COOL JAPAN(クールジャパン)とは、外国人がCOOL(カッコイイ)ととらえる日本独自の文化や技術などを発信し、日本の経済を成長させる政策のひとつです。
最近ではアニメやポップカルチャーにかぎらず、ロボットや和食、科学技術にも注目が集まっています。
そこで今回の記事は
- COOL JAPAN(クールジャパン)の定義
- COOL JAPAN戦略
- 今後の課題
について分かりやすく解説していきたいと思います。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、COOL JAPAN(クールジャパン)とは?
COOL JAPAN(クールジャパン)とは、海外から見た日本の魅力を積極的に発信することで日本の市場価値を高め、国全体の成長に繋げる経済政策のことです。
以下のようなマークを見かけたことはありませんか?
画像出典:クールジャパン戦略 内閣府
これはCOOL JAPAN(クールジャパン)のシンボルとして使われているマークで、日の丸に桜が咲き誇る様子は、まさに日本を象徴的に表わしています。
COOL JAPAN(クールジャパン)に取り上げられるコンテンツには
- アニメ、マンガ
- ゲーム
- ファッション
- 食
- 伝統文化
- デザイン
- ロボット
- 環境技術
などがあり、この中でもアニメ、マンガは根強い人気を誇っています。
「外国人が日本で興味のあるジャンル」のアンケート結果を見てみると、欧州、アジアともにアニメ、マンガ、ゲームが1位を記録しました(クールジャパンの再生産のための外国人意識調査・平成30年度版より )。
一方、北米では日本食が1位にランクインしています。これは北米の健康ブームが反映されたもので、海外の日本食レストラン数は2006年の約2.4万店から2015年には約8.9万店と増加傾向にあります。
画像出典:クールジャパンの再生産のための外国人意識調査 内閣府
また、上記以外にも
- スクランブル交差点
- 路地裏の風景
- 部活動
- お弁当
など、外国には見られない独自の日本の景観や文化もCOOL JAPAN(クールジャパン)として人気を集めています。
2、COOL JAPAN戦略とは
COOL JAPAN戦略とは、COOL JAPAN(クールジャパン)を使った経済戦略のことです。
- 日本の魅力を知ってもらう情報発信
- 海外への商品やサービスの展開
- 外国人観光客の国内消費の促進(インバウンド振興)
の3つの方法で国内外の経済成長を図ります。
画像出典:クールジャパン戦略 内閣府
(1)COOL JAPAN(クールジャパン)の目的
COOL JAPAN戦略は、日本の良さを発信するだけではありません。
資源の再発見を行うことで、海外成長を見込んだ大きな可能性を地域に生むことができます。
そのため、COOL JAPAN戦略では都市部か地方かは問われません。
これらの目的を達成するためにCOOL JAPAN戦略では以下の5つの視点が重要視されています。
- デザイン視点で横串を刺す:機能性だけではなくデザイン性をプラスする
- 政策、事業を連携させる:官民、異業種の隔たりなく連携を強化する
- 人材ハブを構築する:世界中からCOOL JAPAN(クールジャパン)に必要な人材を集める
- 外国人の視点を取り入れる:日本の魅力を外国向けに再編集する
- 地域の魅力をプロデュースする:COOL JAPAN(クールジャパン)と呼べる地域資源を見つけ、商品化を行う
(2)COOL JAPAN(クールジャパン)の成り立ち
ここまで説明してきたCOOL JAPAN(クールジャパン)ですが、一体いつから誰が始めたものなのでしょうか?
成り立ちを見てみましょう。
COOL JAPAN(クールジャパン)のはじまりは、2010年6月です。
経済産業省に「クール・ジャパン海外戦略室」が創設されました。
創設の背景には、2007年の第1次安倍政権で「感性価値創造イニシアティブ」が策定され、日本ブランドの価値を高める政策があったことが挙げられます。
その後、戦略室が拡大され、2011年に「クリエイティブ産業課(生活文化創造産業課)」が創設し、2012年にはクールジャパン戦略担当大臣に稲田朋美大臣が就任しました。
その後
- 2013年には「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」
- 2015年には「クールジャパン官民協働プラットフォーム」
が設立されました。
このようにCOOL JAPAN(クールジャパン)は1つの政策としてだけではなく、年々存在感を増しており、最近では企業と国が協力する官民一体の経済政策として進化しています。
2018年6月には知的財産戦略の一部にCOOL JAPAN(クールジャパン)を位置づけ、知的財産推進計画2019ではCOOL JAPAN戦略のさらなる強化が目標に掲げられました。
3、具体的な取り組み|成功事例
官民一体となって推進しているCOOL JAPAN(クールジャパン)ですが、具体的な取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか?
COOL JAPAN(クールジャパン)の取り組みが成功した事例をいくつか見てみましょう。
(1)ニセコにおけるリゾート開発
ニセコといえば、スキーや温泉旅行が有名です。
北海道旅行で訪れたことがある人も多いのではないでしょうか。
そのニセコにオーストラリアからの観光客が急増し、注目を集めています。
ニセコの2000年度のオーストラリア観光客は314人、2004年度には4,201人にのぼり、なんと約13倍に急増しました。
- カナダ(夏にスキーがしたいオーストラリア人に人気な観光地)より近い
- 時差がない
- 雪の質が良い
などの口コミ人気が高まり、2003年頃からオーストラリア人の観光客が増加し、これを好機としてニセコは積極的に観光誘致を図りました。
具体的には
- 多言語対応強化、通信環境整備
- 各国メディアへの働きかけ
- マーケット別の情報発信と誘客プロモーション
などを実施しました。
観光だけではなく、不動産業などの投資などが大きく活発化していることもニセコの特徴です。
参考:ニセコ町の取り組みについて 国土交通省
参考:ニセコ地域への外国人観光客急増とその理由 国際貿易投資研究所
(2)日本酒PR
日本酒の輸出促進もCOOL JAPAN(クールジャパン)戦略の取り組みのひとつです。
日本酒のPRでは
- 主要なワイン市場でのバイヤー、ソムリエ、ジャーナリストなどを対象にしたプロモーション
- 国内外の酒類のコンペティションコンクールでの魅力発信
などが行われてきました。
パリの有名なレストランのシェフやソムリエが日本酒を審査し、審査員自身のレストランで日本酒が提供されるなど、日本酒への認知度は着実に上がっています。
参考:クールジャパン戦略 内閣府
参考:日本産酒類の輸出促進に向けた課題及び対応方針について 内閣府
(3)香川県人気の高まり
香川県は2010年からはじまった瀬戸内国際芸術祭の開催により、芸術に関心のある外国人観光客から人気を集めています。
National Geographic Traveller(UK)の「2019年注目したい旅行先」に日本で唯一紹介されるなど評判の勢いは止まりません。
瀬戸内国際芸術祭では、瀬戸内海のいくつかの島に芸術品が展示され、島めぐりをしながら芸術祭を楽しむことができます。
インバウンド対策として
- 多言語対応
- 外国の旅行エージェントへの営業
なども実施され、台湾、香港、アメリカ、オーストラリアからの観光客に人気です。
また
- 自然
- 地域
- 生活
- 交流
- 未来
など、1つ1つのコンセプトがしっかりと組まれていることで他の芸術祭との差別化にも成功しています。
参考:コンセプト ART SETOUCHI
参考:クールジャパン戦略 内閣府
参考:瀬戸内国際芸術祭2019を契機に 欧米豪から誘客 JTB
4、COOL JAPAN機構|官民ファンド
COOL JAPAN(クールジャパン)機構とは、官民一体のCOOL JAPAN促進のために2013年11月に官民ファンドとして設立された団体です(別名 株式会社海外需要開拓支援機構)。
官民ファンドとは、国と民間が共通の目的のために出資し、設立した共同企業のようなもので、投資を行い、利益を分配します。
画像出典:クールジャパン政策について 経済産業省
COOL JAPAN機構に参加している民間企業は以下の通り(2020年7月の資料より)です。
- ANAホールディングス
- エイチ・ツー・オー リテイリング
- ADKマーケティング・ソリューションズ
- 大垣共立銀行
- 京葉銀行
- JTB
- フロント リテイリング
- 商工組合中央金庫
- 大日本印刷
- 太陽生命保険
- 大和証券グループ本社
- 髙島屋
- 電通グループ
- 凸版印刷
- 博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ
- パソナグループ
- バンダイナムコホールディングス
- フジ・メディア・ ホールディングス
- みずほ銀行
- 三井住友銀行
- 三井住友信託銀行
- 三越伊勢丹ホールディングス
- LIXILグループ
COOL JAPAN機構では政府の定める下記の3つのガイドラインに沿って投資判断が行われています。
- 政策的意義
- 収益性等の確保
- 波及効果
5、COOL JAPAN(クールジャパン)戦略の課題
COOL JAPAN(クールジャパン)戦略の課題には
- 各省庁の連携
- 各分野を横断した連携と取り組み
- 人材の発掘と育成
- デジタル化、グローバル化に対応した情報発信
- 共感を得るストーリーづくり
などが挙げられ、これらの課題を解決するためには立場を超えた「横の連携」が必要です。
画像出典:横の連携を強化するための仕組み 首相官邸
そのため政府では
- 内閣府関係省庁
- 自治体
- メディア
- 地域プロデューサー
- 有識者
- 有識者(外国人)
- 事業者
- 投資家
- インキュベータ
- インフルエンサー
- 日本ファン
などを含めたネットワークの形成が提案され、より多様なCOOL JAPAN(クールジャパン)の実現を目指しています。
まとめ
今回は「COOL JAPAN(クールジャパン)」について解説しました。
日本は世界に誇る文化や技術を数多く持っています。
東京オリンピック・パラリンピックなどを機にその魅力はさらに広まっていくでしょう。
これを機に国内に目を向けることで、故郷のCOOLな部分を再発見できるかもしれませんね。