「入管法」とは、公正な出入国在留管理・外国人の退去強制・難民の認定について定めている法律です。
現在、ウクライナ避難民の受け入れなどもあり、入管法の改正が注目を集めています。
この記事では、以下について紹介していきます。
- 入管法とは?
- 入管法改正の歴史
- 外国人労働者と入管法改正の関係
- 2023年 入管法の問題点
本記事がお役に立てば幸いです。
1、入管法とは?
入管法とは、日本の出入国管理に関する法律である「出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)」のことを指します。
入管法では、以下のことを法律で定めています。
- 公正な出入国在留管理
- 外国人の退去強制
- 難民の認定
(1)公正な出入国在留管理
入管法では、外国人を日本の社会に適正に受け入れるとともに、テロリストや日本のルールを守らない人の入国・在留を認めないということを記しています。
また、入国・在留を認められた外国人は、認められた在留資格・在留期間の範囲内で活動する必要があり、在留資格・在留期間を変更したい場合は、国の許可を取る必要があります。
(2)外国人の退去強制
入管法では、以下のようなルールに違反した外国人については、原則として強制的に国外に退去させる(強制送還)と記しています。
- 他人名義の旅券を用いるなどして日本に入国した人(不法入国)
- 許可された在留期間を超えて日本国内に滞在している人(不法残留・オーバーステイ)
- 許可がないのに就労している人(不法就労)
- 日本の刑法等で定める犯罪を行い、実刑判決を受けて服役する人
そして退去強制・出国命令を受けた者は、上陸拒否期間が設けられ、一定期間日本に上陸することはできません。
- リピーター(過去に日本から退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがある者):10年
- 退去強制された者:5年
- 出国命令により出国した者:1年
また、日本国又は日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役又は禁錮等に処せられた者や、麻薬・大麻・あへんなど覚醒剤等の取締りに関する法令に違反して刑に処せられた者は、上陸拒否期間に定めはなく、日本に上陸することができません。
(3)難民の認定
日本にいる外国人から難民認定の申請があった場合には、難民であるか否かの審査を行います。難民と認定された場合、原則として定住者の在留資格を許可するなど、難民条約に基づく保護を与えています。
参考:ISA 入管法改正案について
参考:ISA 退去強制手続と出国命令制度Q&A
2、入管法改正の歴史
ここでは、過去の入管法改正について紹介します。
(1)2018年 在留資格「特定技能」の創設
2018年(平成30年)12月に入管法改正が成立し、在留資格「特定技能」が創設されました。この改正では外国人労働者の受け入れを拡大し、日本の産業や労働力に寄与することを目的としました。
「特定技能」とは、日本での就労を希望する外国人労働者に対して与えられる在留資格であり、一定の技能や日本語能力を満たすことが求められます。
資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、以下のように規定されています。
- 特定技能1号:不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
- 特定技能2号:同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
この改正案は2019年(平成31年)4月1日から施行されています。
引用:ISA
(2)2016年 在留資格「介護」の創設・偽装滞在者対策の強化
2016年(平成28年)11月に入管法改正が成立し、在留資格「介護」の創設・偽装滞在者対策の強化が決定しました。
在留資格「介護」の創設
日本の介護福祉士養成施設(都道府県知事が指定する専門学校等)を卒業し、介護福祉士の資格を取得した人に、在留資格「介護」が認められることになりました。
在留資格「介護」の在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月です。この改正案は2017年(平成29年)9月1日から施行されています。
偽装滞在者対策の強化
偽装滞在者とは以下の例のように、偽装して不正に入国・在留許可を受ける人のことです。
- 偽造した卒業証明書や虚偽の雇用証明書等を提出し、不正に在留資格を得る者
- 実習先から無断で立ち去り、他の職に就く失踪技能実習生
偽装滞在者の問題を解決するため、以下が改正されました。
- 不正手段により許可を受けた場合、「3年以下の懲役又は禁錮」「300万円以下の罰金」のいずれか又は両方を処する
- 在留資格に応じた活動を行っていなかった場合、在留資格を取り消す
この改正案は2017年(平成29年)1月1日から施行されています。
引用:ISA
引用:ISA 最近の入管法改正
3、外国人労働者と入管法改正の関係
近年の入管法の改正により、外国人労働者を受け入れる体制が見直されています。産業界や地方自治体などは、人材確保や地域活性化のために外国人労働者を積極的に受け入れる動きが広まっています。
一方で、外国人労働者の労働環境の確保などの課題も浮き彫りになっています。
4、2023年 入管法の問題点
ここでは、現在の入管法に関する課題を紹介します。
(1)送還忌避問題
日本から退去すべきことが確定したにもかかわらず、退去を拒む外国人(送還忌避者)がいることが問題となっています。
2021年(令和3年)12月末時点では、送還忌避者は3,224人に達しており、2020年(令和2年)12月末時点よりも121人増加しています。中には日本で罪を犯し前科を有する者もおり、3,224人中、1,133人が前科を有しています。
難民認定手続中の者は送還が一律停止
難民認定手続き中の外国人は、重大な罪を犯した者やテロリスト等であっても退去させることができません。難民認定申請を繰り返すことによって、退去を回避しようとする人がいることが問題となっています。
退去を拒む自国民の受取を拒否する国の存在
退去を拒む外国人を強制的に退去させる場合、入国警備官が航空機に同乗し、本国政府に引き渡す必要があります。国際法上の確立した原則として、自国民を受け入れる義務がありますが、ごく一部の国で受取を拒否する国があり、強制的に退去させることができない場合があります。
送還妨害行為による航空機への搭乗拒否
送還忌避者の中には、本国に送還するための航空機の中で暴れたり、大声を上げたりする人がいます。そのような外国人については、他の乗客や運航の安全等を確保するため、機長の指示により搭乗拒否され、退去させることが物理的に不可能になります。
(2)収容を巡る諸問題
現在の入管法では、退去すべきことが確定した外国人については、原則として退去までの間、収容施設に収容されます。
しかし、外国人が退去を拒み続けると収容が長期化します。さらに収容を解除されることを求め、拒食(ハンガーストライキ)や治療拒否などを行い、健康上の問題が起きます。
収容の長期化を防止するために「仮放免」制度を利用する方法がありますが、もともとは健康上の理由等がある場合に一時的に収容を解除する制度であり、逃亡の可能性が増えるため問題となっています。
実際に「仮放免」許可後に逃亡をする人数は年々増加しています。
引用:ISA
(3)紛争避難民などを確実に保護する制度が不十分
難民条約では、以下のいずれかの理由により迫害を受けるおそれがある場合に限り「難民」と認めています。
- 人種
- 宗教
- 国籍
- 特定の社会的集団の構成員であること
- 政治的意見
しかし紛争避難民は、迫害を受けるおそれがある理由がこの5つに必ずしも該当しない場合があります。例えば、ウクライナ避難民などが挙げられます。
日本では2022年(令和4年)3月〜2023年(令和5年)2月末までの間に、2,300人余りのウクライナ避難民を受け入れていますが、法務大臣の裁量により保護している状況です。こうした紛争避難民などを確実に保護する制度の創設が課題となっています。
PoliPoliで公開されている外交関連の取り組み
誰でも政策に意見を届けることができる、政治プラットフォームサービス「PoliPoli」では、「自由で開かれたインド太平洋」の実現政策について、以下のように公開されています。
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PoliPoli|「自由で開かれたインド太平洋」の実現
(1)「自由で開かれたインド太平洋」の実現政策の政策提案者
議員名 | 小田原 きよし |
政党 | 衆議院議員・自由民主党 |
プロフィール | https://polipoli-web.com/politicians/MhNEL6SObMqPm5q8IU1l/policies |
(2)「自由で開かれたインド太平洋」の実現政策の政策目標
政策目標は主に以下の通りです。
- 法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着
- 経済的繁栄の追求(連結性、EPA/FTAや投資協定を含む経済連携の強化)
- 平和と安定の確保 (海上法執行能力の構築、人道支援・災害救援等)
(3)実現への取り組み
実現への取り組みは以下の通りです。
- 法の支配、航行の自由、自由貿易等の普及・定着
- 経済的繁栄の追求
- 平和と安定の確保 (海上法執行能力の構築、人道支援・災害救援等)
この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。
まとめ
今回は入管法について紹介しました。
入管法に関する日本の課題は多く残っているため、今後の動きをぜひチェックしておきましょう。