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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー自由民主党・茂木敏充 幹事長に聞く! これからの日本のグランドデザイン【前編】

自由民主党・茂木敏充 幹事長に聞く! これからの日本のグランドデザイン【前編】

投稿日2024.8.22
最終更新日2024.08.22

少子高齢化や急激な人口減少、厳しさを増す安全保障環境など日本を取り巻く国内外の情勢は厳しさを増しているとされます。その中で政治にはこれからの日本が進む方向を指し示し、日本社会のあるべき姿を描いていく役割が求められています。今回のインタビューでは、これまで外務大臣や経済産業大臣などを歴任し、現在は自由民主党の幹事長を務める茂木敏充議員に、これからの日本のグランドデザインについてお伺いしました。

(本記事は「政治ドットコム」のYoutubeチャンネルに投稿されたインタビュー動画を元にしたものです。本編動画はこちらからご覧ください)

茂木敏充議員インタビュー

茂木 敏充(もてぎ としみつ)議員
東京大学卒業。ハーバード大学大学院や外資系コンサルティング会社勤務などを経て、1993年に初当選。現在10期目。これまで外務大臣や経済再生担当大臣、経済産業大臣、自民党政調会長などを歴任。2021年10月より自民党・幹事長。子どもの頃の夢は考古学者。

民間企業から政治家への「転職」

ーはじめに、簡単な自己紹介をお願いします。

私は1955年に栃木県の足利市で生まれました。小学校4年生までは地元の分校に通っていたんです。国会議員には色々な経歴の方がいらっしゃると思いますが、田舎の分校出身なのは私だけなのではないかと思います。地元の中学・高校を卒業して東大に進学。ハーバードの大学院で、行政学・政策科学を勉強しました。

その後、商社の丸紅やコンサルティング会社を経て、国家議員になり、現在当選10回です。これまで政府では経済産業大臣や経済再生担当大臣、外務大臣、自民党では政調会長などを務め、現在は自民党幹事長を務めています。

ー私の年齢よりも長く国会議員を務めていらっしゃいますね。32年間で特に印象に残っている仕事はありますか?

そうですね。いろいろありますが、経済再生担当大臣の時に幼児教育の無償化を実現したこと、経済産業大臣時代に「小規模企業振興基本法」を策定したこと、最後にトランプ政権下で日米貿易交渉を担ったことですね。交渉が終わった時にワシントンの空がとっても青くて清々しい気持ちだったことを思い出します。

若者世代の経済的な負担を減らすための政策を

茂木敏充議員インタビュー

ー私たちの会社は政策共創プラットフォームとして様々な意見が寄せられているのですが、特に今回は若者世代からよく疑問として上がる三つのテーマについてお伺いできればと思います。まずは少子化対策についてです。昨年度の出生数が過去最低で75万人となり、危機的な状況にあります。茂木さんの視点から見て、子育て政策のポイントはなんでしょうか。

政府もこれまで少子化対策を最優先の課題として取り組んできました。具体的には出産一時金の50万円までの引き上げや児童手当の所得制限の撤廃などです。

これからさらに少子化対策を進めるためには、若者世代の経済的負担を下げるための取り組みが必要だと思います。例えばオーストラリアでは独特の奨学金の制度があり、奨学金の返済が就職してすぐには始まらず、大体年収500万円くらいになると返済期間が始まる制度になっています。このような制度がこれからの日本でも必要なのではないかと思っています。

また、少子化を解決するには婚姻数の減少を解決する必要があります。実は1970年と比べても、結婚したカップルの子どもを持つ数はさほど変わっていないんですね。だから結婚をしたいと考える人たちが結婚できるようにハードルを下げることが少子化対策につながるんじゃないかと。1970年ごろの婚姻数は大体年間で110万組ほどでしたが、現在は50万組を切っています。

経済的な理由から結婚を諦めてしまう人をサポートするには持続的な賃上げが必要です。賃上げの原資は企業の利益であり、その賃金が上がるためには、生産性が上がる強い日本経済が必要です。例えばアメリカではこの10年で生産性が10%以上向上していますが、日本は横ばいで成長していません。なぜこのような差が生まれたのか。それはアメリカではデジタルやグリーンといった成長産業に人と資本が移動したからなんです。日本においてもこれから伸びる産業分野はいくらでもあります。ここに資金が投入されれば人も動く。このような支援策が必要だと思います。

成長産業へ人が移動するような仕組みづくりを

茂木敏充議員インタビュー

ースタートアップや成長産業に移動することは少しチャレンジングです。そのような産業に人が移動するための仕掛けにはどのようなものがありますか。

転職しやすい仕組みを作っていくことが大切だと思います。例えば今ではハローワークが失業した人を支援する仕組みとして存在していますが、この機能をより拡充させていく改革がよいのではないかと考えています。転職したいがスキルがないと悩む人に対し国が用意する様々な支援を案内するような場にしたいですね。

民間の転職サイトはいくつもありますが、今でも転職をする際に相談に行く先としては圧倒的にハローワークが大きな存在なんです。全国に500箇所の拠点がありますし、3万人の職員と相談員がいます。ハローワークを起点にして望ましい求人と求職が一致するような流れがつくれれば、より転職しやすい社会になっていくと思います。そのためにもハローワークが多くの人から信頼される場になるためにも官民連携を深めてスタッフが交流するような場にしていくことが重要ですね。

また中小企業全体の生産性を上げることも非常に大きなインパクトを持つと思います。雇用の7割を占めているのが中小企業なわけですから。デジタルツールを使って新しい顧客を開拓したり、業務改善を進めたりする余地は非常に大きいと思いますね。中小企業の生産性向上は課題ではなく大きな可能性であると思っています。

ー具体的にはどんな支援がありますか。

色々な政策メニューを考えていますが、全体として社会全体として徐々にデジタル化を進めていく姿勢が必要だと思います。 先入観を払拭することも大切で、たとえば会計ソフトなど、導入するだけでそれほどコストもかからずに生産性向上に寄与するシステムはたくさんありますよね。

増税をしなくても税収は上がります。税収を上げる手段を増税以外でよくよく考えていくことが重要だと思うんです。その一丁目一番地は生産性を上げることです。

生産性が上がれば経済が成長して税収が増えます。仮に生産性が1%上がると実質GDPで1%伸びるので、単純計算で税収は1.4兆円伸びることになります。今年度のこども家庭庁の予算全体で4.1兆円ですから、仮に生産性が2%伸び、税収が2.8兆円増えれば、こども家庭庁の年間予算の7割の規模をまかなえる計算です。

包容力と力強さのある日本外交が今求められている

茂木敏充議員インタビュー

ー外交安全保障について、日本はどんなスタンスをとっていくべきだとお考えですか。

日本を取り巻く安全保障環境は戦後最も複雑で厳しくなっています。ウクライナや中東で紛争が発生することによって、食料安全保障やエネルギー安全保障の問題が世界中に波及しています。途上国も含めたグローバルサウスと呼ばれる国々の発言力も増しているため、世界が一つにまとまりにくいんですね。グローバルサウスの国々には多様性があるため、その際に日本外交の真価が問われ、その重要性も増すだろうと考えています。

ー3年前まで外務大臣を務められていました。その時と環境がガラッと変わった実感はありますでしょうか。

ありますね。ロシアによるウクライナ侵攻や気候変動が深刻化するなど、国際情勢は厳しい状況が続いていると思います。だからこそ日本外交の役割も大きくなっています。

私は外務大臣時代に日本外交の姿勢をふたつの言葉で表していました。一つ目は包容力。二つ目は力強さ。日本外交の包容力とは、西欧型の民主主義を他の国に押し付けるのではなくて、それぞれの国の歴史や文化を踏まえながら、一緒にその国が発展していく方法を考えていこうとする姿勢です。

一方で、日本外交の力強さとは自分たちが是とする考え方について毅然とした態度で臨む姿勢のことです。自由で開かれた国際ルールのもと、紛争が起きても武力ではなくて話し合いによって平和に解決していくこと、法の支配、国際法を尊重することが日本外交の基本的な姿勢です。この価値観について絶対に譲らずに、毅然たる態度で臨むことによって、日本が諸外国から頼りにされ、評価されることにつながると思っています。

ー日本外交の基軸は日米関係にあると思いますが、どのような展開をしていきたいと考えていますか。

国際社会の平和と安定を守るために、これまで以上に日米同盟は重要だと思います。日米同盟は我が国の安全保障上も重要ですけれど、それだけではなく世界全体の平和と安定を守っていくための同盟です。その日米同盟を維持していくためには、日米のトップの信頼関係が何より重要だと思います。

(総理にしかできない仕事とは….<インタビュー後編>に続く)

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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