「政治をもっと身近に。」
政治に関する情報をわかりやすくお届けします。

政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー日本維新の会・吉村洋史共同代表に聞く! 政治家としての原点と日本維新の会のこれから

日本維新の会・吉村洋史共同代表に聞く! 政治家としての原点と日本維新の会のこれから

投稿日2024.11.27
最終更新日2024.11.27

日本維新の会代表選挙が11月17日に告示され、12月1日に投開票が行われます。『政治ドットコム』では代表選挙に立候補する各候補者の政策にフォーカスし、長期的な国家ビジョンや若者世代へのメッセージを伝えるインタビュー記事をお届けします。

今回のインタビューでは日本維新の会代表選挙への立候補を表明した吉村洋文・日本維新の会共同代表に、日本維新の会のこれからのビジョンとその実現のために注力したい政策をお伺いしました。

(取材日:2024年11月19日)
(本記事は「政治ドットコム」YouTubeチャンネルのインタビュー動画を元にしたものです。本編動画はこちらからご覧ください)

吉村洋文(よしむら ひろふみ) 日本維新の会共同代表
1975年生まれ。現在は大阪府知事(2期)、大阪維新の会代表も務める。
2011年大阪維新の会公認で大阪市会議員初当選。2014年維新の党公認で衆議院議員初当選。2015年前大阪市長初当選。現在2期目。弁護士、税理士。
座右の銘は「意志あるところに道は拓ける」。

人生の一部を「公に尽くす」ために政治の道へ

ー吉村さんはなぜ政治家を志されたのでしょうか。

元々私は政治の世界とはまったく縁のない環境で育ちました。政治は一部の人がごく限られた空間で進められるものと思っており、遠い世界だなと。大学卒業後、弁護士として働いていた中で、公私ともに仲よくしていた大阪市出身のタレント・やしきたかじんさんに大阪維新の会代表だった橋下徹さんをつないでいただいたのが、政治家を目指す上でのターニングポイントでした。

当時の橋下さんは大阪府知事に就任し、大阪府の改革を強力に訴えていました。橋下さんの考えに触れたことをきっかけに、自分を育ててもらった大阪や日本のために、人生1度しかない中、その一部でもよいから公のために尽くしてみようと思ったんです。

橋下さん自身も自分一人で改革をやり切ることはなかなか難しいと実感し始めており、同じ改革マインドを持った仲間を議会に増やそうとしているときでした。その中で橋下さんと、やしきさんから市議会に挑戦してみたらどうか、と背中を押され、立候補し、なんとか初当選することができました。

その時掲げた大きな政策が「大阪都構想」でした。それまでの大阪市と大阪府はどちらも大きな自治体で二重行政状態にありました。お互いがいがみ合って政策をなかなか実行できず、経済成長もできなかった。この構造的な問題を解決することが「大阪都構想」で、大阪市と大阪府を一つにして、成長する都市を作ろうとする構想です。

ーその後、2014年に維新の党公認で衆議院議員に転身し、2015年には大阪市長に就任されています。どのような背景や思いがあったのでしょうか。

「大阪都構想」を実現するための住民投票を実現するためには国や国会との調整も必要でしたから私自身が国会に行きました。ただ、私が国会議員だった2013年に「大阪都構想」の住民投票は否決され、頓挫した。その時に橋下さんから「自分は一回身を引くから大阪市長を吉村さんにやってもらいたい」という話を受け、今に至っています。

そのときどきの身分にこだわる政治家になるのではなく、今の世代がやれるところまでやり切って、後に続く世代が出てくる。その循環によって、政治が行われることが必要だと思います。

ー2019年には大阪府知事に当選され、現在2期目です。また、日本維新の会の共同代表も務めていますが、改めてこの「共同代表」とはどういう役割なのでしょうか。

代表がなかなか手が届かない範囲をカバーし代表を支えることが共同代表の役割です。共同代表というポジションが日本維新の会にあるのには理由があります。それは他の政党と違って、日本維新の会が党の代表に国会議員以外がなる可能性がある政党だからです。

他の政党は基本的に国会議員を頂点としたヒエラルキーのある組織構造になっていますよね。ただ日本維新の会では地方議員も、自治体首長も、国会議員もみんな横並び。それぞれの役割が違うだけという発想です。これまでも橋下さんや松井さんはそれぞれ大阪府知事、大阪市長という立場で党代表も務めてきました。

ただ国会議員ではない人が代表になったとき、国会で国会議員しかできない仕事、たとえば党首討論に誰が出席するべきかとか、国会の代表質問を誰がやるのかという問題が生まれてきます。このことに対応するために共同代表制を採用しているんですね。

私が仮に代表に就任した場合、非常に重要な国政のアジェンダについては党としての方向性を示していきたいと思っていますが、日々の実務は共同代表を中心に国会議員団がまとまってやっていけるような組織・役割分担にしたいと思っています。

ー10月に衆議院議員総選挙が行われ、大阪では日本維新の会の強さを誇った中で、党の中期経営計画に掲げていた野党第一党は実現しませんでした。この結果についてはどう受け止めていますか。

非常に厳しい結果だったと思います。大阪でも国政政党として積極的に支持されたとは言えず、かろうじて私たちが受け皿になることができた、という認識です。自民党に対して、政治と金の問題で大きな逆風が吹き、投票日直前には非公認候補者に2000万円を渡していたスキャンダルもありました。その中で維新がこれまで実行してきた大阪での改革の実績で何とか勝利をすることができたんだろうと思います。大阪の外では受け皿になりきることができませんでした。このままでは日本維新の会が消滅してもおかしくない。そんな危機感を持ち、なんとか立て直したいという思いで党の代表に立候補しました。全国政党を目指していくためには国政政党として存在する意義をしっかり固め実行すること、そしてその理念を実際に実行する権限がある首長を大阪以外で誕生させることが重要なのではないかと思います。

結党の原点に立ち返り、体系立てた政策を浸透させる


(代表選立候補にあたって発表した政見パンフレット:日本維新の会代表選特設ページ、https://o-ishin.jp/convention2024/ より)

ー日本維新の会の代表に就任した場合、どういった国政を考えていますか。政見の中の「りんご」とはどういうメッセージなのでしょうか。

目の前のりんごをもいでいくような政治ではなく、りんごが育つための土を耕すことに力を入れる政治をしようというコンセプトです。このコンセプトは実は私が言い始めたものでもなくて、2010年に日本維新の会を結党したときにみんなで決めた理念なんです。党として日本社会での存在意義を固め、社会の中で根を張る形で軸を作った先に具体的な政策が生まれます。目の前の色々な政策に飛びつくのではなく、「背骨の思想」に基づく政策を訴えていく。これが重要です。

これまで大阪市長・大阪府長としてこのパーパスを共有してきました。私が代表になったら国政政党においてもしっかりこの考え方を党内外に訴えていきます。

大きな3つの方向性「次世代のための政党」「道州制を実現する政党」「永田町文化を変える政党」を土台として、そのそれぞれに新しい3つのコンセプトがぶら下がり、その下に色々な政策がついてくる。そんなイメージです。

日本維新の会は次世代のための成長を実現し、多極分散の成長国家を目指す政党です。今の時代、すべて東京・霞ヶ関に一極集中することはそぐわない。それぞれの都市がニョキニョキ成長して切磋琢磨しながら成長していく。道州制が簡単に実現できないことはわかっていますが、そこに至るプロセスとしての多極分散型の成長国家を目指していきたいですね。

最後に永田町文化を変える政党として日本維新の会を位置付けたいです。今の政策決定のあり方は国会の中で政策を議論する前にすでに結論が決まっている。国会議員の人間関係の中で重要な決定がなされ、どこで決まってるかすら外から見えない状況。これを変えていきたいと考えています。

ー現在、自民党石破政権の下で地方創生が打ち出されていますが、地方分権という意味でどう見ていますか

石破政権・自民党が現在進めている地方創生は地方創生とはまったく呼べるものではないです。補助金をつけてバラ撒くだけでは地方創生にはつながりません。村おこし・町おこしは本来それぞれの自治体が取り組むべきものです。

国が地方創生のために何をやるべきか。それは国が持っている権限を自治体に渡していくことです。それぞれの自治体が自由にチャレンジできる環境づくりをすることが国がやるべきことです。

そのために日本を州の単位で再整理し、州都を中心に経済成長するべく、各都市が切磋琢磨するような道州制を実現したい。一方で国は外交安全保障やマクロ通貨、防衛に集中するような統治のあり方が必要ではないか。それぞれの地域で若い人が自分たちの希望を叶えられるような環境を実現すること。それが政治の役割です。

ー国からの権限が剥がされてないとのことですが、大阪府知事を務める中で具体的な課題はありますか。

わかりやすい例はライドシェアです。海外ではすでに普及が進んでいますが、日本では限定的な導入に止まっています。安全を確保するためのルールを整備した上で、しっかり運用することができれば地方の生活は便利になる。

特に大阪では、来年万博が開催されますよね。タクシー不足が深刻な課題としてある中で、ライドシェアは課題解決のための有効な選択肢です。その中で「大阪が責任を持つからライドシェアをやらせてくれ」と手を挙げても、国は拒否している。全国一律でなければいけないという理由からですね。ただ街には個性がありますから、それぞれの都市ごとに実施すべきタイミングもそれぞれなはずです。

自民党はタクシー業界を中心とした様々な業界団体から献金を受けています。業界団体として既得権を守ることはその行動原理として本質だと思うんですね。ただ献金を受けてしまうと政治はどうしてもそちらに向いた政策をやろうとする。この構造自体が新しい産業が生まれ、新しいプレイヤーが参入する障壁になってしまう。こういう政治をしている限りは経済成長はできません。だから「失われた30年」があるんです。

ライドシェアに限らず、色々な分野で似たような事例があるんです。日本維新の会としてなんとか壊したい壁ですね。

ー「永田町文化を変える政党」において、日本維新の党ならではの新しい政策決定のあり方についてどのようなイメージを持っていますか。

今、これまでの永田町文化を変える大きなチャンスが来たと思っています。これまでの政治は密室で物事が決まってきました。ただ先月の衆議院議員総選挙の結果、与党が過半数割れしました。つまり野党の力を借りないと政策実現できない。これは政策決定のあり方そのものを変える絶好の機会です。

与党の重鎮議員が「飲み食い政治」の中で政策を決めていくのではなくて、本来の政策の責任者である各党の政調会長を中心に、ちゃんとした会議の中で議論を積み上げて決めていく。そのプロセスを明確にしていくべきです。

ー日本の経済成長を考える中で、日本維新の会として国主導で特定の産業を育てる考えはありますか。

基本的に成長分野を政府が特定した上で投資をすることは失敗するケースが多いと認識しています。ただ民間は政治家よりはるかに自由な発想で新しいことにチャレンジしていきます。それぞれのイノベイターがどんどんチャレンジできる土台を作る方に政治が回ることで、結果的に社会全体の成長に資すると思います。まさに政見で掲げた「りんごの実がなる木が育つ土を耕す」政治を実現していきたい。

ただ例外として、安全保障を考えなくてはなりません。たとえば半導体もそうですけど、安全保障上、非常に重要な産業は民間だけには任せられませんよね。その分野にサプライチェーンを構築するためには投資を惜しまず、国が下支えすることが重要です。

政治家としての原点に立ち返りながら行動を続ける

ー吉村さんが政治家として成し遂げたいものは。

まず大阪府知事の任期がありますから、あと2年半の任期内で公約したことを成し遂げることです。大阪も日本の一部ですから大阪がよくなれば日本がよくなる。その中で何をするのか。まだこの場では言えないこともありますが、自分がなぜ政治家になったのかという原点に立ち返って行動していきたいと思います。

まず公約を守り実現すること。残念ながら公約を破る政治家、多いじゃないですか。国民の皆さんからすると「あれ?なんのために投票したんだっけ」と。私はこれが許せないんです。初心を忘れず、必要だと思うことに邁進したい。2年半後、その結果は出ていると思います。

ー最後に読者へのメッセージをお願いします。

現役世代・若い世代のみなさんはぜひ政治に参加してほしいと思っています。これからの日本は少子高齢化で人口が減っていきます。今の制度では、今の現役世代の方々の子や孫の世代はもっとしんどくなる。このことは政治家としてしっかり伝えなくてはならないことです。

だから次の世代を踏まえて、今から制度を整えておく必要があります。例えば教育の無償化。私自身が大阪で進めていることですが、せめて高校の授業料無償化までは日本全国に広げていきたいと考えています。

また社会保障改革は極めて重要です。今回の政見では「次世代のための政党」の中に「社会保障改革」を入れています。国の年間の社会保障費は医療費だけで47兆円。年金で55兆円、合わせると100兆円を超えてくる巨大な支出です。給与明細を見ていただくと、手取りに一番影響しているのは税よりも社会保険料だとわかると思います。

少子高齢化が進めば、この先、社会保険料の負担はさらに増えていきます。何もしなければ少子高齢化社会で現役世代の負担が増えていくばかりですから。これを解決する本質的な改革をどこかの政党が切り込まなければならない。それが日本維新の会です。非常に分厚い岩盤ですが、挑戦していきます。「日本に日本維新の会という政党があって助かったな。よかったな」という声が将来上がるような政治・政党を実現していきます。

yoshimura

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
株式会社PoliPoliが運営する「政治をもっと身近に。」を理念とするWebメディアです。 社内編集チーム・ライター、外部のプロの編集者による豊富な知見や取材に基づき、生活に関わる政策テーマ、政治家や企業の独自インタビューを発信しています。