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孤独死とは?現状や増加の理由・具体的な政策について簡単解説

投稿日2021.4.16
最終更新日2021.04.16

孤独死とは、主に一人暮らしの方が自宅に誰もいない状態で死亡することを指します。
最近では高齢者だけでなく、現役世代の孤独死も増加傾向にあり、誰にでも起こりうるものとして社会問題となっています。

今回の記事では

  • 孤独死の概要
  • 日本における孤独死の現状
  • 孤独死が増加する理由
  • 孤独死に対する具体的な取り組み

について分かりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、孤独死とは

孤独死
孤独死とは、一人暮らしの人が自宅で誰にも看取られず亡くなることを指します。
そのため、第三者や身内の方に発見されるまでの期間が長期化してしまうケースが多いようです。

法的な定義は存在しませんが、警察では「変死」として扱われ、行政においては「孤立死」として扱われます。

孤独死によって、遺族や近隣住民に悪影響を与えるケースもあります。
賃貸住宅での孤独死あれば、部屋の清掃などの現状回復に大きな費用がかかる可能性もあります。

分譲マンションや一戸建てでも、事故物件扱いとなれば、相場での売却が難しくなるでしょう。
そのため、最近では自治体や管理人などによって、孤独死を防ぐための様々な取り組みが行われているのです。

2、日本における孤独死の現状

 日本での孤独死の現状はどのようなものなのでしょうか。

  • 孤独死の数
  • 高齢者が感じる孤独死への不安

などから、孤独死の現状について確認していきましょう。

(1)孤独死の数

2020年1月に大阪府警は、市部・郊外を含めた全域における孤独死について、一律の基準を用いた調査結果を発表しました。

調査によると、大阪府内で「孤独死」に該当した人は、2019年の1年間で約2900人でした。
亡くなってから1ヶ月以上経過して見つかったケースは、382件もあったようです。 

世代別の孤独死の割合を見てみると、65歳以上が全体の71%を占める一方で、

  • 70代:34.3%
  • 40~50代:18.4%

という結果でした。

また、東京都監察医務院が公表しているデータによると、東京23区の孤立死数は

  • 2009年:3875名
  • 2019年:5554名

となっています。

この結果から、東京23区では、10年間で1.4倍以上も孤独死が増えていることがわかります。

参考:孤独死「働き盛り」2割 昨年2996人、大阪府警調査|朝日新聞デジタル
参考:東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計(令和元年)東京都監察医務院

(2)高齢者が感じる孤独死への不安

内閣府の調査によると、一人暮らしをする60歳以上の45.4%が「孤独死を身近に感じる」と回答しています。

孤独死

画像出典:「平成30年版高齢社会白書」第1章高齢化の状況|内閣府

 特に一人暮らしの高齢者は、地域との交流が少なく、話し相手や相談する相手がいないケースが多いようです。

高齢者の問題としてのイメージが強い孤独死ですが、最近では若者の孤独死も増加傾向にあるため、身近な問題として考えるべきかもしれません。

参考:東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の者の統計
参考:「平成30年版高齢社会白書」第1章高齢化の状況|内閣府

3、孤独死が増える理由

日本で、孤独死が増加傾向にある理由には

  • 核家族化の進行
  • 貧困
  • 孤立した高齢者の増加

などが挙げられます。
それぞれについて、以下に説明していきましょう。

(1)核家族化の進行

孤独死が増加している理由の1つは、「核家族化の進行」です。
かつては子供夫婦と親世帯が同居するケースが多く見られました。 

しかし近年では、核家族化となる家庭が増え、配偶者のどちらかが先立ってしまえば一人暮らしになるケースも増えているのです。

孤独死
画像出典:
令和2年版高齢社会白書(全体版)|内閣府

内閣府の「令和2年版高齢社会白書」では、一人暮らしをする65歳以上の割合は以下のようになっています。

男性 女性
1980年 約19万人 約69万人
2020年 約243万人 約459万人

以上からも、一人暮らしの高齢者が大幅に増えていることがわかるでしょう。

このまま増え続ければ、2040年には、一人暮らしをする65歳以上の高齢者は約896万人にまで上ると推測されています。 

 参考:令和2年版高齢社会白書(全体版)|内閣府 

(2)貧困

2つ目の理由は、会社の倒産やリストラ、低給料などによる「貧困」です。

  • 病院で診察を受けたいが、治療費が払えない
  • お金がなく、満足にご飯が食べられない

などの、経済的な余裕のなさから孤独死につながると言われています。

以下の内閣府が示す「被保護人員の変移」のグラフを見てもわかるように、65歳以上の生活保護受給者は増加傾向にあることが伺えます。

孤独死

画像出典:第1章 高齢化の状況(第2節 1)|内閣府

参考:第1章 高齢化の状況(第2節 1)|内閣府

(3)孤立した高齢者の増加 

3つ目の理由としては、周囲との付き合いがない、孤立した高齢者の存在が挙げられます。

「平成30年版高齢社会白書」によると、地域において「付き合いがない」と答えた60歳以上の割合は、

  • 男性:26.5%
  • 女性:18.8%

という報告があります。
孤独死

画像出典:「平成30年版高齢社会白書」第1章高齢化の状況|内閣府 

4、孤独死防止に対する具体的な取り組み

増加傾向にある孤独死に対して、国や自治体はどのような取り組みをしているのでしょうか。

孤独死に対する

  • 政府
  • 自治体

の具体的な取り組みについてご紹介します。

(1)政府による取り組み

厚生労働省は、高齢者の社会的孤立に対する取り組みとして、2008年から「高齢者が1人でも安心して暮らせるコミュニティづくり推進会議」を開催しました。

具体的には

  • 孤独を解消するコミュニティづくり
  • 高齢者虐待の早期発見
  • 認知症高齢者等の支援
  • 見守りシステムの開発

など、孤立死予防型のコミュニティづくりに対する取り組みについての提言を行なっています。

また、2017年に施行された「新たな住宅セーフティネット制度」では、自治体と民間が協力して高齢者や障がい者や子育て世帯に対する見守りサービスを実施するなど、孤独死問題への総合的な取り組みが進められています。

参考:高齢者等が一人でも安心して暮らせるコミュニティづくり推進会議|厚生労働省
参考:安心生活創造事業|厚生労働省 

(2)自治体による取り組み

全国の自治体でも、さまざまな孤独死への対策が行われています。

孤独死対策に協力する事業者・機関は増加傾向にあり、2017年6月の時点で383事業者が参加しています。

ここでは、

  • 横浜市戸塚区
  • 大阪府豊中市
  • 福井県若狭町

での孤独死対策についてご紹介します。

①横浜市戸塚区における孤独死対策

横浜市戸塚区では、地域住民や協力事業者が高齢者などを見守る取り組みとして、「見守りネット」を構築しました。

何かあれば、地域ケアプラザや区役所へすぐに連絡できるというものです。

「見守る人」、「見守られる人」をあえて特定しないことで、互いに負担にならないような仕組みとなっています。

「神奈川県住宅供給公社」では、県内各地の自治体や事業者と見守りネットワークの協定を結び、

  • 居住者
  • 管理会社
  • 公社

の三者から「孤独死等防止検討会」を設立し、意見交換や情報共有など随時行っています。

参考:戸塚区地域ネットワーク見守り事業「みまもりネット」|横浜市

②大阪府豊中市における孤独死対策

大阪府豊中市では、町中の高齢者を住民で見守る活動を進めています。

活動の1つとして、異変に気付いた住民が連絡するための安否確認専用窓口【安否確認ホットライン連絡窓口】を設立しました。

また、住民ボランティアや安心協力員などが協力して、地域のネットワークを構築したり、買い物の手伝いをするといった取り組みが行われています。 

参考:安否確認ホットライン|豊中市

③福井県若狭町における孤独死対策

福井県若狭町では、「黄色いハンカチ運動」という試みが行われています。 

住民が朝起きて体にどこも異常が無ければ玄関先に黄色いハンカチを掲げ、夕方になればハンカチを片付けるというものです。

老人会の役員からなる見回り隊が、ハンカチにより住人の安否をチェックします。

参考:若狭町社会福祉協議会

まとめ

今回は、孤独死について解説しました。

今後も少子高齢化が進行してしまうと、孤独死はより深刻な社会問題になるかもしれません。

孤独死を防ぐための総合的な対策が求められています。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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