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集団的自衛権とは?自衛権の何が問題とされているか?

投稿日2020.3.14
最終更新日2020.06.15

集団的自衛権とは、自国A以外の国が攻撃を受けた際に直接攻撃を受けていないA国が攻撃を受けた第三国と共に防衛を行う権利のことです。

昨今

  • 北朝鮮によるミサイル実験
  • 中国による尖閣諸島海域への艦船の進入
  • 韓国による竹島の実効支配

などなど、日本と周辺国をめぐる軍事的な緊張は高まっていると言えます。

こうした現状の一方で、日本国憲法においては「すべての軍事力を放棄し、国の交戦権は認めない」とする規定(第9条)があります。

この規定のもとで、他国の脅威に対してどの程度の対抗措置が認められるのかが議論されています。
具体的には、個別的自衛権の範囲を超え、同盟国アメリカとの共同のもとで集団的自衛権の行使が認められるべきかが問題となります。

この記事では、

  • そもそも集団的自衛権とはどのような権利であるのか
  • 憲法との関係で何が問題になっているのか

を簡単にわかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてみてください。

1、集団的自衛権とは

自衛隊
集団的自衛権とは、ごく簡単にいえば「自国の同盟国が別の国から攻撃されたときに、自国が攻撃されたわけではなかったとしても、攻撃をやめるように働きかける(防衛行動)こと」をいいます。

例えば、日本はアメリカと同盟を結んでいます。
もし、アメリカが中国と戦争になり、中国の戦闘機がアメリカの戦闘機を撃ち落とそうと攻撃をしかけてきたとします。

このとき、中国は日本に対して直接攻撃をしかけてきているわけではありませんが、日本は同盟国であるアメリカの戦闘機を守るべく、中国の戦闘機に攻撃をしかけたとしましょう。

この場合の日本の動きのことを、集団的自衛権の行使と呼んでいます。

(1)自衛権とは

集団的自衛権について詳しく見ていく前に、まずは「自衛権」の意味について理解しておきましょう。
自衛権とは、「自分の身を防衛する権利」のことで、国家だけでなく、私たち国民それぞれにも当然備わっている権利です。

例えば、あなたの命を奪おうと攻撃してくる人がいたとして、あなたがその人に反撃し、結果として相手の命を奪ってしまったとしても、あなたの行為は正当防衛として罰されることはありません。

これを国家レベルで行える権利が自衛権です。
この自衛権は、国際法上は「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の2種類に分けて理解するのが一般的な理解となっています。

①個別的自衛権と集団的自衛権の違い

個別的自衛権とは、自国民が他国民から攻撃を受けたときに、たとえその攻撃してきた他国民を殺害することになったとしても、自国民の生命と安全を守ることができる権利のことをいいます。

上で見た「正当防衛」と同じです。

一方で集団的自衛権とは、同盟国が他国から攻撃を受けたときに、自国に対してはまだ攻撃がなされていなかったとしても、同盟国を守るために他国を攻撃することをいいます。

②2つの自衛権はすべての国に認められる「固有の権利」

これら2つの自衛権は、すべての国が当然に持っているとするのが国際法上の理解です。
例えば、国連憲章の第51条では、以下のように個別的自衛権・集団的自衛権のいずれもが国の「固有の権利」として認められることを

「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」

この様に明確に規定しています。

③日本は「固有の権利」である自衛権を、自ら制限している

ただし、日本は非常に特殊な考え方を持っている国で、憲法でこれらの自衛権について自ら制限を加えています。
具体的には、憲法第9条において以下のような規定があります。

(第1項)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

(第2項)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

憲法にはこうした他国との交戦を否定する規定があります。
しかし現実には他国と比較しても強力な設備と人員を持つ自衛隊という組織が存在しています。

また、同盟国であるアメリカに対しては自国の領土の一部を軍事基地として利用することを容認しています。
そのため日本の現在の軍事体制に対しては様々な議論があります。

(2)個別的自衛権に対する政府の解釈

上で見た憲法の条文(憲法9条)を素直に読めば、日本国と日本国民は個別的自衛権についても放棄しているものと見るのが自然です。

2項において「国の交戦権は、これを認めない。」と明確に定めていますから、「他国から攻撃を受けたときであっても、国は一切何もしてはいけない」と命令していると見るのが日本語の自然な理解と言えるでしょう。

(交戦権=交戦する権利がないというのですから、文字通り戦いを挑んでくる相手に対して反応することが認められません)

しかし、それでは国際慣習にあまりにもそぐわないため、政府解釈では「集団的自衛権の行使までは認められないが、個別的自衛権の行使については憲法も当然認めている」という立場を採用しています。

1972年10月14日の参議院決算委員会で政府(内閣法制局)から提出された資料「集団的自衛権と憲法との関係」が政府解釈を端的に表したものというのが一般的な理解です。

この資料の中で説明されている政府の解釈をごく大まかにまとめると、以下の3つになります。

という解釈を採用し、自衛隊は憲法違反でないという主張をしています。

(3)集団的自衛権をこれまで行使できなかった理由

こうした立場のもと、自衛隊は個別的自衛権を行使するための最低限度の実力組織という立場をとっています。

その一方で、個別的自衛権の範囲を超えるような武力行使については、集団的自衛権の行使にあたるとしてこれを認めない立場をとっているわけです。

そして、この「個別的自衛権の範囲を超えるか、超えないか」の判断基準として「わが国に対する急迫、不正の侵害があること」を要件とするのが、現状の政府の公式的見解です。

この見解を巡っては、「わが国に対する急迫、不正の侵害」が具体的にどの程度のものをいうのかが問題になります。

例えば、現状において他国から日本に向けて軍事ミサイルが発射されたときに、これを撃ち落とすことは個別的自衛権の範囲内と考えられるでしょう。

しかし、そこからさらに進んで他国のミサイル基地を破壊するとなった場合には、「わが国に対する急迫、不正の侵害」とはいえず、憲法上認められない「武力の行使」に該当する可能性が高いでしょう。

こうした判断基準には問題があると言わざるを得ません。
なぜならば、今後ミサイルの精度がどの程度高まるかによって、個別的自衛権の範囲が広がったり、縮んだりする可能性があるからです。

例えば、「発射された後に撃ち落とすことが物理的に不可能であるミサイル」が開発された場合には、ミサイルが発射される前に他国のミサイル基地を破壊することも自衛権の範囲内とせざるを得ない状況が考えられます。

このように、従来の政府が採用してきた判断基準においては、軍事技術の進展いかんによって個別的自衛権と集団的自衛権にあたるかの判断が異なることになってしまうのです。

こうした状況を見て、現在の安倍政権は2014年7月1日に閣議決定を行い、集団的自衛権の行使を一部容認する立場を打ち出しています。

安倍政権による憲法解釈の変更については後でくわしく解説します。

自衛隊について更に詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧下さい。

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(4)集団的自衛権が行使された場合

このように、政府見解では「日本国は集団的自衛権を行使しない」という立場をとっていますが、もし集団的自衛権が行使されたとしたらどのような事態になるでしょうか。

集団的自衛権の行使を厳しく批判する立場からは、日本が自分たちの意思ではなく、同盟国(アメリカなど)の戦争につきあわされる事態になりかねず、大きなリスクがあるという意見があります。

確かに、そもそも集団的自衛権とは「自国は攻撃されていない状況で、同盟国に攻撃してきた他国を攻撃すること」に他なりませんから、本来であれば回避できた自国への反撃を招く結果にもなりかねません。

この点は集団的自衛権のデメリットと言えます。
一方で、このデメリットをどうしても避けたいのであれば、そもそも我が国の外交的な立場として「他国との同盟」という選択そのものが難しくなってしまうでしょう。

①現在の日本はすでに集団的自衛権を行使している?

また、客観的な事実として、日本はアメリカという同盟国に対して、軍事基地の提供を行っています。
これは「集団的自衛権を行使している」と見るのが国際的な理解です。

1つの国が、自分の国の中に別の国の軍隊の駐留を認めることは、他国と共同して安全保障体制(集団を保護するための体制)を構築していることに他ならないからです。

実際、アメリカは日本の各地に軍事基地を置いて海軍力・空軍力を展開することによって、東アジア地域に対して軍事的な影響力を行使しています。

日本はこれによって外国からの侵害を排除することを明確に意図しているといえます。
例えば、アメリカの大統領が変わるたびに、「尖閣諸島の防衛が日米安保の範囲内であるか」が問題となるのはその現れといえるでしょう。

他国から見れば「現在の日本は、すでにアメリカと集団的自衛権を行使している」と考えるのが自然なのです。

②日米安保条約の内容

日本とアメリカは日米安保条約という条約を結び、同盟関係の具体的なあり方を決めています。
この日米安保条約第5条において、日本・アメリカのどちらかが他国から武力攻撃を受けたときには、「共通の危険に対処するよう行動する」という規定を設けています。

これはまさしく「集団的自衛権の行使をお互いに行う」と言う取り決めになります。

③国際社会の現実と憲法の矛盾をどのように解決するか

このように、現状においても日本は米国との共同の元で事実上の集団的自衛権を行使していると見るのがごく自然な考え方です。

問題は、この矛盾に対してどの様な行動を取るかということです。
つまり現状を容認するために憲法改正を行うべきとするか、あくまで憲法に現状を合わせるべき(日米安保は破棄)とするかの問題です。

現在の安倍政権は、憲法改正によってこの問題を乗り越えようとしており、支持する立場と反対する立場とが拮抗しているのが現状です。

2、集団的自衛権の行使容認|憲法9条改正

現在の安倍内閣のもとでは、自衛権の行使を積極的に容認する立場が推進されています。
具体的には、2014年7月1日の国家安全保障会議において、従来の憲法解釈を大幅に変更する内容を閣議決定しました。

(1)集団的自衛権を行使するための要件

現在の安倍政権による自衛権に関する憲法解釈が、従来の憲法解釈とどのように異なるのか説明します。
従来は、自衛権の内容を個別的自衛権と集団的自衛権に分け、「個別的自衛権の行使は認められるが、集団的自衛権は認められない」という立場をとってきました。

この立場をとる場合、問題となるのは個別的自衛権と集団的自衛権の線引きをどのように判断するのかです。
この点について、「わが国に対する急迫、不正の侵害があること」という判断基準を用いてきたのが従来の政府解釈です。

①憲法9条の新たな解釈

新しい憲法解釈では、従来のように個別的自衛権と集団的自衛権との2つに分けること自体が合理的ではないと考えます。
すなわち、自衛権の行使にあたっては、我が国の同盟国に対する攻撃が行われた際に、「その攻撃によって我が国の国民の生命や権利に対する侵害が生じているのであるかどうか」が重要なのであって、このような侵害が生じているのであれば、個別的自衛権と集団的自衛権の区別によらず、自衛権の行使が認められるとします。

②2014年7月1日閣議決定の内容

この点について具体的な基準を示したのが、2014年7月1日の閣議決定です。
この内容を大まかにまとめると、以下の3点が自衛権行使における事実上の判断基準となります。

  • 我が国、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
  • これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
  • 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

安倍政権は従来の憲法解釈を大幅に変更し、個別的自衛権・集団的自衛権の区別によらず、我が国と国民の生命と権利が犯される可能性があるのであれば、当然自衛権の行使が認められるとしています。

(2)行使容認の背景

こうした集団的自衛権行使を容認する背景としては、緊張する東アジア地域の国際情勢があります。
第一には、中国の軍事予算の拡大と、周辺海域に対する不当な侵害があり、尖閣諸島に対する外国船舶の侵入などが問題となっています。

また、北朝鮮によるミサイル実験や拉致事件の未解決も重大な課題です。
韓国との間では竹島をめぐる領土問題が今後再燃していく可能性も考えられます。

(3)憲法改正について

安倍政権は、こうした国際情勢の急激な変化に対して、上記のように従来の憲法解釈を変更することによって臨機応変に対処しようとしています。

一方で、憲法解釈の変更が過度に進むことになると、実質的に憲法を死文化(効果を持たない建前だけの憲法になる)させてしまうことにもなり、適切ではありません。

そこで、憲法そのものを改正する動きが活発化しています。
具体的には、憲法9条の1項と2項とは維持しつつ、

  • 自衛隊は違憲でないこと
  • 自衛権の行使は違憲ではなく、内閣総理大臣の指揮の下必要があれば自衛権(集団的自衛権も個別自衛権も)を行使できる

という内容を明文で規定しようとしています。

もっとも、9条の1項と2項において軍事力の放棄と国の交戦権の放棄を明確にしている状態のままでは、新たに書き込む自衛隊に関する規定と矛盾が生じてしまう可能性もあるでしょう。

集団的自衛権の行使についても、9条1項と2項目とが従来通りに存在している以上は常にその範囲が問題となる可能性があります。

以下の関連記事では憲法改正(特に憲法9条)についてより詳しく解説していますので是非ご覧下さい。

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まとめ

今回は、集団的自衛権という言葉の意味について解説いたしました。

国連憲章において「すべての国家が持つ当然の権利」として認められている集団的自衛権ですが、我が国は憲法によってこの権利を自ら制限する立場をとっていることを理解しておきましょう。

こうした立場が国際社会の現状とあまりにもかけ離れていることから、現状の憲法を改正すべきか否かが問題となっています。これが、現在議論が行われている集団的自衛権の問題の本質です。

近い将来に行われる可能性が高い憲法改正国民投票に向けて、集団的自衛権の意味について理解しておくことは極めて重要です。

ぜひ参考にしてみてください。