最近ニュースで非常事態宣言(緊急事態宣言)というワードが頻繁に出てきますね。
しかし何となく聞いたことはあっても、「具体的に自分にどのような影響があるのかわからない」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は非常事態宣言(緊急事態宣言)について、以下のとおりご紹介します。
- 非常事態宣言(緊急事態宣言)の概要
- 宣言発令までの流れ
- 各国の対応
- 憲法との関係
本記事がお役に立てば幸いです。
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1、非常事態宣言(緊急事態宣言)とは
早速非常事態宣言の概要について見ていきましょう。
2020年に入り新型コロナウイルスが世界中で大流行し、日本でも多くの感染者が出ています。今回の流行病に対して国が行った大きな施策の1つが、2020年4月7日に発令された、今話題の「非常事態宣言(緊急事態宣言)」です。
改正された「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特別措置法)」に基づき、対象の期間や区域を定めて、首相が宣言を行いました。
発令当初は5月6日まで、と期間が指定されていましたが、5月7日に非常事態宣言の適用期間を延長することが確定しました。(5月25日に非常事態宣言は全面的に解除されました。しかし今後の感染者数の推移によっては再び宣言される可能性もあるでしょう)
この感染症の脅威に対し国家は国民を守るため法令に基づいて特殊な権限を発動する必要があります。この特殊な権限は具体的に
- 外出自粛の要請
- 店舗の休業要請
などがそれに当たります。感染症の拡大を防ぐには人と人の接触を減らすことが重要なので、このような要請が出ているわけです。
そして権限を行使するためには国民に対して現在の状況が危険であることを周知させなくてはなりません。この宣言が非常事態宣言なのです。
(1)脅威の対象はあくまでも「感染症」に限定
今回の宣言は、新型コロナウイルスのような「感染症」を脅威の対象と限定して行われています。
この宣言によって感染拡大スピードが緩められる可能性が高まる反面、私たちの暮らしや経済活動において、様々な影響が出ています。上記の休業要請や外出自粛要請のために
- 収入が減退し倒産する企業
- 住宅ローンの払えない人々
などが事例として出てきてしまっているのです。ただし、この休業要請と共に補償も行われています。
補償の例として
などが行われています。これらの手当制度の利用が必要だと思われた方は厚生労働省や総務省のウェブサイトに利用できる制度の一覧がありますので、是非ご確認下さい。
国は当然上記のように無条件で私たちの生活を制限することはできません。無条件で行う場合、人権侵害にあたる恐れがあり、最高法規である憲法に違反してしまうからです。
宣言を発令するためにも、何よりもまず先に法整備を進める必要がありました。
それではここから現政権の安倍内閣がどのような流れを経て非常事態宣言(緊急事態宣言)を発令したのか見ていきましょう。
(2)非常事態宣言後の安倍政権の対応
繰り返しにはなりますが、安倍政権は既存の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の一部を改正し新型コロナウイルスの脅威に対応できるように変更しました。
①「新型インフルエンザ等対策特別措置法」とは
残念ながら、鳥インフルエンザやMERSなどの感染症の世界的な流行は、たびたび起きてしまっています。実際に、過去にも新型インフルエンザの流行時、2013年4月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特別措置法)」が施行されています。
今回の宣言の発令においては、上記の法律が全ての出発点となりました。上記の際に存在しなかった今回の感染症について、どのように適用すべきか検討が進められていったのです。
②特別措置法の改正
2020年3月に暫定措置として、新型コロナウイルスを特別措置法の適用対象とする改正が行われました。改正案は3月13日、国会で可決成立し、翌日から施行されています。
この法改正によって、新型コロナウイルスという脅威に対して緊急事態宣言が出せるようになりました。
2、非常事態宣言(緊急事態宣言)が行われるまでの流れ
非常事態宣言がどのようにして行われたのかについて確認していきましょう。
(1)満たすべき2つの要件
2020年3月時点では国内の感染者数の拡大につれて、「非常事態宣言(緊急事態宣言)がいつ発令されるのか?」という世間の不安の声も大きくなりました。
発令までに時間を要した原因の一つとして、緊急事態宣言が発令される要件は以下のとおり二つ存在することがあげられます。
- 国民の生命・健康に著しく重大な被害を与える恐れがある
- 全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある
この2つの要件を満たす、という判断はいかにして行われたのでしょうか?
(2)専門家の意見を聞く
首相は、(1)の要件を満たしているか否か、諮問委員会の意見を踏まえて総合的な判断を行います。
特に(1)の2において「現状が、全国的かつ急速なまん延か否か」という点で慎重に議論が重ねられました。これらの必要不可欠な過程が残念ながら対応の遅れと見なされてしまっているようです。
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(3)宣言が行われる
それでは要件を満たしていると判断され、どのような対応が取られたのでしょうか?
①首相が宣言し、都道府県が住民に要請・指示
首相が、対象区域と期間を定めて非常事態宣言(緊急事態宣言)を発令しました。その後、対象地域の都道府県知事は、生活の維持に必要な場合を除き、住民に対して要請や指示を出せるようになります。
外出の自粛をはじめとした、感染の防止に必要な協力を仰げるようになるのです。
今回は
- 東京
- 神奈川
- 千葉
- 埼玉
- 大阪
- 兵庫
- 福岡
が対象地域となりました。
②宣言による具体的な影響
宣言によって可能となった具体的な要請内容は、以下のとおりです。
- 多くの人が集まるイベントなどの開催制限(ライブハウス、映画館など)
- 多くの人が集まる施設の、使用制限や停止の要請・指示(学校、保育所など)
- 土地や建物を、所有者の同意を得ずに使用(臨時の医療施設を整備する場合)
- 運送事業者に対し、医薬品や医療機器の配送の要請・指示(緊急の場合)
- 業者に対し、医療品や食料の収容・保管命令
このように、「緊急事態宣言」が出されると行政機関に強い権限が与えられ、私たちの生活が制限される可能性があります。
そのため、与野党の協議や国会審議では、慎重な判断を求める意見や、国会への事前の報告や承認を求める意見が出されていました。
③「ロックダウン(都市封鎖)」とは異なる
上記のとおり、強制力のある措置は非常に限られています。使用停止やイベントの中止も、都道府県知事による要請や指示に留まるため、従わない場合の罰則はありません。
つまり、アメリカやフランスなどの欧米で起こっている「ロックダウン(都市封鎖)」のような、強い強制力がある事態とは少し異なります。ロックダウンされた都市において不要不急な外出は一般的に罰金対象(国によりけり)になっています。
ただし、都道府県知事によっては事業者名や施設名を公表することがあるため、事実上は強制力が大きいと言えるかもしれません。
3、各国の非常事態宣言(緊急事態宣言)の主な施策
日本以外の国ではどのような施策が取られているのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
(1)アメリカの例
アメリカ政府は2020年3月13日、最大500億ドル(約5兆円)の財政出動を可能にする「国家非常事態宣言」を発令しました。
アメリカではオハイオ州やニューヨーク州など、州知事による「非常事態宣言」が大統領の宣言を先行しています。オハイオ州では、感染者がわずか3人の時点で非常事態宣言を行い、早期に対策を講じました。
3月16日にはトランプ大統領が会見において、外食や10人以上の集会、旅行の自粛を呼びかけました。
その後、例えばニュージャージー州では午後8時から朝5時までの夜間は外出禁止となり、かつ不要不急の外出は禁止されています。
日本とは違い、「外出しないようにして下さい(自粛)」ではなく「外出してはだめ(禁止)」なのです。
なお、アメリカでも外出については原則として「要請」ですが、州知事の判断で罰則を加えることも可能となっています。実際に、禁固刑や罰金刑を定めた州もあります。
(2)ハンガリーの例
ハンガリー政府は2020年3月12日、「非常事態宣言」を発令しました。同30日には更に、強権統治で知られるオルバン首相の権限を大幅に拡大する「非常事態法」を可決しています。
政権は終息までの時期が見えないことを理由に、期限を無期限へ延長していますが、野党側からは“独裁に繋がりかねない”との声も出ています。
屋内・屋外を問わず、大規模なイベントの開催は禁止され、学校の封鎖や市民の移動制限などの措置も行われています。
また、特に移民への取り締まりが強化され、ハンガリーとスロベニア及びオーストリア国境における検問が再開されました。国境を違法に超えた者は逮捕し処罰するという法律も施行されています。
4、これからの憲法改正について
与党である自民党は、憲法改正に前向きな姿勢をとっています。今回のような未曾有の事態において、速やかに対応し国民を守るため、改めて改憲論議が行われています。
2020年3月10日の憲法改正推進本部において、現状のような有事の際に政府権限を強めるため、「緊急事態条項」を創設する憲法改正案について協議が行われました。
新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、国会で改憲論議を始めるよう与野党に働きかけていく可能性があります。以下の関連記事では「憲法の改正」についてより詳しく解説していますので、是非ご覧下さい。
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非常事態宣言(緊急事態宣言)に関するQ&A
Q1.非常事態宣言(緊急事態宣言)とは?
感染症の脅威に対して、国が国民を守るために法令に基づいて発動する特別な権限のことです。
Q2.非常事態宣言が発令される条件とは?
非常事態宣言が発令される条件は、以下の2つです。
- 国民の生命・健康に著しく重大な被害を与える恐れがあることです。
- 全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがあることです。
Q3.非常事態宣言とロックダウンとの違いは?
非常事態宣言の場合は、都道府県知事による養成や指示に留まるため、従わない場合の罰金はありません。
ロックダウンの場合は、強い強制力があり、国によって不要不急の外出は、罰金対象になります。
まとめ
今回は、「非常事態宣言(緊急事態宣言)」の概要と、宣言発令までの流れについて取り上げました。各国の対応との違いや、日本ならではの法制度や憲法の関連も踏まえ、解説しました。
会社にお勤めの方、経営者の方、フリーランスの方、様々な立場の方が、先の見えない不安と今まさに戦っていらっしゃると思います。
本記事が少しでも、不安を拭い去る知識になり得れば幸いです。