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文化政策とは?文化芸術基本法を読み解きながら解説!

投稿日2022.9.14
最終更新日2022.09.16

この記事では「文化政策」に関する基本的な内容を解説しています。

文化政策とは芸術・文化領域を対象とする政策のことです。しかし「文化・芸術」が指し示す範囲や領域は曖昧で一言で説明することが難しい用語でもあります。

この記事では、日本の文化政策の大方針を決めている「文化芸術基本法」や「文部科学白書」に記載されている内容を紹介することで、文化政策への理解を深めていきます。

1、そもそも文化政策とは?「文化芸術基本法」を読む

国の文化政策の基本となっている法律にはどのような内容が掲載されているのでしょうか。

ここでは「文化芸術基本法」の前文を読むことで、日本の文化政策の大方針を確認したいと思います。

文化芸術のとらえかた

まず前文には文化芸術がどのようなものとして理解されているのかに関する記述があります。

文化芸術を創造し,享受し,文化的な環境の中で生きる喜びを見出すことは,人々の変わらない願いである。(中略)我々は,このような文化芸術の役割が今後においても変わることなく,心豊かな活力ある社会の形成にとって極めて重要な意義を持ち続けると確信する。

続いて、文化政策が不十分である点が述べられます。

しかるに,現状をみるに,経済的な豊かさの中にありながら,文化芸術がその役割を果たすことができるような基盤の整備及び環境の形成は十分な状態にあるとはいえない。二十一世紀を迎えた今,(中略)これまで培われてきた伝統的な文化芸術を継承し,発展させるとともに,独創性のある新たな文化芸術の創造を促進することは,我々に課された緊要な課題となっている。

最後にどのような姿勢・方針で文化芸術の振興を図っていくのかが述べられます。

このような事態に対処して,我が国の文化芸術の振興を図るためには,文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し,文化芸術活動を行う者の自主性を尊重することを旨としつつ,文化芸術を国民の身近なものとし,それを尊重し大切にするよう包括的に施策を推進していくことが不可欠である。(以下略)

(参考HP:文化芸術基本法

文化が持つ社会的な役割に触れつつ、その価値が普遍的であること。にもかかわらず、国として果たすべき役割が十分に果たされていないこと。その上で「文化芸術基本法」を基礎として、どのような姿勢で文化の進行を図っていくのかが述べられた内容になっています。

Itami Former Okada Residence (Itami City Itami Town Hall) – 2021/04/07

2、政府が進めようとしている「文化政策」の内容とは?

では現在、政府はどのような文化政策を進めようとしているのでしょうか。

これを理解するために文部科学省が発行している「文部科学白書」を確認していきます。

(参考:『文部科学白書』「第9章 文化芸術立国の実現」

令和3年度「文部科学白書」の第9章には「文化芸術立国の実現」とあり、政府が進めようとする文化政策に関する施策が掲載されています。

以下、ここに記されている施策についてご紹介し、政府が推進する文化政策の具体的な中身について理解していきます。

博物館・劇場等の振興

博物館や音楽堂、劇場の振興を通じて文化の振興や地域コミュニティの活性化、伝統文化の継承を行おうとする取り組みです。

とりわけ国立の博物館におけるさまざまな展覧会の実施や劇場における新規演目の実施などに注力しようとしています。また美術館における展覧会には不可欠な美術品の保存や収集も強化する方針です。

文化芸術によるイノベーションの創出、国家ブランドの強化

世界各国と比べ、日本のアート産業は市場規模が狭いとの問題意識から、アート市場の活性化を目指そうとする取り組みです。芸術家の活動基盤を強化するための契約環境の強化を行い、その上で日本博や国際文化交流を推進することで芸術家の活動機会の創出を狙います。

舞台芸術活動等の推進

文化芸術の振興に資する公演を重点的に支援するための取り組みです。芸術文化振興基金を設立・運営することで、各種舞台芸術と舞台芸術の担い手を育成する支援を行っています。

メディア芸術の振興

世界的な人気を誇る日本のアニメやマンガ、ゲームなどのメディア芸術の振興を図ろうとする取り組みです。優れた作品に対して表彰を行ったり、それら作品を鑑賞するフェスの開催を中心に発信機会を作っています。

Japanese breakfast image

子供たちの芸術教育の充実・文化芸術活動の推進

学習指導要領で定められた芸術における目標を達成できるように子どもたちに対して芸術に触れる機会や環境を提供しようとする取り組みです。具体的には文化庁選定の文化芸術団体が多くの学校で公演したり、文化部活動の環境整備を行うことが明記されています。

文化芸術による共生社会の実現

障害者の方々による文化芸術活動の推進やアイヌ文化の振興を通じて共生社会を実現しようとする取り組みです。

地域における文化の振興

日本各地に存在する多様で豊かな文化を活かし、振興するための取り組みです。国民文化祭の開催や文化芸術創造都市の推進事業、文化芸術創造拠点形成事業、国際文化芸術発信拠点形成事業などが具体的な取り組みになります。

生活文化等の振興と保護

日本における生活文化をより振興しようとする取り組みです。とりわけ食文化については各地の食文化を体験できる機会を作るなど重点的に取り組みが進めることが明記されています。

文化財の保存と継承

多種多様な文化財の保存・活用を実現するための取り組みです。文化財を「我が国の歴史や文化の理解のため欠くことのできない貴重な国民的財産」と位置付け、多様な文化財それぞれの特性に応じた保存活動を行うことが明記されています。

また無形文化財を継承する担い手の不足や有形文化財の保存修理等に必要な材料や道具が入手困難になっています。課題解決のための調査活動や技能者育成など文化財の継承のために必要な施策を行うとしています。

文化財をはじめとする文化資源を活用した付加価値の創出

観光資源としても貴重な文化財の魅力を向上させようとする取り組みです。国際観光旅客税を活用し文化財の魅力向上に取り組む活動を支援しています。

文化観光の推進

地域において文化への理解を深められる機会を拡大することで国内外の観光をより活性化させようとする取り組みです。平成27年度に創設された日本遺産制度を活用し、日本文化の戦略的な発信に取り組もうとしています。

社会の変化に対応した国語・日本語 教育に関する施策の推進

国語を日本文化の基盤になるものと位置付け、より適切な国語のあり方を実現するために必要な施策を展開しようとする取り組みです。

国語に関する課題や課題発見のための世論調査、各種方言の保存活動など取り組み内容は多岐にわたります。

また外国人への日本語普及・教育活動も行うことが明記されています。

新しい時代に対応した著作権施策の展開

急速に進むデジタル化の中で無数のコンテンツが日々創作されています。その中で著作権を十分に保護・管理できていない課題意識から各種施策を行うことが明記されています。

社会環境に合わせた著作権法の改正や著作権教育の充実、インターネット上の海賊版対策などが具体的施策として挙げられています。

宗教法人制度と宗務行政

憲法に記載された信教の自由、各宗教法人の自律的な運営を保障するための取り組みです。宗教法人の管理運営の推進や不活動宗教法人対策の推進、宗教法人審議会における

Traditional, handcrafted ceramic on dark background. Soft focus. Copy space.

3、まとめ

この記事では日本の文化政策の基本となっている「文化芸術基本法」を紹介したのちに、令和3年度「文部科学白書」を読み解くことで、現在進行中の文化政策についてまとめました。

時代の変遷や社会状況の変化に伴い、「文化」の定義は曖昧になっています。その中でできるだけ多くの人が文化芸術を通じて豊かに暮らせるよう政策が形作られていくことになりそうです。

お知らせ:群馬県から「文化政策」に関する意見募集中!

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この記事の監修者
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