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共生社会とは?インクルーシブ教育システムや課題を簡単解説

投稿日2020.9.2
最終更新日2020.09.02

共生社会とは、 全ての国民が支えあい、性別や年齢、障がいの有無に関わらず、1人1人が積極的に参加・貢献できる社会です。

これを「全員参加型社会」とも呼びます。
東京オリンピック・パラリンピックで注目を集める共生社会ですが、実現にはどのような課題があるのでしょうか?

今回の記事では

  • 共生社会とは
  • 共生社会を実現するインクルーシブ教育システム
  • 共生社会の現状と課題

について分かりやすく解説していきたいと思います。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、共生社会とは

共生社会
共生社会とは、すべての人がお互いの権利を尊重し、支え合う社会です。

何らかの理由で社会参加が十分にできていなかった障がい者の方を含めた、すべての人が能力を自由に発揮し、活躍する社会を理想とします。

しかし、共生社会は障がい者を助けなければいけないという義務感で成り立つ社会ではありません。

障がいを持つ人も持たない人も、同じように暮らし、生活をする上で「障がい」という言葉を意識する必要がなくなることが共生社会のゴールです。

経済発展とともに

  • 核家族化
  • 地域の繋がりの希薄化

も懸念されていますが、共生社会が実現していくことで人と人との繋がりがこれまでよりも強くなるかもしれません。

参考:共生社会をつくるために 内閣府

2、共生社会実現のためのインクルーシブ教育システム

共生社会を実現する手段のひとつとして挙げられるのは「インクルーシブ教育システム」です。
インクルーシブとは「包括的な」という意味を持つ英単語“inclusive”に由来します。

(1)インクルーシブ教育システムの成り立ちと条文

インクルーシブ教育システムは、2006年12月13日に国連総会で制定された「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」内に記載され、障がいを持つ人と持たない人が同じ環境で教育を受ける教育制度を目指しています。

インクルーシブ教育システムについて説明されている第24条を見てみましょう。

第24条 教育

1 締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、次のことを目的とするあらゆる段階における障害者を包容する教育制度及び生涯学習を確保する。

引用:障害者の権利に関する条約について 文部科学省

つまり、インクルーシブ教育システムでは、障がいがあるからといって、障がいのない人と障がいのある人で教育に差が出てはいけないと考えられているのです。

障がいがあっても社会で自由に能力を発揮でき、周りからの理解を得られるよう、障がいを持つ者と持たない者の差を教育の時点で埋めていけば、ゆくゆくは共生社会の実現に繋がるだろうという考え方がインクルーシブ教育システムです。

(2)インクルーシブ教育システムの基本的な考え方

インクルーシブ教育システムの基本的な考えをくわしく見ていきましょう。
インクルーシブ教育システムでは

  • 障がいのある人が一般的な教育制度から排除されない
  • 生活している地域で初等中等教育を受けることができる
  • 合理的な配慮が提供される

以上のようなものが基本的な考え方とされ

  • 障がいのある人とない人が同じ場で教育を受けることを追求する
  • 障がいのある子どものニーズに応えた指導を提供する
  • 通常学級、通級指導、特別支援学級、特別支援学校など連続性のある学びの場を用意する

ことが重要であるとされています。

参考:インクルーシブ教育システムに関する基本的な考え方 独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所

ところで、上記の「合理的な配慮」とは何でしょうか?
この合理的な配慮には

  • 教員と支援員の確保
  • 施設設備の整備
  • 個別の教育支援と指導計画に対応できる柔軟な教育編成や教材の配慮

などが具体的に挙げられ、障がいを持つ子どもが学習する上で必要な環境を整備することを指しています。

障がいのある子どもが障がいのない子どもと同じ教育を受けるためには、合理的な配慮によって、差をできるだけ無くすことが大切です。

参考:別紙2 「合理的配慮」の例 文部科学省

3、インクルーシブ教育システムのための特別支援教育

インクルーシブ教育
インクルーシブ教育システムでは通常学級に加えて

  • 通級
  • 特別支援学級
  • 特別支援学校

などの多様な学びの場も必要です。

インクルーシブ教育システムの目的は、障がいのある子どもが障がいのない子どもたちと席を並べることだけではありません。

障がいのある子どもたちが積極的に授業に参加しながら、自主的に学び、理解を深めることも大事な目的です。
ここでは上記の多様な学びの場について見ていきましょう。

(1)特別支援教育一覧

それぞれの学級の定義を見てみましょう。

①通級

通級とは通級指導教室の略で、通常学級に在籍する子どもに軽度の障がいがある場合、追加で個別の指導を行う教室です。

参考:通級による指導とは 高知県教育委員会事務局

②特別支援学級

特別支援学級は、通級とは異なり1つの学級として存在します。
「通常の学級+通級」がある一方で、特別支援学級には「交流学級」がプラスされ、交流学級では通常学級の子どもたちと交流します。

参考:特別支援教育について 文部科学省

③特別支援学校

特別支援学校とは障がいを持つ子どものための学校です。
通級、特別支援学級が小学校と中学校に置かれているのに対して、特別支援学校には幼稚部、小学部、中学部、高等部があります。

参考:特別支援教育の概要 文部科学省

これらの特別支援教育は障がいを持つ子どものそれぞれのニーズ(障がいの種類も多様であるため)に合わせた教育を提供し、障がいを持つ子どもと持たない子どもの教育の差を解消するために欠かせない役割を担っています。

(2)発展し続ける特別支援教育

インクルーシブ教育システムでは、障がいを持つ子どもと持たない子どもが同じ場で教育を受けることと同様に、障がいを持つ子どもが授業内容を理解し、将来の社会参加と自立のために充実した時間を過ごすための環境整備も重要とされています。

特別支援教育では学習面にとどまらず

  • 障がいを持つ子どもと地域社会の積極的な活動と交流
  • 医療、保健、福祉、労働等と連携した障がい者へのサポート

などを発展的に行い、社会の構成員としての障がい者への理解を周囲の人々に促しています。

また、次世代の社会を担う子どもたち同士を交流させることで、子どもたちが大人になった時には共生社会が自然と築いていけるような基盤をつくることも特別支援教育の大切な役割です。

参考:共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進 文部科学省

4、現状と課題

昨今では発達障がいを抱えた子供達が通常の学級に参加しているケースも多く、これらの子どもたちへのサポートと実態の把握は大きな課題となっています。

日本における共生社会の現状と課題を見ていきましょう。

(1)発達障がいへの支援

特に近年急務とされている課題は、通常の学級に参加している

  • LD(学習障害)
  • ADHD(注意欠陥多動性障害)
  • 高機能自閉症等

などの発達障がいを持つ子どもたちへの支援です。

発達障がいを持つ子どもは通常学級の約6.3%在籍しているとされ、2006年には通級の指導対象に学習障害者または注意欠陥多動性障害者が加えられました。

「発達障がい」という概念は昔からあったものの、言葉が使用されはじめたきっかけは2004年の発達障害者支援法からということもあり、新たに生まれた障がいに対しても柔軟かつ迅速な対応が求められています。

(2)課題への対応

このように日々変化する障がいをサポートするために

  • 障害の種類及び程度
  • 就学基準
  • 通級の指導対象
  • 情緒障害学級の名称

の見直しが実施され、より多様なニーズに応えつつ、教育の質向上が取り組まれています。

(3)今後の課題

共生社会の実現に欠かせない特別支援教育では

  • 教育を提供する学校の環境整備
  • 保護者や地域との連携
  • 当事者への教育支援

の3つのアプローチを考える必要があります。

2010年3月に開催された「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」で発表された今後の課題を見ていきましょう。

①教育を提供する学校の環境整備の課題

学校側の課題には

  • 障がいのない子どもたちとの交流が少ない特別支援学校と地域の小中学校の連携
  • 教員の専門性の向上
  • 職業教育と就労支援の充実

などが挙げられました。
障がいを持つ子どもと持たない子供の共同学習は新学習指導要領にも記載され、子どもたちの「心のバリアフリー化」が推進されています。

②保護者や地域との連携の課題

保護者や地域との課題には

  • 地域の学校間での交流と共同学習(居住地校交流)の促進と理解
  • 学校外の人材活用と関係機関との連携
  • 親の会、NPO、学校ボランティアとの連携

などが挙げられました。
これらの課題解決において大切なことは、問題を解決していくのは当事者と学校だけではないということです。

周りの保護者や地域からの理解と参加を得ることが共生社会の実現の一歩に繋がります。

③当事者への教育支援の課題

当事者への教育支援の課題には

  • 幼稚園、保育所での早期支援の充実
  • 特別支援教育コーディネーターによる継続した支援
  • キャリア教育と就労支援

などが挙げられ、一時的ではない、教育課程での継続的な「線」のサポートと、家庭と関係機関とが連携した「面」のサポートが必要であるとされました。

日本の障がいを持つ子どもの就学率は世界的に見ても非常に高い傾向にあり、障がいを理由に就学の免除または猶予がなされている子どもが少ないです。

こうした現状を日本の強みと考えれば、いち早く、より多くの子どもに適した教育を提供することでさらに豊かな共生社会の実現を目指すことができるでしょう。

参考:1共生社会の形成に向けて 文部科学省

まとめ

今回は共生社会について解説しました。
共生社会では義務感から生まれる助け合いではなく、自然と手を差し伸べられるような相互の関係が理想です。

今回の記事では障がいを持つ人と持たない人の教育の共生について焦点を当てましたが、共生社会では障がいを持つ人が障がいを持たない人を助けることもあります。

障がいの有無にかかわらず、高齢者や女性、さまざまな生活背景を持つ人々がより暮らしやすい社会を築くため、共生社会の実現により注力していきたいですね。