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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー自由民主党・金子俊平議員に聞く!「社会保障としての住宅」がこれからの日本に必要な理由

自由民主党・金子俊平議員に聞く!「社会保障としての住宅」がこれからの日本に必要な理由

投稿日2024.8.23
最終更新日2024.08.23

日本では、2006年に施行された住生活基本法に基づき、おおむね5年ごとに住生活基本計画が策定され、住宅政策が展開されてきました。2021年度に閣議決定された住生活基本計画では、「社会環境の変化」の視点、「居住者・コミュニティ」の視点、「住宅ストック・産業」の視点から国民生活の安定に寄与するための住政策が総合的に推進されています。今回は「自民党住宅対策促進議員連盟」の事務局長を務めるなど、住宅政策をライフワークとして取り組む自由民主党・金子俊平議員に、これからの日本の住宅政策について、また金子議員が政治家を目指した背景や国家ビジョンをお伺いしました。

(取材日:2024年7月24日)
(文責:株式会社PoliPoli 秋圭史)

金子 俊平(かねこ しゅんぺい)議員
慶應義塾大学経済学部卒業。三井不動産での勤務や金子一義衆議院議員秘書、
国土交通大臣秘書官を経て、2017年衆議院議員初当選。現在2期目。
これまで財務大臣政務官や党副幹事長を歴任。趣味は読書。

国政はチームプレー。信頼感を持ってもらうことが何より大切。

ー学生時代から政治家になろうと考えていたのでしょうか?

政治家になるつもりはありませんでした。むしろなりたくないと思っていたくらいです。政治家だった父は土日は基本家におらず、休みの日に家族で一緒に過ごした思い出も多くはありません。父の姿は自分が家庭を持つときの反面教師にしよう。正直そう思っていたんです。だから慶應義塾大学に進学するときも政治学科だけには入らないでおこうと思っていました(笑)

ー三井不動産に入社後、6年目に父・一義氏の秘書に転身されました。きっかけはなんだったのでしょうか。

転機はある年の衆議院選挙で父を手伝ったときでした。それまでの選挙構図が一変し、血で血を洗うような厳しい情勢のなかで選挙をしていたとき、地域の支援者の方から「僕らは日頃から親父さんの応援をしているのに、君は?」といわれまして…。

「親父さんが政治家をやっている間だけでも秘書として手伝ったらどうだ」とも言われ、そのとき率直に「その通りだな」と。天命と捉えて飛び込んでみようと思いました。秘書になるのと政治家になるのは別だとも思っていたのですが、その後は周りからの応援もあり、父が政治家を引退するタイミングで立候補して初当選に至りました。

政治家になってみて、政治家の言葉には大きな責任が伴うものと痛感します。秘書時代は父親の言葉を有権者のみなさんにそのまま伝えることが仕事でした。しかし政治家になった後は、自分の考えを自分の言葉で伝えることになります。当然、父の考えと私の考えがすべて一致することはない。だから有権者のみなさんからは「なんで方針が変わったんだ」とか「これまで言っていたことと違うじゃないか」とお言葉をいただくこともあります。政治家として言葉を尽くして丁寧に説明することが何より重要だと思います。

ー父・一義さんから政治家としての教えを受けることはありましたか。

人を裏切るなと言われましたね。国会議員は一人で政治をすることはできません。どんなに優秀な人がいくら素晴らしい政策を作っても周りの人が応援してくれなければ、実現できないのです。実現したい事を実現するうえでは周りからの信頼が不可欠ですが、信頼は一朝一夕で得られるものではありません。同僚議員や官僚、支援者の皆さんはもちろん、地域の仲間・党の仲間・事務所のスタッフの皆…それぞれ好調なときもあれば悩みの時も当然ある。どんな時でも自分なりの一貫性をもって周りの人に接することを大切に日々の活動へ取り組んでいます。

「社会保障としての住宅政策」が今こそ求められている

ー金子議員は住宅政策をライフワークにしているとお伺いしています。このテーマに取り組むきっかけはなんだったのでしょうか。

前職の経験を活かせると思ったからです。住宅や不動産の世界は税制が複雑で、100%完璧に理解できる人なんていないのではないかと思うほどです。固定資産税をはじめ、税の種類がとても多いですし、その運用や制度自体も毎年のように変更されています。私はたまたま不動産業界出身なので他の議員よりもキャッチアップするコストも小さいですが、国会議員になっていきなりこの分野に取り組もうとしてもなかなか大変だと思います。

住宅産業は裾野が広く多数の人が関わっていますし、個人にとっても住宅は人生の買い物の中で一番大きなものであると同時に人生の多くの時間を過ごす場所ですから、住環境を充実させることが国民の幸福度を上げていくことにつながっていくだろうという思いがあり、できるだけ住宅政策に携わっていきたいと初当選以来考えてきました。

ー日本の住宅政策にはどのような特徴があるのでしょうか。

我が国の住宅生活は戦後一貫して国民のみなさんに持ち家を持ってもらうことを目標にしてきました。戦後の焼け野原から復興を実現する上で、個人が持ち家を持つこと自体、豊かさの象徴のような意味もあり、大きな意味があった政策だと思います。

ただその政策を追求してきたあまり、持ち家を買える人だけに住宅政策の支援の恩恵が届く構図になってしまっている点が課題です。例えば、新築なら住宅ローン控除や自宅を耐震化したりエコ性能を上げるリフォームに対する補助金もありますが、政府が個人の資産を直接支援する政策は非常に限られているなか、これまでいかに持ち家を持つ人に対して手厚く支援してきたかを示す事例だと思うんですね。

ただ現実には全員が住宅を購入できるわけではありません。これからの時代は社会保障としての住宅政策も求められていくでしょう。持ち家を購入できない・しない人に対しても、満足度の高い住む場所を提供し続けられる環境整備がますます重要になっています。

例えば歳を重ねるとどうしても賃貸住宅に入居することが難しくなります。大家さんが孤独死を嫌がったり、家賃滞納を懸念したりするからです。政府として大家さんたちが前向きに高齢者の人たちを受け入れられるようにサポートする必要があります。

それに加えて質の高い公営住宅の整備も重要なテーマです。 先進諸外国に比べて日本では国営の安い住宅の数が少なく、比較的家賃の高いUR賃貸住宅や地方自治体が運営する公営住宅が整備されるくらいですね。東京都のように財政的にも余裕のある自治体であれば、居住性も高く利便性のある公営住宅を用意することができるのかもしれませんが、それ以外の地方では実際に住む選択肢として考えられるくらい利便性の高い公営住宅が不足しているのが現状です。そのぶん、民間の賃貸住宅に頼らなければなりません。投資効率を考えれば、高い断熱性能を有する住宅を整備するのは公的支援がなければ難しいでしょう。

ー現在推進されている「住生活基本計画」のポイントを教えてください。

デジタル化を進めることが明記されたことはインパクトが大きいと思います。住宅業界も人手不足が深刻で、デジタル化による業務の効率化・生産性の向上は重要な課題です。ただ現場の実情に合わせて支援のあり方を変えていく必要もあります。デジタル技術の導入はこれまでの設計の手順ややり方を根本から変えるものだからです。

都市部の大きな建築事務所であればすぐにデジタル化を進めることができるかもしれませんが、中小規模の事業者ではデジタルに不慣れな人が多い。状況を見極めつつ最適な支援ができるようにしたいですね。

住宅は個人の資産でありながら社会の中の公共財といった側面もあります。住宅一つで街並みはがらりと変化するのです。次の世代にまでしっかり受け継がれるためには、耐震性強化はもちろん、環境に配慮された住宅の建築を推奨するなど社会と調和した住宅が作られていくようにサポートすることも重要です。

ー党内や政府での議論をまとめる上で重要だと思っていることはなんですか?

決断をするときには何が国家・国民のためになるのかという観点に立つように心がけています。もちろん政策を考える上では住宅業界の方々と意見交換をすることはあります。ただ社会全体を考えれば、業界の方々のリクエストを100%受けることが適切でない場面もあるのです。

だからこそ今回の住生活基本計画では環境性能に優れたZEH(ゼッチ)以上の家だけを住宅ローン控除の対象としました。住宅業界からは一部反発を受けたことも事実ですが、今後の我が国が進むべき道を考えれば、環境性能のよい住宅にフォーカスすることは重要だと思っています。

全員が完璧に納得する答えを出すことは不可能です。だからこそ、国が政策を通して方向性を示していくことが重要だと思います。議員連盟の事務局長は難しい立場ですが、非常にやりがいを感じます。

誰も切り捨てない政治を実現し、地元の将来に貢献する

ー政治家として今後どのようなことに取り組んでいきたいですか。

私の選挙区は日本でも有数の過疎地域を抱えており、これをなんとかしたいと思ったのが私の政治家としての原点です。

現在、地方はどうしても都心への人材の供給源のようになってしまっていて、中学・高校までは地元で過ごしても進学や就職を機に県外に出ていってしまい、帰ってこない方が多い。過疎化が進むことで、地方にはお金もなければ新しいアイデアを生み出していくためのリソースもなくなる。そうしてますます人が流出していくという悪循環にあります。

この構図を抜本的に解決するために、国会議員として税の仕組みを変えたいと思います。例えば地元を出て都会で生活をする人が納める住民税の一部は元々の出身地であるところに少し納付するような形はどうかなと。ふるさと納税の仕組みはあるけど、どうしても商品が目当てになってしまう。お金をかけて地方で子どもを育てたのに、税金をもらえるタイミングになると都会に納められるとなると地方は納得できません。お金の流れを変えることで地方にも余裕が生まれ、魅力的な地域を作るためのアイデアを実行しやすくなるのではないかと思います。

それに加えて地方のインフラ整備も継続的に取り組みたい分野です。私の地元は新幹線も地下鉄も空港もない地域です。道路が台風によって寸断されたら、すぐに孤立してしまいます。地方には1本の道路に頼っている地域がたくさんあります。人が通らない道路になんで予算をつけるのかとお叱りを受けることもありますが、将来の暮らしの安全を守るためには今から投資しておく必要があるんです。政治家としての原点を忘れずに、この国に生まれ育ったすべての人を切り捨てないような政治を実現していきたいですね。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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