官報(かんぽう)とは、政府が国民に具体的な政策や行政全般について伝えるための機関紙です。
官報は国が発行する唯一の機関紙であり、初版は1883年までさかのぼります。
新聞は購読しているものの、官報は読んでいないという方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では
- 官報とは
- 官報の役割
- 官報ができるまでの流れ
などについてわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、官報とは
画像出典:官報について 国立印刷局
官報は、法律や政策などの政府情報を国民に伝える手段として重要な役割を果たしています。
くわしい中身については後述しますが、官報では
- 法律の公布
- 各府省の決定事項
などが主に掲載されています。
新聞は新聞社が発行し、国内外の社会情勢を読者に伝えますが、官報は国が発行し、国の行政を国民に伝えます。
参考:官報について 国立印刷局
2、官報の役割
官報はただ国民に情報を知らせるためだけのツールではありません。
法律が効力を持つために官報は欠かせない役割を持っています。
具体的に解説していきましょう。
(1)官報と法律の関係
官報の大きな役割は、国家の重要な取り決めである
- 法律
- 政令
- 条約
などの正式な決定事項を国民に伝えることです。
法律を例にとり見てみましょう。
法律は、以下のような流れで成立します。
- 法律案として内閣から国会に提出
- 国会での審議
- 可決後、天皇に奏上
奏上後に天皇が公布することで、法律が効力を持つようになります。
この公布の伝達手段が官報です。
つまり、官報は国民に法律を公布する重要な役割を担ってると言えます。
画像出典:法令の公布 国立印刷局
(2)官報と歴史
官報の前身は「高札(こうさつ)」という看板でした。
時代劇などで見たことがある方も多いのではないでしょうか?
画像出典:官報の歴史 国立印刷局
高札には
- 現在の法律にあたる法度(はっと)と禁令
- 犯罪人の罪状
などが書かれていました。
高札はその後『太政官日誌』から『官報』へと姿を変えていきました。
メディアなどは普及した現代においても
- 国の政策や行政について迅速かつ正確に伝える
- 法律を公布する
という点で、官報は私たち国民と政府を繋ぐ大切な役割を担っています。
参考:官報の歴史 国立印刷局
3、官報ができるまでの流れ
新聞と同じように毎朝発行される官報ですが、誰が書いているのでしょうか?
官報ができるまでの流れをご紹介します。
(1)原稿の作成
官報の原稿を作成するのは
- 各府省庁
- 国会
- 裁判所
- 地方公共団体(都道府県、市町村区)
- 会社(会社、公益法人など)
- 特殊法人(独立行政法人、国立大学法人など)
など様々な機関になります。
(2)原稿の編集と仕上げ
上記の機関等で作成された原稿は、『国立印刷局』に提出されます。
国立印刷局は
- 日本銀行券(紙幣)
- パスポート
- 郵便切手
- 印紙
- 証紙
などの製造を担っており、官報の製造も国立印刷局の仕事です。
国立印刷局では、提出された原稿をもとに
- 編集
- 校正
- 印刷
を行います。
地方公共団体・会社・特殊法人等の原稿は、官報販売所または公告取次店を通して提出されます。
(3)官報の発行
国立印刷局で仕上げられた官報は
- 国立印刷局と東京都官報販売所での掲示
- 官報販売所での販売
- インターネット配信
の3つの方法で公開され、掲示と配信は発行日の午前8時半に行われます。
4、官報の内容
官報に掲載される内容は『公文』と『公告』に分けられます。
それぞれの中身を見ていきましょう。
(1)公文(こうぶん)
公文には、政府や各府省が公布する文書が掲載されます。
公布とは、新しく決まった法律を国民に知らせることです。
前述のように天皇によって公布されることで、法律は施行とともに効力を持つようになります。
参考:法律の原案作成から法律の公布まで 内閣法制局
公文には
- 国家内や外国との決定事項(法律、政令、条約)
- 各府省の決定事項(内閣官房令、府令、省令、規則、告示)
- 国会事項
- 各府省、大臣の人事異動
- 叙位(じょい)、叙勲(じょくん)、褒章(ほうしょう)
- 官庁報告(最低賃金や国家試験に関する事項など)
などが掲載されています。
(2)公告(こうこく)
公告には、国や各府省のほか、特殊法人、地方公共団体からの告知が掲載されます。
企業が商品を世間に広く伝える『広告』とは違い、『公告』は法令上の根拠に基づいた公的な内容となっています。
公告には
- 競争入札に関する告知(入札公告、落札公示、官庁公告)
- 裁判所公告、特殊法人等(国家資格の登録者など法律で公告が義務付けられている内容が掲載される)
- 地方公共団体(教育職員の免許の失効についての情報や行旅死亡人の告知など)
- 会社その他(決算公告など)
などが掲載されています。
5、官報の発行形態について
官報には
- 本紙
- 目録(もくろく)
- 号外
- 緊急官報
の4つの種類の発行形態があります。
それぞれの発行頻度は以下の通りです。
- 本紙:休日を除いて毎日
- 目録:毎月1回
- 号外:随時発行
- 緊急官報:災害などの非常事態時のみ
『号外』は、本紙に掲載しきれない場合に随時発行されるほか、緊急に掲載する必要のある情報がある場合に発行される『特別号外』や衆議院と参議院の『国会会議録』なども含まれています。
一方『緊急官報』は、災害の発生などにより、緊急で法令の公布や告示を行う必要がある場合に、内閣総理大臣の要請によって発行される官報です。
6、インターネット上での官報の利用
政府と国民の伝達手段である官報ですが、昨今では電子化され、より簡単に情報を知ることができるようになりました。
電子化された官報には
- インターネット版官報
- 官報情報検索サービス
があります。
それぞれ確認していきましょう。
(1)インターネット版官報
インターネット版官報では、オンラインで官報を読むことができます。
直近30日分の官報が無料で閲覧可能です。
そのほかにも
- 2003年7月15日以降の法律、政令等の官報情報
- 2016年4月1日以降の政府調達の官報情報
を無料で読むことができます。
従来までは国立印刷局や東京都官報販売所の掲示を見に行ったり、官報販売所で購入したりする必要がありましたが、インターネット版官報では自宅にいながら官報を読むことが可能になりました。
(2)官報情報検索サービス
官報情報検索サービスは、日本国憲法が施行された1947年5月3日から当日発行分までの官報の情報を、日付やキーワードで検索できる有料サービスです。
- 日付のみを検索できるサービス
- 日付とキーワードで検索できるサービス
の2種類があり、日付検索のみの場合は月額1,672円で、紙の官報を定期購読している人は無料です。
日付とキーワードで検索する場合は月額2,200円で、定期購読している人は528円になります。
官報にはさまざまな情報が掲載されているため、過去の官報をさかのぼりつつ、スピーディーに内容を把握したいという方には、官報情報検索サービスがおすすめです。
まとめ
今回は官報についてご紹介しました。
普段、なかなか目を通す機会のない官報ですが、『国が発表している情報を正しく知る』という点において非常に役立つ情報源であると言えます。
本記事がお役に立てば幸いです。