政治ドットコム環境・社会環境問題酸性雨とは?影響や原因物質と対策を簡単解説

酸性雨とは?影響や原因物質と対策を簡単解説

投稿日2021.6.10
最終更新日2021.06.29
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

酸性雨とは、二酸化硫黄や窒素酸化物が溶け込んだ強い酸性の雨です。
コンクリートを溶かしたり、金属に錆(さび)を発生させたりすることで、建造物や文化財に被害を与えます。

本記事では

  • 酸性雨とは
  • 酸性雨の悪影響
  • 酸性雨に対する日本の取り組み
  • 酸性雨に対する国際的な取り組み

について解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、酸性雨とは

酸性雨
酸性雨とは、大気中の二酸化硫黄や窒素酸化物が溶け込んだ強い酸性の雨です。

一般的に、pH5.6が酸性雨の目安になります。
pH(ペーハー)とは、物質の酸性・アルカリ性を測る指標です。

酸性が強いほど、pHは低くなります。
身近な物での具体的なpHは

  • 檸檬:pH2
  • 純水:pH7
  • 石鹸:pH9~11

です。

(1)酸性雨の原因

酸性雨の原因は、大気中の

  • 二酸化硫黄(SO2)
  • 窒素酸化物(NOx)

などの物質です。

二酸化硫黄(SO2)と窒素酸化物(NOx)は、

  • 化石燃料の燃焼
  • 火山活動

によって発生します。

2、酸性雨の影響

酸性雨は、主に

  • 建造物
  • 生態系(自然環境)

に悪影響を与えます。

(1)建造物への影響

酸は、金属を錆させたり、コンクリートを溶かしたりする性質を持っています。

そのため、酸性雨が降ると建造物や文化財に損傷を与えます。
石造文化財は、特に酸性雨の影響を受けやすい文化財の1つです。

例えば、ギリシャのパルテノン神殿は、大理石でつくられています。
そのため、酸性雨の影響で石造彫像の表面が溶ける、といった被害が出ています。

これは大理石の主成分である「炭酸カルシウム」が、酸性に溶けやすい性質を持っているためです。

参考:建造物にも被害が及ぶ 第5回  酸性雨はどんな影響を与えるの? NHKそなえる防災 NHK

(2)生態系(自然環境)への影響

酸性雨は土壌や河川、海の環境にも悪影響を及ぼします。
土壌に酸性雨が降ると、土は酸性化します。

土が酸性化すると、植物の成長に必要な養分(カルシウムやマグネシウム)が失われるのです。
これにより、植物は枯れてしまうと言われています。

また、酸性雨によって、河川の水も酸性化します。
河川の酸性化が進行すると、魚やプランクトンに悪影響を及ぼします。

2、酸性雨に対する日本の取り組み

環境省では「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画」を実施しています。
酸性雨の原因物質は、国境を越えて数百から数千kmも運ばれることがあります。

1950年代には、イギリスや中部ヨーロッパからの酸性物質の越境汚染によって、北欧で魚や植物が死滅しました。

越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画によって、PM2.5等の大気汚染物質の越境汚染状況を把握するために、全国各地に測定所を設置することになりました。

大気汚染物質である

  • SO2(二酸化硫黄)
  • O3(オゾン)
  • NOx(窒素酸化物)
  • PM2.5

等をモニタリングしています。

3、酸性雨に対する国際的な取り組み

酸性雨
酸性雨の原因物質は国境を越えて移動するため、世界気象機関(WMO)の全球大気監視(GAW)計画の下、各国で雨の化学成分測定が行われています。

酸性雨に対する、国際的な取り組みである

  • 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)
  • 長距離越境大気汚染条約(LRTAP)
  • ヘルシンキ議定書
  • ソフィア議定書

についてご紹介します。

(1)東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)

東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)とは、東アジアの酸性雨の把握と解明のための協力体制です。

カンボジア、中国、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、フィリピン、韓国、ロシア、タイ、ベトナム、ミャンマーの計13か国が参加しています。

EANETには科学諮問委員会(SAC)があり、EANET参加国が指名するメンバー(科学者)で構成されています。

参考:東アジア酸性雨モニタリングネットワーク 外務省

(2)長距離越境大気汚染条約(LRTAP)

長距離越境大気汚染条約(LRTAP)とは、越境大気汚染対策に関する世界初の国際条約です。

国連欧州経済委員会で1983年に発効されました。
長距離越境大気汚染条約では

  • 硫黄などの排出防止技術の開発
  • 酸性雨影響の研究推進
  • 国際協力の実施
  • 酸性雨モニタリングの実施
  • 情報交換の推進

などが定められています。

参考:長距離越境大気汚染条約(ウィーン条約)酸性雨に対する取り組み 一般財団法人環境イノベーション情報機構

(3)ヘルシンキ議定書

ヘルシンキ議定書とは、硫黄酸化物の排出削減を定めた議定書です。
長距離越境大気汚染条約に基づき、1987年に発効されてました。

ヘルシンキ議定書では、1993年までに、硫黄酸化物の排出量を、1980年より30%削減することを目指し、国別の削減目標量が定められました。

その後、1998年に発効された「オスロ議定書」がヘルシンキ議定書に代わって、国別の削減目標量を定めています。

(4)ソフィア議定書

ソフィア議定書とは、窒素酸化物削減を定めた議定書です。

長距離越境大気汚染条約に基づき、1991年に発効されました。
ソフィア議定書では、窒素酸化物(NOx)の排出量の削減が定められました。

また、新しい施設と自動車には、経済的に可能かつ最良の技術に基づく、排出基準の適用が規定されています。

まとめ

今回は酸性雨について解説しました。

酸性雨は貴重な文化財や生態系に悪影響を及ぼす環境問題です。

酸性雨の原因物質は国境を越えるため、世界全体での酸性雨に対する取り組みが重要です。