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ブルーカーボンとは?仕組み・政策・日本の今後の課題を簡単解説

投稿日2021.4.26
最終更新日2023.06.06

ブルーカーボンとは、アマモやワカメのような海藻などの海洋生物に蓄積される炭素(=カーボン)のことです。 

地球温暖化対策が進められる中、CO2削減の新しい手法として、ブルーカーボンの利用に焦点を当てたプロジェクトが世界各国で取り組まれています。 

今回の記事では、以下について分かりやすく解説していきます。

  • ブルーカーボンとは
  • ブルーカーボンの仕組み
  • グリーンカーボンとの違い
  • ブルーカーボンに対する日本政府の取り組み
  • 日本のブルーカーボン活用における今後の課題

本記事がお役に立てば幸いです。

1、ブルーカーボンとは

ブルーカーボン
ブルーカーボンとは、海草や植物プランクトンなどの海洋生物によって吸収・固定される炭素(=カーボン)のことです。

また、海中での海洋生物の作用によって吸収・固定された炭素の量を数値化して、取引可能なものにすることを呼ぶ場合もあります。

ブルーカーボン生態系の例として以下が挙げられます。

  • 海草(うみくさ)藻場:アマモ、スガモ等、主に温帯~熱帯の静穏な砂浜、干潟の沖合の潮下帯に分布。
  • 海藻(うみも)藻場:コンブ、ワカメ、主に寒帯~沿岸域の潮間帯から水深数十mの岩礁海岸に分布。
  • 湿地・干潟:海岸部に砂や泥が堆積し勾配がゆるやかな潮間帯の地形、水没~干出を繰り返す。
  • マングローブ林:熱帯、亜熱帯の河川水と海水が混じりあう汽水域で砂~泥質の環境に分布、国内では鹿児島県以南の海岸に分布。

2009年、国連環境計画(UNEP)の報告書に、ブルーカーボンに関する内容が盛り込まれたのをきっかけに、世界から注目を集めるようになりました。 

そのため近年、世界各国でブルーカーボンを利用した取り組みが検討されています。

参考:ブルーカーボンについて|国土交通省
参考:ブルーカーボンとは|国土交通省

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2、ブルーカーボンの仕組み

海藻や植物プランクトンは、植物と同じ様に光合成によってCO2を吸収します。

このとき、海藻が吸収しているCO2量は、人間の活動で排出しているCO2の約30%と言われています。

2009年の国連環境計画(UNEP)の環境レポート「BLUE CARBON」によると、全世界におけるCO2排出量は、約72億トンです。そのうち、約9億トンが陸上で、約22億トンが海で吸収されているようです。

ブルーカーボン
画像出典:「BLUE CARBON」|日本ブルーカーボン事務局

また、このようなCO2を吸収できる海洋生態系をブルーカーボン生態系と呼び、以下の4つのグループに分けられています。

  • マングローブ林
  • 塩性湿地
  • 藻場
  • サンゴ礁

特に日本が注目しているブルーカーボン生態系は、藻場です。
沿岸域の藻場を維持する努力は、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献にもつながるとして、取り組みが進められています。

参考:ブルーカーボンとリソース|日本マリンエンジニアリング学会誌第52巻第 6 号
参考:「BLUE CARBON」|日本ブルーカーボン事務局 

3、グリーンカーボンとの違い

グリーンカーボンとは、森林をはじめとする「陸上」の植物が行う光合成によって、植物がため込む炭素(=カーボン)のことです。

また、石油や石炭などの化石燃料の燃焼によって排出される炭素は「ブラウンカーボン」と言います。
すす・チリなどの燃焼に伴って排出される炭素は「ブラックカーボン」と呼ばれています。

4、ブルーカーボンに対する日本政府の取り組み

それでは、ブルーカーボンについて、日本では実際どのような取り組みが行われているのでしょうか。

ここからは、ブルーカーボンに対する

  • 政府
  • 自治体

それぞれの取り組みについてみていきましょう。

(1)政府のブルーカーボンに対する取り組み

日本には、コンブやアマモなどを育成する広範囲の藻場があり、ブルーカーボンの活用に期待が高まっています。

 2017年には、研究機構や学識者などが「ブルーカーボン研究会」を設立し、2019年には、国土交通省が「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」を設立しました。

さらに2020年には、日本で初めての技術研究組合「ジャパンブルーエコノミー(JBE)」が設立されるなど、ブルーカーボンの活用や高度な増養殖技術開発などについての検討が進められています。 

参考:ブルーカーボンとしての藻場の評価に関する最新の国内動向|水産研究・教育機構 水産資源研究所

(2)自治体のブルーカーボンに対する取り組み

ブルーカーボンを意識した独自のプロジェクトをスタートしている

  • 神奈川県
  • 福岡県

の自治体についての活動についてご紹介します。

①神奈川県の取り組み

国が定める

  • 「環境未来都市」
  • 「SDGs未来都市」

に選定された神奈川県横浜市では、市民・企業・行政が協力して「横浜ブルーカーボン」事業を推進しています。

自然海岸のある金沢区エリアを拠点に、アマモ場を整備し、わかめの苗付をするなどの取り組みを進めています。

また、独自のカーボン・オフセット認証取引制度「横浜ブルーカーボン」を導入しました。

カーボン・オフセットとは、特定の取り組みで排出されてしまう温室効果ガスを、別の場所や取り組みで、排出削減や吸収などによって埋め合わせる(オフセット)という考え方です。

参考:横浜ブルーカーボン事業|横浜市

②福岡県の取り組み

福岡県では、「博多湾NEXT会議」という組織を設置し、博多湾におけるアマモ場の造成・育成を行っています。

また、福岡湾のアマモなどの藻場によるCO2の吸収を通じて、温室効果ガスの削減を目指す「福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度」を創設しました。

藻場や干潟の増加・再生は、温暖化防止だけでなく、博多湾の環境保全の貢献にもつながると期待されています。

参考:福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度とは|福岡市

5、日本のブルーカーボン活用における今後の課題

ブルーカーボン
CO2削減への活用が注目されているブルーカーボンですが、日本国内では知名度の低さなどの課題があるのも現実です。

企業や行政がブルーカーボン事業に対してより積極的に取り組むためには、「ブルーカーボン」という言葉の知名度の向上が必要かもしれません。

また、海洋生物のCO2吸収に関しては、明確になっていない部分も多いため、ブルーカーボンについて各国が歩調をそろえて、研究を進めることも必要です。

一方、世界的な認知度が高いグリーンカーボンは、地球温暖化防止のクレジットとして取引の対象になっています。

ブルーカーボンもクレジットの対象として認められれば、大きな経済効果を生み出しつつ、地球温暖化対策への効果も高まると考えられます。

参考:J-クレジット制度 

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あなたの願いや意見が政策に反映されるかもしれないので、是非下記のリンクからコメントしてみてください。

PoliPoli|再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!

(1)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策提案者

議員名 田嶋 要
政党 衆議院議員・立憲民主党
プロフィール https://polipoli-web.com/politicians/JskZ6HJLEgwWJZkKTVZN/policies

 

(2)再エネで地域も経済も活性化する気候危機政策の政策目標

政策目標は主に以下の通りです。

  • 再エネを中心とした分散型エネルギーシステムに移行し、そのプロセスを促進するグリーンリカバリーによる投資と海外に支払っていた燃料費を国内で循環させることにより、脱炭素社会の実現と経済・社会の活性化を両立させます。

(3)実現への取り組み

実現への取り組みは以下の通りです。

  • 分散型エネルギー社会を実現するための基本法をはじめとした環境整備を行い、エネルギーの地産地消や原発依存からの脱却、エネルギー転換の過程で起こる雇用の公正な移行を実現します!

この政策の詳細をより知りたい方や、政策の進捗を確認したい方は下記リンクからご確認ください。再エネで地域も経済も活性化する気候危機対策!

まとめ

今回は、「ブルーカーボン」について解説しました。 

自然災害の要因ともいわれている地球温暖化への対応が緊急課題となっている中、ブルーカーボンの活用は課題を打開する有効な策になる可能性を秘めています。

今後の地球環境を維持していくため、官民が連携したブルーカーボンの研究や活用の促進がより一層重要となっていくでしょう。

この記事の監修者
政治ドットコム 編集部
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