日本維新の会は、「身を切る改革」として企業団体献金の禁止や、調査研究広報滞在費の公開を行うほか、「政策提言型政党」として「日本大改革プラン」「維新八策2022」を発表し、さまざまな政策や法案を是々非々で実現しています。
日本維新の会の政務調査会長として中核的な役割を果たしている音喜多駿議員に、党のコアバリューや展望、そして次期衆議院議員選挙で東京1区からの出馬を表明した背景などを聞きました。
(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 中井澤卓哉)
音喜多 駿 氏
1983年生まれ。参議院議員(1期)。
会社員を経て、2013年に東京都議会議員選挙に初当選し、2期務める。
2019年、日本維新の会から参議院選挙に出馬し、初当選。
趣味はストリートダンス、中国武術、マラソン。
(1)東日本大震災を経て「今すぐにやらなければ」と議員に
ー2013年に都議選に初当選し、政治活動10年目になります。なぜ政治家を志したのでしょうか?
2011年の東日本大震災が大きなきっかけです。当時、50〜60回ほど被災地に入ってボランティア活動を行いましたが、本当に政治も行政も混乱しており、「この国終わるんじゃないか」という感覚がありました。
元々、政治家になりたいという気持ちはあったのですが、政治家になるために必要と言われている「地盤・看板・鞄」もなく、「お金ができたら、ビジネスで成功したらやろう」くらいで踏み切れずにいました。
しかし、東日本大震災で多くの方が亡くなり、さらにいえば、自分と同じ年代の方も亡くなった、という現実を目の前にして、いつかではなく、今行動しなければ、という気持ちに変わりました。一番近い選挙が2013年の都議会議員選挙だったため、そこに立候補しました。
ー都議会議員を経て、2019年には維新の会から参議院選挙に立候補し、国政に進出しました。どのような背景があったのでしょうか?
実は参議院選挙に出たこと自体は前向きな理由ではなくて、2019年の東京都北区長選挙で落選してしまったのが直接のきっかけです。いずれ国会議員になることは考えていましたが、総理になるために衆議院選挙に出るものと思っていましたから、参議院選挙に出るということは考えたこともなかったです。
2019年4月に東京都北区長選挙に出馬し、当時84歳の現職区長と事実上の一騎打ちをして、1万票差で負けてしまいました。落選後、これからどうしようかと途方に暮れていたところに、日本維新の会から、7月の参議院選挙に出ないかとお声がけいただきました。
元々、維新の会の「地方から国を変えていく」というスタンスや改革を推し進めていくという姿勢にシンパシーを感じていたので、都議会で一緒に会派を組んでいた維新の柳ヶ瀬裕文都議(当時)に熱心にお声がけいただいたことで、入党を決意して、結果として当選させていただきました。
ーご自身はずっと東京にいた中で、日本維新の会から声がかかった状況だったと思いますが、当時は日本維新の会に対してどのようなイメージをもっていましたか?
2019年当時は、まだ「大阪の政党」というイメージが強かったです。私が入党して選挙に出た際、「維新の会です」と話し始めると、周りの方は「維新ってまだあったんだ」「橋下徹さんが引退してなくなったと思っていた」という反応でした。
私も、元々は大阪と東京は別、という意識がありました。東京には東京の政党が必要と考えて、自分で地域政党を作った時期もあります。今は、地方から日本全体を変えていく、そのために、維新の会を全国政党にする、という思いです。
ー維新の会を東京に展開していく中で、地域性の違いを感じましたか?
確かに、大阪と東京では状況が全く違います。大阪は、財政危機に瀕する中で、公務員制度改革、天下り団体の整理などを行って来ましたが、東京は財政が豊かです。
しかし、大阪で行政改革を行う中で、他の地域にも通じる普遍的なこともあることがわかりました。それは、行政の無駄をなくせること、民間にできることは民間に任せるべきことなどです。そうして生み出された財源を、将来世代への徹底投資へと回していく、これは大阪、東京だけではなく、日本全国どこの地域にも適用できることだと思います。それを伝えていくことが私の役割だと考えています。
ー全国で展開していく上で、課題だと感じていることを教えてください
最大の課題は、やはり大阪の地域政党というイメージからの脱却です。日本維新の会は、国政の主要政党の中で唯一、東京ではなく大阪に本部がありますが、これは、「地方から国を変えていく」、という決意の表れです。「東京に本部を移したらどうか」という声もありますが、これまで地方政府を運営してきたという実績をしっかりと国民の皆様に伝えて、その上で多くの支持を得た時に国を変えられるんじゃないかと思っています。
(2)日本維新の会のコアバリューとは
ー2021年には日本維新の会の政調会長に就任し、最近は維新の会の党員向けに「マニフェストブートキャンプ」を行うなど、様々な活動をされています
維新の会も結党から10年経ち、党員でも維新の会の政策を全部把握している人が少ないと思ったので、すべてのマニフェストを解説しようと思い立ちました。だからまず内部で政策をきちんと共有することで、維新とは何か、どんなことをやってきて、どこを目指しているのか、ということを再整理しました。
ー次の臨時国会(2023年10月20日開会)がもうすぐ始まりますが、維新の会の重視する論点について教えてください
1点目は少子化対策、2点目は財源論・歳出改革です。
まず、少子化対策については、岸田総理も「異次元の少子化対策」を掲げていますが、まだ踏み込みが甘いと感じています。我々は大阪で教育の無償化をやってきましたが、本気で少子化対策に取り組むなら所得制限なしの教育無償化に取り組むべきです。
2点目は財源論・歳出改革についてです。今、少子化対策や防衛費の財源を、社会保険料や増税でまかなおうとしていますが、国民に新たな負担を押し付けるのはいかがなものかと思います。一般会計の予算が114兆円もある中で、歳出改革をきちんとやれば数兆円規模の財源は確保できるのではないかと思います。実際、大阪では歳出改革によって、増税や借金をすることなく、こども関係予算を10年間で9倍にした実績があります。
ー歳出改革といえば、日本維新の会の「身を切る改革」が有名です。
「身を切る改革」は、日本維新の会のコアバリューの一つです。日本維新の会は、「身を切る改革」で大阪で議席を約3割減らしました。議席を減らすのは、普通はありえないことです。
まず自分達が変わる姿勢を見せなければ、周りの人はついてきてくれません。誰でも大きな変化を嫌います。何も変えない方が楽だし、問題は先送りにしてしまえばいいや、と思うのが自然な姿です。でも、今はそれでいいかもしれませんが、こどもたちは絶対に損をするということが分かっているんです。日本維新の会は抜本改革政党ですから、このままではいけない、変えましょうよ、と訴えていきます。
ー臨時国会の開会に先立って、岸田総理が経済対策の5つの柱を打ち出しましたが、どのように受け止めていますか
①物価高への対応、②持続的な賃上げと地方の成長、③国内投資の推進、④人口減少対策、⑤国土強靱化など国民の安心・安全の確保、とあるなかで、①については理解できる部分です。具体論は不明ながら、税収が上がっているので還元する、税や社会保険の負担を減らしていくという方向性を打ち出したのは評価できます。
しかし、②から⑤については、本当に補正予算でやるべきことなのか大いに疑問です。少子化や国土強靭化などは何年もかけて取り組む課題であり、場当たり的に緊急対策として盛り込むのではなく、当初予算でやるべきことです。結局、パフォーマンスのための緊急対策でしかなく、財政規律を歪めていると思います。
(3)日本維新の会の今後の展望
ー日本維新の会では2023年8月に「リバースメンター制度」を導入しましたが、狙いについて教えてください。
私は、若い世代の声を聞くことが重要だと考えています。
日本維新の会は、他の政党に比べると比較的若い議員が多いですが、やはり20代・30代の議員は少ないのが現状です。私も40歳になり、若者の意見を色々な形で集める仕組みが必要だと感じました。
特に日本維新の会は、特定の支持団体がいない中で、民意をきちんと掴み続ける必要があります。普通の人、普通の若者がどう感じているのか、「普通の感覚」をしっかり持って政策に反映していく必要があると考えています。
(音喜多議員とリバースメンターたち2023年8月撮影)
ーリバースメンター制度について、現時点での所感を教えてください
参加されているメンターの方々はやる気があり、日本維新の会の400の政策全て読み込んだ上で活発な意見を出していただいています。10月に中間報告、12月末に最終提言が出るので、色々な意見交換ができればと思います。
ー若者世代に訴えていきたい日本維新の会のバリューとは何でしょうか
「現実路線」、「有言実行」です。
政府のやることには何でも反対するのではなく、いいものには賛成し、おかしいものには「もっとこうすればいいんじゃない」と提案し、実行する。
これまでの野党が行ってきた、ずっと審議拒否をしたり、プラカードを抱えて突撃したり、というパフォーマンスは、一部の支援者には受けるのでしょうけど、多くの若者は引いていると思います。
日本維新の会は、国会審議のスケジュールを予め作り、建設的な議論を進めることを提案しています。国会で政治闘争ではなく、ちゃんと議論するという姿を見せていく。これは、地方政府で行政運営の経験があり、なおかつしがらみのないベンチャー政党である維新の会だからこそできることだと思います。
ー次期衆議院総選挙では、野党第一党を目指すという目標を掲げています。野党第一党になった後の展望があれば教えてください。
まずは先ほど申し上げた国会運営の見直しを行います。国会で建設的な議論を積み上げ、教育の無償化などの政策が前に進み、日本維新の会への期待が高まれば、行く行くは政権交代が視野に入ってくるかもしれません。
(4)衆院選出馬、40代の総理大臣を目指す
ー現在、音喜多議員は参議院議員ですが、次の衆議院総選挙で東京1区から出馬すると表明されました。どのような狙いがあるのでしょうか?
衆議院に力を持たないと、なかなか改革を前に進めることができないと思ったためです。
衆議院が国会の主戦場であるということは、否定できない事実です。参議院が重要ではないとは言いませんが、重要法案や予算の審議は衆議院から始まるなど、やはり衆議院の優越があります。また、これまで内閣総理大臣は衆議院議員からしか出ていないし、閣僚の数も衆議院議員が圧倒的に多いのが実情です。
このため、維新の会としては参議院の議席が多少減っても、衆議院にパワーを集めるという判断をしました。
ー東京1区(千代田区、新宿区)から音喜多議員が出馬することで、有権者にどのようなメッセージを伝えたいのでしょうか?
私は北区出身で、千代田区、新宿区に地盤があるわけでなく、厳しい戦いになると感じています。一方で、東京1区は「華の1区」とも呼ばれ、伝統的に注目が集まる選挙区です。野党第一党を目指す、つまり議席を増やすためには、厳しい選挙区・注目区で勝つことが重要です。その中で、ここで勝てるのは私しかいないだろう、という思いで今回手を挙げさせていただきました。
ー音喜多議員が政治家として成し遂げたいことはなんでしょうか?
「選択肢の多い、豊かな社会をつくる」ことです。
私は、やりたいときにやりたいチャレンジができる、選択肢が多い社会こそが本当に豊かな社会だと考えています。こどもの教育無償化に力を入れているのも、お金がなくても学びたいことを学べるようにしたい、こどもの選択肢を増やしたいからです。
その一つとして、例えば選択肢の多い雇用環境づくり・労働市場改革に取り組みたいと考えています。私は、終身雇用と年功序列の慣習が、女性や若者の活躍を妨げる最大の要因だと思っています。妊娠・出産・育児などで人材としての流動性が高く、年功が積みづらい女性は日本的雇用の中では活躍することが困難です。また、一度正社員になれないとずっと非正規のまま、という環境では、チャレンジしたいと思っても踏み出せません。正社員を辞めて起業して、ダメだったらまた正社員になれる、また、妊娠・出産など様々な事情で一度仕事を辞めても、また戻ってきてちゃんと働いて出世できる、そういう雇用環境をこの10年間でつくりたいです。
そういう志を持って、私は40代で総理大臣になることを目指しています。今年40歳になったので、あと9年でやり遂げたいと考えています。
ー最後になりますが、40代の総理大臣に向けた意気込みをお願いします
私は、リスクを取って、挑戦し続ければ道は開く、と信じています。「地盤、看板、鞄」のない私がここまでこられたのは、リスクをとって挑戦し続けたからです。
先日、ある人から「小泉進次郎はリスクを避け続ければ総理になる。音喜多駿はリスクを取り続ければ総理になれる」と言われました。私には知名度もお金もなく世襲議員でもないですが、そういう人間が社会や政治を変えられるということを証明したいと思います。
挑戦するということにポジティブで、失敗することがあっても再チャレンジできる、そういう社会を目指します。私自身も挑戦して上を目指して行きますので、ぜひ応援よろしくお願いします。