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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー自由民主党・西野太亮議員に聞く! 「循環経済」が今の時代に必要な理由とは

自由民主党・西野太亮議員に聞く! 「循環経済」が今の時代に必要な理由とは

投稿日2024.7.26
最終更新日2024.08.20

「循環経済(サーキュラーエコノミー)」とは、資源の効率的・循環的な利用を促進する取り組みです。本インタビューでは、自民党の経済産業部会 資源自律経済プロジェクトチームの事務局長でもある西野議員に、循環経済を推進することが今の日本において重要な理由、また西野議員の政治家としての原点などをお伺いしました。

(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)(取材日:2024年4月17日)

西野 太亮(にしのだいすけ)議員
1978年生まれ。熊本県出身。
財務省を経て、2021年衆議院総選挙で初当選。

(1)財務省で抱いた危機感から政治家の道へ

ー政治家を志したきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

さまざまな思いが相まって政治家になることを決意しました。もともと大河ドラマや歴史小説に親しむ中で政治家に対して漠然とした憧れがありました。しかし、親戚など自分の周りに政治家はおらず、政治家になることはイメージできていませんでした。

それでも社会全体のためになる仕事がしたいと考え、大学卒業後は就職先として、財務省を選びました。財務省での13年間で、日本の現実や課題をまざまざと見せつけられ、今後の行く末について大きな危機感を抱きました。

予算査定や法案審査、復興庁への出向、アメリカへの留学など様々な経験を積む中で、政治の道を志す覚悟ができあがってきたように思います。退路を断って政治の世界に飛び込んだ多くの同僚にも刺激を受け、国の大きな方向性を決める仕事をすることを決意しました。

ー国会議員になられて2年半ほどがたちました。どのような手応えを感じていますか。

政治家は、多くの方のお支えにより成り立つ仕事です。地元・熊本と東京を行ったり来たりしながら、また、日本各地そして海外にも足を運び、文字通り年中無休で、全力で突き進む2年半でした。まだまだ、お約束した課題についても道半ばですが、これからもしっかり取り組んでいきたいと思います。

財務省時代の経験と人脈は国会議員になってからも活きていると思います。当然、予算や法律をつくる流れはある程度身についていますし、それらを変えるために必要な勘所も持っている自負があります。また予算の視点から他の省庁のロジックや政策を理解できていることは財務省出身ならではだと思います。

一方で、必ずしも政治家になるのに官僚出身であることは必須ではありません。あらゆるバックグラウンドの人がさまざまな視点から政策を議論するのは重要だと思います。その意味で女性や若い議員も増えればよい、と思っています。

(2)「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」の推進は経済安全保障の観点からも重要

ー現在、自民党経済産業部会・資源自律経済プロジェクトチーム事務局長を務められています。「循環経済(サーキュラーエコノミー)」に関わることとなったきっかけを教えてください。

元々すごく関心を持っていたわけではありません。ただ小泉進次郎さんにお声がけいただいたことがきっかけで関心を持つようになりました。小泉さんは環境大臣時代からこのテーマに熱心に取り組んでいました。

「サーキュラーエコノミー」とは、大量に生産して、大量に消費して、大量に廃棄するという従来型の線形経済とは真逆の考え方です。市場のライフサイクル全体で、資源の効率的・循環的な利用(再生材活用等)とストックの有効活用(製品のシェアリングや二次流通促進など)によって、資源を最大限活用しようという経済です。

今の時代にサーキュラーエコノミーが重要である理由は大きく3つあります。

1つ目は経済安全保障の観点から自国で貴重な資源を確保する必要性が高まっている点です。レアメタルと呼ばれる貴重な金属は今やあらゆる産業の必需品です。しかし、主要金属の埋蔵量も無限ではありません。2050年までの世界の需要量と埋蔵量を比較すると、金や銀、銅、鉛、錫などは、2050年までの累積需要が埋蔵量の2倍超になっている。使い捨てにしていると、資源枯渇の可能性があるのです。

その上、それら資源の埋蔵エリアは世界の中で偏在していますし、近年では、資源ナショナリズムの動きも高まっています。例えば、中国は一時レアメタルの輸出禁止措置をとりました。ニッケルの主要産地であるインドネシアは未加工鉱石の輸出を禁止しています。つまり、資源を持つ国々の意向次第で、資源を安定的に確保できない可能性があるのです。それを防ぐには自国にすでに存在する金属を循環して利用できるようにするシステムを作る必要があります。

2つ目はカーボンニュートラルへの貢献です。日本は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質としてゼロにする目標を掲げています。鉱物は新たに発掘して精製するよりリサイクルする方が二酸化炭素排出量が圧倒的に少ないのです。

3つ目は経済成長のエンジンとするためです。現在世界では環境をめぐる規制が厳しくなっています。ヨーロッパでは電気自動車をめぐる規制、航空関連であれば持続可能な航空燃料(SAF)の利用を求める規制など、ビジネスのあり方を変えるような規制が生まれています。アメリカでは、アップルやマイクロソフトのような大企業が、カーボンニュートラルな製品でなければサプライチェーンにいれない、と宣言することで、実質的に規制を推進しています。

今後、サーキュラーエコノミーについても、世界で規制が加速化していきます。これに乗り遅れると日本製品は世界の市場から排除されてしまう。サーキュラーエコノミーへの転換は経済の足を引っ張るものと捉えるのではなく、むしろ、日本がこの分野での技術開発を主導し、サーキュラーエコノミーをリードすることによって、経済成長のエンジンとすることが必要です。

ー「循環経済」を実現するための政治の役割を教えてください。

民間企業が迷わずにコミットできるように、大きな方向性を政治の責任で決断し、打出す必要があります。たとえば2050年のカーボンニュートラルの実現は菅総理と小泉環境大臣がイニシアチブをとって決定した大きな目標です。現場の民間企業からも方針が決まらないと対応しづらいのでありがたかったとの声を聞きました。

サーキュラーエコノミーを目指す大きな方針を出すためにも、現在はそのための整理をしている段階です。サーキュラーエコノミーの対象となる素材がどれくらい重要なのか、ある素材が手に入らなくなることで日本経済はどんな打撃を受けるかを調査しています。漠然とサーキュラーエコノミーを進めましょうというだけでは、国民のみなさまには響かず、無責任ですらあります。どの物質についてどれくらいの自給度を目指すかについて定量的に示していきたいですね。

ー昨年4月、自民党経済産業部会 資源自律経済プロジェクトチームは、「世界最先端の資源自律経済の実現に向けた成長戦略への提言」を西村明宏環境大臣など政府に申し入れました。現在の進捗や課題について教えてください。

ここ1年間では、情報流通プラットフォームの構築や再資源化事業等の高度化に関する法律の制定について動きがありました。

まずは情報流通プラットフォームの構築についてです。資源を循環させるためには、どの製品にどの物質がどの程度入っているか把握しなければなりません。いちいち製品の中を見て、素材がどの程度入っているのかわからないのでは非効率です。そこで提言では、製品別に含まれる素材を確認できる情報プラットフォームの構築を訴えました。民間企業とのスムーズな連携が進むように昨年、産官学の連携が進むようサーキュラーエコノミー・パートナーシップが立ち上がりました。

現在、2025年に情報流通プラットフォームの構築を目指し、共通データフォーマットやプラットフォーム間の相互連携インターフェース等について検討を進めています。

また、今国会に提出された「再資源化事業等の高度化に関する法律案」も進捗の一つです。この法律では、高度なリサイクル技術を持つ企業を国が認定し、廃棄物処理法の特例を認めるなどの支援策を講じています。

企業としても競争力維持のために製品の情報を公開することに二の足を踏むことは理解できます。政府としても線引きが難しいですが、一歩一歩着実に今の日本が置かれた状況を理解していただく必要があると考えています。

(3)大きなビジョンを描くのが政治。日本経済の再興に尽力したい。

ー今後注力していきたい政策テーマはありますか

個別の政策で着実に成果を出していくことが必要です。しかし、政治にしかできないことにもこだわりたい。それは日本という国家としての大きなビジョンを描くこと。大きな絵がなければ、個別の政策を実行するのにもブレが出てきてしまいますから。

その意味で私にとっては日本経済を復活させることが大きなテーマです。「失われた30年」と呼ばれる停滞期は社会の各所に影響を与えています。強い経済は生活を豊かにするだけではなく、直面する課題に対してあらゆる好影響をもたらします。

熊本県選出の国会議員として半導体産業にも大きな関心を持っています。TSMCの工場進出により、地価の上昇や飲食業の活性化など、ある種、半導体バブルのような状況が起きている。ただこれを一過性のものにするのではなく、地域に根付く産業として育て上げていく必要があります。

日本の半導体産業をもう一度世界トップクラスにまで押し上げて、日本経済を支える産業の一つにしたい。現在の熊本の状況はそれが実現できるかどうかのひとつの試金石であると考えています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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