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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー自由民主党・古川禎久議員に聞く! 新しい時代に必要な財政健全化とは?

自由民主党・古川禎久議員に聞く! 新しい時代に必要な財政健全化とは?

投稿日2024.8.21
最終更新日2024.08.21

2020年のコロナ禍以降、ロシアのウクライナ侵攻や円安など、激変する情勢の中で、国の舵取りが一層重要となっています。特に国家財政はその基盤として極めて重要であり、財政の健全化は日本経済の中長期的な発展を支え、国民一人ひとりの生活に安定と安心をもたらします。

その中で自民党の財政健全化推進本部は、総裁直下の組織として、激変する情勢の中であるべき経済社会と財政の姿について提言を行うために設立されました。現在、この財政健全化推進本部の本部長を務める古川禎久議員に、財政健全化のために必要な施策や古川議員の政治家としての思いなどについてお伺いしました。

(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)
(取材日:2024年7月23日)

古川禎久議員インタビュー

古川 禎久(ふるかわ よしひさ)議員
1965年宮崎県串間市生まれ。東京大学法学部卒業。
建設省(現国土交通省)、衆議院議員政策担当秘書などを経て、
2003年衆議院議員選挙に初当選。現在当選7回。

(1)祖父の言葉をきっかけに政治家を志す

ーまず、古川議員が政治家を目指したきっかけについて教えてください。

祖父に「将来は代議士になって、ふるさとのために働きなさい」と言われて育ち、子どもの頃からなんとなく政治家になることを意識していました。明治生まれで南九州出身の祖父は、西郷隆盛を尊敬してましてね、「代議士になって、西郷隆盛のように有能な若い人を引っ張り上げなさい」とよく言っていました。これで自分の心に政治家を目指すことが刷り込まれたんじゃないかと思います。

政治家を意識していたので、東京大学法学部に入学し、卒業後は、建設省(当時)に入省しました。ここまではよかったのですが、建設省の仕事が合わずに1年9か月で辞めてしまったんです。人事異動のタイミングで「逃げ出すなら今だ」と辞めました。そうしたら実家の親父が怒りましてね。もう帰ってくるなって勘当されました。

それからはフリーターです。アパートを引き払って寝るところがなくて、駅のベンチで一晩明かしたこともありますよ。「男はつらいよ」って映画知ってますか。フーテンの寅さん。私には寅さんの気持ちがよくわかるんです。仕事もいろいろやりました。焼き鳥屋をやったこともありますよ。

ただ、いずれは政治家になるという思いがあったので、30歳になったのを機に地元に戻りました。そして1996年、初めて衆議院議員選挙に出馬しますが、結果は落選。そして4年後の2000年も落選です。正直言って2回目の落選はこたえました。壁はこんなに厚いのかって絶望したんですね。目標を見失って自信をなくして、私は腐りました。どうせダメだ、オレなんか…って。人間、おカネがないのもつらいけれど、腐ったときってほんとうにつらいものです。

それでも皆さんの人情に支えられて、2003年、3度目の挑戦で当選させていただきました。8年がかりの初当選です。今ふりかえって思うことは、世の中の人は見ているってことです。ひとりの青年がひたむきに頑張っている姿を、見てないようでしっかりと見ているんですね。そしていざという時に見捨てない。世の中のふところは深いのです。だから私は確信をもってこう思います。不器用でもいい、まっすぐに生きることが大事なんだ。そうすれば世の中の人は必ず見ていてくれる、必ずわかってくれる…って。

古川禎久議員インタビュー

(2)日本の債務残高は先進国で突出、財政健全化のために何が必要か

ー古川議員は自民党・財政健全化推進本部の本部長を務められています。日本の財政の問題点とは何なのでしょうか。

日本の財政の最大の問題は、借金まみれになっていることです。これまで毎年、赤字財政をつづけてきたせいで、世界でダントツの借金の山をこしらえてしまいました。借金の山つまり累積債務はまもなく1300兆円に達します。考えてみてください。このさき、金利が上がったらどうなりますか。累積債務の利払い費は膨れ上がりますよ。雪ダルマ式です。日本の財政はそんなリスクを抱えているのです。

ーなぜこんなに借金が増えてしまったのでしょうか。

借金の原因はズバリ社会保障費です。私たち国民は医療・介護など社会保障サービスを受けていますが、サービスに見合うだけの負担はしていません。つまり社会保障の「受益」と「負担」がつり合っていないのです。では足りない分をどうしているかと言えば、借金なんですね。この借金がつもりにつもって大きな山になってしまった。しかも最近はコロナ禍や物価高騰対策ということで大盤振る舞いがつづきました。財政のタガが緩んでるように感じます。

ー政治家が国民に負担増をお願いできなかった要因とはなんだったのでしょうか。

本当なら、政治家が国民にきちんと説明をして、お願いをするべきでした。社会保障サービスの引き下げなり、消費税の引き上げなり、あるいはその両方をです。けれども政治家はそこから逃げてきたんです。選挙に落ちるんじゃないか…とか、支持率が下がるんじゃないか…とかを気にして、借金でその場しのぎをしてきた。つまり私たち政治家に、国民のみなさんとまっすぐに向き合う勇気が欠けていたのです。

ー財政健全化が進まなかった場合、国民にはどのような影響があるのでしょうか。

財政健全化が進まなかった場合、財政破綻はありえます。円の価値は暴落し、激しいインフレとなり、国民の生活はヒドイことになります。国民の財産も紙切れのようになってしまうし、政府は予算を組めなくなります。実は敗戦後にも同じことが起きているのです。当時も、強烈なインフレなどで借金の山を国民の財産で相殺するかたちになりました。結局、借りたものは返さなければならないのです。

ー本年6月に、自民党・財政健全化推進本部は提言をとりまとめました。この提言のポイントを教えてください。

「財政健全化」と「経済成長」の両立をめざす。これを強調している点がポイントです。もともと財政と経済はお互い支え合う関係なので両立をめざすのは当然のことですし、実際これまでだって両立をめざしてやってきたのです。では、なぜ今回あらためて両立を強調したのかと言うと、日本経済の局面がいよいよ動き始めたからです。

バブル崩壊以降、コストカット型の経済におちいりデフレに苦しんできた日本経済ですが、ここにきて賃金は上昇し、企業の設備投資も増え、株価も史上最高値を更新しました。3月には日本銀行も金融緩和政策を見直し、正常化へと一歩踏み出しています。日本経済は、長くつづいたデフレ経済のトンネルを抜けつつあるのです。

「金利のある世界」がゆっくりと現実のものになっていきます。すると財政は、利払い費の急増リスクに直面することになりますね。だからこれまで以上に、緊張感のある財政運営が求められるのです。「財政健全化」と「経済成長」はどちらか片方だけ、というわけにはいきません。両方とも同時に実現させなければならないのです。そこで提言で、両立をめざすことをあらためて強調したのです。

ー今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」には、3年ぶりに2025年度までに基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化を目指すことが記載されました。

内閣府が1月に公表した「中長期の経済財政に関する試算」では、高い経済成長の実現、歳出改革の継続、財源確保の着実な実施などのもとで、2025年度の国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化が視野に入ることが示されました。これからも財政健全化の「旗」を決して下ろすことなく、着実に取り組んでいかなければなりません。日本が、財政リスクにきちんと向き合っているという姿勢を、世界やマーケットにしっかり見せていくことが極めて重要なのです。

古川禎久議員インタビュー

(3) 新しい時代にふさわしい透明性のある政治を

ー今後、古川議員が政治家として取り組みたいことについて教えてください。

今、日本は大きな転換期を迎えています。時代が変わるのだから、日本も変わらなければなりません。政治家の仕事は、新しい時代の国家ビジョンを示すこと。それと政策転換です。日本丸の舵をきるのです。

例えば、食料とエネルギーの安定確保です。これまでの日本は、おおざっぱな言い方をすれば、食料の半分、エネルギーのほとんどを海外からの輸入に頼ってきました。しかし、買いたいだけ買える時代は終わりました。これからは可能なかぎり、食料もエネルギーも国産をめざす。この方向に国策を転換しなければなりません。

それから人口減少・少子化問題です。大まかな言い方をすれば、これまで「出生率の向上」と「地方創生」の二本柱で対策をうってきたのです。でも効かなかった。効かなかったどころか、予想を上回るペースで事態は悪化している。と言うことは、これまでとは次元の違う、かなり思い切った取り組みが必要だということです。人口減少・少子化問題は、日本の経済・安全保障・社会保障の根本にかかわる、まさに国の存続を左右する重大問題です。新しい国家ビジョンと、新しい発想、新しい政策で問題に向き合わなければなりません。現在、私は「日本社会と民主主義の持続可能性を考える超党派会議」の人口減少・地域・国土構想部会の共同座長を務めており、今後提言を取りまとめる予定です。

時代が大きく変わります。新しい国家ビジョンを描き、新しい政策を実行し、新しい国造りをすすめなければなりません。そのためには、時代の舵をきれる政治、実行力のある政治が必要です。それなのに、いわゆる裏金問題がおきて、いま政治は国民の信頼を致命的に失ってしまいました。これでは政策を実行できません。ですから、なんとしても政治を建て直し、国民に信頼される政治にしなければなりません。そこで私は「政治資金の透明化」「国会改革」「選挙制度改革」をパッケージにした「令和の政治改革」を訴えています。民主政治は国民の世論が大事です。国民の理解と協力なしにはどんな政策もうまくいきません。政治を建て直し、国民の信頼を得て、新しい国造りをすすめる。これが政治家の仕事だと思います。

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

若い人はその感性や勇気を大切にしてほしい。スウェーデンのグレタ・トゥーンべリさんはたった一人で行動をおこし、何百万人という高校生が行動に参加しました。アメリカの大学生が反戦デモをして、大学は学生に卒業証書を出しませんでしたが、それでも学生たちは戦争は間違っている…と声をあげています。正しいことを正しいと言い、間違っていると思うことは間違っていると言える、そんな素直な感性と勇気を大事にしてほしいと思います。無責任な言い方に聞こえるかもしれませんが、私は若い人たちの感性と勇気に希望を見ています。被選挙権の引き下げなどを通じて、若い人の政治参加を進めることは今、政治に携わる者の責務だと思っています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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