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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー加藤鮎子 こども政策担当大臣に聞く!社会全体で「こどもまんなか」を実現するための政策

加藤鮎子 こども政策担当大臣に聞く!社会全体で「こどもまんなか」を実現するための政策

投稿日2024.5.24
最終更新日2024.05.24

2024年2月27日に公表された2023年の出生数(速報値)は75万8631人と過去最少となりました。政府は2030年を少子化対策の「ラストチャンス」と位置付け、2023年4月1日に発足したこども家庭庁を中心に対策が続けられています。一方、少子化対策のための財源を確保する「支援金制度」をめぐって国民的な議論が巻き起こっています。

今回は2023年9月にこども政策担当大臣に就任した加藤鮎子大臣に、社会全体で「こどもまんなか社会」を実現するために伝えたいメッセージをお伺いしました。(文責:株式会社PoliPoli 中井澤卓哉)(取材日:2024年4月22日)

加藤鮎子議員インタビュー

加藤鮎子(かとうあゆこ)議員
1979年山形県鶴岡市生まれ。慶應義塾大学卒業。
コンサルティング会社勤務などを経て、2014年12月初当選。現在3期目。
環境大臣政務官・内閣府大臣政務官、国土交通大臣政務官を歴任。
2023年9月より内閣府特命担当大臣
(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画、孤独・孤立対策)

(1)子育て当事者の想像力を持って政策を進めたい

加藤鮎子議員インタビュー
ー加藤大臣がこども政策に取り組む意気込みを教えてください。

2023年9月に大臣に就任したことは私にとって青天の霹靂でした。任命いただいたとき、岸田総理から「自分の経験も活かしながら頑張ってほしい」とのお言葉があり、子育てを経験している当事者としての共感力や想像力を働かせながら職務を果たしたいと考えています。

ただ、私は数多くの子育て当事者の一人にしか過ぎません。自分の経験に縛られすぎるのもよくない。データや定量的な情報に基づいた客観的な視点を持つことも意識しながら政策づくりにあたっていきたいと考えています。

昨年末に「こども大綱」が閣議決定されました。こども大綱は「こどもまんなか社会」を理念に掲げるなど、政府のこども政策の基本的な方針を定めるものです。その中で、こども政策を進める上での基本的な方針を6つ定めていますが、その中でも私が強調したいのは「当事者の声を聴く」ことにあります。

こどもや若者はもちろんのこと、子育てに関わる人たちが、自分たちの意見を表明し社会に参画することができるような環境を作ることこそ、「こどもまんなか」の社会を実現するためには重要です。私自身、できるだけ時間を作り、児童館や養護施設、乳児院に足を運び、こどもたちや現場の方々と直接話をすることを意識しています。

ー「こども未来戦略」が2023年12月に閣議決定されました。こどもを産み育てやすい社会とはどのような社会なのか。加藤大臣のお考えを聞かせてください。

「こども未来戦略」では、こども・子育て政策を抜本的に強化していく上で主に次の3つが課題であると認識をしています。一つ目は若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けないこと。二つ目は子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境があること。三つ目は子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感が存在することです。

それぞれの課題を解決するための施策には多種多様なものを想定しなければなりません。厳密に優先順位をつけることは難しい。ただ、その中でもまずは子育て世帯の可処分所得をしっかりとサポートすること、これは重要です。岸田内閣の賃上げ政策とも整合する部分ですし、政府全体として進めていくべきポイントです。

併せて、「働き方改革」を行い、女性に偏った子育てへの負担感を取り除いていかなければならないとも考えています。男性の長時間労働が固定化し、男女の固定的役割分担意識が残っているのが日本です。家事育児に男性が参画できるような時間を確保するための働き方改革が必要です。そのためには経営者の方々の理解も必要ですよね。

ただ、それは決して「こどもを産んで育てよう」という価値観の押し付けであってはなりません。社会全体でこども・子育て世帯を支え、こどもを育てたいという希望をかなえられる環境づくりが大切です。そのためには、社会全体の意識変革も必要です。

ー社会全体の意識変革のために、一人一人に求められるアクションとはどのようなものでしょうか。

日常の何気ない一つ一つの場面で、こどもが中心の社会なんだと実感できるようなアクションが必要だと思います。こども家庭庁としては、すべての人がそのようなアクションを取りやすくするような環境整備をすることが責務です。こども・子育て世代が抱える悩みや苦労に、できるだけ多くの人が想像力をめぐらせられるような環境づくりを進めていきます。

(2)何のための「子ども・子育て支援金制度」なのかを丁寧に伝えていきたい

加藤鮎子議員インタビュー

ー最近では子育て支援金の財源をめぐってさまざまな声が上がっています。加速化プランの財源確保の手段として議論されている「子ども・子育て支援金制度」について改めて教えてください。

「こども未来戦略」の中で定められた「加速化プラン」は、児童手当の抜本的拡充や出産等の経済的負担の軽減、いわゆる「年収の壁(106万円/130万円)」への対応などの項目について、具体的な施策を定めています。その中で、こども・子育て対策を強化していくための財源確保の手段についても記載しています。

「加速化プラン」を実行していくためには3.6兆円規模の歳出を想定していますが、そのための内訳として、すでにある予算の最大限の活用により1.5兆円。医療・介護等の歳出改革の徹底によって、2.1兆円を確保することにしています。その2.1兆円の内訳は公費が1.1兆円、社会保険料財源が1.0兆円を想定しています。

この社会保険料を原資として、「加速化プラン」の財源を確保するのが、新たに創設される「子ども・子育て支援金制度」(以後、「支援金制度」)です。高齢化により社会保障経費が伸びていくことは避けられません。ただ、若い世代の所得を上げようとする「加速化プラン」の財源のために若い世代の負担増になってはならないので、支援金制度を構築するにあたっては、法文の中で、まずは社会保障の歳出改革を行って財源を確保するのだということを、その規模や時期も含めて明記しています。医療・介護分野の歳出改革の徹底をお約束し、その負担軽減の範囲内で支援金を拠出いただくことをお願いしています。

ー「支援金制度」を社会保険料という既存のスキームを活用して創設しようとする意図はなんでしょうか。

こどもや子育て世代を、社会全体で支えていくんだという強い意思を示したいからです。特定の世代や立場の人だけではなく、企業にも高齢者のみなさんにも拠出をお願いする。財源の作りそれ自体に、みんなでこども・子育て世代を支えていくメッセージが含まれています。

そのように、何のための「支援金制度」なのかということについて、繰り返し丁寧に伝えていく必要があると思います。こども・子育て世代に対する支援を拡充するための制度であることをご理解いただけるような説明を尽くしたいです。「加速化プラン」が完了した時、3.6兆円の財源を確保することにしています。そのうちの1.7兆円は子育て世代を含む若者世代の経済的支援の強化に使われる見込みになっています。

加藤鮎子議員インタビュー

(3)こどもに向き合う喜びを最大限感じられる社会を

ーこれからのこども政策にかける意気込みを教えてください。

先ほども申し上げましたが、若い世代の方々に、子育てを社会全体で支えていくんだというメッセージをよりいっそう伝えていかなくてはいけないと思っています。何より若い世代が希望と安心感を持って生活に向かっていくことができるようにすることが大切です。ただそれは社会全体で取り組んでいかなくてはなりません。

こども大綱には「こどもと向き合うことができ、子育てに伴う喜びを実感することができる」社会を目指すことが明記されています。私はこの言葉が本当に素敵だと思っています。こどもと向き合うことが本当に喜ばしいことなんだと、心から思える社会にするために努力を重ねていきたいと思います。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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