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住民自治と団体自治の違いとは?憲法と地方自治との関係についても解説

投稿日2020.5.4
最終更新日2020.07.13

地方自治体や、その地域に住む市民の権利として、地方自治が保障されています。
地方自治は、「住民自治」と「団体自治」の2つに分かれています。
この記事では、両者の違いを分かりやすく解説すると共に地方自治についてご紹介していきます。

1、住民自治と団体自治の違い


「住民自治」と「団体自治」は、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
「住民自治」とは、名前の通り、住民が地域の政治・政策決定に参加するという意味を持っています。

「団体自治」とは、地方政府や地方議会などの国から独立した団体に地方自治がゆだねられ、団体自らの意思と責任の下でなされるという意味を有しています。

この2つの自治が地方自治を構成します。
簡単に言い換えると地方のことは地方でやるということです。

(1)地方自治

地方自治の権利は、憲法で保障されています。

憲法92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」としています。

ここで言う『地方自治の本旨』=住民自治・団体自治の原則となります。
また、この法律のうち最も基本的なものが地方自治法です。

住民の参政権や地方団体の自治権に関して規定しています。

(2)団体自治

地方自治体には、自主性があります。

  • 国と対等な関係で地域の行政事務を処理
  • その為の自主立法権(条例を制定できる)
  • 自主財源を持つ為の課税権(住民税)

を有しています。

これは、地方への分権的側面(権力を中央から地方に移す)を表しています。
日本が近代化を達成するにあたって、国が大きな権限や財源を持つ中央集権型のシステムが採られてきました。

しかし中央集権型では、各地域の実情に応じた的確な対応が困難であり、近年の多様化した行政ニーズに対応するために地方分権が進められてきたという歴史があります。

そのため、団体自治は近代地方自治の本質的要素となっています。

憲法94条で、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、 法律の範囲内で条例を制定することができる。」と定められている通り、地方公共団体の地域における自治権が認められています。

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(3)住民自治

地方政府や議会が独自に行政・立法を行えたとしても、住民の意思が反映されていないと本当の意味での地方自治とは言えません。

そこに住んでいる人の生活が豊かになった、と言えるような政策が行われる必要があります。
例えば高齢者の多い自治体であれば歩道の段差を減らす、介護施設を増やすなどの政策が必要です。

しかしそのような地域固有の問題は実際に暮らしている人々にしか分かり得ないことです。
そこで、民主主義の観点から、住民が広い範囲で政治や政策決定の過程に参加することを保障しています。
自治体の意思=住民の意思という形が理想とされます。

具体的には、憲法93条で、

  • 地方公共団体の議会の設置
  • 地方公共団体の長・議会議員の直接公選制(投票により住民が直接選ぶ)

が定められています。

地方公共団体は議員と首長の二元代表制となっています。
国会議員も直接選挙により選ばれますが、首相は議会の指名により決定されるため、地域行政の方がより住民の意見を反映できるようになっています。

よく地方自治は「民主主義の学校」と言われますが、これは、地方自治への参加を通じて住民が民主主義の在り方を学ぶことができるからです。

また、近年では、国と地方の役割分担を考える際に、補完性の原理が用いられています。
これは、「住民にとって、より身近な自治体が行政を行う」といった考え方で、市町村ができることは市町村が行い、できないことは都道府県が補完し、それでもできないことは国が補完することになります。

住民自治と団体自治のみならず、このような「国と地方の適切な役割分担」も「地方自治の本旨」の1つの内容です。

2、地方自治の具体例

では、具体的に地方自治の一環としてどのような取り組みがなされているのでしょうか。
実際の地方公共団体の例を取り上げます。

(1)団体自治の例

各自治体が主体となって、住みよい環境を作っていくために、様々な取り組みが進められています。

例えば、茨城県では、自然災害が生じた際の対応力を向上させるため、福祉施設に対する災害対策の基準の底上げが行われています。

地震などの災害対策では、地域防災が重視されているので、近年ではこのような地方自治体独自の取り組みが増えてきています。

茨城県の児童福祉施設は、災害設備の設置や災害計画の策定、定期的な訓練の実施に関して、従来は努力義務であったものを義務に引き上げました。

また、食料・衣料品などの備蓄については多くの施設で規定がなかったところを努力義務に引き上げるなど、一段階進んだ基準に変更されました。

更に、県と福祉施設との基本協定が締結され、大規模自然災害時には、県の職員を派遣する協力体制が整備されました。
このように、前もって地域に密着した制度を設けておくことで、実際の災害時に迅速に行動することができますね。

(2)住民自治の例

岐阜市では住民自治推進のために、住民自治基本条例を制定しています。

本条例では、住民のまちづくりに対する権利を明らかにし、住民の意思が市政や地域に反映できるような制度を定めることで、住民自治の進展を図っています。

例えば、本条例では、「まちづくり協議会」という地域住民の自治組織により、地域の課題を協議するコミュニティに参加することを推進しています。

「まちづくり協議会」とは、自治会やNPO法人・ボランティア団体などが想定されています。

また、住民自治の基本である

  • 市民投票
  • パブリックコメント手続
  • 審議会等の運営

も定められています。

パブリックコメント手続とは、市政の基本的・重要な政策を地方政府が決定する際に、広く市民から意見を求める仕組みとして用いられます。

政策などの検討段階に、事前に案の趣旨・内容等を公表し、住民の意見を求めます。
そして住民から提出された意見を考慮した上で、最終的に政策が決定されます。

また、地方の執行機関に附属する審議会では、執行に必要な調停・審議・調査などが行われます。
住民の意思を反映し、中立的な視点から地域の利害を調整するために、委員の一部を市民から公募することが義務付けられています。

このように、地域のまちづくりなどの政策に参加することは住民の権利であり、よりよい政策を作る為、積極的に活用していくことが望ましいです。

【参考】地方分権改革事例集

3、直接請求権について


地方公共団体の長や地方議会は、住民による直接選挙が行われ、住民の信託に基づいて政治の運営が行われています。
しかし、間接的なコントロールでは、不正が生じる恐れもあります。

そこで、地方自治においては直接請求権として住民発案の下、地方公共団体に

  • 条例の制定
  • 廃止を求めること
  • 解職(リコール)を要求すること

ができるようになっています。
住民による直接的な民主的コントロールの機能として役立ちます。

具体的には、直接請求権は以下の5つから構成されます。

  • 条例の制定や改廃の請求
  • 事務監査請求
  • 地方議会の解散請求
  • 議員首長の解職請求
  • 職員の解職請求

このように、住民として地方自治に参加していく権利が保障されています。
直接請求権は直接民主制の1つであり、以下の関連記事で更に詳しく説明しています。

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4、憲法と地方自治

地方独自の政策課題に取り組むために、地方自治体は条例制定権を有しています。
地方公共団体が独自にルールを作れるというわけです。
しかし、無制限に権利が認められるわけではありません。

地方公共団体は、法律の範囲内で条例を定めることが可能です(憲法94条)。
そして、地方自治法では、法令に違反しない限りにおいて、地方自治体の事務に関し、条例を制定することができる(14条1項)と定められています。

しかし、どのような場合に法令に違反するか、必ずしも明らかではありませんでした。
この基準について判示したのが、徳島市公安条例事件です。

徳島市公安条例は、いくつかの憲法上の論点があり、重要な事例です。
今回はそのうちの1つを紹介します。
まず、事件の大筋は以下の通りです。

デモ行為を行っていた被告人が、道路使用許可の条件に反し車道上を自ら蛇行し、さらに集団行進者に対して蛇行するよう扇動したため、道路交通法(以下、道交法)違反・徳島市条例違反に問われました。

しかし、条例の罰則は道交法違反の罰則よりも重くなっている為、道交法に違反するか否かが争われました。
デモ行進は表現の自由(憲法21条)により保障される行為であり、やみくもに罰則を厳しくすると、行為者を過度に委縮させてしまいます。

そこで、法令と条例との間に以下のように基準をたてました。

「両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによって決する。」

具体的には、以下の3つです。

・国の法令中に明文の規定がない場合:いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反する。

・国の法令と条例とが併存するが、両者が別の目的による場合:法令の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときは両者の間に矛盾牴触はなく、条例は国の法令に違反しない。

・国の法令と条例とが併存し、かつ、両者が同一の目的である場合:国の法令が必ずしも全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、両者の間に国に矛盾牴触はなく、条例は国の法令に違反しない。

今回は、道交法という国の法令と条例とが併存しますが、前者は道路交通秩序の維持を目的とする物です。

これに対し後者は道路交通秩序の維持にとどまらず、地方公共の安寧と秩序の維持という独自の目的と意義を有し、②③に当てはまるものであり、その合理性を肯定するものであるため、違反するものではない、と判断されました。

まとめ

本記事では、「住民自治」と「団体自治」を軸に地方自治について解説しました。

各自治体によって多様な取り組みが進められているので、自分の住んでいる自治体ではどのような取り組みがなされているかを調べてみるのもいいかもしれません。

国政では自分1人の意見を反映させることは難しい傾向にありますが、私たちの生活に直接的に関わる地方自治に積極的に参加して、主権者意識を養っていきましょう。