法律の他に、政令や省令という言葉を聞いたこともあるかと思います。
それぞれの違いが分かるでしょうか。
今回は
- 政令
- 省令
- 法令
- その他訓令や通達
などの違いをまとめてご紹介します。
本記事がお役に立てば幸いです。
国政調査権について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
国政調査権とは?3つの国政調査を簡単解説
1、政令と省令の違い
まず政令とは、内閣の出す法令(国の規則)です。
本来国の規則は国会でしか作ることができません。
しかし内閣のような行政が決まりを作ることもできます。
これを行政立法と呼びます。
もちろんこれは無制限に立法できるわけではなく、憲法や法律の委任(憲法や法律が「この事柄に関しては行政が規則を作って良い」としている)がある場合に行政立法が可能となります。
行政立法とは?意義や2つの規則を簡単解説
一方、省令は、各大臣が出す法令です。
出す機関がそれぞれ異なるのを覚えておくと良いでしょう。
ちなみに、もう一つ、内閣府令というものもあります。
こちらは総理大臣が出すものです。
微妙な違いですが、押さえておくと良いでしょう。
- 政令:内閣が制定する命令
- 省令:各府省の大臣が発する命令
ちなみに、法律、政令、省令を合わせて法令と呼びます。
政令と省令の違いについて更に詳しく見ていきましょう。
(1)政令とは
政令の根拠は主に、日本国憲法73条6号によるものです。
日本国憲法第73条
内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
6号この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。(出典 憲法)
より簡単に言い換えると「憲法や法の目的のために政令を制定することができるが、法律が罰則についても行政が決めて良い、としている場合を除いて規則違反に対する罰を設けることができない」ということです。
政令には執行命令と委任命令の2種類があります。
①執行命令
執行命令は、国民の権利や義務に影響を与えるルールの部分は法律にて定め、実際に社会で法律を執行するにあたって決めなくてはならない細かい手続きなどを、政令で規定するものです。
こちらの命令では国民の権利や義務に具体的な影響を及ぼしません。
②委任命令
委任命令は、国民の権利や義務に影響を与えるルールの部分の規定も、法律によって政令に「委任」するものです。
- 具体的義務
- 罰則
などのことが委任命令によって定めることができます。
ちなみに白紙委任という言葉があります。
白紙委任とは内閣が制定する政令などに対し、法律がその規則の中身を全て委任すること(包括的委任)を指します。
白紙委任は法律に基づかず、憲法に違反しています。
白紙委任が許容される場合、国会が国の唯一の立法機関では無くなるためです
(2)省令とは
省令は各省庁の大臣が発する命令です。
内閣が制定する政令よりも効力は低く、法律の円滑な運用をはかるために、各省が所管の行政事務について制定する命令です。大臣が署名して官報で公布されます。
法律の委任を受けて、罰則規定などを省令に設けることもあります。
法律や政令が天皇の名で交付されるのに対して、省令は制定した各省大臣の名で交付されます。
政令・省令共に国民の権利利益に関わる命令は法や憲法の委任が必要です。
ただし、法律を施行するための準備(国民の権利利益に関わらない場合)は委任は不要となります。
2、政令が制定されるまで
政令は以下の手続きによって制定されます。
- 閣議において決定される(内閣法第4条第1項)
- 主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署する(憲法第74条)
- 天皇が公布する(憲法第7条第1号)
- 官報に掲載される
まずは閣議決定が行われます。
閣議決定とは内閣の会議における意思決定のことです。
閣議では閣僚(内閣を構成している国務大臣のこと)全員に参加義務があります。
上記の主任国務大臣とはその政令を制定する事柄に関わっている大臣のことを指します。
国家予算や税金については財務省の管轄なので、財務大臣がこれに当たります。
閣議決定とは?何が決まるのか・閣議決定の流れを簡単解説
官報とは行政が国民に情報提供するための公告文書になり、実は毎日刊行されています。
これに対し、省令は各省庁の大臣が個別に公布します。
省令の内容が複数の各省大臣の所管にわたる場合には、関係する各省大臣の連名で、共同省令が制定されます。
3、法体系ピラミッド
これまで出てきた政令・省令を含め、日本の法体系をまとめてみます。
以下のピラミッドのように、上に行くに従って力の大きなものとなります。
最も大きなものが最高法規である憲法であり、次が国会で採決される法律となります。
その次が政令、そして省令となりますが、政令は施行令、省令は施行規則とも呼ばれます。
法律では曖昧な部分を補うものであり、イメージとしては「施行令」「施行規則」の順番で細かくなっていき、法律の曖昧さを施行令で補い、さらに詳細な部分を施行規則で明確化するという形です。
また、その他に法律の委任を受けて詳細を定めるものに「告示」があります。
告示は法律の委任を受けて規定されるため、違反した場合は法律で定められた罰則に基づいて罰せられることになります。
告示とは違い法的拘束力がないのが「通知」です。
省庁から、都道府県知事などに発せられるもので、「通知」は行政同士での助言という位置づけとなります。
それを受け取った上で、法的拘束力を持たせるかは各地方行政の判断に任せられることとなります。
憲法 | 国の最高法規 |
法律 | 国会で議決される |
政令・施行令 | 内閣の出す法令 |
省令・施行規則 | 各省庁の大臣が発する命令 |
告示 | 法律の執行基準を示す 拘束力あり |
通知 | 行政同士での助言という位置づけ 拘束力なし |
4、政令と省令の具体例
次に、政令と省令の具体例を見ていきます。
(1)政令の具体例
不当景品類及び不当表示防止法施行令は平成21年に出された政令です。(平成29年に改正、翌年施行)
消費者が不当な景品や表示につられて、質の良くないサービスを購入することを防ぐ目的のものです。
法律だけではカバーすることができない部分をこうして補っています。
(2)省令の具体例
労働安全衛生規則とは、労働の安全衛生についての基準を定めた厚生労働省令です。
労働安全衛生法及び労働安全衛生法施行令に基づき定められたものとなっています。
政令に関するQ&A
Q1.政令と省令の違いは?
政令とは、内閣の出す法令(国の規則)です。
一方で、省令とは、各大臣が出す法令です。 他にも、総理大臣が出す内閣府令というものもあります。
Q2.政令が制定される流れとは?
政令が制定されるまでの流れは以下の通りです。
- 閣議において決定される(内閣法第4条第1項)
- 主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署する(憲法第74条)
- 天皇が公布する(憲法第7条第1号)
- 官報に掲載される
Q3.政令の具体例は?
政令の具体例は以下の通りです。
不当景品類及び不当表示防止法施行令
不当景品類及び不当表示防止法施行令は平成21年に出された政令です。(平成29年に改正、翌年施行) 消費者が不当な景品や表示につられて、質の良くないサービスを購入することを防ぐ目的のものです。
法律だけではカバーすることができない部分をこうして補っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
実に色々な法体系があることがお分かり頂けたかと思います。
普段、生活していく上では、それが法律なのか、政令なのか、省令なのかを意識することは殆どないかもしれません。
しかし就職して人事労務系の業務につく人などは関わってくることもあり、社会的知識としてそれぞれの概要を知っておくのは意味のあることかと思います。
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