政治ドットコム憲法憲法9条とは?3つの憲法改正案と非常事態宣言について

憲法9条とは?3つの憲法改正案と非常事態宣言について

投稿日2020.5.6
最終更新日2020.07.13

憲法9条とは日本という国が自発的に戦争を行わないことを規定した憲法です。

緊迫する中東情勢や、混迷の北朝鮮を始め、日本において憲法改正の必要性を議論される機会も増えてきました。
憲法改正を議論する際、最も焦点となるのは、やはり戦争放棄を規定した平和主義の象徴9条です。

しかし「そもそも憲法9条とはどのようなものか知らない」という方もいらっしゃると思われます。
そこで今回は

  • 憲法9条の概要
  • 自衛隊との関係
  • 改正論議について
  • 非常事態宣言に関わる憲法改正案

などについて、本記事でご紹介していきます。

1、憲法9条とは

1947年に施行された日本国憲法は、全部で11章・103条によって構成されるものですが、第2章「戦争の放棄」は第9条の1つの条文だけで成っています。
その内容は以下のものです。

第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

第2章 戦争の放棄

第9条は、第二次世界大戦の惨禍の反省から二度と戦争をしないという決意のために作成されました。

また説としては当時、交戦した国々(アメリカやソ連、中国やオーストラリアなど)の一部で、天皇と皇室の存続について批判的な意見があった事の対応策として、憲法改正の検討をしていたGHQ最高司令官であるマッカーサーと、当時の総理大臣・幣原喜重郎の間で話し合って生まれたものと言われています。

ちなみに日本において憲法は日本における法律の中での最高法規(憲法に違反する規則は作成できない)であるため、改正には正規の手順を踏まなくてはなりません。

(1)憲法9条解釈におけるポイント

それでは、憲法9条を解釈するポイントについてみていきます。

①国権の発動たる戦争とは

単に戦争といわず「国権の発動たる戦争」といっていますが、それは国家の行為としての国際法上の戦争という意味です。

「戦争」という言葉そのものと大きな差異は無いものと思われますが、具体的には当時、東京裁判でも論議されていた「侵略戦争」の意味合いで言われたものであると考えられます。

侵略戦争とは国土の拡大や植民地の拡大のために他国に攻め込むことを指します。

②国際紛争を解決するための手段とは

1928年のパリ不戦条約などの例をみても、国際法上の用語例からすると「国際紛争を解決するための手段」とは、「国家の政策の手段としての戦争」と同義であり、具体的には侵略戦争を意味するものと解釈されると言われています。
この限りにおいては、本項においては自衛戦争・制裁戦争までは放棄されていないという解釈もあります。

③戦力とは

1947年の憲法執行時の吉田内閣においては、「戦力」は近代戦争を遂行するに足りる装備編成を備えるものと定義しましたが、後の鳩山内閣においては、「自衛のため必要な最小限度を超えるもの」と定義し、日本は自衛権を持つという解釈としました。

自衛権とは他国から攻め込まれた際に自国を守る権利のことです。

2、自衛権と憲法9条について

自衛隊
次に、自衛権と憲法9条についてみていきます。

(1)自衛隊とは

自衛隊とは、1950年の朝鮮戦争時に発足した警察予備隊(後の陸上自衛隊)がはじまりです。
その後、1954年に施行された自衛隊法によって、海上自衛隊・航空自衛隊も新設され、陸海空の自衛隊が揃いました。

冷戦期は、専守防衛の枠内で在日米軍の日本防衛機能を補完する役割を担ってきましたが、90年代以降、PKO(国連平和維持活動)の為の海外派遣なども行うようになってきました。

また、近年の日本国内の自然災害の際に、国民を助ける救助活動も重要な任務となってきています。

(2)自衛権とは

また、自衛権とは、国際法によって認められた国家が有する権利であり、急迫不正の侵略や侵害を排除するために、武力をもって必要な行為を行う国家権利です。

この権利を持つことは憲法9条に反しているとは言えないという考え方があります。

自衛権は大きく二つの種類があるとされ、自国に対する侵害を排除するために行為を行う権利を「個別的自衛権」、自国を含む他国に対する侵害を排するための行為を行う権利を「集団的自衛権」といいます。

2016年に施行された安保関連法では、集団的自衛権が一部可能との政府解釈がなされたことで議論となりました。
集団的自衛権については以下の関連記事で更に詳しく解説していますので是非ご覧下さい。

集団的自衛権とは?2つの自衛権について簡単解説

集団的自衛権とは、国家Aが攻撃を受けた際に直接攻撃を受けていない第三国(当事国以外の問題に直接関与しない国)が国家Aと協同で防衛を行う権利を指します。 昨今 北朝鮮によるミサイル実験 中国による尖閣諸島海域への艦船の進入 韓国による竹島の実効支配 など、日本と周辺国をめぐる軍事的な緊張は高まっていると言えます。 こうした現状の下、他国の脅威に対してどの程度の対抗...

(3)自衛隊違憲論

憲法学者でも自衛隊が憲法9条に違反していると主張する人もいます。
その主張としては、憲法9条の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」の文言を根拠に、実質的に軍隊である自衛隊を保有することは違憲との解釈を持つ人が多いようです。

(4)自衛隊に対する政府の解釈

政府の解釈としては
「日本国憲法では確かに第9条にて戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認に関する規定を置いている。しかし日本が独立国である以上、主権国家としての固有の自衛権を否定するものではない」
となっています。

政府は、この様にわが国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上認められると解しているのです。

3、憲法9条の改正について

次に、昨今話題になっている日本国憲法第9条の改正についてはどのような議論がなされているか見ていきましょう。

(1)政府が改正したい理由

自民党が、第9条の改正が必要と考えている理由は、さまざまな解釈が起こってしまう現行の条文を改め、自衛隊の存在をより明確化し、隊員の誇りも高める為と言われます。

そうすることで他国に対する抑止力としての効果を自衛隊が持つことができ、自衛隊を違憲とする野党の主張を政府は退けることができるのです。

(2)改正案

それでは、実際にもし改正するとすれば、どのような形で改正される可能性があるのでしょうか?
いくつか想定されているパターンを見ていきます。

①自衛隊を憲法に明記する(条文は残す)

現在の条文を残して、追記として自衛隊を明記するという案があります。例えば、
「第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」

この第2項の後に、
「第3項 自衛隊はこの戦力には含まれない」

または
「第3項 自衛権の発動は妨げない」

などの第3項を設ける案が議論されています。
こうすることで、侵略戦争のための戦力は否定するが、自衛権行使のための自衛隊は明確に認めることとなるとされます。

②自衛隊を国防軍として憲法に明記

この改正案は第2項を完全削除し、自衛隊を国防軍として明記し、国際的にも国内的にもはっきりと「軍」だということを明確にする案です。

自民党の石破茂衆議院議員などが唱えています。

③9条を全削除

そもそも戦争放棄を記載した第9条すべてを削除する案もあります。

(3)変えていけないと考える人々

改憲の反対派の人たちが言う反対論は、主に以下のような主張をしています。

  • 戦争ができる国になってしまう
  • 他国の戦争に巻き込まれやすくなる(集団的自衛権の行使についての懸念)
  • 徴兵制の復活につながる可能性がある

しかしこれらの主張は、他の憲法の条文(自衛戦争以外の否定や、職業選択の自由)などで抑えられるという意見もあります。

4、憲法改正と非常事態宣言

ここまで9条改正について取り上げてきましたが、憲法の改正案には非常事態宣言(緊急事態宣言)に関わるものがあります。

これは大規模な災害などが起きた際、国民保全のために迅速に非常事態宣言(緊急事態宣言)を発令し、内閣の権限を強めるという改正案です。

憲法に非常事態条項を盛り込むということですね。

2020年5月時点において、新型コロナウイルスが猛威をふるい非常事態宣言が発令されました。
これにより政府は国民の権利や利益に影響を及ぼす制限を行いました。

具体的には飲食店やパチンコ店などに対する営業自粛の要請や国民への外出自粛要請(感染症拡大防止のための措置)がこれに当たります。

しかし注意して頂きたいのはこれがあくまで要請(お願い)であり、破れば罰則があるというような義務ではないということです。

また今回の宣言発令には新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、改正した法に基づくというプロセスを踏んでいます。

安倍首相はこのような手間を憲法に非常事態条項を挿入することで簡略化し、国を守るべきと主張しています。
非常事態宣言に関しては以下の関連記事で更に詳しくご紹介しています。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。
日本国憲法が施行されてから今年で73年です。
新しい令和の時代にあった憲法とはどのようにあるべきか、改めて論議を進めていく必要があるのかもしれません。
本記事をご参考に、一度憲法についてご自身の意見も含めて考えて頂く機会をもって頂ければ幸いです。