貿易とは「他国の取引相手と、商品やサービスの売買を行うこと」です。
しかし貿易取引の流れや貿易摩擦などの事象について、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は貿易について、以下のとおりご紹介します。
- 貿易の概要
- 「貿易」と「国内の取引」は何が違うのか
- 貿易摩擦について
- JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ)について
本記事がお役に立てば幸いです。
1、貿易とは
貿易とは「他国の取引相手と、商品やサービスなどの売買を行うこと」です。
国内だけではなく「他国との関係において成立する」という点に、大きな特徴があります。
具体的には、
- 他国に対して商品を販売する(送り出す)ことを輸出
- 他国から商品を購入する(持ち込む)ことを輸入
と言います。
以下で詳しく見ていきましょう。
(1)輸出
輸出とは「他国に対して商品を販売する(送り出す)こと」です。
輸出によって、海外市場にアプローチすることができます。
国内の何倍もの市場が取引相手となるため、販売先を拡大できる、という大きなメリットがあるでしょう。
ただし、メリットだけではなく難しい点もあります。
貿易は国をまたぐ取引ですから、取引相手国の現地ビジネスパートナーの獲得・連携や、法規制などの確認が必須です。
(2)輸入
一方で、輸入は「他国から商品を購入する(持ち込む)こと」です。
輸入によるメリットは、国内に存在しない商品も扱うことができる点です。
国内に存在しない新しい商品を市場に持ち込めば、新たなビジネスを開拓できる可能性があります。
また、国内にある商品でも、輸入によって安く仕入れできる場合もあります。
(3)関税
「輸入によって商品を安く仕入れできる可能性がある」とご紹介しました。
しかし、ここには一つの大きな危険性があります。
外国産の安い商品が大量に国内に入って来た場合、自国の商品の売り上げが減少する可能性があります。
その点を考慮し、国内の農家やメーカーを保護することを目的として、導入されているのが「関税」です。
関税とは「輸入品(他の国から購入する商品)に掛けられる税金」です。
輸入品に対して関税がかけられると、関税の分だけ仕入れる値段が高くなります。
参考:日本貿易輸出機構
2、「貿易」と「国内の取引」は何が違うのか
「関税」という制度があることはわかったものの、「貿易」と「国内の取引」では、具体的にどのような違いや難しさがあるのでしょうか。
「貿易」と「国内の取引」の主な違いである
- 取引相手
- 通貨
- 輸送距離
- 法制度
について、以下で詳しく見ていきましょう。
(1)取引相手が外国になる
最も大きな違いは、国内ではなく他の国との取引となる点です。
国が違えば言葉や文化が違います。
正確に意思疎通をするためには、相手国の言語はもちろん、貿易に関する制度についてよく知っておく必要があります。
リスク回避のためには、注意深く確認しながら交渉を進め、細部まで練り上げた契約書を作成しなければなりません。
また、特に先進国以外との取引においては、急な政治体制の変更や内戦が起こり得ます。
突然取引や為替送金が停止となる可能性もあるのです。
事前の市場調査の段階で、国際情勢についても詳細な調査が必要になります。
(2)通貨の違い
貿易を行う場合、取引相手とは使用されている通貨が異なります。
原則として為替変動のリスクは避けられません。
上記のリスク回避のためには、取引通貨を自国通貨とするなど、いくつかの方法があります。
綿密な準備と交渉が必要となるでしょう。
(3)輸送距離の長さ
国内取引に比べると圧倒的に運送距離が長いため、貿易取引は運送に時間がかかります。
配送時間が伸びる分、運送上の事故によって貨物への損害が発生するリスクは高まります。
運送上のリスク回避のためには、
- 保険を付与して損害をカバーする
- 安全な輸送ルートを確保する
などの対策が必要です。
(4)法制度の違い
国が違えば法制度も違います。
輸出と輸入について、最低でも以下の内容は全て確認する必要があるかもしれません。
- 輸出の場合:自国の輸出規制、相手国の輸入規制・取引規制
- 輸入の場合:相手国の輸出規制・販売規制、自国の輸入規制
上記の確認を怠ると、場合によっては、
- 商品を、そもそも通関(輸出入の許可を得て税関を通過すること)できない
- 輸入した商品を、そもそも流通させられない
といった可能性もあります。
参考:日本貿易輸出機構
3、貿易取引の具体的な流れ
貿易取引の具体的な流れについて
- 商品取引先の選定
- 交渉及び契約の締結
- 輸送手段の確保
- 輸送
- 決済
の5段階に分けてご紹介します。
(1)商品取引先の選定
取り扱う商品については、
- 輸入
- 輸出
のそれぞれで選定における検討事項が異なります。
①輸入の場合
国内の消費動向を見ながら検討した上で、購入商品と取引先の選定を行います。
輸入したい商品については、
- 各種法令が障害とならないか
- 関税を加味しても勝機があるのか
を調査しておくべきでしょう。
あわせて、取引相手の信用をどう判断するかについても調査・議論を重ねておく必要があります。
この点は輸出の場合も同様です。
②輸出の場合
海外の消費動向を見ながら海外向けのPRを行い、売り込み先を選定します。
輸出したい商品については、
- 取引相手国に通関できるものか(許可・申請の対象品目か)
- 法定検査の必要性
を調査しておくべきでしょう。
(2)交渉及び契約の締結
取引交渉の段階に入ったら、商品価格や決済通貨に限らず、以下の様々な売買の諸条件を詰めていきます。
- 決済方法と時期
- 品質と数量
- 輸送方法と引渡時期
- 梱包条件
- 検査方法と時期
- アフターサービスの範囲
あわせて
- PL(製造物責任)の扱い
- トラブル時の対応
など、輸送距離が長くなる貿易ならではのリスクも考慮し、条件を取り決めておくべきでしょう。
そして交渉内容が合意に至ったら、契約書を作成し、契約締結に進みます。
(3)輸送手段を確保
海貨(通関)業者を通じて、船腹予約など輸送手段を確保します。
また、輸送中の事故などに備えた保険付与を行います。
準備が整ったら通関のための保税地域へ貨物を搬入します。
(4)輸送
輸入する側・輸出する側、のどちらが実際の輸送手続きをするのかは、契約条件によって異なります。
ただ一般的には、輸出する側が、輸出通関や積込の手続きを行う場合が多い傾向にあります。
この場合、国境輸送の後、輸入通関手続きについては輸入する側が行います。
(5)決済
最後に、重要な決済の段階へ移行します。
一般的には、輸入する側が代金を支払い、貨物を引き取った後に決済となりますが、契約条件によって決済のタイミングは前後します。
決済のタイミングについても明確な確認が必要です。
参考:日本貿易輸出機構
4、貿易摩擦とは
貿易摩擦とは、貿易をしている国家間で発生する、輸出入の急速な変化によって生じる問題です。
例えばある特定の国が、良い物だからと他国に輸出し続けてしまうと、輸出国の産業に大打撃を与えてしまう可能性があります。
特定の国の産業に大きな影響があることで、倒産・失業を引き起こし、引いては経済に悪影響を及ぼす可能性も出てくるのです。
以下では貿易摩擦の具体的な事例である
- 日米貿易摩擦
- 米中貿易摩擦
について詳しくご紹介します。
(1)日米貿易摩擦
日米貿易摩擦とは、日本とアメリカの間で生じる貿易摩擦です。
日本から見るとアメリカは輸出量第1位(2018年時点)のお得意先なので、日本としてはアメリカに輸出していきたい状況です。
しかしアメリカから見ると、日本との関係は貿易赤字の状態でした。
アメリカから日本への輸出量は少ないのに、日本からアメリカへの輸出量が多いので、アメリカに日本製品がたくさん入ってきています。
最たる例が自動車です。
アメリカでの日本車の普及によって、アメリカの自動車業界には大きな影響がありました。
日米の貿易赤字の約80%は自動車と関連部品なので、アメリカはその点を是正しようとしています。
一方で、農産物については日本が国内産業を守るために関税を高くしている影響で、アメリカの日本への輸出が進んでいません。
このように両国の考え方の差異や、両国以外も含めた国際的な取り決めなど、様々な事象を加味すると、貿易摩擦の是正は容易ではないのが実情です。
日米間の貿易交渉は幾度となく重ねられており、2020年の1月には日米貿易協定が発行されました。
(2)米中貿易摩擦
米中貿易摩擦とは、アメリカと中国の間で生じる貿易摩擦です。
米中貿易摩擦については、2018年にアメリカでトランプ氏が大統領に就任してから、問題が表面化しました。
長年、中国は安価な大量生産を得意としたビジネスを拡大してきました。
しかし、トランプ元大統領は「中国で作る鉄鋼製品」を問題視しました。
そうして2018年3月、その鉄に「アメリカは関税をかける」と主張し、中国製品に対し25%の関税をかける大統領令にサインをしたのです。
この関税によって「中国から買うよりアメリカの工場で作った方が良い」と考える人が増えれば、自国経済へ良い影響があると考えたのです。
さらに鉄以外にも、関税をかける対象商品を増やしていきました。
2018年7月以降、半導体などを含め約1,000品目以上、合わせて500億ドル分、中国製品に関税をかけることにしたのです。
中国もまた、同様にアメリカ製品に関税をかけることで対抗しました。
以降、米中間の交渉が続いていますが、未だ解決には至っていません。
大国である米中間の関係性は、日本経済にも大きな影響を及ぼすため、貿易を行う企業にとっては注視するべき動向と言えるでしょう。
参考:nhk
貿易摩擦とは?問題点・原因・具体的な過去の事例を簡単解説
5、JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ)とは
JETRO(日本貿易振興機構)とは、貿易をサポートする独立行政法人です。
70か所を超える海外事務所と、約50の国内拠点から成る国内外のネットワークを保持しています。
前身の日本貿易振興会を引き継ぎ、2003年10月に日本貿易振興機構法に基づいて設立されました。
日本の経済・社会の更なる発展に貢献することを目指して
- 貿易や投資の促進
- 開発途上国の研究
などをしています。
具体的な活動は以下のとおりです。
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対日直接投資やスタートアップの海外展開支援等を通じ、イノベーションの創出を支援
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日本の農林水産物・食品輸出を支援
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中堅、中小企業など我が国企業の海外展開を支援
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調査や研究を通じ、我が国企業の活動や通商政策等に貢献
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グローバル時代の地方創生に貢献
まとめ
今回は貿易について詳しくご紹介しました。
貿易の概要に加えて、貿易摩擦やJETROについてもおわかりいただけたのではないでしょうか。
また、貿易は国内の取引とは違ったプロセスで進み、必要な書類なども異なります。
日米貿易摩擦、米中貿易摩擦など、日本で暮らす私たちに関係がある問題については、きちんと理解しておきたいものですね。
本記事が少しでもあなたのお役に立てば幸いです。