世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数において、日本は世界146か国中118位と、国際社会のなかで低い順位となっています。特に政治分野での評価が低く、その背景には国会議員における女性比率が10%程度にとどまるなど、政治への女性参画が進んでいないことが指摘されています。
今回のインタビューでは、日本維新の会 ダイバーシティ推進局長・高木かおり議員に、「今を生きる、ともに繋ぐ」をビジョンに掲げるダイバーシティ推進局の活動を中心に、ダイバーシティ社会を実現するための取り組みについてお伺いしました。
(取材日:2024年7月18日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)
高木 かおり(たかぎ かおり)議員
1972年大阪府堺市出身。京都女子大学家政学部卒業。
三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て、2011年堺市議会議員(2期)。
2016年参議院議員選挙初当選、2022年再選。
(1)専業主婦から一転、政治家を志す
ーまず、高木議員が政治家を志したきっかけを教えてください。
直接のきっかけは、父が2010年に和歌山市長選挙に立候補したことです。私はもともと政治に強い関心はありませんでした。選挙には必ず行っていましたが、自分でなにか行動を起こすことはそれまでありませんでした。それでも父が出馬した際に選挙を手伝ったことで、さまざまなご縁ができました。残念ながら父は落選したのですが、その時のご縁で次は私が市議会議員選挙に立候補してみないかとお誘いを受けたのです。
しかし当時の私は子ども2人を育てる専業主婦です。政治家なんて私にはとてもできません、とはじめはお断りしました。ただ、父がお世話になった方から、「話だけでも聞いてくれ」と言われ、お断りするつもりでお話を聞くことになりました。すると、今度は「とりあえず出るだけ出てくれ」とお願いされてしまいました。
当時、政治のことは何もわからなかったのですが、私にも一つ気になることがありました。それは、子どもの通う小学校がすごく荒れていたことです。自分の母校の小学校に子どもを通わせていたのですが、私が小学生のときと雰囲気が違う。学級崩壊やいじめ、不登校など、さまざまな問題が起きていました。
それでも誰にどうやって訴えれば問題が解決するのかもはっきりしないので、公立の学校に見切りをつけて私学を目指すご家庭の動きも目にしました。その時、公教育ってこれでいいんだっけ、とすごく疑問に思ったんです。公立の学校に安心して通えるなら、高い授業料を払って私学に行かせる必要もありません。教育にかかるお金を負担に感じて、子どもを持つことを諦める人も増えるだろうなと感じたことを思い出します。そこで政治はまったくの素人だけど、何か変えられるんだったらやってみようか、と思って立候補したんです。
ー初出馬されたときはどのように感じましたか。
初の選挙戦は右も左もわからず、本当に大変でした。ポスターの作り方もビラの配り方もよくわからず慌てましたね。
しかも当時は子どもが幼稚園と小学生だったので家庭との両立にも悩みました。母親が選挙に出るとなった時、子どもは学童に入れるのか。それほど事例がないことですからよくわかりませんでした。今はお母さんが就職活動中でも保育園や学童に預けやすくなっていると思いますが… もともと専業主婦だったので、夫も子どもも環境の変化に合わせるのが大変でしたね。
ー当選後、市議会議員として活動されるなかでどのようなことを感じましたか。
市議会の中で希望通り文教委員会に所属できましたが、1期目はもどかしさを感じることが多くありました。課題はわかっているのに解決策がわからない。政治家なりの課題解決の仕方がわからず、武器がないまま議会に来てしまったな、と感じました。
ー断りきれずに政治家になったとお伺いしましたが、その後政治家を辞めようとは思わなかったのでしょうか。
経験を積む中で課題への解像度が上がってきた感覚があり、4年で政治家を辞めようとは思いませんでした。活動を通じて応援していただける方も増え、私も含め辞める選択肢はなかったですね。市議会議員の守備範囲は生活に身近なテーマすべてです。私がしっかりと声を届けなければと使命感や責任感を強く持つようになりました。
ー堺市議会議員の2期目で、国政に進出されています。どのような思いがあったのでしょうか。
私は子どもに関する政策、教育政策をやりたいという思いが強かったので、国政へ移る決断をしました。というのも、市議会で学校や教育について質問すると、市から「国の予算がないからできない」という答弁をもらうことがとても多かったんです。それなら国会議員の立場で政治をしなくてはと思いましたね。
参議院議員になって3年目の2019年に、日本維新の会が一丸となって取り組み続けてきた幼児教育の無償化が決まりました。3歳から5歳までの幼児教育について、大阪市では先行して無償化を行っていました。これが国全体の政策になったんです。こんなに早く実現すると思っていなかったので、正直驚きました。国政でがんばってきてよかったと思えた瞬間でしたね。
(2)ダイバーシティ推進局長として挑む、これからの政治参画
ー高木議員は、日本維新の会のダイバーシティ推進局長を務められています。ダイバーシティ推進局とはどのような組織なのでしょうか。
ダイバーシティ推進局は、日本維新の会にもともとあった女性局と青年局を統合し、生まれた新組織です。性別だけでなく、年齢や障がいの有無などさまざまな違いを超えた協働ができる社会を目指し活動を行っています。有志のメンバーで構成されていて、異なるバックグラウンドを持つ議員同士がいろいろな意見を言い合える場として機能しています。その場で政策を決めていくというよりは、社会課題を解決するためにいろいろな人から話を聞き、議員同士でお互いの意見を出し合い、またそれぞれの意見を聞く場を作ることにより、これらが政策につながっていくことを期待しています。
ー日本の国会議員に占める女性の割合は1割程度と、先進国のなかでも低くなっています。女性の政治参画はなぜ進まないのでしょうか。
日本では性別役割分業の意識がまだまだ残っていると思います。男性が外で働き、女性は育児や介護など家庭内で働くもの、という規範はまだ根強い。なので女性自身も政治活動と育児・介護の両立なんてとてもできないと考えがちです。また政治活動、特に選挙にはお金もかかるので、女性が出馬したいと考えても必要な資金を集められないという問題もあります。
また、女性の政治参画が進まない理由の一つは、女性議員が増えることの意義が十分に理解されていないことだと思います。私は、子育ての当事者であった女性議員がもっと多ければ、少子化はもっと早く対策できていたんじゃないかと思うんです。国政に当事者である女性の声が届けられず、少子化が叫ばれていたのに適切な対策をとれなかった。少子化がここまで進んでしまったのは痛恨の極みです。
ー高木議員は、女性議員の割合をどこまで増やすべきとお考えでしょうか。
現在、超党派の「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」の事務局長を拝命しており、女性国会議員の数をまずは3割に高めていきたいと思っています。また、ただ数を増やすだけではだめで、継続して活躍する女性議員を増やしていかなければいけません。小泉チルドレン(※2005年9月の第44回衆議院議員総選挙で初当選した自由民主党の新人議員のこと)の誕生など、いっときの選挙の結果によって女性議員が増えることもありましたが、本当に大切なことは政治経験の豊かな女性議員が増えることです。期数を重ね、政治の現場で活躍するためのスキルや知識を高めてこそ、本当に自分が実現したい政策を実行できるようになりますからね。
ー「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」ではどのような活動をされているのでしょうか。
まず2018年に成立した「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」を2021年に改正し、女性が立候補や議員活動をしやすい環境を整備することを政党や行政に義務付けました。
今年は、候補者数に占める女性の割合を政党助成金の配分に反映させる政党助成法の改正を目指していましたが、各党の合意が得られず残念ながら提出に至りませんでした。クオータ制を盛り込んだ公職選挙法の改正も含め、女性の政治参画を促す法改正に今後も取り組み続けていきます。
また、直前まで国会の予定がわからない、突然深夜国会となるなど、通常の国会運営についても問題があると思っています。子育て中の方々にとっても弊害ですし、何といっても深夜国会は莫大な残業代も発生します。そうしたさまざまな弊害が生まれているのではないかと問題提起したいと考えています。
(3)地域の課題を解決するための仕組みづくりを
ー今後、高木議員が取り組みたい政策テーマについて教えてください。
ふるさと納税の適正化に関心を持っています。今のふるさと納税のシステムは返礼品を受け取ることが目的化している部分があり、結果的に自治体間の返礼品競争が過熱しています。
私自身はふるさと納税の制度に肯定的です。地方では人口が減り、中には消滅危機にあるくらい過疎化が進む自治体も多い。そのような自治体にとってふるさと納税の財源は魅力的ですし、一定の成果はあったのではないかと思います。
一方で、自治体の中にはふるさと納税に関する業務を仲介業者に丸投げするところもあり、すごくもったいないと感じます。自分たちの自治体の魅力を発掘して、寄付を集める方法を考える。これを自治体の職員が考えて実行することが何より重要です。自治体の中にノウハウが蓄積され、職員の方々の人材育成にもなります。仲介業者に丸投げしてしまうと成長の機会が失われ、ふるさと納税の運営コストを払っているだけの状態は非常に残念です。
日本は長らく寄付文化の醸成が課題だったのですが、返礼品を伴わない災害支援などにも寄付が集まり、また教育や福祉に使途を限定した寄付や、クラウドファンディング型の寄付も増えてきました。これからはよりいっそう社会課題や地域課題にお金が回るような仕組みが必要なのではないかと思います。
これからもさまざまな地域の課題が生じることかと思いますが、国がトップダウンで一方的にルールを押し付けるのではなく、地方の声、現場の声を国に的確に伝えていくことが大切です。市議会議員の経験も活かし、これからも国政に地方の声をしっかり届けていきたいと思います。