
大石 あきこ おおいし あきこ 議員
1977年大阪生まれ。大阪大学大学院環境工学専攻。
2002年大阪府に入庁。
2021年衆議院議員選挙に初当選(2期)。
れいわ新選組 共同代表、政策審議会長を務める。
7月20日に第27回参議院議員選挙が迫っています。
株式会社PoliPoliでは、参議院議員選挙の主要な政策上の争点を明らかにし、各党の政策を分かりやすく有権者に届けるための特集企画を実施します。今回は、れいわ新選組で政策審議会長を務める大石あきこ議員に、れいわ新選組の選挙公約に込めた思いや公約のポイント、そして今回の参議院議員選挙の位置付けなどについてお伺いしました。
(※所属する国会議員が5人以上または直近の国政選挙での得票率が有効投票総数の2%以上という公職選挙法上の政党要件を満たす、すべての政党にインタビューの打診をしております)
(取材日:2025年7月14日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)
財政支出で国民の負担を直接減らし、経済を立て直す
ーれいわ新選組の参議院議員選挙の公約を拝見しました。各党が物価高対策としての減税や給付を主張しているのに対し、れいわ新選組は所得格差の是正のため消費税廃止を訴えているという理解で間違いないでしょうか。
そうですね。格差社会であるとともに、それが行き過ぎた末に日本経済全体も沈んでいるということを、選挙の前からずっと訴えている点ですので、おっしゃる通りです。
ーありがとうございます。消費税については一律廃止、給付については一人あたり10万円を支給するとのことですが、この政策の意図や背景について教えてください。
れいわ新選組は6年前、2019年に山本太郎が作りましたが、その時と状況は変わらないか、悪化し続けている面があります。国の調査では、国民の6割が「生活が苦しい」と答えています。貧困世帯も非常に多く、コロナ禍や近年の物価高に国民生活は苦しめられっぱなしです。ですから、大胆に国民の使えるお金を増やす即効性のある需要喚起策が一番必要だろうということで、「消費税はさっさと廃止」だと訴えています。
また、消費税をすぐに廃止したいのですが、実際に政策を実現するには時間がかかっています。政府や色んな政党が、法令の見直しが必要だったり、レジのシステム変更が必要であったり、1年以上かかると主張しています。それまでのつなぎとして、現金給付を全員に一律で行います。
「大金持ちにも配るのか」という点については、所得税の累進課税などで後から回収すればいいと考えています。とにかくスピード感をもって、今すぐ困っている人に一日も早くお金を届けたい。そういう趣旨で、「消費税さっさと廃止、現金10万円給付」をセットで訴えています。
ー消費税を廃止するにあたり、その財源についてはどのようにお考えでしょうか。
そもそも財源が何かという点ですが、例えば家庭であれば、財源は収入、つまり財布や銀行貯蓄の中身、あるいはローンで借りるお金になると思います。しかし、国の財源はそれとは全く一線を画します。国は通貨を発行する主体なので、まず私たちの直感的なお金の考え方と国の財源は違うということをご理解いただきたいと思います。ですから、あまり「財源、財源」と言わずに、「通貨を発行して出すんだ」ということを皆さんに分かっていただきたいのが一点です。
その上で、長期的に見た国の財源は、実は「供給力」、つまり実体経済です。社会経済がうまくいっていれば供給力は増します。国家は社会が困ったときに通貨を発行できる唯一の主体であることに加え、そもそも今は税金を取り過ぎています。本来、取るべき量を超えた税金を取っているので、まずその取り過ぎをやめるべきです。そして、需要を喚起して社会全体の供給力が増せば税収も増えますので、そういう意味でも新たな財源は生まれてきます。そうした考え方に基づいています。
ーまず通貨を発行して、お金が足りないところに届けようということでしょうか。通貨をどんどん発行していくと価値が下がり、インフレになる懸念があると思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
それは1分で答えるのが大変難しい質問ですね。これまでデフレがずっと続いていたので、デフレ下では説明を省ける部分もありましたが、今はコストプッシュインフレという海外要因での物価高が社会に現れたので、「インフレには2種類ありまして」というような、難しい話をせざるを得ない面があります。
インフレを決めるものは、政府の支出だけではありません。民間でも信用創造という形で銀行がお金を発行しています。政府支出に加えて、民間の銀行が社会にどれだけローンという形でお金を発行しているか。この2つを合わせたマネーストックの総額や、ある産業でどのぐらいお金が動いていて、ものの値段はどうなのか、といった需要と供給のバランスで、インフレかどうかが決まるので、非常に複雑です。
ですから、「政府の支出が増えたらイコールインフレ」ということにはなりません。しかし、そう言う国会議員や政党の方も結構いらっしゃるので、世の中の有権者の方も含め、「政府がお金を発行しすぎると、お金がジャブジャブになり、ばらまきでインフレになって困る」という、なんとなくシンプルな図式で考えてしまいがちですが、それは誤解です。
ー次に、現金給付についてお伺いします。自民党も今回の選挙で、子どもと非課税世帯の大人に1人4万円、その他国民全員に1人2万円を給付することを公約に掲げています。一方で、給付という方法については、「各自治体の事務手続きの負担が大きいのではないか」という指摘がありますが、どのようにお考えでしょうか。
おっしゃる懸念はよく分かります。減税のように取るのをやめる場合は自動的に手元に残るお金が増えますが、配るとなると事務作業が発生します。皆さんのご懸念は、これまでのやり方、つまり「配る、配る」と言いながら中抜きされたり、手元にくるまでに時間がかかりすぎたりした問題を指摘しているのだと思います。
私たちは一律10万円の現金給付なので、2万円給付というケチなものとは比較にならないと思います。配る金額が2万円でも10万円でも、かかる手間は同じです。全員一律2万円と10万円で共通の手間がかかるなら、「なぜ2万円なのか」、という言い方もできます。
やはり政府の目線が「一刻も早く一律給付しよう」というところにないのです。石破総理は「急ぎます」と言いながら、一律2万円、もっと困っている人は探して4万円かもしれない、年を越したらダメだから、と言っています。今7月ですから、年を越すということは半年以上かかるということです。
新型コロナウイルス対策の緊急経済対策として実施された「特別定額給付金」の支給にかかったのは、約2か月ほどです。ですから、現金給付は本気を出せば1か月か2か月でできるはずです。現金といっても口座振込ですし、やり方次第で早くできます。それを半年以上かけるというのは、給付をちらつかせて票を得ようという遅延行為だと言われても仕方がないでしょう。
ー今回の参議院議員選挙では、社会保険料の引き下げも争点となっています。社会保険料を下げて手取りを増やすという考え方について、れいわ新選組はどのようにお考えですか。
社会保険料をめぐる政策は、各党の考え方の違いが一番反映されるかもしれません。れいわ新選組は、社会保険料を大幅に引き下げますが、その方法は「まず国家が出す。そこは腹をくくるんだ」と考えています。
社会保険料の負担は極めて重いです。今、中間層の年収は370万円ぐらいで、例えば新宿区で一人暮らしの国民健康保険適用の方だと、月収30万円ちょっとで月に6万円ぐらい社会保険料を取られます。社会保険料全体でみると国民負担は10年前と比べて25%もアップしており、すごい勢いで増えています。
国民負担は、国が財政支出をして減らせばいいだけなのに、むしろ上がっています。これにより、働く世代のストレスが非常に大きくなっています。すると、そのストレスから「お年寄りの医療費負担を上げよう」といった発想しか出なくなってしまいます。私たちはこれを大変懸念しています。そうではなく、高齢化のピークを乗り切るまで、あるいは経済が成長するまでの間、国が腹をくくって財政支出をしないと、この問題は絶対に解決しません。
社会保険料は国民が保険料を負担する立て付けになっていますが、すでに国費も投入されています。その上で「社会保険料は国民同士が支えるものだ」という考え方を変えなければなりません。「国が出すのか、国民が出すのか」をはっきりさせ、国民側の負担が生活できるレベルまで減るのか、その額面を明確にして議論しないと、中途半端な引き下げ論になってしまいます。
やはり、国が「一旦、国費を入れる」という発想がない限り、いくら「社会保険料を下げる」と言っても、問題解決にはつながらない、ケチな引き下げしかできないのです。
ーつまり、社会保険料については、まず現実的に下げられるライン、国民の生活が圧迫されない負担のあり方を考え、それでも足りなければ国費で賄うという考え方になるのでしょうか。
そうですね。本来であれば、超富裕層など、収入がたくさんある方が社会保険料や税を多く負担するという累進性があるべきです。しかし、現在はそれが崩れた社会になっています。社会保険料は低収入の人ほど負担割合が高くなっており、富裕層の社会保険料負担の見直しは行う必要があります。
ー少子高齢化が進み、現役世代が減っていく構造は止められない状況だと思います。そうした中で、一定の財政規律を保つべきだという意見もありますが、財政規律についてはどのようにお考えでしょうか。
正しい経済政策を行い、成熟国家が悩む少子高齢化を突破していかなければなりません。日本は、この点で大失敗しています。財政規律を理由に必要な部分の供給力を削ぎ落とすことが、一番やってはいけないことです。「国債発行は悪だ、絶対にやらない」という勢いで財政規律を優先すると、供給力を破壊し、社会がより疲弊します。
先ほどから財源とは「供給力」「実体経済」であると申し上げていますが、医療の分野においても同じです。財政規律を優先し、国が国債発行を嫌がることで医療が縮小されています。例えば、病院のベッド数はもともとの計画でも減らされていましたが、自民・公明・維新は協定を結び、さらに減らすために補助金を出すという、全く逆のことをやっています。
医療や介護といった供給力が必要な社会なのですから、そこを成長産業にするためには、国が国費を投入して供給部門を大きくしなければなりません。国がお金を投入すれば、そこで働く人の給料が上がり、医療や介護の分野で働こう、設備投資しようという人が確実に増えます。それをできるのは本当に国だけです。民間の自由競争では、必要な分野にお金は集まりません。
ですから、国が腹をくくって必要な分野に投資することは、高齢者を助け、現役世代の社会保険料負担を減らし、さらにその分野を成長させるという、一石三鳥の効果があります。さっさとやればいいのに、財政規律に縛られているのが現状です。
アメリカ依存ではない、新たな外交戦略を
ーれいわ新選組の外交・安全保障政策の基本的な考え方について教えてください。
長期的に世界を眺めると、アメリカの力はすごく弱まってきています。アメリカは世界中で戦争をしていますが、この数十年単位で見ても決して勝てているわけではありません。軍事面でもそうです。
アメリカの力が長期的に弱まっている中で、日本はその事実を無視し、アメリカから「日本は言うことを聞いてくれるから使える」という駒として扱われる構図になってしまっています。日本側から見れば「アメリカに頼らないと平和を守れない」という、間違った見方から足を洗うべきです。世界情勢を客観的に長期間で見て、国民の皆さんにも平常心で考えてみないかと呼びかけたいです。
日本は地理的にも中国に近く、米中の緩衝国家という立場にあります。アメリカからすれば、日本を中国に対する「防波堤」として使いたい。私たちの国がそういう構図に置かれているということを、まず国民の皆さんと共通認識として持ち、「私たちはどうしたいですか?」というところから考える必要があります。
今、マスコミも含めて10年以上、「中国脅威論」というプロパガンダが流されています。その背景には、アメリカが中国を脅威に思い、日本にいつまでも手下でいてほしいという構図の中で作られたメディアの誘導が確実にあると思っています。そうした誘導を超えて、日本国民の利益として、アメリカvs中国という大国間の戦争に巻き込まれたいですか? 確実に巻き込まれたくないはずです。そうすると、やはり今までのアメリカ一辺倒の関係性を変え、独自外交をしていかなければなりません。
ー独自路線という点では、現在の日米同盟のあり方を見直していくべきというお考えでしょうか。
おっしゃる通りです。私たちが思うよりずっと、日米地位協定によって私たちの社会や国土は影響を受けています。私たちが思う以上にアメリカが日本の空を支配していたり、日本のどこにでも米軍基地を作れるという約束や密約があったり、そういったことに社会が規定されているのです。
まず、そうした密約などを国民にちゃんと公開すべきです。戦後80年、特にこの30年、歴代政権にお任せし、人々が選挙に行かなくなった結果として、国民が何も知らされていません。憲法でやってはいけないと書かれていることまで、アメリカとの密約や、あるいはあからさまな約束で決められてしまっています。それは憲法違反ではないのか、国会で議論する前に決めていいのか、という当たり前の常識を、私たちの国が取り返していく必要があります。
日米地位協定も見直しが必要です。「協定なのだから普通に結んでいるのでは」と思うかもしれませんが、全くそうではなく、日本に拒否権がないなど、他国との協定とは異なります。そういった事実をれいわ新選組は発信していますが、もっと広く知っていただく必要があります。
国民のため、国会のなかで徹底的に抗う
ー最後に、いよいよ今週末に選挙が迫っている中で、特に伝えたいことや読者へのメッセージをお願いいたします。
選挙前になると、各政党が減税を言い出したり、「国民のみなさまのために」と言い出したりするのですが、れいわ新選組は国民のために、消費税の廃止を一貫して主張してきました。
れいわ新選組は、6年前、山本太郎が「こんなに政治が壊れて、国民生活が壊れて、国会の外は大変なのに、今の政治は何をやっているのか」という怒りから、「国会の中で体を張って抗っていこう」という趣旨で結党しました。この6年間ずっと、れいわ新選組は国会の中で戦う野党として抗ってきました。野党なのですから、抗わないと始まらないと思っています。なので、れいわ新選組は徹底抗戦を呼びかけています。
「反対ばっかりで生産的じゃない」と思うかもしれませんが、そうやって抗い、「今の政策はダメだ、こうしなくちゃダメだ」ということをちゃんと筋を通し、体を張った勢力が政権を担った時こそ、対外的な交渉においても冷静に、しかし、言うべきことは言うという政治や外交ができると確信しています。
れいわ新選組の政策は、「消費税はさっさと廃止」、「今すぐ、つなぎの現金給付」、「税金は大金持ちから取れ」というもので、多くの皆さんの心に沿うものだと思います。しかし、まだ実態がつかめない、という方にはぜひ私たちのこれまでの実績を見ていただきたいと思います。国会質疑や街頭演説の様子を動画に記録していますので、ぜひれいわ新選組がこれまで何をしてきたのか、実績を知ってほしいと思います。