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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー政局に惑わされず、政策本位の原点を忘れない。 国民民主党・森ようすけ議員が政治家として描くビジョン

政局に惑わされず、政策本位の原点を忘れない。 国民民主党・森ようすけ議員が政治家として描くビジョン

投稿日2024.12.26
最終更新日2024.12.26

第50回衆議院選挙が2024年10月27日に投開票され、99名の新人議員が誕生しました。『政治ドットコム』では、初当選を果たした国会議員の方々にインタビューし、政治家を志したきっかけや実現したい政策などを深掘りし、政治家の方々をより身近に感じられる記事を配信していきます。

今回のインタビューでは、国民民主党公認候補として立候補し、初当選を果たした森ようすけ議員に、政治家を志した原点や今後注力したい政策、現在の政治状況をどのように捉えているのかについて、お伺いしました。

(取材日:2024年12月10日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋 圭史)

森 洋介(もり ようすけ)衆議院議員
1994年大阪府茨木市生まれ。一橋大学 国際・公共政策大学院を修了。
環境省、外資系コンサルティングファーム、会社経営を経て2024年初当選。
厚生労働委員会、政治改革に関する特別委員会所属。

官僚として体感した「大きな方向性」を決める政治の力

ー環境省の官僚としてキャリアをスタートされていますが、環境省への入省を決めたきっかけや問題意識について教えてください。

「日本の経済成長に貢献する仕事に就きたい」という思いからです。そのきっかけは実業家・イーロン=マスク氏が、21世紀の成長分野として「環境」「デジタル」「宇宙」を挙げていることを学生時代に知ったことでした。

当時、環境分野は日本の取組が諸外国と比べて遅れていた分野で、逆に言えば日本にとってまだブルーオーシャンでした。ここを切り拓き、日本経済の成長のドライバーにしたいと考えたのです。

そう考えて入省した環境省では、気候変動対策、カーボンニュートラルに関連する政策立案に携わりました。例えば、2050年カーボンニュートラルを法律に位置付ける地球温暖化対策推進法の改正や電力分野の脱炭素化、排出量取引や炭素税、J-クレジット等の炭素の排出に価格づけをする政策であるカーボンプライシングの検討などを担当していました。今思えばこの経験が、私が政治の世界に挑戦するための重要なステップにもなっていたと思います。

ー官僚として気候変動対策に携わる中で、政治にしか解決できない課題があると感じたことはありましたか。

気候変動政策に関わる中で、政治の持つ力を何度も実感しました。例えば、2020年に菅義偉総理(当時)が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことにはとても驚いたことを覚えています。

この宣言をきっかけに気候変動対策を巡る状況が一気に前に進んだと感じています。それまではカーボンニュートラルの目標は「今世紀後半のできるだけ早期に実現していくことを目指す」とあいまいな表現に留まっていました。しかし、総理の宣言を機に現場まで一気に脱炭素に向けて舵を切る様子を目の当たりにし、政治が決断した際の力の大きさを痛感しました。

ー環境省を退職後、民間企業、企業経営を経て、政治の世界に飛び込まれています。その決断の背景を教えてください。

会社経営をしている時に、社会保障改革が必要だと思ったことが政治を志したきっかけです。従業員に支払う給与を計算していると、社会保険料がこんなにも高いのか、と驚いたんです。

自分が従業員サイドのときには意識していなかったのですが、健康保険と厚生年金保険の保険料は労使折半となるので、例えば額面で30万円の給与の場合、事業主と従業員ともに約42,000円負担し、合計で約85,000円も社会保険料を負担しているんです。さらに、所得税や住民税も天引きされるので、実際に手元に残るのは額面と比べて大きく減るんです。一所懸命仕事をしてくれた従業員にしっかりと給与を支払いたいのに、ものすごく天引きされて手元に残らない。

さらに、賃上げをしようとしても事業主負担分の社会保険料も上がってしまうので、賃金を上げたくてもなかなか上げられない。現役世代の負担する社会保険料が高すぎる。どうにかして変えなければならないと思いました。現役世代の社会保険料負担を軽減し、適切な負担を社会全体で分かち合っていくためには社会保障改革が必須。社会保障制度を変えるには政治しかないと思うようになりました。

また、子どもが生まれ、自分のことだけでなく子どもたち、そしてその先の未来の子どもたちが明るく希望を持って過ごすことができる社会を作っていきたいという思いが強くなったこともきっかけです。

ー政策を実現する上であえて与党・自民党ではなく国民民主党から出馬した理由を教えてください。

「対決より解決」という考え方の下、政策本意で国民一人ひとりに寄り添った政治に取り組んでいる国民民主党の姿勢に共感したためです。また、政策の方向性の一致も大きな理由です。社会保障改革も含めて私の目指している手取りを増やす経済社会の実現は、まさに国民民主党も掲げる政策です。

社会保障改革は待ったなし、一年でも、一日でも早く実現しなければならないと考えていたので、国民民主党から出馬することを選びました。まだまだ小さい政党ではありましたが、大きな船に乗るのではなく、自分が乗った船を大きくしていきたいと思っています。

ー手取りを増やすために、森議員が必要だと考える取り組みはなんでしょうか。

所得を増やすためには、社会全体のパイ(経済の総量)を増やすことと、パイの配分を変えることの2つのアプローチがあります。

前者の「パイを増やす」とは、端的に言うと経済成長です。この部分に関してはカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどの環境分野が日本の経済成長のドライバーの一つになると思っています。水素・アンモニアやCCUS(CO2の回収・貯留・利用)といった脱炭素技術の開発・社会実装は、2050年カーボンニュートラル達成のために欠かせません。これらの技術で日本が国際的な競争力を発揮し、経済を牽引していくことが重要です。「技術で勝ってビジネスで負ける」とならないように、GXも含めた新たな産業拡大に向けて積極的な投資を政治が後押ししていく必要があると思っています。

ただ、それだけでなく、少子高齢化や人口減少が進む中でパイの配分に取り組むことも重要です。全体のパイを大きくしようとする話は、言ってしまえば誰の痛みも伴わないので合意形成はしやすいのですが、パイの配分こそが政治が特に決断するべき部分だと考えています。

ー現在、国民民主党は所得税の控除額を103万円から178万円に引き上げることを目指し、自民公明両党と協議しています。

「103万円の壁」の引き上げは国民民主党が衆院選の公約にも掲げた政策で、基礎控除等の103万円を178万円に拡大するというものです。基礎控除は生活に必要最低限の所得には課税をしないという憲法25条の生存権を保障する制度です。物価上昇が進んで生活に必要なコストが増えている一方で、約30年間控除額が変わっていないんです。また、パート・アルバイトや学生の方が103万円を超えないように就労調整をするという支障も生じています。

手取りを増やすためには、賃金を増やすことも重要ですが、税負担と社会保険料負担を軽減することが欠かせません。「とにかく手取りを増やす」、そのためにまずスピード感を持って基礎控除等の引き上げによる所得税減税の議論を進めています。それだけでなく、私は厚生労働委員会に所属しているので、今後社会保障についてもしっかりと取り組みたいと考えています。

政局に惑わされず、政策本位の原点を忘れない

ーキャッチコピーである、「まじめな政治で明るい社会へ」に込めた想いや問題意識について教えてください。

「まじめな政治で明るい社会へ」というキャッチフレーズには、政治や政治家へのマイナスイメージを変えていきたいという思いを込めています。私が政治を志したタイミングは、ちょうど派閥の裏金問題が報道されている時期でした。当たり前のことが当たり前に行われない政治の現状を見て、政治を変えていきたいと思ったのです。

また、政治が国民一人ひとりの皆さまにとって遠い存在になっていることも問題だと感じています。政治に関心を持っている人が少なく、政治家もなんとなく遠いイメージがある。特に国会議員に対しては、「問題解決をしてくれる人」ではなく「何か悪いことしている人」というイメージが広がっているように思います。「ファンとアイドル」のような関係というと極端かもしれませんが、もう少しフラットに応援できるような身近な政治家が増えたらよいなと思っています。

ー今回の選挙では、与野党が拮抗する中で、国民民主党が「キャスティングボート」を握ったと言われています。初当選議員の立場から国民民主党をどのような政党に育てていきたいですか。

一番は初心を忘れないことだと思います。国民民主党の原点の考え方である「対決より解決」、「つくろう、新しい答え」を決して忘れない。キャスティングボードを握る第三局的な立場になると、政策ではなく政局を優先して考えそうになる場面も増えてくると思いますが、政局に惑わされず本当に実現すべき「政策」に向き合っていきたいです。

また、党が大きくなる中で、小さな声が拾われにくくなるリスクもあります。「つくろう、新しい答え」を忘れずに小さな声にもしっかり耳を傾け、現実的かつ実効性のある政策をさらに実現できる政党としていきたいです。

ー最後に今後の展望についてお伺いします。政策の実現を通じて、日本をどのような国にしていきたいですか。

私が目指すのは、お互いに応援し合える国です。少し抽象的な話になってしまいますが、SNS上のやり取りなどを見ていても、「怒り」や「悲しみ」、喜怒哀楽で言うところの怒と哀が目立つ傾向にあると思っています。必要以上に叩かれたり揚げ足を取られたりする印象も受けています。

喜んでいる人と一緒に喜び、楽しんでいる人と一緒に楽しめるような、そんな日本にしていきたい。こうした世界観を目指したときに、「所得が上がらない」、「好きなように仕事ができない」といった制約を取り払っていくことがまず実行すべきことになるはずです。

私が「手取りを増やす」と言っている背景にも「手取りが増えてお財布に余裕ができたら少し楽しい気分になれるよね」というシンプルな目標があります。目の前の政策を実現した先に、みんながお互いに楽しい気持ちを共有したり、応援し合ったりできるような国を作っていきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
株式会社PoliPoliが運営する「政治をもっと身近に。」を理念とするWebメディアです。 社内編集チーム・ライター、外部のプロの編集者による豊富な知見や取材に基づき、生活に関わる政策テーマ、政治家や企業の独自インタビューを発信しています。