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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー【各党政調会長インタビュー】立憲民主党・重徳和彦政調会長に聞く! 政権交代への道筋と国家ビジョン

【各党政調会長インタビュー】立憲民主党・重徳和彦政調会長に聞く! 政権交代への道筋と国家ビジョン

投稿日2024.12.19
最終更新日2024.12.19

2024年10月に行われた第50回衆議院議員選挙では、立憲民主党が148議席を獲得し、選挙前の98議席から大きく躍進しました。自民・公明両党が過半数を割る中、野党が主要な委員会の委員長ポストを獲得するなど、これまでとは異なる国会運営が注目されています。

政党の勢力図が変わる中、今回のインタビューでは立憲民主党の政調会長に就任された重徳和彦議員に、立憲民主党でどのような舵取りを行なっていくのか、今後の戦略についてお伺いしました。

(取材日:2024年11月22日)
(文責:株式会社PoliPoli 井出光)

重徳和彦議員

重徳和彦(しげとく かずひこ) 議員
1970年生まれ。総務省を経て、2012年衆議院議員総選挙で初当選(5期)。
立憲民主党の中堅・若手の政策グループ「直諫(ちょっかん)の会」会長。
2024年9月の立憲民主党代表選挙後、政務調査会長に就任。
趣味はラグビー観戦。

戦略は一定程度成功も、政策の打ち出し方に課題

ー2024年9月に行われた立憲民主党の代表選で野田佳彦代表が選出されました。代表選の結果をどう捉えていますか。

8月頭に「直諫の会」として「インパクト立国」という政策を発表しました。私が直諫の会の会長を務めていますので、その頃は私自身が代表選に出馬するのではといった声も上がっていました。

ただ、立憲民主党の代表選と同時に自民党総裁選も行われることになり、近いうちに衆議院議員選挙もありそうだと考えた時に、このタイミングで代表になるべき人物は誰なのだろうと。それで、私たちと考え方が近い野田佳彦 元首相に代表選に出ていただきたいと思い至り、お盆明けの8月19日に直諫の会の役員で野田さんへ出馬要請をしました。

当時、党内では刷新感が必要だという声が上がっていて、野田さん自身も「私は刷新感ゼロです」と言っていました。しかし、政権を取るためには、刷新と安定の両面が必要です。野田さんには安定感や経験があり、直諫の会の政策や顔ぶれには刷新感がある。我々が一体となって保守中道路線で立憲民主党を引っ張っていこうと、野田さんが出馬を決意してくださり、政策面では直諫の会が全面的にサポートしました。「政権交代こそ、最大の政治改革」「分厚い中間層の復活」の2本柱で打ち出し、無事、野田さんが代表に選ばれたのは非常に良かったです。

ーその後、2024年10月の衆議院総選挙では与党が過半数割れし、立憲民主党は98議席から148議席と支持を伸ばしました。衆院選の結果をどのように受け止めていますか。

もともとは自民党を支持していたけれど、裏金問題などで自民党に失望した方々が立憲民主党を支持してくださった結果だと思います。特に小選挙区が伸び、前回の57議席から倍近くの104議席になりました。

立憲民主党の強みは、議員がそれぞれの地元でしっかりと活動していること。前回の選挙では選挙区でぎりぎり敗れて比例復活した議員が、今回は軒並み小選挙区で当選しました。多くの新人議員が誕生しましたし、何人かの自民党の大物ベテランにも勝利を収めることができました。これは地元で精力的に活動してきた証です。全体的によく戦えた選挙だったと思います。

重徳和彦議員

一方で、比例票は伸び悩みました。自民党に失望した有権者の受け皿に我々はなりきれず、国民民主党に流れてしまったわけです。国民民主党の「手取りを増やす」、「103万円の壁」といったメッセージは分かりやすかったですね。有権者への政策の打ち出し方という点で、我々は大きな課題があると感じています。

SNSの影響も大きくなってきたので、拡散されやすい政策やワーディングも研究する必要があります。立憲民主党は真面目に精緻に政策をつくっていて、いわば政策の製造工場。ただし、製造して終わりではなく、今後は外に売ることを考えなければいけません。国民から見て、立憲民主党はどんな政策を売り出しているのか、分かりやすくアピールするのです。売ることに関しては現在は努力不足で、今後は政策を作るだけでなく売ることにも注力していかなければなりません。

市場経済の発展と社会課題の解決の両立目指す

ー2024年8月に発表した「インパクト立国」について詳しく教えてください。

重徳和彦議員

「インパクト立国」は新しい国家ビジョンです。日本は戦後から「欧米に追いつけ追い越せ」で高度経済成長、バブルを経験しましたが、その後、国家ビジョンがなく、失われた30年になってしまいました。失われた30年に終止符を打つためには、国家ビジョンが必要です。そこで、直諫の会が打ち出したのが、市場経済の発展と社会課題の解決の両立する国家を目指す「インパクト立国」です。

インパクト立国

インパクト立国

(2024年8月3日 重徳議員Xより)

たとえば、地球温暖化の問題。年々気温は上がってきていて、この夏も暑かったですよね。企業が利益を上げて給料が増えたとしても、こんなに住みにくい地球で生きていきたいのか、ということについてはもはや全ての人が関心を持たざるを得ないテーマになっていると思います。
資本主義社会では、一人ひとりは自分の金銭的なリターンを求める行動に走りがちです。しかし、私たち共通のプラットフォームがこの地球環境であり、地球環境の悪化は全員にとってマイナスでしかありません。

そこで、経済発展と持続可能な社会を両立するために、たとえばカーボンニュートラルに取り組んでいる企業に対する投資をしやすい環境を作る。インパクト投資市場を創設し、脱炭素や少子化対策、地域活性化など国家的課題に取り組む企業を支援することで、持続可能な社会を実現します。

「インパクト立国」はまだ直諫の会としての考えに留まっていて、立憲民主党の政策にはなっていません。これから党内で議論をし、インパクト投資をどのように進めていくべきか詳細をつめていきたいと思います。

ー少子化対策には具体的にどのように取り組んでいくべきか教えてください。

私たちが目指すのは、子どもが増える社会と書いて「増子化社会(ぞうしかしゃかい)」。
これを実現するためには、世代間格差を是正する必要があります。所得が高い人は年配の方に多く、若年世代は経済的に厳しい方が多いのが現状です。経済格差は、世代間格差でもあるのです。

子どもを持つ若い世代は、子どもの食費などの生活必需品、さらに教育費と大きな負担がかかっています。その負担を減らすために、子どもを産み育てる若い世代への経済的なサポートは欠かせません。教育無償化もその大きな要素だと感じています。教育費や子育ての支援も含めて、様々な仕組みをつくることによって、若い世代が子供を産み育てることに対して希望を持てるようにしていきたいです。

ー地域活性化については、どのようにお考えでしょうか。

「政府=公、市場=私(株主)」の常識を変えようというのが「インパクト立国」の考え方です。つまり、社会課題を解決する主体は政府、行政だけでなく、民間企業や住民一人ひとりです。

地方自治の現場では、住民と行政の協働がすでに常識です。地方議員とコミュニケーションをとると、必ず地域の交通網が重要課題として出てきます。オンデマンドタクシーは民間企業が運営していたり、地域の人の乗り合いのようになっていたりして、行政の直営ではないことが多いです。ライドシェアについても、民間企業や住民も主体となって課題を解決できるような仕組みにしていけたらと思っています。

ー「インパクト立国」では、かかりつけの「日本版家庭医制度」の導入を掲げています。日本版家庭医制度で、医療はどう変わるのでしょうか。

まず、医療のあるべき姿を大きく転換したいと思っています。これまで医師の仕事は病気を治療することでした。しかしこれからは、自分の担当の住民の健康状態をいかに維持させて病気を減らせるか。これが医師の最大のミッションであるべきです。

もちろん病気を治す大きな総合病院の重要性は今後も変わりません。大きな病気や緊急を要する場合は総合病院に行くべきです。一方で、気になることがある時に気軽に相談できる場が少ないのがこの国の課題です。結果として、不適切な救急車利用などで大病院の負担が増えてしまっています。

日本版家庭医制度によって、総合診療医と呼ばれる家庭医を全国に増やします。家庭医は、少し体の調子が気になるといった時に気軽に相談できるような存在です。家庭医は何度も同じ患者を診察するので、患者の家族構成や仕事内容まで深く理解するようになり、相手の立場に立って相談に乗ることができるのです。

また、食事や運動のアドバイスをするような栄養士やトレーナーなど医者以外のプロフェッショナルも必要です。多元的な営みを通して「治療から予防へ」の転換を図っていきたいと考えています。

選挙に勝ち続け、政権与党になる

重徳和彦議員

ー衆議院選挙を経て与党は過半数を割り、単独では法律案、予算案を可決できなくなりました。国会での合意形成の形もこれまでとは変わっていきそうですよね。

国会が本来あるべき姿に近づいていくと思います。これまで、政府が出す法案は事前に与党内で審査を行なっており、国会では与党は常に賛成の立場でした。野党側が修正すべき点を指摘したり、反対したりしたところで、与党の多数決で法案は通るわけです。場合によっては強行採決されてしまうこともありました。

なぜこういうことが成り立つかといえば、各委員会の委員長を与党側が占めていたからです。彼らはいわば政府の下請け委員長のような存在です。しかし今回、予算委員長、法務委員長、環境委員長などのポストを野党が取ることができました。政府の下請け委員長ではなく、国会での審議を大切にする委員長になったと思っています。このことによって国会の改革が進むと期待しています。

日本は三権分立の国ですから、政府の案に対して、国会で与党も野党もより良い考えを示す。そしてお互いの主張をぶつけ合う。これがあるべき国会での論戦だと思います。とにかく政府案を通すということだけではなく、たとえば石破総理が「野党の言うことはもっともだ」と思ったら、法案を修正する。野党案に基づいて修正協議に入ることがあってもいいはずなんです。各党から集まった国民の代表が、国会の場において多様な意見をぶつけ合い、ブラッシュアップされていく。こんな国会になっていくでしょう。

ー立憲民主党としては、今後どのように国会と向き合っていくのでしょうか。

これまで”野党の仕事は与党になること”だと言ってきました。それがまさに問われる国会情勢になったと感じています。

少数与党ですので、野党の協力がなければ政権運営はできません。その意味では、野党の責任がこれまで以上に重くなったともいえます。今国会で立憲民主党がどのように政策を進めていくかによって、いずれ与党として政権を担う力があるか試されています。

財源はどうなのか。自治体との関係はどうなのか。政策を実行に移すために役所と円滑にコミュニケーションを取れるのか。国民の皆様に「立憲民主党に政権を任せたい」と思っていただけるための、与党になる準備をする時期が来たと思っています。

自民党、公明党以外の野党が全て一致すれば過半数を超え、法案を通すことができます。しかし、各党がバラバラになって従来通りどんな予算や法律も、政府案がそのまま通ることになれば、国民の失望を招くでしょう。各国会の前に野党の間ではある程度協議をして、一致点を見出すことが必要だと思います。意見はそれぞれあるけれど、この2つの政策においては一致して臨もう。そんなふうに、オール野党側としての方針をできる限り定めていければと。

新しい国会の風景になったので、ルールづくりからしなければいけませんが、いくつかの政策において野党間で案を取りまとめ、政府与党とどちらの案がより良いかを国民の皆さんに判断していただけたらと思っています。

重徳和彦議員

―最後に、政調会長として成し遂げたいことを教えてください。

政権与党を取る。そのことに尽きます。あらゆる選挙に勝ち続けること。そのためには、野党はできる限り一本化をしなければいけません。選挙での候補者調整もそうですが、政権交代をするために、党のあり方も考えるタイミングが来ていると感じています。政策や思想が近い国民民主党との合流も含めて、できることを模索していきたいと思います。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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