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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー【連載企画:なぜ、今グローバルヘルスなのか】公明党・岡本三成議員に聞く!新たな民間資金の流れをつくるために必要なこと

【連載企画:なぜ、今グローバルヘルスなのか】公明党・岡本三成議員に聞く!新たな民間資金の流れをつくるために必要なこと

投稿日2024.10.7
最終更新日2024.10.07

2024年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」では、「戦略的な国際保健」を推進するために今後インパクト投資をはじめとする民間投資の呼び込みを強化する方針などが盛り込まれました。

政治ドットコムでは連載企画「なぜ、今グローバルヘルスなのか」と題し、グローバルヘルス政策に携わる政治家をはじめとするルールメイカーについて深掘りします。

今回のインタビューでは、アメリカの大手金融機関で20年以上の勤務経験がある岡本三成議員に、グローバルヘルスにおける新たな民間資金の流れについてお伺いしました。

(取材日:2024年8月29日)
(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 井出光)

岡本三成議員インタビュー

岡本三成(おかもと みつなり)議員
1965年佐賀県鳥栖市出身。米ケロッグ経営大学院(経営学修士)修了。
ゴールドマン・サックス証券を経て、2012年衆議院議員選挙に初当選(4期)。
財務副大臣などを歴任。2024年9月より公明党政務調査会長。

アメリカの同時多発テロをきっかけに政治家を志す

ー岡本議員がアメリカの大手金融機関から政治家を志した背景は何だったのでしょうか。

イギリス留学やアメリカのビジネススクールを経て、1998年に米金融大手のゴールドマン・サックス(GS)に入社しました。GSではパブリックセクター、いわゆる政府や地方自治体に対し資金調達などの金融アドバイスを行う部署で仕事をしていました。

日本の金融機関にはそのような部署はありませんし、日本政府や地方自治体も外部の機関にアドバイスを求めることはほとんどありませんが、アメリカでは財政体力が弱いカリフォルニア州やイリノイ州が金融アドバイザーを活用しています。2010年に財政破綻におちいったギリシャ政府の金融アドバイザーもGSが務めていました。

こうした公的機関と非常に近い場所で仕事をした経験が、のちに政治家という職業を目指す一つの要因となりました。

ー国政への出馬を決めたきっかけは何でしたか。

2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件が大きく影響しています。

当時、テロが発生したワールドトレードセンターのすぐ近くの建物で仕事をしていました。目の前で何千人もの罪のない人が亡くなり、こんなことは絶対に起きてはいけない、というぶつける先のない怒りの感情が湧いて。なぜ同時多発テロが起こってしまったのかを考えるとともに、政治の責任を強く感じました。

そんな中、2011年に公明党の幹部の方から「次の総選挙に出馬しないか」とお話をいただいたんです。金融の世界を22年経験し、一通りやるべきことをやったかな、と思い始めた時期でした。2012年に初当選し、議員生活は今年で12年目に入ります。

どんな課題があっても、必ず対話で解決するために政治家は存在していると考えています。そのために政治家として、国際的な交流や取り組みにはものすごく力を入れています。

岡本三成議員インタビュー

ファイナンスで日本がグローバルヘルスをリードする

ー岡本議員が力を入れている国際的な取り組みの一つに、グローバルヘルスがあると思います。日本がグローバルヘルス分野において世界をリードするために必要なことは何だと考えていますか。

大切なことは、ネットワークとファイナンスの2つだと考えています。

ネットワークとは何か。日本の国民皆保険制度は素晴らしく、日本のヘルスケア環境は世界最高水準です。この制度・仕組み・理念を日本の外交ネットワークを生かし、グローバルヘルスのレベルを上げていくことが大切です。コロナ禍で分かったのは、国の制度やヘルスケア環境が優れていたとしても、それだけでは自国民を守れない、という現実です。情けは人のためならず、という言葉もありますが、相手国のヘルスケアの水準を上げることが、結局は日本のためになります。お互い議論や協力をしあって、時には国際的にヘルスケアのバックアップができるネットワークが必要ですね。

ファイナンスについては、日本はグローバルヘルスの金融分野でチャンスがあると思っています。小池都知事が東京をグローバル金融センターにするための活動をされています。私も様々な場面でご一緒させていただきますが、非常によい取り組みだと考えています。

ーファイナンス分野では、ESG投資やインパクト投資などがグローバルヘルスに該当すると思います。ただしそれらは企業にとって社会的評価を高めるためのツールとしての側面もあるように感じます。

以前はその傾向が否定できませんでした。ただし現在は状況が変化しています。社会に必要とされるものなら、そこに投資すれば社会課題の解決にもなりますし、社会が必要とするなら投資からリターンが継続的に得られる、という流れに変わっています。

やはり投資はある程度儲からないと続きません。ミドルリスク・ミドルリターンで投資家からお金を調達してそれを社会課題の解決に使う、という流れが生じており、その仲介役として日本、及び日本の資金は大いに役立つのではないでしょうか。

「為替ならロンドン」「株式ならニューヨーク」となっているのと同様に、「ESG投資、インパクトボンド、カーボンニュートラルなどのグローバルヘルス関連のファイナンスインフラが整っているのは圧倒的に日本だ」と世界中から認識されれば、それらのファイナンスは日本が世界の中枢になります。それは何十兆円、何百兆円というマーケットになるかもしれません。金融市場が立ち上がれば、世界中から金融マンがやってきますし、弁護士そして会計士もやってきます。これらの人々が使うお金は大きいですし、新しい雇用も生まれるでしょう。「金融市場東京」から生じる価値は、東京そして日本経済のボトムアップに大きな効果があると考えています。

ー今年の「骨太の方針」には新たに「戦略的な国際保健」を推進するために今後インパクト投資をはじめとする民間投資の呼び込みを強化する方針などが盛り込まれました。

毎年作成される「骨太の方針」を元に来年度の予算が決まっていく非常に大事なものですから、持続可能なグローバルヘルスのためのキャッシュまわりの議論が活発化することは素晴らしいことです。

ー公明党の国際保健推進委員会でも、こういった資金の流れについて議論を重ねているのでしょうか。

党の国際保健推進委員会ではさまざまなテーマで議論をしていて、ファンディングは重要なトピックですから、議題に上ることはあります。

やはり委員会での議論の中心は、日本がどのような貢献を国際社会にできるかということですね。

日本のグローバルヘルスやODA(政府開発援助)について、「日本国内で経済的に厳しい人がいるのに、なぜ外国を支援するんだ」という批判の声も認識しています。ただ、これはチャリティーではなく、日本の外交戦略の一番の武器だと理解してほしい。同じ価値観を共有する同志国を増やしていく、ある意味「安全保障」で、外交戦略として非常に価値の高い取り組みなんですよね。

海外のためにしてあげたことが、回り回って、日本人の命を守ることにつながる。COVIDを経験したあとだからこそ、今、アクセルを吹かせるような環境ができてきているな、という感じです。

ーグローバルヘルス政策に関わるなかで、どのようなときにやりがいを感じますか。

グローバルヘルスの活動は、AIDS、マラリア、結核などの感染症に対する国の垣根を超えた活動が原点です。グローバルヘルスの活動報告書を見ると、感染症の死亡者数が世界で毎年200〜250万人減っています。活動は2000年頃からスタートしているので、累計すると5000〜6000万人の命を救っている計算です。命を守るのは政治家最大の使命ですので、この成果を見ると、私個人、そして一人の政治家としてやりがいや誇りを感じます。

こういった活動が回り回って日本のヘルス環境にも影響があると思いますし、グローバルヘルスのネットワーク作りを後押しするのではないでしょうか。

現役世代の負担が重すぎる 受益と負担のバランスの見直しが必要

岡本三成議員インタビュー

ー岡本議員が政治家としてこれだけは成し遂げたいと考えていることは何でしょうか。

国会議員の仕事は大きく分けると、①法律を作る、②予算を作る、③総理大臣を指名する、の3つに分けられます。10年先・30年先・50年先の日本はこうありたい、と思うような法律を作り、それを実現するような予算配分を実現したいです。

政治家の仕事はゴールを決めることです。そのゴールに行くための道筋を作るのが官僚です。その道筋に対し、この道で行けとかバスに乗れなど、プロセスの細かいことに政治家は本来口を出すべきではありません。経済産業省や財務省などの官僚は道筋を作るプロであり、素人の政治家が口を出すのは越権行為ですらあります。

財務副大臣も務めましたが、私の感覚だと現在の日本政府の予算は4割以上、約半数を65歳以上のために投じている状態です。現役世代の負担が重く、負担と受益のバランスが崩れています。公明党には定年があるので、私は当選し続けたとしても議員でいられるのはあと約10年です。この残りの期間で、これは将来の日本のためによいバランスの予算配分だよね、と言われる予算状態に持っていきたいですね。

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

岡本三成議員インタビュー

自分自身を過小評価しないでほしいです。
謙虚さは日本人の美徳でもありますが、その謙虚さによってチャンスを逃している面も否定できません。たとえ何の根拠がなくても、自信満々の人にチャンスが訪れると思います。だからこそ自分で自分を過小評価しない。これは心からお伝えしたいことです。

運も実力のうち、とよく言われますが、「運こそ実力そのもの」だと私は思っています。

そして運というのは、多くの場合に友人や周りの人からもたらされるものです。友人は多い方がよいですが、1人でもいればそれは素晴らしいことです。友人と交わり、その活動から人間関係や自身の未来が広がります。運、そしてそれを引き出す友人はかけがえのない存在であり、大切にしてほしいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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