時代が進み、「男性だから」「女性だから」という性別による固定観念は徐々に取り払われてきました。
性別で区切ることなく個人にフォーカスを置き、一人一人が持っている個性やスキルを十分に発揮できる社会が今望まれています。
ところで、「男女共同参画社会」という言葉を聞いたことはありませんか?
それこそまさに、今の時代を捉えて新たに目指されている社会です。
また「男女共同参画社会基本法」は、その新たな時代の社会の実現を目指した法律になります。
そこで今回は「男女共同参画社会基本法」について、以下のとおりご紹介します。
- 制度の目的
- 制度実現のメリット
- 実現するための内閣府組織(男女共同参画局)とは
- 実現への課題
本記事がお役に立てば幸いです。
1、男女共同参画社会基本法とは
女性の社会進出や少子高齢化、経済活動の急速な変化によって、私たちは男女という性別の固定観念にとらわれずに社会生活を営むようになりました。
日本国憲法でも個人の尊重と法の下の平等がうたわれているものの、より現代のニーズに即して対応する必要が出てきたのです。
「個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、緊要な課題」と捉えられるようになりました。
そのような「男女共同参画社会」の実現のため、1999年に制定されたのが「男女共同参画社会基本法」です。
基本理念は以下のとおりです。
社会生活といっても広く、職場や家庭、地域社会などの様々な場面において、男女共同参画を目指しています。
引用:男女共同参画局
という表現からもわかるように、国が今後ますます注力していくべき事柄だと考えていることがわかるでしょう。
2、実現すると、どうなるのか?
男女を問わず、個人の意欲に応じてあらゆる分野で活躍できる社会が実現できます。
社会生活は職場や家庭、地域社会などの様々な場面で営まれるものなので、具体例を以下のとおりご紹介します。
- 職場に活気:女性の管理職増加や、働き方の多様化
- 家庭生活の充実:男性の育児休暇など、家庭生活への関わり方の多様化
- 地域力の向上:主体的な地域貢献によるコミュニティーの強化
このように、男女共同参画社会が実現すれば、多様な活動を自らの希望に沿ったかたちで展開できるようになるのです。
多様性が認められてきた今の時代に即して、一人一人が、夢や希望をより実現しやすくなるでしょう。
3、男女共同参画社会を促進する、男女共同参画局とは
男女共同参画社会の実現に向けて活動しているのが、内閣府の構成組織の一つである「男女共同参画局」です。
男女の機会均等や共同参画を推進することを任務とし、具体的には、以下でご紹介する様々な調査や取り組みを行っています。
(1)女性役員情報サイト
日本では、海外諸国に比べると、現時点での女性の管理職や役員が占める割合は多くはありません。
とはいえ、女性が企業の意思決定に関わることは、多様な価値観が企業の経営に反映され、結果的に企業競争力や社会的評価の向上や、企業価値の向上にもつながります。
国としても何とかして促進できないかと考えていました。
そこで、このような女性役員の数が具体的に視覚化されることによる効果(見える化)を期待して、上場企業における女性役員の割合については定期的な調査が行われています。
実際に2013年4月には、総理から経済界に対して「役員に一人は女性を登用して欲しい」との要請も行われました。
参考:女性役員情報サイト
(2)女性の政治参画マップ
あわせて、女性の政治参加に関する調査も行われています。
議会などにおける女性の参加割合について、都道府県や市町村単位で調査することで、参加できている地域とそうでない地域が「見える化」されています。
- 都道府県単位の調査内容:全国の都道府県議会、市区議会、町村議会の女性議員割合、地方公務員の採用者、管理職に占める女性割合、地方公共団体の審議会等委員の割合、会社役員等の管理職や自治会長に占める女性割合、都道府県防災会議の女性委員割合による都道府県別の女性の参画状況
- 市町村単位の調査内容:公務員の管理職や市町村議会議員に占める女性の割合、男性公務員の育児休業取得率等
参考:女性の政治参画マップ
(3)女性活躍推進の取り組み
男女共同参画社会を目指すうえで、社会生活で女性がいかに活躍できるか?
政府はこれを最重要課題と位置付けています。
2014年10月より、「すべての女性が輝く社会づくり本部」が設置され、総理大臣官邸で話し合いが行われました。
様々な状況に置かれた女性が自らの希望を実現して輝くことによって、潜在力である「女性の力」が十分に発揮され、社会を活性化させることが目的です。
毎年6月を目処に「女性活躍加速のための重点方針」が決定され、各府省の概算要求を行っています。
例えば、「女性活躍加速のための重点方針2019」は以下の内容となっています。
- 安心、安全な暮らしの実現
- あらゆる分野における女性の活躍
- 女性活躍のための基盤整備
重点方針をもとに、具体的には以下のような取り組みが行われています。
- 女性に対するあらゆる暴力の根絶(セクハラ、DV、ストーカー対策など)
- 困難を抱える女性への支援(ひとり親家庭への支援、予期せぬ妊娠、ひきこもり)
- 柔軟な働き方がしやすい環境の整備、非正規雇用労働者の待遇改善
- 中高年女性を始めとする学び直しや就業ニーズの実現
- 待機児童解消、介護離職ゼロに向けた介護サービスの整備など
(4)男性向けの取り組み
男女共同参画社会を実現するためには、性別を問わず地域や家庭へ参画しやすい環境づくりが必要です。
性別による役割分担意識の解消や、長時間労働の抑制などの働き方の見直しは、男性にとっても重要なことなのです。
また、女性の社会進出や男女間での役割分担については、「男性は仕事、女性は家庭」など従来持たれていた認識を変えてもらうための取り組みも必要です。
男性の立場・視点から理解を深められるような情報発信はもちろん、シンポジウム開催、調査など、各自治体で様々な取り組みが行われています。
4、実現のための課題
ここでは現状浮き彫りになっている課題について確認していきましょう。
(1)男性の育児休暇について
「イクメン」という言葉が浸透したように、男性の育児参加の重要性は認識されるようになりました。
一方で、男性の育児休暇は制度として存在するものの取得率は低く、休みたくても休めないという現実があるのではないでしょうか。
事実、女性の育休取得率は直近10年間で80%以上を維持していますが、男性の育児休暇の取得率はわずか6.16%に留まっています(2018年度)。
結果として女性がワンオペ育児をすることになり、女性は職場を休まざるを得ず、ひいては女性の社会進出が妨げられるという流れになってしまっています。
そのため、国としては、男性の育児休暇取得を推進しているのです。
(2)固定的性別役割意識
近年少しずつ変化してきていますが、国際的に見ても日本は、性別による固定的な役割分担意識が根強く残っています。
約3年ごとに行われる内閣府の世論調査では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方に対する賛否を取り続けていますが、初めて「反対」が「賛成」を上回ったのは2004年で、「反対」が過半数を占めたのは2007年でした。
しかし、男女別、年代別では違いがあり、男性ではまだ賛成の方が多かったり、女性でも若い世代の方が賛成が多いという結果が出ています。
仕事と子育てとの両立の難しさ、非正規雇用など就業に関する環境の厳しさが、このような結果につながっていると考えられます。
(3)ワークライフバランス
身体の負担を考えると、女性は特に、結婚や出産を機に人生のフェーズが大きく変わります。
仕事以外とそれ以外のものを天秤にかけて考えなければならず、結果としてキャリアを諦めざるを得ない女性もいます。
出産によって退職する女性は増えており、継続して就業している人は全体の40%程度にとどまる状況は、この10年間も常に変わっていません。
長時間労働が社会問題化する中で、働きたくても働けない女性もいる現実があります。
子育てと仕事の両立、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進も急務な課題の一つだといえるでしょう。
まとめ
今回は、「男女共同参画社会基本法」の概要とメリット、「男女共同参画社会」実現への課題を解説しました。
男女共同参画社会の実現のためには、女性に対してはもちろんのこと、男性へのアプローチも欠かせません。性別を問わず、日本に生きる一人一人にとってよりよい社会の実現に向けて、共に一歩を踏み出せる取り組みを考えたいです。
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