政治ドットコム外交・国防ハーグ条約とは?増加する連れ去りから子供の利益を守る条約について

ハーグ条約とは?増加する連れ去りから子供の利益を守る条約について

投稿日2021.4.1
最終更新日2021.03.29
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

ハーグ条約とは、1980年にオランダのハーグ国際私法会議で採択された「国際的な子供の奪取についての民事上の側面に関する条約」です。

増加する国際結婚・離婚に伴い、子の連れ去りという問題が増えています。
ハーグ条約は、国境を越えて子供が連れ去られた場合に「子供の迅速な返還」を実現することを目的として定められました。

今回はハーグ条約について、以下のとおりご紹介します。 

  • ハーグ条約の概要と仕組み
  • 日本にとってのハーグ条約の意味
  • ハーグ条約の課題

本記事がお役に立てば幸いです。

1、ハーグ条約とは

ハーグ条約
ハーグ条約は16歳未満の子供に適用される条約で、子供の利益を最優先にすることを基本理念としています。

 具体的には、国際離婚を想定し、一方の親が違法な連れ去りをした場合に、

  • 子供を元の居住国に返還すること
  • 親子の面会交流の機会を確保すること

を目的としています。 

国境を越えて連れ去られた子供にとって、相手がどんなに大切な親であっても、それまでの生活基盤が親の都合で突然急変することに違いはありません。

片方の親とはもちろん友人との関係も途絶えてしまい、言語も文化も違う環境に置かれれば、子供にとって良くない影響を与える可能性があります。

ハーグ条約はそのような悪影響から子を守るものなのです。

参考:外務省 

2、ハーグ条約が定められた背景

世界的に人の移動が活発になった現代社会では、国際結婚が増加しています。

1970年では、日本人の国際結婚は年間5,000件程度でした。
その後、1980年代後半から急増し、2005年には年間4万件を超えました。

このような事情に伴い、国際離婚も増加しました。
国際離婚におけるトラブルでは、1970年代頃から、

  • 一方の親による「子の連れ去り」
  • 監護権をめぐる国際裁判管轄の問題

が発生し、これらの問題を解決する必要性が高まりました。
そこで、1980年にハーグ条約が作成されたのです。

参考:外務省 

3、ハーグ条約の仕組み

ハーグ条約
ハーグ条約の仕組みである

  • 子供の元居住国への返還
  • 親子の面会交流の提供

についてご紹介します。

(1)子供を元の居住国へと返還する

そもそも、監護権の侵害を伴う「子の連れ去り」は違法です。

ハーグ条約では、

  • 子の連れ去りは、子の利益に反する
  • どちらの親が監護権を持つべきかの判断は、子の元居住国で行われるべきである

という考えに基づき、原則として「子供を元の居住国へ返還すること」を義務付けています。

より具体的には、

  • 「監護権の侵害」という違法な状態を現状回復させる
  • その後、子供がそれまで生活を送っていた国の司法の場で判断を行う

という内容です。

(2)親子の面会交流の機会を提供する

面会交流の機会を提供することも、重要な仕組みです。
そもそも、日本人同士の離婚においても

  • 「片方の親に会わせたくない」
  • 「養育費の未払いが続いているから会わせたくない」

など、面会交流には問題が多い傾向にあります。
だからこそ、国境を越える面会交流についても、その機会をしっかりと確保することが重要なのです。

また面会交流の機会を確保することは、不法な連れ去りの防止につながると考えられています。
ハーグ条約では、親子が面会交流できる機会を得られるように、締約国が支援をすることを定めています。

参考:外務省 

4、日本にとってのハーグ条約の意義

 ハーグ条約が作成されたのは1980年ですが、日本は長年未加盟でした。
日本では2011年の1月に具体的な議論が始まり、締結に至ったのは2014年1月です。

ハーグ条約を締結する前は、日本から海外に子供を連れ去られてしまった場合、自力で子供の居場所を探さなければなりませんでした。

さらに日本で裁判をすることはできず、外国の裁判所に訴えを提起する必要があり

  • 言葉も文化も違う
  • 距離も遠い
  • お金がかかる

など、子供を取り返すためには多くのハードルがあったのです。
また、子供と一時帰国をしようとしても、外国の裁判所において「一時帰国許可が降りない」という問題も発生していました。

ハーグ条約の締結後は、子の連れ去りなどの違法行為が発生した際の、子を返還するためのルールが明確となりました。 

参考:外務省

5、ハーグ条約の課題

ハーグ条約
最後に、ハーグ条約における今後の課題である

  • 広報の強化
  • アジアにおける体制の強化

についてご紹介します。

(1)広報の強化

違法な連れ去りを防止するためにも、情報発信による広報を強化することで、国内外でのハーグ条約の認知度を上げることが求められています。

例えば在留邦人向けには、

  • アメリカ
  • イギリス
  • フランス
  • ドイツ
  • オーストラリア

ほか様々な国で、随時セミナーが行われています。
国内活動についても、2019年の6月に「ハーグ条約締結5周年記念シンポジウム」が東京で開催されています。

子供の利益を守るためにも、親となる人たちやその周囲が正しい情報を持つことが重要だと言えるでしょう。 

(2)アジアにおける体制の強化

2019年10月時点で、101か国がハーグ条約を締結していますが、101という数字は、まだ多くの国が未加盟であることを意味しています。

特に日本人との国際結婚数が多いアジア諸国において、ハーグ条約への加盟が求められているのです。
アジア諸国の加盟を促進する取り組みとしては、

  • アジア地域の政府関係者向けセミナー(2016年、2017年:東京にて)
  • 在京外交団向けセミナー(2019年:東京にて)

などが開催されており、日本が締結した際の経験や知見の共有を行っています。
アジアにおける体制の強化は、特に国際結婚をする日本人にとって重要なものです。

参考:外務省

まとめ

今回はハーグ条約について詳しくご紹介しました。

ハーグ条約の概要に加えて、「日本にとってのハーグ条約の意味」や「ハーグ条約の課題」についてもおわかりいただけたのではないでしょうか。

子供の利益を守るためにも、広報活動の強化を望みたいですね。
本記事が少しでもあなたのお役に立てば幸いです。