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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー立憲民主党・野田佳彦議員に聞く! これからの日本の将来像

立憲民主党・野田佳彦議員に聞く! これからの日本の将来像

投稿日2024.9.11
最終更新日2024.09.11

少子高齢化や急激な人口減少、厳しさを増す安全保障環境など日本を取り巻く国内外の情勢は厳しさを増しているとされます。その中で政治にはこれからの日本が進む方向を指し示し、日本社会のあるべき姿を描いていく役割が求められています。今回のインタビューでは、立憲民主党代表選挙に立候補を表明した野田佳彦議員に、これからの日本の将来像についてお伺いしました。

野田佳彦議員インタビュー

野田 佳彦(のだ よしひこ)議員
1957年千葉県船橋市生まれ。早稲田大学政経学部卒業。松下政経塾第1期卒塾。
千葉県議会議員を2期経たのち、1993年衆議院議員初当選(9期目)。
第95代内閣総理大臣。
座右の銘は「素志貫徹」。

(本記事は「政治ドットコム」のYoutubeチャンネルに投稿されたインタビュー動画を元にしたものです。本編動画はこちらからご覧ください)

松下政経塾の新聞広告を見て政治家の道へ

ー最初に簡単な自己紹介をお願いします。

元々政治に関心はありました。それでも私は政治家に一番向いていないタイプだったと思います。小学校六年生の時、学校の生徒会長選挙があったんです。私の学年は全部で四クラス。各クラスから一人ずつ四人が立候補することになり、私がクラス代表として選ばれたんです。

立会演説会の演説順は私が一番最後でした。演説の仕方もわからず、見た目もスマートではなかったので、とにかく大きな声で元気に演説しようとしました。するとちょうど変声期だった影響からか、すっとんきょうな声が出てしまった。

全校生徒の笑われ者ですね。それがトラウマで小中高とずっとシャイな少年として過ごすことになったんです。これでは政治家になることは無理だなと思って、ジャーナリストになりペンの力で政治を変えていこうと思ったんです。

大学を卒業するとき、大手メディアからの内定ももらっていたのですが、ふと新聞で松下政経塾の広告を見たことが私の運命を大きく変えました。一期生の募集を知らせる新聞広告でした。一期ですから、これまでの実態はない。広告の中身はすべて実際の写真ではなくイラストでした。それでも心を動かされてふと応募したんです。

ー議員になって30年ほどが経ちました。野田さんと言えば毎日駅頭でのビラ配りです。プライベートの時間はあるのですか。

毎日辛いなと思いながら駅頭に立っています。22時には寝るようにしていますが、最近の睡眠時間は4時間くらいになっちゃってますね。なかなかハードです。

ー野田さんは民主党政権時代に総理大臣を経験しています。その経験から見て、2012年から今までの自民党による政治をどのようにご覧になっていますか。

私が総理時代には「分厚い中間層の復活」を掲げていました。戦後、高度成長を続ける中で中間層の厚みが形成されてきたことが日本の強みでした。今日より明日はよくなると希望を持ちながらみんなで前に進んできたのです。

高度成長が終わり、その社会モデルが崩れ落ちそうになってきた。だから私の政権でもう一度しっかり立て直そうと思っていました。しかし、志半ばで政権は終わりました。

自民党に政権が戻り、安倍政権の下でアベノミクスをやった。安倍さんは大きな企業の収益が上がれば中小・零細企業で働く人たちにもその果実が回ってくると。いわゆるトリクルダウンの考え方です。しかしこれは実現しなかった。逆に格差は広がり、中間層はもっとこぼれ落ちるようになってしまった。だから今回は改めてもう一回分厚い中間層の復活を掲げて代表選挙に挑もうと考えたのです。

ーそもそも野田議員が、2011年に代表選挙に手を挙げた覚悟はどのようなものだったのでしょうか。

私が総理大臣になった2011年9月は東日本大震災からの復旧・復興に一生懸命取り組まなければならない時期でした。リーマンショックの傷跡もありました。鳩山さんや菅さんがやってきたことの評価も自分が合わせて引き受けなければならない。解散総選挙も近いうちにやらなければならない。大変な時期だったことは確かです。ただ菅直人政権で拝命していた財務大臣時代に構想していた財政に対する考え方を実行に移す時だと考えて手を挙げました。

政治の信頼回復のためには刷新感ではなく真の刷新を

ー今回の出馬を決めたタイミングはいつでしたか。

比較的最近です。世の中は刷新感を求めている。だから今回の立憲民主党の代表選挙も若手や女性が出て、党の活力が見える構図になればよいなと考えていました。

だから自分の出馬にはずっと慎重な立場でした。とはいえ、自民党総裁選挙に目を向けて見ると候補者が多く出てきて、刷新感を出そうとしてきていた。しかし、本当にその候補者の中に世の中を刷新しようとしている人がいるのか。私は疑問です。本気さが見えません。本当の刷新をするには一定の経験も必要ではないか。若手や中堅の出馬要請も受ける中で、出馬する決断に至りました。

ー発表した政策集のタイトルが「政権交代前夜」でした。このフレーズにこめた思いはどのようなものですか。

政権交代のチャンスはたくさん訪れるものではありません。自民党が下野したのは過去に2回。1回目は1993年。このとき細川連立政権が成立しました。私が初当選した選挙でもあります。自民党の「政治と金」の問題で政治改革への熱意が沸騰していた時期でした。2回目は2009年です。自民党の失政が続いて、当時の民主党への大きな期待が集まりました。

どちらも国民のみなさんが自民党に愛想を尽かして、政権を取って代われる人たちがいるのかを探した時期なんです。今回も同じくそのチャンスだと思います。

だから今回は通常の代表選挙ではありません。同時期に行われる自民党総裁選挙が終われば、おそらく今年中に衆議院の解散総選挙があるはずです。その総選挙後を見据えて、政権を担えるチームを作ろうと願いをこめて、政策集のタイトルを「政権交代前夜」としました。

ー政策集を読むと自民党政権と課題認識が共通する部分もあるかと思います。自民党との違いで強く打ち出したい部分は何でしょうか。

一番は政治改革です。私は政権交代こそ最大の政治改革だと思っています。裏金を許容し、世襲政治家が跳梁跋扈する自民党が自分たちで自浄作用を働かせることは難しい。政権交代を実現して自民党が長年取り組むことができなかった政策に手をつけられるのが政権交代の意義です。その象徴は選択的夫婦別姓。自民党の一部の保守派が長年反対してきたから実現していません。

ー新しい産業やエネルギーの分野へのスタンスは?

私が政権を担ってきた時期とは状況も大きく変わってきたと思います。デジタルや生成AIの影響を受けて電力需要は右肩上がりになってきました。抽象論ではなく冷静な数値分析をした上でエネルギー計画を作らなければいけません。

ー安全保障政策への考え方はいかがでしょうか?

世界のあらゆる国や地域で分断が起こっています。紛争の火種があるような緊張した地域もあり、実際にウクライナでは戦争が終わっていません。平和的な手段で対立を解決することは人類が歴史の中で育んできた叡智です。力による現状変更は認められないとあらゆる場面で主張する日本外交が必要です。

若者世代の政治参画を進める改革が必要だ

ー現役世代は物価上昇や社会保険料の負担に苦しんでいる人も多くいます。

私が政権を担っていたころは、社会保障と税の一体改革を推進しようとしました。医療・年金・介護を中心とした老後の生活保障という側面が強かった日本の社会保障を全世代向けの制度に改革しようとしたのです。少子高齢化が進み、制度を支える現役世代が少なくなる中で必要な改革でした。

税制改革では、消費税率を引き上げて、増えた税収を社会保障に充当することで、全世代型の社会保障制度へと転換することを試みました。その結果、老齢の人だけではなく、若者に対する社会保障が進むことを狙ったのです。

この「全世代型の社会保障制度」のコンセプトは自民党政権でも受け継がれているのですが、実態はあまり進んではいません。困窮状態にある若者も多く、奨学金の返済に苦しむ人も多い。分厚い中間層が崩壊している大きな要因だと思います。

ー現役世代からは規制改革・新しい産業への投資にも強い関心があります。

基本的には推進する立場です。日本もGX・DXの激しい国際環境の中で生き残っていかなければなりません。ライドシェアの解禁やマイナンバーカードの推進など必要な改革は進めるべきです。改革を進める上で予見される課題をすべて洗い出し、変えるべきところは変える。動き出しながら弊害が出たら検証し、改善する。そのようなスタンスが必要ではないかと思います。

その中でも政治がデジタル化が一番遅れている分野かもしれません。たとえば今の在外投票の仕組みだと、短い投票期間では投票が間に合わないこともあります。インターネット投票を実現すれば解決するはずです。合わせてデジタル化を推進する人材の養成はセットだと思います。

ー最後に若者世代に対するメッセージをお願いします。

被選挙年齢を引き下げることが議論の争点になりつつあります。今はシルバー民主主義の時代です。どうしても高齢者の方々の意見が政治に反映されやすい構造になっています。しかし、その結果、損をするのは若者です。被選挙年齢の引き下げによって、若者の政治参画を進めなければ、未来に向けた政策を実行に移すことは難しい。

だからこそ、これからの時代は大学生が自分たちでチームを作って政治家を目指すような動きがあってもいいのではないでしょうか。しかしこれは若者のみなさんから応援してもらわなければ実現できません。そのためにはまず政治改革。元々無口でシャイで人前で喋ることが嫌いな人間が政治の世界に入ってきたのは、政治そのものを変えたいと思ったからです。自民党政権の膿を出し切って、政治への信頼を回復する政治改革をやり切っていきます。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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