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集団的自衛権とは?なぜ必要なのか、日本に関わる2つの自衛権について簡単解説

投稿日2022.11.10
最終更新日2022.11.15

集団的自衛権とは、国家Aが攻撃を受けた際に直接攻撃を受けていない第三国(当事国以外の問題に直接関与しない国)が国家Aと協同で防衛を行う権利を指します。

昨今

  • 北朝鮮によるミサイル実験
  • 中国による尖閣諸島海域への艦船の進入
  • 韓国による竹島の実効支配

など、日本と周辺国をめぐる軍事的な緊張は高まっていると言えます。
こうした現状の下、他国の脅威に対してどの程度の対抗措置が認められるのかが議論されています。

そこでこの記事では、

  • そもそも集団的自衛権とはどのような権利であるのか
  • 憲法との関係で何が問題になっているのか

などの項目について簡単にわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

公共の福祉に関して詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

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1、集団的自衛権とは

集団的自衛権についてここで詳しく見ていきましょう。
まずは自衛権そのものについてご紹介します。

(1)自衛権とは

集団的自衛権について詳しく見ていく前に、まずは「自衛権」の意味について見ておきましょう。

自衛権とは、急迫不正の侵害(法益が侵害されている、あるいは侵害が差し迫っている状態)を防ぐために武力を行使するという国際法上の権利です。

この自衛権は

  • 「個別的自衛権」
  • 「集団的自衛権」

の2種類に分けて理解するのが一般的です。

個別的自衛権と集団的自衛権の違い

個別的自衛権と集団的自衛権の違いは主に第三国が協同して防衛にあたるかどうかです。

例えば国家Aが国家Bから攻撃を受けていたとします。
この際国家Aが自国の防衛のために必要な措置を取る権利が個別的自衛権です。

一方、冒頭の繰り返しになりますが、国家Aが国家Bから攻撃を受けた際に直接攻撃を受けていない第三国が国家Aと協同で防衛を行う権利が集団的自衛権にあたります。

2つの自衛権と国連憲章51条

これら2つの自衛権は、すべての国連加盟国に認められていると国連憲章51条で定められています。

参考:国際連合広報センター国連憲章

例えば、国連憲章の第51条では、以下のように個別的自衛権・集団的自衛権のいずれもが加盟国の「固有の権利」として認められることを

この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

引用:国連憲章

この様に規定しています。

(2)個別的自衛権及び集団的自衛権に対する政府の解釈

まずは憲法9条をご覧下さい。

第9条

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

出典 日本国憲法

2項において「国の交戦権は、これを認めない。」と明確に定めていますが、日本国憲法が

を規定していることなども踏まえて、

「憲法第9条が、わが国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されません。」

引用:防衛省ホームページ

という政府の見解が出ています。

また、これらの解釈を採用し、自衛隊は憲法違反でないとも政府は主張しています。
自衛隊について更に詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧下さい。

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しかし技術発展や緊張の高まる周辺諸国との関係など、情勢の変化により他国に対する攻撃であっても、場合によっては日本の安全を脅かす可能性があるというのが政府の現在の見解です。

そのため昨今では日本が直接攻撃されなくとも、これが日本の存立を脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を侵害する恐れがある場合に(また、他に適切な手段がない場合)必要最低限度の実力を行使する(集団的自衛権の行使)こともまた憲法違反に当たらないと政府は判断しました。

参考 防衛省ホームページ

政府が集団的自衛権を容認した経緯については後段にて更に詳しく取り上げます。

(3)集団的自衛権が行使された場合

もし集団的自衛権が行使されたとしたらどのような事態になるでしょうか。

集団的自衛権の行使を厳しく批判する立場からは、日本が自分たちの意思ではなく、同盟国(アメリカなど)の戦争につきあわされる事態になりかねず、大きなリスクがあるという意見があります。

確かに、「自国は攻撃されていない状況で、同盟国に攻撃してきた他国を攻撃する」という状況になる可能性があるので、本来であれば回避できた自国への反撃を招く結果にもなりかねません。

この点は集団的自衛権のデメリットと言えます。

参考:日本弁護士連合会

現在の日本はすでに集団的自衛権を行使している?

客観的な事実として、日本はアメリカという同盟国に対して、軍事基地の提供を行っています。

1つの国が、自分の国の中に別の国の軍隊の駐留を認めることは、他国と共同して安全保障体制(集団を保護するための体制)を構築していると言えるかもしれません。

実際、アメリカは日本の各地に軍事基地を置くことによって、東アジア地域に対して軍事的な影響力を行使しています。

日本はこれにより外国からの侵害を排除することを意図していると言われることもあります。

参考:日米安保条約

日米安保条約の内容

日本とアメリカは日米安保条約という条約を結び、同盟関係の具体的なあり方を決めています。
この日米安保条約第5条において、日本・アメリカのどちらかが他国から武力攻撃を受けたときには、「共通の危険に対処するよう行動する」という規定を設けています。

2、集団的自衛権の行使容認|憲法9条改正

現在の安倍内閣のもとでは、自衛権の行使を積極的に容認する立場が推進されています。
具体的には、2014年7月1日の国家安全保障会議において、従来の憲法解釈を変更する内容の閣議決定を行いました。

(1)武力行使の新三要件

現在の安倍政権による自衛権に関する憲法解釈が、従来の憲法解釈とどのように異なるのか説明します。

従来は、自衛権の内容を個別的自衛権と集団的自衛権に分け、「個別的自衛権の行使を主に認める」という立場をとってきました。

言い換えると武力行使のためには「日本に直接攻撃があった場合」という要件が必要でした。

この点について新たな具体的基準を示したのが、2014年7月1日の閣議決定です。
武力行使のための新しい要件は以下の通りです。

憲法第9条のもとで許容される自衛の措置としての「武力の行使」の新三要件

  • わが国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
  • これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
  • 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

引用:防衛省ホームページ

安倍政権は従来の憲法解釈を変更し、個別的自衛権・集団的自衛権の区別によらず、我が国と国民の生命と権利が犯される可能性があるのであれば、当然自衛権の行使が認められるとしています。

参考:2014年7月1日閣議決定

(2)集団的自衛権行使容認の背景

こうした集団的自衛権行使を容認する背景としては、緊張する東アジア地域の国際情勢があります。
第一には、

  • 中国の軍事予算の拡大と
  • 周辺海域に対する不当な侵害
  • 尖閣諸島に対する外国船舶の侵入

などが問題となっています。
また、

  • 北朝鮮によるミサイル実験
  • 拉致事件の未解決

も重大な課題です。

更に韓国との間では竹島をめぐる領土問題が今後再燃していく可能性も考えられます。
以下の関連記事ではこれらの領土問題についてご紹介しています。

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(3)憲法改正について

安倍政権は、こうした国際情勢の急激な変化に対して、上記のように従来の憲法解釈を変更することで対応を試みています。

一方で、憲法解釈の変更が過度に進むと、実質的に憲法を死文化(効果を持たない建前だけの憲法になる)させてしまうことにもなり、適切ではありません。

そこで、憲法そのものを改正する動きが活発化しています。
具体的には、憲法9条の1項と2項は維持しつつ、自衛隊を明文で規定しようとしています。

もっとも、9条の1項と2項において軍事力の放棄と国の交戦権の放棄を明確にしている状態のままでは、新たに書き込む自衛隊に関する規定と矛盾が生じてしまう可能性もあります。

集団的自衛権の行使についても、9条1項と2項目とが従来通りに存在している以上は常にその範囲が問題となるかもしれません。

以下の関連記事では憲法改正(特に憲法9条)についてより詳しく解説していますので是非ご覧下さい。

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集団的自衛権に関するFAQ

Q1.集団的自衛権とは?

集団的自衛権とは、国家Aが攻撃を受けた際に直接攻撃を受けていない第三国(当事国以外の問題に直接関与しない国)が国家Aと協同で防衛を行う権利を指します。

Q2.個別的自衛権と集団的自衛権の違いは?

個別的自衛権と集団的自衛権の違いは主に第三国が協同して防衛にあたるかどうかです。

Q3.日米安保条約の内容の内容とは?

日本とアメリカは日米安保条約という条約を結び、同盟関係の具体的なあり方を決めています。
この日米安保条約第5条において、日本・アメリカのどちらかが他国から武力攻撃を受けたときには、「共通の危険に対処するよう行動する」という規定を設けています。

まとめ

今回は、集団的自衛権という言葉の意味について解説いたしました。

近い将来に行われるかもしれない憲法改正国民投票に向けて、集団的自衛権の意味を理解しておくことは極めて重要です。

ぜひ参考にしてみてください。

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この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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