政治ドットコム国会国会の仕組み国政調査権とは?3つの調査を簡単解説

国政調査権とは?3つの調査を簡単解説

投稿日2020.8.6
最終更新日2020.08.18

国政調査権とは国会(衆参両議院)が国政に関する事柄について調査することができる権利のことです。

政府や国会議員などに問題が生じた場合に、国会(衆参両議員)は関係する資料の提出や証人を国会に呼んで質問することができます。

本記事では国政調査権について詳しくご紹介します。

1、国政調査権とは

調査
国政調査権とは国会が有する権限の1つであり、国政に関する問題が起こった際にその事案を調査できる権利のことです。

この調査の際

  • 証人の証言を得るための証人喚問(当事者や関係者を呼び出して事実の確認を行うこと)
  • 事実関係確認のために資料の収集
  • 参考人の招致

などの手段を取ることができます。

また国政調査権は憲法62条より衆議院と参議院に認められており、衆参両議院が国政に関する案件を審議するために必要な場合、国政調査権は使用されます。

ちなみに議院証言法では、証人喚問を要求された際、国会議員は正当な理由なしで拒絶することはできないと定められています。

国会法104条でも各議院と委員会は必要な報告や記録の提出を内閣や省庁に求めることができると認めています。

そして実際の調査は常任委員会(委員会における調査室)または特別委員会(調査室)により行われます。

(1)常任委員会|特別委員会とは

まず国会における委員会とは本会議(国会議院全員で行う会議)の前に予算、法律案などについての議題を事前に審議するための仕組みです。

常任委員会とは国会議員が常に必ず1つ所属する(委員会は法務、内閣、総務など複数ある)委員会のことであり、特別委員会は会期毎に必要に応じてつくられます。

これらの委員会における調査室が国政調査権における実際の調査を行います。

では、国政調査権の使用にはどの様な条件が必要なのでしょうか。

(2)行使条件

証人喚問などの国政調査権を使うためには衆参両院議長の賛成が必要になります。

また、衆参両院のどちらかの委員会で過半数の議決が得られれば、内閣や官公庁などに関係資料の提出を求めることができます。

2、国政調査権の行使で行われる調査

ここでは国政調査権を行使することで、実際に委員会により行われることについて詳しく紹介していきます。

(1)資料提出請求

国政調査権が国会にて執行されると様々な手段が取られ、調査が進みます。

まずは資料提出請求について取り上げます。

国会法104条では「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない」と定めています。

これは各議院・委員会は、内閣や官公署その他に対し、公文書を含む必要な報告・記録などの資料の提出を求めることができるということです。

(2)証人喚問

証人喚問とは、国会が国政に関する重要な事柄の当事者や関係者に出頭を命じて問いただすことです。

証人喚問では宣誓(発言が真実であると誓うこと)が行われるため、事実と反したことを証言すると偽証罪として刑罰の対象になります。

衆参両院での証人喚問では、証人の出頭が難しい場合に院外での証言が認められています。

(3)参考人招致

参考人招致とは委員会(常任委員会や特別委員会)において審査又は調査のため必要があるときに、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことです。

証人喚問と参考人招致は異なるものです。

相違点として、参考人誘致における出頭や証言は任意で、虚偽の証言を述べても偽証罪による処罰はありません。

証人喚問よりも厳しくない制度になっています。

衆議院議員の場合は、参考人の出頭を求める旨を委員長(常任・特別委員会)が本人に通知し、参議院議員の場合は参議院議長を経て参考人招致が行われることとなっています。

3、国政調査権が使えない場合

できない例

国政調査権を利用すればどんな情報でも手に入れられるように見えますが、国政調査権を行使することができないパターンがあります。

国政調査権を行使できない場合とその理由について詳しくみていきましょう。

(1)司法権(裁判)に関すること

三権分立の原則から、司法権の独立(裁判官の判決に何者も干渉できないという決まり)を侵害するような国政調査は認められていません。

司法権の独立を侵害する様な調査とは

  • 裁判中の裁判内容を批判するような調査
  • 判決の当否(刑が重い、軽いなど)を判断するような調査

などがそれにあたります。

(2)行政権に関すること

三権分立の行政権についても国政調査権を行使して侵害することは許されません。

具体的には

  • 公務員の職務上の秘密について調査すること
  • 資料請求の際に過剰に情報の開示を求めること

などの国政調査は認められません。

そのため、国政調査に基づく資料開示を行った際には、行政権を守るため一部を黒塗りにして、秘密を保持したまま開示されることがあります。

(3)人権を侵害すること

国民には思想や良心の自由が憲法で認められています。

そのため、国政調査権でも思想や良心の自由を侵害するような調査はできません。

捜索や逮捕といった刑事手続きを強行するための手段として国政調査権を利用することも許されていません。

そういった方法を公的な機関に認めると不当な逮捕が増加する恐れがあるためです。

この様に国政調査権は国会(立法府)で審議するために必要な情報を得ることができる強い権限ですが、三権分立が成り立つ日本において、議院は最高裁(司法府)と内閣(行政府)の独立性を侵害するような国政調査は行えません。

また人権を侵害することも当然憲法違反に当たるので、その様な国政調査は認められていません。

4、国政調査権の事例紹介

国政調査権に関わる具体的事例をご紹介します。

(1)浦和事件

浦和事件とは1948年に妻が夫と子供を殺害し、一家心中をはかった事件のことです。

裁判官は妻の殺害動機などを考慮し、情状酌量の余地ありとして、懲役3年執行猶予3年の判決を下しました。

この事件の判決に対し、当時の衆参法務委員会は「判決内容が軽い」として裁判の内容に対して国政調査を行いました。

しかし「4、国政調査権を使うことができないとき」の項目でも取り上げた通り、裁判の判決に対し国政調査権を用いて判決を批判する様な権利の行使は、司法権の独立を侵害しており最高裁判所は強く抗議しました。

(2)鈴木宗男事件

2002年の鈴木宗男事件では、当時現職の国会議員で会った鈴木宗男氏にさまざまな疑惑が湧きあがり、証人喚問が実施されました。

その後、斡旋収賄罪の逮捕状が出されて衆議院で逮捕許諾請求が可決され、逮捕されるまでに至っています。

その後鈴木氏は受託収賄罪や政治資金規正法違反の容疑にもかけられ、再度証人喚問を受け3件の偽証をしたとして告発され、議院証言法でも訴追されています。

(3)山田洋行事件

2007年の汚職事件である山田洋行事件では、軍需専門商社「山田洋行」を通した防衛装備の調達に関する接待や癒着において、元専務と前防衛事務次官が証人喚問を受けています。

(4)森友問題

森友問題とは森友学園が大阪府に新しく建設する予定であった小学校用の土地が、当時の評価額より安く売却された件について安倍首相の関与があったのではないか、という疑いのある問題です。

これに対して国政調査権を行使し、事実関係を確認すべきだという声が野党から上がりましたが、現在に至るまで実施されていません。

そのためこの事件における国政調査権の行使については様々な議論があります。

まとめ

今回は国政調査権についてご紹介させて頂きました。

権利の具体的な中身、その限界、事例などについて把握した上でニュース番組や新聞などを改めて見ると、政治についてより興味が深まるかもしれません。