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政治ドットコムインタビュー政治家インタビュー自民党・青年局長の鈴木憲和議員が語る 「若者の政治参画」と「日本の未来」

自民党・青年局長の鈴木憲和議員が語る 「若者の政治参画」と「日本の未来」

投稿日2023.8.9
最終更新日2023.12.22

2016年に選挙権年齢が18歳に引き下げられ、若者の政治参加に大きな関心が集まりました。しかしながら、直近2回の国政選挙では10代〜30代の投票率が全年代の平均投票率を下回り、低い水準にとどまっています。日本の未来を担う若者世代の政治参画は重要な課題です。

2022年に、“若手政治家の登竜門”とも呼ばれる自民党・青年局長に就任した鈴木憲和議員(以下、鈴木議員)に若者の政治参画と、自身の政治への関わり方について話を聞きました。

(聞き手・文責:株式会社PoliPoli 中井澤卓哉)

鈴木憲和議員インタビュー

鈴木 憲和(すずき・のりかず)氏 

1982年生まれ(41歳)。衆議院議員(4期)。元農林水産省官僚。
2012年30歳で山形2区から初当選。外務大臣政務官を経験。2022年より自民党青年局長。
趣味は「美味しいお米探し」。

(1)面接で衝撃を受け農水省へ

ー政治家になる前は、農林水産省にいたとお伺いしました。当初から政治や行政の世界に興味があったのでしょうか?

元々、社会のために役立つ仕事をしたいと思っていました。

私の両親はともに商売人で、山形から東京に出ていろいろ事業をやっていて、その時は高度経済成長やバブル経済もあって比較的うまくいったんですね。その姿を見て、自分自身お金を稼ぐことも大切だとは思っていたのですが、その両親から「社会の役に立つ仕事をしてほしい」と言われていました。「社会の役に立つ仕事」の選択肢の一つに霞ヶ関で働くというのがあって、農林水産省(以下、「農水省」)に入りました。

ー霞ヶ関の中でも農水省を選んだ理由はなんだったのでしょうか?

農水省を選んだ理由は2つあります。

1つ目は、農林水産業がこの国の一丁目一番地だからです。誰もがこの農林水産業が重要だと思っているはずで、特に食の産業は、日本国内で全くやらなくてよいと思う国民はいないはずです。

2つ目は、農林水産業に携わっている生産者の人が全然儲かっていない現状を、政策で変えられる余地があるのではないか、と思ったからです。後継者がいない問題や、地方から人が減っていく問題なども含めて、政策を変えることで改善する余地があるのではないかと考えていました。

鈴木憲和議員インタビュー

それと、農水省の面接で、当時の人事の課長から言われた言葉が今でも心に残っていて、農水省に入ろうと思ったきっかけになったばかりか、その後の人生を左右する言葉にもなったと思ってます。

「君は、頭では考えてきたんだね」と言われたんですよ。自分なりにその言葉の意味は、「頭でこれは正しいよねって思ったことも、実際には人が動いてくれないと意味がない。政策をいくら作ったとしても、人の行動が変わらないと何も意味がない。」ということなのかなと思ってます。正しいかどうかだけではなくて、人の心や情熱の部分が大切だということだろうな、と受け取って、そんなこと人生で一度も考えたことがなかったのでとても衝撃でした。それで農水省に入ろうと思って、入りました。

ー実際に農水省に入省して、どのようなことを感じましたか?

まず、霞ヶ関がいかに農林水産業の現場と離れてるかということを痛感しました。

私自身、農業を全く知らない人だったので、週末に地方に出かけて、いろいろな生産者に会いに行ってました。最初に訪ねたのは、鳥取で20世紀梨を作っている長谷川さんという方でした。春夏秋冬に1回ずつ、合計年4回、鳥取に通っていろいろ話を聞くと、その方は「地球温暖化で気候変動があったとしても、梨作りができるようにするにはどうしたらいいか」というのを品種改良を通じて研究されてる方でした。そのようなすごい可能性を、まだまだ知らなかったんだなっていうことを感じました。

(2)農水省から政治家へ

ーその後、政治家になろうと思ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

決定的だったのは、2009年の民主党政権交代後に、農業政策が大きく変わったのを目の当たりにしたことです。

民主党政権では、「農業者戸別所得補償制度」という政策が行われました。これは、「田んぼを持っていたら一反当たり1万5000円、米の値段が下がったときは生産費と販売価格の差額を国が補填します」という政策です。米の値段がいくら下がったとしても税金で補填するって言っちゃったので、需給のバランス・市場原理を超えて米の値段は下がるに決まってます。お金の無駄遣いです。

でも、彼らはそれを選挙の看板にして勝ったので、「農水省の役人の皆さんは、それを実現してください」と言うわけです。その時に、役人でいることの限界ってここにあるんだなと思いました。であれば自分がチャレンジして、もっと良い政策を作って、現場に落として、農業も儲かるようにして、地方で生きられるようにしたいということを、政治家としてやりたいなと思ったんです。

鈴木憲和議員インタビュー

ー東京から山形に戻って出馬されました。どういう思いがあったのでしょうか?

農水省で現場の遠さを感じたので、山形という私の故郷がよくなる姿を見たいと思って山形を選びました。特に農林水産業に活気があって、稼げる地域を作りたいと思ってます。

「山形といえばさくらんぼだよね」というように、それぞれの地域の特色があるほうが魅力的で多様な日本になると思っています。その上で重要なのが農林水産業だと思っています。それぞれの地域に特色があって、それぞれの人がそこで稼ぐことができ、好きな地域に住むことができる、そんな場所を山形から作っていきたいと思っています。

(3)「若手政治家の登竜門」 青年局長とは

ー鈴木議員は2022年に「青年局長」に就任しました。青年局とは何でしょうか?

「青年局」とは、1955年の自民党結党以来存在する、国会議員や全国の地方議員、自営業者、会社員、学生などで構成する若手のチームです。高校生も入ることができます。年齢は10代から45歳まで、北海道から沖縄まで約1,500人の組織になっています。台湾をはじめとした国際交流や各界の青年団体との連携強化、各都道府県の地域課題の解決に向けた議論など、多くの活動をしています。

ー岸田文雄氏や安倍晋三氏、麻生太郎氏など、歴代総理が務めたことが多いことから「若手政治家の登竜門」と呼ばれる青年局長ですが、どうしたらなれるのでしょうか?

基本的にはまず45歳以下であること、そして大体、当選4期までというところで区切っています。その中で色々な活動を通し、「青年局長はこの人かな」という合意の中で決まります。

直接の推薦という形ではないのですが、青年局は海外に行くということも含め多くの活動をしているので、地方議員から見ても「この人だったらいい」と47都道府県による意思決定で選ばれています。

ー最近ではコロナ禍の制限も緩和されて対面での活動も増えてきていると思いますが、青年局として力を入れている活動や見えてきた課題などがあれば教えてください。

まず1つは、対面での活動を再開させようということです。全国で8ブロックある会議ではそれぞれ対面で集まって、各地域の役員などと課題を共有してディスカッションするということを昨年から年末にかけて行いました。

また、若者の意見を積極的に取り入れるという点では、各都道府県ごとに学生部をおいて全国ネットワークをつくってみたのですが、まだまだ社会や政治に対して参加感を持ちにくい状況ではあると感じています。どうしても学校にいると、政治はタブーみたいな扱われ方をされがちなので、自分ごととして何かを考えるみたいな機会はまだあまりないのかなと感じています。

(4)「国に届け」から「じみんとーまがじん」へ

ー若者の意見を取り入れるという点で課題がある中で、若者に対するアプローチとして取り組んでいることはありますか?

例えばこの「じみんとーまがじん」という冊子です。青年局で、18歳選挙権が導入されたときから、10代の皆さんに関心を持ってもらおうということで発行したものです。

鈴木憲和議員インタビュー

一見すると政治や政党の冊子に見えないというところがポイントで、若い世代の「スーツを着たおじさん、おじいさんがやっているもの」という政治に対するイメージを変えたい、という思いからこのようなデザインを採用しました。カフェなどに並んでいても「フリーペーパーかな」という気持ちで手にとっていただけるくらいのイメージです。

実は、2022年までは「国に届け」という冊子を発行していました。しかし今年に入って対面でさまざまな活動をしていると、「この冊子、そろそろ違うものにならないですか」というご意見をいただきました。先ほどの全国の8ブロックの会議でも「この冊子(「国に届け」)、ぶっちゃけどうですか」と聞いたら、「駅前などで配っててもまず受け取ってもらえない」「このサイズは冊子にしては大きすぎる」「デザインがちょっと‥」など(笑)。そもそも、「”国に届け”ってどういうことですか」「国は上にいるんですか?」などスタンスが違うよね、という議論を経て、今回、大きくリニューアルしました。

鈴木憲和議員インタビュー

ー読んでみると、鈴木議員も「Official 髭男dism」聞くんだ、などの情報があって、親近感を持ちやすいですね。

そうなんです。セカオワ(SEKAI NO OWARI)のライブにも行ったことがあるんですよ。

他の議員の情報も記載されていて、こういうプライベートな側面も見えると親近感が持てるのは大事なことだと思います。

じみんとーまがじんの画像

<画像:「じみんとーまがじん」より>

日本の政治家の平均年齢は56歳で、経営者は62歳です。これをもっと若くしたいと思っています。若ければいい、というものではありませんが、まず私たち政治側にいる者ができることは、政治の現場を若くすることです。また、10代20代の皆さんが何かを頑張ろう、と思った時にそれをちゃんと後押しできる社会を作ることです。僕らも学ばなきゃいけないので、リバースメンター*もとてもいい制度だと思っています。

*「リバースメンター」:若手や後輩が上司などに対してアドバイスや意見を言う役割のこと。自民党では国政政党として初めて2023年5月に導入。

ー「じみんとーまがじん」の中でイチオシはありますか?

5ページ目のマッピングかなと思います。派閥の力学といいますか、この人が何派だろうとか見てみると、深いというか、面白いと思います。

じみんとーまがじんの画像

<画像:「じみんとーまがじん」より>

実は、財政政策に対する考え方は、自民党の中でもいろんなスタンスの人がいます。「借金国債をこれ以上発行しちゃうってどうなの」と考えている人と、「いや、ジャブジャブ発行してるのは何とでもなるんだ」と考えている人がいて、結構多様なんです。自民党内でも多様な意見があるということを伝えたくてこういうコンテンツを用意しました。一方で、センシティブな話題でもありましたので、ちょっとそこに切り込んでみようという意図もあります。

私たち自民党が誇りに思ってるのは、党内でも本当に色々な意見があるということと、意見が違うからといって決して尊重されないことはない、ということです。だから国民政党だと言える自信もあるし、そこが自民党の奥深さなんだろうと思っています。

(5)政治家に伝えるという発想をもってほしい

ー10代や20代の若者世代に今後期待することはありますか?

SNSでもいいのですが、「私、実はこう思ってる」「なんかよくわからない」みたいな話はたくさんあると思うので、そういうものは直接、地元にいる議員に送ってほしいです。名前を出さなくても「どこどこ高校の何年生です」とかで十分です。例えば、「駅を便利にしてほしい」とか、身近なことでもなんでもウェルカムです。

例えば、地元の山形県は、冬になると雪が2メートル以上平気で積もるので、よく電車が遅れるんです。そうすると、高校生とかは1時間とか駅で待たされるんですが、その駅にはベンチしかないので、ただ待ってるだけなんです。でも、「待ってる間勉強とかしたくない?」と聞くと、「できたら嬉しい」ってみんな言うんです。

鈴木憲和議員インタビュー

自分たちの声を伝えて、政治家を巻き込んで、課題が解決するんだっていう感覚や発想がまずないという現状だと思うので、「政治家を巻き込めば実際に変わるんだ」みたいに実感できる人が増えていくと、若者含めてもっといろんな人が関わるようになるのかなと感じています。

ー鈴木議員も、実際に相談されたりするのでしょうか?

はい、時々僕のところにもTwitterなどで地元の高校生から連絡があります。なるほど、と思ったのが、山形県飯豊町の歩道の除雪が全然されていないので「登校するのが大変なんです」という声です。あとで実際に行ってみて確認したら、確かに通学の時間にも雪がばっと降ってしまってたくさん積もってしまうので、確かにそうだなと思いました。こういう声は、こちらからも町に伝えられるし、身近で些細なことかもしれませんが「何か政治家に言ったらちょっと変わるかも」と思う機会を持ってほしいです。

ー政治家として成し遂げたいことはありますか?

2つあります。1つ目は、農業を儲かる産業にすること。2つ目は、地方の人口を増やすこと。

1つ目の「農業を儲かる産業にすること」は、特に海外展開という視点で考えてます。具体的には「おにぎりの世界チェーン」を実現させたいです。日本の米で作ったおにぎりが最高だと、世界で流通している姿を作りたいと思ってます。

長い間、農業は「外からの攻めに対して守るもの」という発想で、政策を打ち続けてきました。結果として、外に出て稼ぎに行こうというマインドになりづらかったという背景があります。豊作だと値段が下がってしまうのも、国内マーケットしかみていないことが大きな理由です。

マクドナルドにしろスターバックスにしろ、世界チェーンはたくさんある中で、なぜか日本の企業はないですが、カップヌードルなど、世界に誇る日本の食品はあります。例えば、世界のおにぎりチェーンができれば、日本の農業は持続可能な形で世界の中で評価してもらえて、結果的に生産者にも還元できると思っています。

鈴木憲和議員インタビュー

2つ目の「地方の人口を増やすこと」は、特に外の人にきてもらって移住者を増やすことが鍵だと思っています。「子育てするならここいいよね」みたい町をたくさん作って、移住してもらえる地元にしたいと思ってます。私の地元だと、例えば「米沢市ってめっちゃ面白そうじゃない?」みたいに思われる地元を作りたいと思ってます。

いま地元の市長や町長などと一緒に、デジタル田園都市の取り組みをはじめとしてさまざまな取り組みを進めています。移住したい・住みたいと思ってもらうために、地方でも稼げる状況を作ることが最も重要だと思っています。そのための取り組みをいま頑張っているところです。

ー最後になりますが、読者の皆様にメッセージをお願いします。

ぜひ会いにきてください。カフェとかでざっくばらんに話したいですね。

いまみなさんが関心あることや感じていることなど、いろんな話を聞いてみたいです。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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