政治ドットコム国会国会の仕組み衆議院の解散とは?種類や解散までの流れ・過去の事例について

衆議院の解散とは?種類や解散までの流れ・過去の事例について

投稿日2020.11.2
最終更新日2020.11.02

衆議院の解散とは、任期満了前に衆議院議員全員を辞めさせることです。
しかし、具体的にどのようなことが行なわれているのかイメージしにくいという人もいるかもしれません。

そこで今回は、衆議院の解散について

  • 「衆議院の解散」の意味
  • 解散の種類と流れ
  • 過去の具体例

などご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、衆議院の解散とは

衆議院
画像出典:衆議院

衆議院の解散とは、「任期(4年)が終わる前に衆議院議員全員を辞めさる」という意味です。

衆議院の解散が行われると、40日以内に衆議院議員の総選挙が行われ、それから30日以内に特別国会が召集されます。

衆議院の解散は日本国憲法7条によって、天皇の国事行為(天皇が行うと憲法で決められている行為のこと)のひとつに定められています。

しかし、以下の点から、実質的な権限を有しているのは内閣であるとの見方もあります。

  • 内閣が衆議院の信任を基礎にしていること(憲法69条
  • 内閣の「助言と承認」が必要であること(憲法7条

上記の日本国憲法7条を根拠として、首相が自主裁量で衆議院の解散を実行できるため、「解散権は、首相の専権事項である」と表現されることもあります。

参考:参議院質問主意書

(1)解散の目的

なぜ任期が満了していないにもかかわらず、衆議院を解散させる必要があるのでしょうか。
それには、大きく分けて2つの目的があります。

  • 内閣の議会(国会)に対する抑制手段
  • 重要な政治問題について民意(国民の意思)を問うため

現在では特に、「民意を問う」という目的が重視されている傾向があります。
実際、2005年には「郵政民営化の是非を問う」という大義のもと衆議院の解散がおこなわれました。

また、2017年には

  • 北朝鮮の拉致問題
  • 少子高齢化の進行

などを「国難」と位置づけ、「その国難を乗り超えるため国民の声を聞きたい」という大義を掲げて衆議院の解散がおこなわれました。

以上のように、解散は衆議院との意見が異なる場合に限らず

  • 憲法改正
  • 条約締結

など国の大事について、国民の真意を確かめるためにおこなわれるケースが近年増えている傾向にあります。

参考:「衆院解散表明 『解散の大義』とは?」(時論公論)

(2)衆議院のみ解散が認められている理由

国会は衆議院と参議院の2つの機関によって構成されていますが、解散は「衆議院のみ」に認められています。

これは、「衆議院の役割」が大きく関係しています。
衆議院の主な役割は、直近の民意を反映させることです。

衆議院は、任期4年で選挙のたびに議員全員を新しく選び直します。
参議院と比べ

  • 任期が短い
  • 選挙が多い

などが特徴です。

つまり、解散制度は選挙を通してその時々の民意を反映させ、素早く国の課題に対応できる議員構成にするための仕組みなのです。

一方、参議院の主な役割は、長期的で安定的な民意を反映させることにあります。
参議院では任期6年で、3年ごとに半数の議員が改選され、解散制度はありません。

また、衆参両院の同時選挙が行われる場合に、国政を停滞させない(参議院の緊急集会の開会)という役割もあります。

参考:衆議院の解散とは?

参考:衆議院

2、衆議院の解散は2種類ある

衆議院の解散がおこなわれるパターンには、以下の2種類があります。

  • 7条解散(日本国憲法7条)
  • 69条解散(日本国憲法69条)

これらは、根拠となる日本国憲法の条文が異なります。
それぞれについて見ていきましょう。

(1)7条解散

「7条解散」とは、天皇の国事行為の1つとして日本国憲法7条に基づき、天皇によって行われる衆議院の解散です。

その際内閣の「助言と承認」が必要とされます。

上述したように目的は重要な政治問題について民意を問うことであり、実質的には首相の判断によりおこなわれるという見方をされる場合があります。

(2)69条解散

「69条解散」とは、内閣不信任決議案が可決された場合に行われる衆議院の解散を指します。

内閣不信任決議案とは「内閣を信じて任せることができない」という衆議院議員の意思表示であり、可決されれば、内閣は以下の選択肢のどちらかを選ばなければなりません。

  • 総辞職をする
  • 衆議院を解散する(10日以内)

日本では議院内閣制(内閣が議会の信任によって存立するという制度)が採用されているので信任を欠いた場合、その内閣は総辞職する必要があります。

ちなみに衆議院を解散しても総選挙が行われ、その後の特別国会で、内閣は総辞職します(日本国憲法70条)。

しかし、内閣不信任決議案が可決された事例は、日本国憲法下で4回だけです。

具体的には、以下の通りです。

  • 馴れ合い解散(1948年)
  • バカヤロー解散(1953年)
  • ハプニング解散(1980年)
  • 嘘つき解散(1993年)

参考:総選挙一覧表

参考:内閣制度の概要

3、衆議院が解散するまでの流れ

衆議院解散
それでは、衆議院が解散するまでの具体的な流れをみていきましょう。
日本において、過去に行われた解散のほとんどが7条解散です。

7条解散は、主に以下のような流れで進められます。

  1. まず首相が閣議で解散を表明し、全員が一致すれば解散が決定する
  2. これを受けた内閣総務官は、天皇から詔書に署名押印(御名御璽:ぎょめいぎょじ)を受け、首相が署名する
  3. 詔書は、衆議院本会議で衆議院議長に運ばれる
  4. 議長が「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」と詔書を読み上げれば衆議院は解散となります

このとき多くの議員が立ち上がって「万歳」と唱えるのが慣例となっているようです(拍手で済ませる場合もある)。

その後、解散して40日以内に総選挙が行われ、新しい衆議院議員が選ばれます。
総選挙の結果を踏まえて、総選挙から30日以内に特別国会が召集されるとともに内閣が総辞職します。

そして、会期中に次の内閣総理大臣指名選挙が始まります。
こうして新しい日本のリーダーと新しい内閣が決まっていくのです。

4、過去の衆議院の解散事例

最後に、過去の衆議院の解散事例について

  • バカヤロー解散
  • 郵政解散
  • 近いうち解散

についてみていきましょう。

(1)バカヤロー解散

バカヤロー解散とは、第4次吉田茂内閣の時に行われた衆議院の解散です。

衆議院予算委員会にて、社会党の西村栄一氏による質問に対して吉田氏が「ばかやろう」と小声で発言したことが発端となります。

この発言をマイクが拾ってしまい、気付いた社会党の西村氏がそれを咎めました。
その後、「吉田氏の発言は議会軽視である」として社会党は懲罰委員会に付託するために提出した動議が可決されました。

さらに野党が提出した不信任決議案が可決され、衆議院は解散しました。
そして総選挙では、与党は過半数割れとなってしまったのです。

かろうじて第一党になった自由党でしたが、吉田氏の求心力は低下することになりました。

(2)郵政解散

郵政解散とは、第2次小泉純一郎内閣の際に行われた衆議院の解散です。

当時、 郵政民営化法案の成立を目指していた小泉氏でしたが、参議院本会議で法案が否決され、自らが所属する自民党内部からも法案反対の声がありました。

そこで「郵政民営化に対する国民の民意を問いたい」として2005年8月に衆議院を解散します。

結果は自民党の勝利に終わりました。
これにより、第3次小泉純一郎内閣が発足し、郵政民営化法案が成立しました。

このとき当選した自民党の新人議員は「小泉チルドレン」と呼ばれ、注目を集めました。

(3)近いうち解散

近いうち解散とは、野田佳彦内閣の際に行われた衆議院の解散です。

「近いうち解散する」 と発言するもなかなか実行しない野田氏に対し、党首討論で自民党総裁の安倍晋三氏が解散時期を追及したことがきっかけです。

党首討論で野田氏は「通常国会で議員定数削減に対し、決断するなら2日後(11月16日)でもいい」と突如解散を宣言します。

8月8日に「近いうち」と発言した日からちょうど100日目のことでした。
その後の総選挙では

  • 自民党294議席
  • 公明党31議席
  • 与党民主党が57議席

となり、政権交代につながりました。

参考:首相官邸

参考:産経ニュース

まとめ

衆議院の解散は、4年の任期が満了するのを待たずに衆議院を解散することです。

その後、衆議院議員をゼロから総選挙で選び直します。

2020年10月時点では、菅首相は新型コロナ対策や経済の立て直しを優先する考えを示し、早期解散に慎重な姿勢を見せています。

今後の内閣の動向に注目です。