
三宅 伸吾 みやけ しんご 議員
1961年、香川県生まれ。
早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社に記者職で入社。
1989年、米ニューヨークのコロンビア大学留学、1995年、東京大学大学院法学政治学研究科を修了、修士論文を出版。2003年、日本経済新聞の編集委員に。2012年、退社。
2013年、参議院議員選挙にて初当選。
趣味はカラオケで十八番は『タイガーマスク』。
昨今の国際情勢の不安定化やエネルギー価格の変動は、日本経済や国民生活に大きな影響を与えています。経済の再生と持続的成長は喫緊の課題で、特にエネルギー政策は今後の日本の競争力を大きく左右する重要な論点です。
今回のインタビューでは、自由民主党の「未来社会を創出する、バッテリー等の基盤産業振興議員連盟」や「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」の事務局長として政策を推進している三宅伸吾参議院議員に、強い経済を構築するための戦略やエネルギー問題について伺いました。
(取材日:2025年5月23日)
(文責:株式会社PoliPoli 大森達郎)
「批判するのは簡単だ」と言われ、政治家に
―日本経済新聞の編集委員から政治家に転身した経緯を教えてください。
2010年の民主党政権で「最小不幸社会の実現」が掲げられたことに、強烈な違和感を抱いたことがきっかけです。確かに、不幸は少ない方がいい。けれど、「みんな不幸だからなるべく不幸を小さくしましょう」というように私には聞こえて、それは政治の目標として違うと思ったんです。
大前提として、私は経済を専門とする新聞社に26年間在籍しておりましたので、さまざまな社会課題を解決するためには強い経済が必要だと考えています。経済成長しなければ国の発展はないという確信があるわけです。前に向かってワクワク感を増やすことが政治であると。経済成長によって税収を確保し、その財源を様々な給付、社会保障などに充てていく。それが政治の役割だと思うんです。
ところが、当時の政権は「最小不幸社会」をつくるために経済に関してさまざまなブレーキをかけていくというんです。私は編集委員として民主党政権の経済政策を批判するコラムを書き続けていました。あるとき、自民党のある議員の方から「三宅君のコラムは面白い。けれど批判するのは実行するより簡単だ」と言われ、ハッとしました。
多くの人が気づかないような視点から物事を考え、その主張を補強するファクトを集めて、読者に「面白い」と思ってもらえる記事を書く。それなりに大変なことをしているつもりだったのですが「実行するよりは簡単だ」と言われると、確かにそうかもしれないと。その言葉が心に刺さり、かなり悩みましたが、政治家になることを決断しました。一度きりの人生、もっとワクワクすることがあるかもしれないと。会社に辞表を出して、自民党の公募に応募。5人の公認候補の中から選ばれ、1年間の政治活動を経て、2013年の参議院議員選挙で初当選しました。
―2013年から12年間、さまざまな活動をされてきたと思います。どのように政策の優先順位を決めているのでしょうか。
政治家として、3つの柱を軸に活動しています。1つ目は自分のバックグラウンドである経済分野。2つ目は外交・安全保障です。政治記者をしていた頃にいろいろと教えていただいた議員の方に、ご挨拶に伺った際にこう言われたんです。
「三宅君の専門の経済はもちろん大切だけれど、経済政策に失敗しても内閣が倒れるだけ。でも外交・安保に失敗したら国が倒れる。国会議員になったら外交・安全保障について勉強した方がいいよ」。この言葉も自分の心に刺さりました。日本経済新聞社で記者・編集委員をしていた頃は経済、投資といった分野の取材はしていたものの、外交・安全保障についてはあまり学んだことがありませんでした。しかし、これはやらなければ、と決意しました。
数年間はこの2つの柱で政治活動に取り組んできたのですが、その後、3つ目の柱として民事司法が登場します。弁護士の先生方とお話しする中で、経済成長は大切だけれど、格差の問題や偶発的な事故、病気、離婚など、自己責任とは言えないような困難を抱えている方々に対してサポートすることの重要性を改めて感じたのです。そこで、「国民とともに民事司法改革を推進する議員連盟」を立ち上げるなど、ぬくもりのある社会をつくっていく取り組みを続けています。
―これまでの活動で、特に印象深い取り組みは何でしょうか。
その「国民とともに民事司法改革を推進する議員連盟」として取り組んだ、ひとり親の困窮を救う政策です。離婚し、元夫や元妻が払うべき養育費を支払わないケースにおいて、養育費を払ってもらうためには、最終的に裁判をする場合があります。そうすると、当然ながら弁護士費用がかかります。中学生以下の子供を育てていて生活が困窮しているひとり親に対しては、日本司法支援センター(法テラス)が弁護士費用を立て替えてくれる制度があるのですが、あくまで立て替えなので、養育費の取り立てに成功したら、そこから一部を弁護士への返済に充てなければいけません。
そもそも経済的に困窮している世帯なわけですから、この返済も大変です。そこで、2024年度から一定の条件を満たした場合、返済を免除する特例をつくりました。当初、法務省はあまり乗り気ではなかったのですが、議員連盟として説得し、新しい法律扶助制度の拡充を実現することができました。非常にやりがいのある政策で、政治家になってよかったと思いましたね。
ペロブスカイト型太陽電池の普及に注力
―最近は、再生可能エネルギー政策に注力されています。そもそも日本が抱えているエネルギーの課題について教えていただけますか。
最大の課題は、火力発電に依存していることです。火力発電の燃料は海外に依存していますし、火力発電は世界が目指していく脱炭素社会と相容れません。脱炭素社会を実現する有力な方法には、原子力発電の稼働を増やすか、再生可能エネルギーの割合を高めるか、の2つしかないんです。
この2つの取り組みをできるだけ速やかに、可能な限り国民負担を少なくしながら進めていくことが大切です。ただそこにはさまざまな課題があります。原子力については安全性に懸念を抱く国民がいるため、再稼働は慎重に一つひとつ進めているところです。
再生可能エネルギーの太陽光発電に関してですが、従来のシリコン型のパネルはほぼ全て中国のものなんです。つまり、太陽光パネルの普及が進めば進むほど、他国の産業が潤う構造になっています。さらに、耐久年数を超えた後のリサイクルや廃棄についての解決策も十分に固まっていないのが現状です。そんな中で、これからはペロブスカイト型太陽電池という次世代エネルギーの普及に注力していきたいと考えています。
―なぜペロブスカイト型太陽電池に注力する必要があるのでしょうか。
これまで話してきたように、そもそも太陽光発電を拡大せざるを得ない状況にあります。その上で、太陽光パネルの普及を拡大させるのであれば、日本の産業界が潤う製品を多くの方が使うことによって日本で雇用が生まれた方がいいですよね。
ペロブスカイト型の太陽電池は、メイドインジャパンの発電システムです。現在、商業化に向けて、日本の産業界が発電効率の向上などへの研究開発、大量生産への準備を進めています。主たる原料であるヨウ素は日本で採れるため、日本の技術で日本の材料を使って日本で加工・製造する。完全なメイドインジャパンシステムにより、日本で雇用が生まれ、所得税も発生するので、非常に理にかなっていると思います。
―ペロブスカイト型が普及していけば、他国と比べても、エネルギー政策においてリードできると。
おっしゃる通りで、産業政策としても非常に重要です。さらに言えば、他国に売ることもできます。ペロブスカイト型太陽電池を輸出産業にしたいと考えています。再エネでは洋上風力発電の拡大も重要なテーマです。
―そのほかに、今後注力したい政策を教えてください。
バッテリー産業の強化にも注力していきたいと思っています。実は、これから普及していくEV(電気自動車)の生産コストの約1/3にあたるのがバッテリーなんです。主要部品であるバッテリーのマーケットを日本企業が取らなければ、中国や韓国のバッテリーを使うことになってしまいます。これはもったいないですよね。
産業政策として、メイドインジャパンのバッテリーをつくりたい。工場が日本にあり、雇用を生み出す。そんな状況をつくっていきたいです。
大局的な視点で政治を見てほしい
―最近、若者の政治への関心が高まってきています。この点についてどのように感じていらっしゃいますか。
若い方々が政治に関心を持つようになったきっかけは、おそらく不平不満が溜まっているからだと思います。その不平不満をつくった責任は我々与党にある。今、多くの国民のみなさんが抱えている不平不満を生み出したのは、戦後70年以上、ほとんどの時期の政権を担ってきた自由民主党の責任であること。それは間違いありません。その点を真摯に反省しなければ、前に進めないと思っています。自民党を立て直さなければいけません。
そのうえで、もう1つ考えていただきたいことがあります。インターネット上には爽快な解決策を提供してくれる方がいらっしゃいます。また、ある特定の集団や政党に対して「こいつが悪い奴だ」というような攻撃的な批判をする方もいらっしゃると思います。たしかにそうすると気分がスカッとするのはわかります。
しかしながら、そのときに気をつけていただきたいことがあります。政治への入り口としてスカッとする話や批判をまず聞いていただいて、その上で、その人の主張についてご自身の頭で考えてほしい。本当に実現可能なのか。実現可能だとして、その政策を実行したらどのような副作用が起こるのか。将来的に日本はどうなっていくのか。そのような大局的な視点、俯瞰するような発想で政治を見ていただきたいと思っています。
―最後に、さまざまな政策実現を通して、日本をどんな国にしていきたいか、教えてください。
一言で言うと、強い国にしたいです。強さは何かと問われると、3分野で、1つ目は経済の強さ。2つ目は災害に強いこと。3つ目は独立と主権を守るために、安全保障環境に応じた適正な防衛力、抑止力を持つことです。この3つすべてを強くしなければ、国民生活の安定的な発展は実現できません。強い経済を土台にして、災害に強く、そして平和を維持するために必要な抑止力を持った強い国にしたいのです。