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政策秘書とは?事務所の要である政策秘書の仕事を徹底解説

投稿日2021.3.8
最終更新日2021.03.08

政策秘書とは「国会議員政策担当秘書」のことです。
国会議員をサポートする秘書は何人もいますが、その中でも「政策・法案の立案をサポートする仕事」を担っています。

給与は議員秘書の中でも最も高いです。
しかしこれだけではまだ政策秘書がどんな職種であるか具体的にイメージがつかないかと思われます。

そこで今回は政策秘書について、以下のとおり解説します。

  • 政策秘書の概要
  • 具体的な仕事内容
  • 給与について
  • 政策秘書のなり方と注意点

本記事がお役に立てば幸いです。

1、政策秘書とは

政策秘書
政策秘書は、国会議員の秘書である「議員秘書」の1人です。
ここでは政策秘書の位置付けと役割についてご紹介します。
まずは、議員秘書について見ていきましょう。

(1)議員秘書とは

「議員秘書」にも複数の種類があり、大きく分けて

  • 公設秘書
  • 私設秘書

の2種類です。
このうち、政策秘書は公設秘書に含まれます。

①公設秘書

公設秘書とは、議員が国費によって雇える秘書のことです。
給与は議員からではなく国から支払われます。

1人の議員につき3名まで置くことが認められており、身分としては国家公務員となります。

公設秘書にも、

  • 公設第一秘書
  • 公設第二秘書
  • 政策秘書

と3種類ありますが、中でも政策秘書は1993年から認められた新しい秘書です。

参考:1993年改正国会法

②私設秘書

公設秘書以外にも、国会議員が私費で雇う私設秘書が存在します。
特別な資格は必要とされず、公設秘書と異なり人数制限なく事務所に置くことができます。

私設秘書の給与は議員本人またはその後援会が負担しているため、公設秘書よりも給与が低い傾向にあります。

そのため、仕事内容は事務的な内容や雑用が多いです。

(2)政策秘書は事務所の要となる

繰り返しになりますが政策秘書は、国会議員の立法をサポートする専門職です。
その他の秘書と異なり資格や条件があることからも、重要なポストであることがわかります。

国会議員の中には、インターネット上で公募を行って政策秘書を募集した例があります(音喜多駿氏)。

音喜多氏は、政策秘書を

「政策立案のみならず、事実上、政治活動全般も支えることになる、まさに事務所の要」

と表現しました。

引用:参議院議員・音喜多駿氏ホームページ

国会議員自身がそのように発信するほど、とても重要な仕事なのです。

2、政策秘書の仕事内容

国会議員にとって重要な存在となる政策秘書ですが、立法をサポートすると言っても具体的にどのような役割を務めるのでしょうか。

(1)秘書としての一般業務

そもそも議員は、国会が開催される東京と、地元選挙区の2拠点での活動が必要となります。

政策秘書は立法及び政策立案のサポートが主な仕事なので、東京で働く場合が多いと言われていますが、選挙前などは地元選挙区でも活動することがあるでしょう。

また、秘書の仕事自体が多岐に渡り多忙であるため、政策秘書であっても電話番やスケジュール管理などの庶務業務を担当することがあります。

(2)国会活動のサポート

国会の会期中は以下のとおり、国会活動や政党活動のサポートがメインとなります。

①政策研究

議員の所属委員会などの問題について、日常的に勉強しておく必要があります。
新聞記事や資料を読み込み、時事問題に明るいことはもちろん、長期的な政策について理解しておかなければなりません。

政策の研究・立案についても携わります。
各テーマの主要論点について理解し、議員に尋ねられたらすぐに答えられるだけの、政治的な知識の整理・準備をする必要があります。

各種会合が必要になれば、

  • 会合日の設定
  • 説明者の人選・依頼
  • レジュメ作成

なども行います。

議員の意向に沿って、調整役を務めたり、資料集めをしたりと幅広く業務を行います。

②議員立法のサポート

議員立法(議員によって法案が発議される)は議員連盟や勉強会などのグループ単位で行われることが多いです。

議員立法は具体的に、

  • 専門家や各種機関に調査依頼、意見を聴く場合は連絡調整
  • 党の機関で意見を調整した上で、党の制作スタッフと法案の素案作成
  • 議院の法制局に素案を示し、法案の骨子・要綱の作成を依頼
  • 党の機関で議論した後、法案の成文を法制局に依頼
  • 法制局の審査を経た上で、党の機関の了承を得て、国会に提出
  • 適宜、必要に応じて他党と調整

という流れで行われます。

参考:参議院 法律ができるまで

担当する議員がグループの中心メンバーであればあるほど、政策秘書の仕事が多くなると言ってよいでしょう。

政策秘書の専門性が最も発揮される立法のサポートについては、議員の意向に沿って法案などの資料を整理することはもちろん、日常的な勉強が欠かせません。

議員の手となり足となりサポートするためには、時事問題や政策を研究し、党の政策についても知り尽すことで初めて役割が果たせるからです。

③委員会質疑のサポート

議員が政府提出法案について委員会で質疑をする予定が決まると、政策秘書は速やかに動かなければなりません。
具体的には、

  • 法案の内容を理解
  • 専門家や関係省庁、機関などに調査依頼、意見を聴く場合は連絡調整
  • 党や議員の意向を踏まえて質問案を起草
  • 質疑の前に、関連の省庁に質問の内容を伝達
  • 場合によっては、各省庁に対しての答弁についても要望を提出

以上のような業務を行います。

参考:参議院

3、政策秘書の給与

政策秘書
このように、政策秘書は多岐に渡る仕事をして国会議員をサポートしています。
議員秘書の中でも政策担当秘書は職務内容の専門性が高いため、最も報酬が高額です。

報酬は給与と各種手当の合計となります。
政策秘書の給与については、2020年4月1日施行の「国会議員の秘書の給与等に関する法律」に規定があります。

在職期間と年齢ごとの級・号給に従って支給額が決まりますが、金額規定には変更があり得ます。

参考までに、2020年4月1日時点では同法別表第一の1級2号給(月額434,640円)以上の給与が支給されると定められています。

参考:参議院

4、政策秘書になるには?

議員秘書のうち、

  • 公設第一秘書
  • 公設第二秘書
  • 私設秘書

は特別な資格を必要としませんが、「政策秘書」になるには資格・条件があります。

具体的には、

  • 国家資格の政策担当秘書試験に合格する
  • 選考採用査定認定を受ける

という2つの方法があります。

(1)政策担当秘書試験

1つ目の方法は、政策担当秘書に必要な知識や能力について判定を行う国家試験に合格することです。

原則として年1回の実施となります。
試験には受験要件が設けられており、

  • 年齢は65歳未満
  • 4年制大学を卒業または卒業見込みであること、または大卒と同等の学力があると認められること

という2つの要件を満たす必要があります。

試験の難易度は国家公務員I種試験と同等以上のレベルとされています。
なんと合格率は1割を切る相当難しいものとなっています。

なお、試験に合格しても、あくまで政策秘書に採用されるための権利を得るのみで、スタートラインに立っただけの状態です。

実際に政策秘書として働くためには、国会議員に採用されなくてはなりません。

参考:参議院

(2)選考採用査定認定

上記の試験を受けなくとも、以下の基準を満たせば認定を受けることができます。

  • 高度の試験合格者(司法修習生・公認会計士・医師・歯科医師・国家公務員・外交官の資格者)
  • 税理士、司法書士の資格を持ち、10年以上勤めた人
  • 博士号取得者
  • 国家公務員、地方公務員または会社、労働組合その他の団体の職員として通算10年以上在職し、かつ専門分野における業績が顕著だと客観的に認められる著書などがある人
  • 議員秘書(公設秘書)として10年以上在職、かつ、規定の政策担当秘書研修を受講し修了証書の交付を受けている人

その他にも細かい条件がありますが、総じてかなりレベルの高い基準を満たさなければならないと言えます。

参考:平成30年度参議院国会議員政策担当秘書選考採用審査認定の実施について

5、政策秘書になる上での注意点

政策秘書
ここまで政策秘書の仕事の重要性やなり方についてご紹介してきましたが、最後に注意点についても解説します。

政策秘書は公設秘書であり、国が給与を支払っています。
国家公務員という身分上、同時に他の職務に従事したり、事業を営んだりすることはできません。

担当議員が退職したり落選したりした場合は、政策秘書も共に職を失うことになりますが、保険をかけるように自由に兼職することはできないのです。

議員が秘書業務に支障がないと認めて許可した場合のみ兼職が可能ですが、兼職先や報酬額については議長に届け出て公開しなければなりません。

参考:参議院

まとめ

今回は政策秘書について詳しくご紹介しました。
議員秘書の中でも最も重要なポストだと実感いただけたのではないでしょうか。

政策秘書は、国会議員の手となり足となってサポートするために、日々奔走しています。
日頃の勉強の積み重ねも含めた高度な専門職であることが理解できると思います。

議員秘書の中では最高額の給与を得ているものの、並大抵の努力で務まる仕事ではないと言えるのではないでしょうか。

本記事が少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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