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ねじれ国会とは?法案が成立しにくい理由を簡単に解説

投稿日2022.10.14
最終更新日2022.11.07

ねじれ国会が問題になっているという話を皆さんは聞いたことがあるかもしれません。アメリカでは2018年11月の中間選挙によりねじれ議会が誕生しました。

しかし、ねじれとは何がねじれているのでしょうか?何のことだか想像がつかないという方も少なく無いと思われます。

そこで今回は、以下の2点についてわかりやすく説明します。

  • ねじれ国会の概要
  • その問題点

衆議院と参議院の違いについて詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

衆議院と参議院の違いってなに?5つの違いを簡単に解説

「衆議院で予算が可決され参議院での審議に入ります」という報道を聞いたことがあるかもしれません。 国会では、衆議院と参議院が法律や予算などの重要な審議を行っています。 つまり、国のルールである法律を作り、政府が行う事業の決定や予算の確定を行っているのです。 では、衆議院と参議院にはそれぞれどのような役割があり、どのように違うのでしょうか。 そこで今回は、主に以下の内容についてわか...

1、ねじれ国会とは

ねじれ

「ねじれ国会」とは、「国会の2つの院である衆議院と参議院で、それぞれ過半数を占める政党が異なる状態のこと」です。

もう少し詳しく言うと、「国会の2つの話し合う場である衆議院と参議院において、衆議院で過半数を占める〈与党〉が、参議院では過半数以下である状態、つまり、参議院では〈野党〉の方が過半数を占めている状態のこと」と言えます。

2020年3月時点の政治情勢でいうと、衆議院議員の任期が2021年10月までで、参議院議員の選挙は2022年7月に予定されています。

今は、衆議院、参議院ともに自民党が過半数を占めています。

次回の国政選挙は、2021年10月以前の衆議院議員総選挙ですから、仮に自民党が衆議院議員総選挙で過半数を失うことがあると、2年以内に「ねじれ国会」が発生する可能性もあります。

衆議院と参議院そのものについてより詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧下さい。

衆議院と参議院の違いってなに?5つの違いを簡単に解説

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2、ねじれ国会における衆議院の優越の重要性

ねじれ国会は、衆議院と参議院で、それぞれ過半数を占める政党が異なります。

そのため、衆議院と参議院と意見の食い違いが発生しやすく、なかなか法案が通りません。

そこで重要になるのが、衆議院の優越です。

(1)衆議院の優越とは

衆議院の優越を簡単に説明すると、以下のような優越権があります。

  • 衆議院で「いいよ」となった法律を、参議院が「よくない」と言ったとしても、もう一度衆議院議員の3分の2以上が「いいよ」と言えば、法律になる
  • 衆議院で「いいよ」となった法律を、参議院が何も言わずに60日間過ぎたら、衆議院の人たちが「いい」と言っているから、法律として認める

ほかにも、衆議院で過半数の議員が「この人を内閣総理大臣に」と選んだものの、参議院で「別のこの人を内閣総理大臣に」と選んだとしても、衆議院で選んだ人が、内閣総理大臣になります。

なぜ衆議院に優越権が与えられるのかと言うと、衆議院には解散があることや任期が参議院より短いことから、衆議院は参議院より国民の考えを反映できていると考えられているからです。

以下の関連記事では衆議院の優越についてより詳しく解説しています。

衆議院の優越とは?参議院よりも意思が反映されやすい理由などを解説

衆議院の優越とは参議院と意見の合致ができない場合に衆議院の意思が優先される制度です。 日本の国会は、衆議院と参議院の2つの議院で成り立っています。 これを二院制といい、どちらも国民の代表で権力を持ちます。 日本が二院制を用いるのは、一般的には以下のような理由があげられます。 議題に対し二重のチェックを行い慎重な判断を下す 政治的空白(政治を運営する機関が一時的に無くなる状...

(2)衆議院の優越が発揮されるとき

衆議院の優越は、衆議院と参議院でそれぞれ決めたことが異なったときに発揮されます。
国のルールである法律が法律として認められるためには、衆議院と参議院でそれぞれ過半数の議員が、「この法案、いいよ」と言ってくれなければなりません。

例えば、衆議院である法律について、過半数の議員が可決してくれたとします。
そのあと、参議院でもその法律について話し合いますが、参議院では、「いいよ」と言ってくれた議員が、半分以下だった場合国の法律にはなりません。

このあと、もう一度、衆議院でこの法律がいいかどうかを話し合います。
そして、衆議院で3分の2以上の議員が「いいよ」と言ってくれたら、はじめて国の法律として認められます。

このとき、衆議院の優越により、参議院の考えより衆議院の考えが優先されます。

また、60日間、衆議院で「いいよ」となった法案に対して、参議院が何も言ってくれない状態が続いた場合、国会としては「衆議院の人たちはいいよと言ってくれているので、法律として認めます」ということになります。

ただ、この60日は法案を早く通してスムーズに政治を運営したいと考える与党からすればとても長い時間でしょう。

3、「ねじれ国会」になるとどうなる?

問題点
簡単に言うと、「与党(後述で説明します)」のやりたいことがスムーズにすすまなくなります。
一体どういうことでしょうか。
「ねじれ国会」になってしまうと、次のようなことが起きるのです。

衆議院で「与党」にいる議員たちが「この法律、いいよ」と言ったにもかかわらず、参議院では「与党」にいる議員たちが半分以下しかいないために、半分以上いる「野党」の人たちから「この法律は駄目だ」と言われ、法律として認められない、ということが起こります。

政権の意向が通らず、様々な対応が遅くなってしまう恐れがあるのです。
そうなれば社会は混乱し、経済にも打撃があるでしょう。
詳しく見ていきたいと思います。

(1)衆議院の優越も万能でない

衆議院の方が力は強いから、衆議院で決まったことが法律として認められるのではないか。
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに衆議院で決まったことが法律として認められます。

ただし、それには条件があります。
繰り返しになりますが、

  • 「衆議院でもう一度話し合って、3分の2以上の議員が賛成する」
  • 「参議院の人たちが「いい」とも「ダメ」とも言わずに60日間過ぎる」

という場合です。
いずれにしても、手間と時間がかかります。

そのため、「与党」のやりたいことが、スムーズには進まなくなってしまうのです。
スムーズに進めようとしたら、「与党」の人たちは、「野党」の人たちにも、「この法律、いいよ」と言ってもらえるように、さまざまな努力をしなければなりません。

「駆け引き」というものです。
「野党」の人たちが言っていることも、少しは取り入れないといけなくなります。

(2)与党と野党について

ニュースなどでよく耳にする「与党」と「野党」という言葉。
この言葉についても整理しておきましょう。

「与党」とは、「衆議院」において過半数を占める政党のことです。
政党とは、同じ考え方を持った議員のグループのことです。

仮にAとBという考えがあったとして、Aという考え方をする人たちが、衆議院議員のうちの半分以上(過半数)いたとします。このとき、Aという考え方をする人たちのグループのことを、「与党」と呼んでいます。
過半数の人たちがいることで、その政党の一番偉い人が、内閣総理大臣になります。

衆議院で過半数の人が、「この人を総理大臣に」と選んだ場合には、たとえ参議院で別の人を選んだとしても、衆議院で選んだ人が総理大臣に決まります。
なので、衆議院で過半数を占めていることが、重要なのです。

反対に、「野党」とは、「与党」以外の政党のことです。
2019年11月時点では、「与党」は、自由民主党(自民党)と公明党(公明党は過半数を占めていませんが、法律についての考え方を自民党と全く一緒にしているので、「与党」の一員です)で、「野党」は、立憲民主党や国民民主党などです。

ねじれ国会に関するQ&A

Q1.ねじれ国会とは?

「ねじれ国会」とは、「国会の2つの院である衆議院と参議院で、それぞれ過半数を占める政党が異なる状態のこと」です。

Q2.衆議院の優越が適応される事項は?

以下の3つの通りです。

  • 予算の議決
  • 条約の承認
  • 内閣総理大臣の指名

Q3.衆議院の任期と参議院の任期は?

衆議院の任期は4年で、参議院の任期は6年です(3年ごとに半数改選)。

まとめ

国会がねじれているからこそ、他のグループの意見を取り入れたり、他のグループの意見に賛成したりするという動きも出てきます。

確かに、ものごとがスムーズに進むことは一見するといい感じがします。

しかしながら、衆議院も参議院も国民の意見を代表しているという点を考えると、衆議院と参議院で異なる意見が出てくると、その異なる意見を合わせたよりよい法律ができるのではないかという期待もあるのです。

この記事の監修者
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