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人種差別撤廃条約とは?条約制定の背景と日本での取り組みを簡単に解説

投稿日2021.5.3
最終更新日2021.05.03
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

人種差別撤廃条約とは、国連によって採択された、人種差別をなくすことを目的とした国際条約です。

今回の記事では

  • 人種差別撤廃条約の概要
  • 人種差別撤廃条約が締結された背景
  • 人種差別をなくすための日本の法律

についてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、人種差別撤廃条約とは

人種差別撤廃条約
人種差別撤廃条約とは、あらゆる人種差別を撤廃するために、国連で採択された国際条約です。

人種差別とは、人種に対する不適切な偏見を理由に、不利益を生じさせる行為です。
人種差別は、様々な紛争の原因になることも多く、世界からなくすことが求められています。

人種差別撤廃条約では

  • 人種を理由とした差別を撤廃すること
  • 人種だけではなく、民族や出身による差別もなくすこと

などを主な目的としています。

参考:人種差別撤廃条約 外務省
参考:人種差別撤廃条約とは

2、人種差別撤廃条約が締結された背景|人種主義とは

人種差別撤廃条約が各国に求められている背景には、『人種主義』の問題があります。

ここでは

  • 人種主義
  • 人種差別撤廃条約が締結された経緯
  • 人種差別の撤廃に関する委員会(CERD)

について解説していきます。

(1)人種主義とは

人種主義とは、人種には遺伝による根本的な優劣の差異があり、優秀な人種と劣等な人種が存在するという思想です。

特定の人種が優秀である、という考えを科学的に実証しようとしたのが、人種主義の始まりだと考えられています。

西洋諸国による植民地支配や、ナチスドイツによるユダヤ人の大量虐殺などは、人種主義が根底にあると考えられています。 

しかし、こうした人種主義には、

  • 被差別者が様々な自由を奪われる
  • 支配者側が不当に利益を搾取する
  • 様々な紛争や争いごとの原因になる

といった深刻な問題点がある傾向にあります

このように、人種主義は、

  • 国家や国民間の平和的関係
  • 個人的な幸福追求

の障害となるため、人種差別は撤廃すべきだと考えられるようになったのです。

(2)人種差別撤廃条約が締結された経緯

人種主義による様々な問題を解決するためには、人種差別を無くすような取り組みが必要になります。

 国際連合では、人種主義を無くすため、次のような様々な取り組みを行ってきました。

  • 1963年:あらゆる形態の人種差別撤廃に関する宣言
  • 1965年:あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約
  • 1993年:第3次人種主義および人種差別と闘う10年
  • 2001年:第3回人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容に関する世界会議
  • 2009年:ダーバン再検討会議 

それぞれについて簡単に見ていきましょう。

1963年の「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する宣言」とは、すべての人は基本的に平等であり、人種や皮膚の色などによる差別は人権侵害である、とする宣言です。

1965年の「あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約」とは、人種差別を防止および処罰するための措置を義務付ける、という国際条約になります。

「人種差別撤廃委員会」が国連に設置され、締結国は条約の履行状況を報告するようになりました。

1993年の「第3次人種主義および人種差別と闘う10年」とは、加盟各国に対し、法律や教育などの改革によって、さらなる人種差別の撤廃を推進するため、国連総会が宣言したものです。

2001年には「第3回人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容に関する世界会議」が行われました。

この世界会議により、人種主義撤廃のための具体的な措置を考察した「ダーバン宣言」や「行動計画」が採択されました。

2009年には「ダーバン再検討会議」が開かれ、国連における人種差別撤廃条約への取り組みが一層推し進められています。

参考:国連広報センター

(3)人種差別の撤廃に関する委員会(CERD)

人種差別撤廃条約に基づき、「人種差別の撤廃に関する委員会(CERD)」が、国連に設置されています。

人種差別撤廃条約は国連によって制定された条約ですが、CERDは国連から独立した機関です。
CERDでは、専門の委員を選出し、加盟国が条約に違反していないかを監視します。 

また個人や団体から、人権侵害の報告を受けた際には、委員会で審議を行い、当該国に対して問題やその是正の勧告をします。

3、人種差別撤廃条約の一部を日本が留保している理由

人種差別撤廃条約
人種差別撤廃条約は、1965年に国連によって締結されており、日本でも条約を締結しています。

 しかし、第4条の(a)および(b)については、これを留保しています。

第4条の(a)および(b)とは、以下のいずれかの行為に対する、処罰を設けた法律の策定を義務付ける、という内容の条文です。

  • 人種主義的な思想の流布
  • 人種差別的な言動の扇動

外務省の見解によると、国内で上記を規制する法律を整備することは、以下の点から好ましくないとしています。

  • 憲法で保障されている集会や表現の自由を制約してしまう可能性がある
  • 政治評論などに関する言論を萎縮させてしまう恐れがある
  • 刑罰の対象となる行為との線引きが曖昧なため不当な処罰の原因になる

こうした懸念点があるため、外務省では「第4条については憲法と抵触しない範囲において、限定的に履行する」という留保処置を取っているのです。

また日本以外にも、アメリカやスイスなど、この第4条を留保している国はいくつかあります。

参考:外務省 人種差別撤廃条約

4、人種差別解消を目的とした日本の3つの法律

日本では国際条約の一部は締結されていないものの、差別や人権侵害をなくすための法整備が進められています。

ここでは、

  • 障害者差別解消法
  • ヘイトスピーチ解消法
  • 部落差別解消法

の3つの法律について、それぞれの概要を見ていきましょう。  

(1)障害者差別解消法

「障害者差別解消法」とは、身体や精神などの障害の有無に関係なく、平等な機会を得られる社会を目的とした法律です。 

国連で採択された「障害者の権利に関する条約」を締結するにあたり、平成28年4月より施行されました。

(2)ヘイトスピーチ解消法

「ヘイトスピーチ解消法」とは、特定の人種に対するヘイトスピーチ(尊厳を傷つけたり憎悪を扇動したりする言動)を阻止するための法律です。

正式名称は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」になります。

日本でも、特定の外国人に対する差別的な言動が問題なるケースがあります。
こうした問題に対する法的な規制が求められ、ヘイトスピーチ解消法は策定されました。

また、外国人を対象としなければヘイトスピーチが許されるというわけではなく、いかなる形態のヘイトスピーチも、規制対象になります。

(3)部落差別解消法

「部落差別解消法」とは、特定地域の出身者を迫害する「部落差別」を解消するための法律です。2016年12月より施行されました。

従来の日本では、特定の部落出身を理由に、

  • 婚約に対する周囲からの反対
  • 就職における不当な扱い

といったことが、社会問題となっていました。

日本国憲法における「基本的人権の保障」に基づき、部落差別のない社会を実現するために作られたのが、部落差別解消法なのです。 

参考:軽井沢

まとめ 

今回は人種差別撤廃条約について解説しました。

『人種差別撤廃条約』と聞いても、何だか分かりにくいテーマのように感じるかもしれませんが、人種差別は私たちの身近にも存在している問題です。

平等でみんなが過ごしやすい社会をつくるためにも、それぞれがもう一度あらゆる差別について考えることができるといいですね。