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議員定数とは?議員定数は減らすべきなのか?

投稿日2020.4.29
最終更新日2020.05.04

国会、都道府県議会、市区町村議会には、それぞれ選挙で選ばれた議員がいます。そして議員の人数は決まっていて、その人数の上限のことを「定数」といいます。

国民や都道府県民や市区町村民のなかには、議員定数を減らしたほうがよいという意見があることはご存知でしょうか?

議員たちは、法律や条例という「とても重要なルール」を決めるので、本来は、議員が多いほうが英知や知見が集まりやすくなり、よい効果を生むような気がします。

にも関わらず、なぜ議員は少ないほうがよいかもしれないと考える人がいるのでしょうか。そして、そもそもなぜ、議員に定数があるのでしょうか。

本記事では、議員定数の削減論について考えてみます。また、「一票の格差」問題についても触れていきます。
お役に立てば幸いです。

1、議員定数とは

議員定数
議員定数とは、議員の人数の上限のことで法律や条例で定められています。議員に立候補する人が定数より多くなると選挙が行われ、得票数が多い人から当選し、議員定数に達した時点でその他の立候補者は落選します。

(1)国会議員の定数

国会議員の定数は公職選挙法第4条で、

  • 衆議院議員は465人
  • 参議院議員は248人

と定められています。

衆議院議員の定数は、日本国憲法が施行された直後は466人でしたが、1986年に最多の512人になりました。

参議院議員の定数は、日本国憲法が施行された直後は250人で、1970年に最多の252人になりました。

国会議員の定数を増やしたのは、一票の格差を是正するためです。一票の格差は、国会議員の定数を減らすことでも是正できますが、国は議員を増やすことを選びました。

一票の格差について後段で詳しく解説します。

ところが「国会議員が多いのではないだろうか」という国民の声により、最多に達して以降は、選挙制度が変わるたびに定数が減っていきました。

この議員定数を定める法律は公職選挙法と呼ばれ、公職選挙法の内容は国会で決めることができるので、「国会議員の定数は国会議員が決めることができる」と言えるのです。

(2)地方議会の議員定数

都道府県議会と市区町村議会を合わせて地方議会と呼びます。都道府県議会と市区町村議会の議員のことを、地方議員と呼びます。

地方議員の定数は、以前は地方自治体法によって上限が定められていました。その後、同法が改正され、上限が撤廃されました。

現在、地方議員の定数は、都道府県や市区町村の条例で定められています。条例は地方議会ごとに定めるので、地方議員定数は、地方議員が決めることができます。

2、議員定数削減問題とは?

議員定数を削減すべきという声は一部に存在しているようです。実は現職の財務相である麻生太郎氏も議員定数削減議論に前向きです。

議員定数の削減が社会問題になっている原因は以下の通りです。

  • 一部の国民に「職責をまっとうしていない議員がいる」という意識がある
  • また議員定数は議員が決めることができるので、議員定数削減に議員が取り組んでいないと国民が考えている

議員の汚職や不祥事は、一般の人より重く受け止められます。それは議員が、税金で報酬を得て、特権を与えられ、人々の生活を規制する法律や条例をつくるからです。

議員の汚職事件や不祥事が明るみになると残念ながら国会議員の数を減らした方が良いのではないだろうか?という国民の声が出てしまっているようです。

(1)適切な数は割り出しにくい

しかし議員定数の「適切な数」は、なかなか割り出すことはできません。あえて「適切な数」を算出するなら、よい法律やよい条例がたくさん生み出されたときの議員定数が適切といえるのかもしれませんが、その場合「よい法律、よい条例とは何か」という問題が出てきます。

(2)議員は一定人数いたほうがよい

では、議員定数は少ないほどよいのか、というと、そうでもありません。

議員定数の最小は1人ですが、市長1人、市議会議員1人となり、その市長とその市議会議員の思想がたまたま一致したとします。その場合、何の批判も、何のチェック機能も働かず、次々とその2人にとって都合のよい条例がつくられてしまいます。

行政の長の手法を批判したりチェックしたりするためにも、議員は一定人数いたほうがよいのです。

そこで次に、議員定数を削減するメリットとデメリットを考えてみます。

3、議員定数を削減するメリットとデメリット

定数削減
民主主義では、なるべく多くの人の意見を聞いてから政治や行政を行ったほうが「よい」と考えます。しかし、多くの人の意見を聞き続けていると、何も決められなくなってしまいます。

そのため議員定数を減らすと、メリットもデメリットも生じます。

(1)メリット

議員定数を減らすと、より政策の定まっている人や能力が高いと判断される人だけが選挙で選ばれるようになるかもしれません。

また、議員定数を減らすと、議員に支払う報酬の総額が減ります。それにより、国民や住民の税負担を削減できる可能性もあります。更に浮いた分の税収を社会保障へ回すこともできます。

そして議員が減れば、話し合いがスムーズに進み、結論を早く導き出すことができるようになる可能性もあります。

(2)デメリット

議員定数を減らすことの最大のデメリットは、少数派の民意を反映させづらくなることです。

弱者は少数になりやすく、そして少数の弱者は、議員定数が減ると自分たちの代表者を国会や地方議会に送り出せなくなります。それは少数弱者の意見を封じることを意味します。

また、議員の数が減ると国会や地方議会の力が弱まり、首相や知事、市区町村長の力が強くなります。すると恣意的な条例などが制定しやすくなります。

国会や地方議会には、首相・知事・市区町村長や行政機関、行政職員を「牽制」する役割があるので、その力が弱まれば国民や住民に不利益がもたらされる可能性があります。

更に地方議員の数が減少してしまうと1人の議員にかかる負担がかなり増加してしまいます。そうして議員が逆に定員割れを起こすようになると市政が停滞し、住民に悪影響(街の危険な空き家が放置されてしまうなど)を及ぼすことになるでしょう。議員定数を削減することにはリスクが常につきまとうのです。

4、議員定数と一票の格差について

一票の格差とは、国民や住民が選挙で投じる「一票」の価値に差ができることをいいます。この問題は、主に国政選挙(国会議員を選ぶ選挙)で生じます。

一票の格差が生まれることは、民主主義の考え方にマッチしません。憲法第14条は、すべての国民は法の下に平等であると定めていますが、一票の格差はこの考え方に反しています。

一票の格差問題は、議員定数と密接に関わります。

(1)一票の格差の問題点

一票の格差が生まれるのは、選挙区ごとに有権者の数が異なるからです。議員定数は選挙区ごとに定められるので、「一票の格差=有権者数=議員定数」は三位一体といえます。

一票の格差がどのようにして生まれるのか、シミュレーションしてみましょう。ある選挙で、次のような状態になったとします。

  • A選挙区(有権者101人、議員定数1人)からaさんとbさんの2人が立候補
  • B選挙区(有権者201人、議員定数1人)からxさんとyさんの2人が立候補

A選挙区とB選挙区は、有権者の数が倍近く異なりますが、議員定数はいずれも1人で、いずれも2人が立候補しています。この状態で選挙が行われ、次のような結果になったとします。

  • A選挙区では、aさんが51票を獲得して当選(bさんは50票しか獲得できなかったので落選)
  • B選挙区では、xさんが101票を獲得して当選(yさんは100票を獲得したが落選)

この結果は、次のような問題を引き起こします。

  • aさんは、わずか51票しか獲得していないのに議員になった
  • yさんは、100票も獲得しているのに議員になれなかった

yさんは多くの票を獲得できているので、もしかしたら国会議員の資質があるのかもしれません。もしそうであるならば、yさんが国会議員になれないのは問題です。

このように有権者が少ない選挙区の一票の価値が大きくなり、有権者が多い選挙区の一票の価値が小さくなるのが、一票の格差の問題点です。

2017年10月の衆議院議員総選挙では、東京13区という選挙区の有権者数は472,423人(定数1人)、鳥取1区は238,771人(定数1人)でした。鳥取1区の一票の価値は、東京13区の一票の1.98倍(≒472,423÷238,771)もあったわけです。

(2)なぜ一票の格差が生まれるのか

一票の格差が生まれるのは、「選挙区によって有権者数が異なるから」です。これは「有権者数と議員定数の比率が、選挙区によってバラバラだから」と言い換えることができます。

先ほどのシミュレーションでは、次のようになっていました。

  • A選挙区(有権者101人、議員定数1人):aさんとbさんの2人が立候補
  • Z選挙区(有権者201人、議員定数1人):xさんとyさんの2人が立候補

当選に必要な得票数は、投票率や立候補者の数によっても違ってきますが、選挙区の有権者の数が異なることでも、一票の価値差が拡大します。

投票率や立候補者の数が選挙区によって異なるのは、法律や選挙制度で是正できませんが、選挙区の有権者数は同数にすることは可能です。

(3)選挙区の有権者の数を同じにする方法

選挙区の有権者数を同数にする方法には、次の3つがあります。

  • 区割りを変える
  • 議員定数を増やす
  • 議員定数を減らす

このうち、区割りを変えることは簡単ではありません。

例えば、A選挙区の有権者が101人で、Z選挙区の有権者が201人の場合、Z選挙区の範囲を狭めて、A選挙区の範囲を広げれば選挙区内の有権者数を同じにすることはできます。

しかし、そもそも区割りは有権者の生活圏などで決めています。区割りを「有権者数を同じにするためだけ」に実施すれば、有権者の生活圏と選挙区が異なる事態が生じます。

そのため一票の格差是正では、議員定数を増やす方法か、減らす方法が採用されてきました。
定数の多すぎる所は定数を減らし、上記でシュミレーションしたようなケースと近しい場合には議員定数を増やせば完璧にとは言えずとも、極端な1票の格差を是正することが可能です。

まとめ

議会と議員は、社会の平等と公正を維持するために欠かせない「民主主義の担い手」です。議員定数を闇雲に減らして議会の力が弱まると、民主主義が形骸化してしまいます。

しかし議員定数を減らすことで、国民の負担が減少するかもしれません。この問題については今後も議論が必要となるでしょう。