でない人が総理大臣や国務大臣を務めることになります。

さらにいうと、内閣のメンバーが衆議院議員総選挙で落選しても、すぐに大臣の地位を失うわけではありません。
憲法第70条より、衆議院議員総選挙のあとの最初の国会で内閣が総辞職して、次の内閣が発足して初めて、解散時の内閣のメンバーは地位を失います。

(3)総理大臣が欠けたとき

憲法第70条には、総理大臣が「欠けたとき」も、内閣総辞職をしなければならないとしています。

「総理大臣が欠ける」状態は、次のときです。

  • 衆議院議員総選挙で落選して国会議員の資格を失ったとき(*)

(*:先述のとおり、落選してもすぐには総理大臣の資格を失うわけではありませんが、国会が召集されたら、内閣は総辞職します。その後、国会は総理大臣を指名しますが、落選した前総理大臣は国会議員ではないので、指名対象者になりません)

  • 死亡
  • 昏睡状態
  • 失踪
  • 国外への亡命
  • 総理大臣が辞意を表明したとき(*)

(*:総理大臣の辞意表明は、総理大臣1人が辞めることをいいます。その場合でも、内閣を総辞職しなければなりません。つまり、総理大臣の辞意表明は、内閣総辞職につながります。内閣総辞職とは、内閣のメンバーがすべて地位を失う状態のことです)

総理大臣は内閣の「リーダー」なので、リーダーが欠けた以上、内閣を総辞職しなければならないのです。

3、内閣総辞職後に起きること|衆議院の解散後に起きること

内閣総辞職
内閣総辞職のあとに起きることと、衆議院の解散後に起きることを紹介します。
一部、先ほどの説明と重複するところがあります。

(1)内閣総辞職のあとに起きること

内閣が総辞職すると、次の内閣をつくらなければなりません。
それまで時間があることから、次の内閣が成立するまで、総辞職した内閣が行政の最高機関としての仕事を続けることになります。

内閣が総辞職すると、国会は新たな総理大臣を指名します。
その指名に基づいて、天皇が総理大臣を任命します。

その新総理大臣が国務大臣を任命して新たな内閣ができます。
このとき、総辞職した内閣のメンバーはその地位を失います。
こうすることで、行政の最高機関が存在しない時間をつくらないようにしているのです。

(2)衆議院の解散後に起きること

衆議院議員たちは、解散が決まると国会議事堂内で万歳をします(恒例行事のようなものです)。
衆議院議員の任期は4年ですが、解散が決まると4年未満でも、彼らは国会議員の資格を失います。

そして解散の日から40日以内に衆議院議員総選挙を行い、この選挙の日から30日以内に国会が招集されます。
総選挙後初の国会で内閣は総辞職します。

そのあとは、「内閣総辞職のあとに起きること」と同じです。

4、内閣総辞職の過去の例

主な内閣総辞職の事例を紹介します。

(1)小泉純一郎氏の場合

小泉純一郎氏は2006年9月26日、内閣総辞職を敢行しました。
総理大臣の在任期間は1980日で、当時は戦後3番目の長さでした。

「小泉フィーバー」や「小泉劇場」と呼ばれるほど人気のあった総理大臣でしたが、自民党総裁の任期が切れたので、総理大臣を辞めるために内閣総辞職をしました。

法律上は、自民党総裁でなくても総理大臣を務めることはできますが、自民党には「自民党総裁を総理大臣候補とする」という暗黙のルールがあり、小泉氏はそれを尊重したわけです。

(2)菅直人氏の場合

菅直人氏は、総理大臣在任期間449日で内閣総辞職を決意しました。
そのときの談話で菅氏は、東日本大震災や福島原発事故について「必ずしも十分な対応ができなかった点については大変申し訳なく思っている」と、国民に陳謝しています。

ただ、さらに「短命な内閣」は存在します。
東久邇宮稔彦王内閣の54日、羽田孜内閣の64日、石橋湛山氏の65日といった記録があります。

総理大臣は大きな権力を有していますが、それだけに内閣を運営し国を動かしていく仕事は困難を極めます。
そのため、政治家としての力量や行政手腕だけでなく、お金を集める力、人柄や人気、運、天災、世界情勢、経済状況などによっても「内閣の寿命」は大きく左右されます。

まとめ

内閣総辞職は国民生活や企業の経済活動に大きな影響を与えますが、総理大臣自身の晩節の在り方も決めます。
内閣総辞職の背景にあるものに注目すると、より政治に関心を持てるようになるかもしれません。