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法律ができるまで|法律成立までの流れを簡単に解説

投稿日2020.3.7
最終更新日2020.06.08

「法律」とは社会のルールであり、そのルールは簡単に言うと国がつくります。
何気なくよく聞く言葉である一方、「法律が成立するまでの流れ」を正しく理解している方は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は

  • 法律成立までの流れ

をわかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、法律をつくる前に

法律(ほうりつ)とは、日本社会の秩序を守るためにあるルールのことです。
もしも日本に法律がなければ、罪の基準がなく、窃盗や殺人犯を裁くこともできません。

つまり、法律とは誰もが安心して暮らしていくために、国家が国民に対して権利と自由を守り、そして制限するためのものなのです。

ただし法律は、憲法の定める方式に従って国会で審議されなければ成立しません。
それは、立法・行政・司法と国の権力を分ける三権分立を採用する日本で、国会だけが法律を制定できる権利をもつからです。
これを立法権と呼びます。

以下の画像は国会を中心に考える三権分立の概念図になります。

立法権|三権分立

審議・採決する案には、国会議員がつくる「議院立法法案」と内閣がつくる「内閣提出法案」と2種類あります。

(1)議員立法の場合

国会議員の発議(この法律をつくりましょうという案を出すこと)によって法律となったものを「議員立法」といいます。
三権分立の立法権を担う国会の議員が法律案を発議することは当たり前とも感じるでしょう。

ですが、昔から内閣による発議が多い日本では、「内閣提出法案」と対峙する意味から「議員立法案」と呼ばれています。
ただ、いくら国会議員といってもたった1人では発議できません。

衆議院で20人、参議院で10人以上の賛成意見が必要です。
また、予算がかかる案を発議する場合は衆議院で50人、参議院で20人以上の賛同者がいなければ発議すらできません。

法案発議に必要な賛同者数 衆議院20人以上 参議院10人以上
お金のかかる法案の発議に必要な賛同者数 衆議院50人以上 参議院20人以上

これは、自分の支持団体の利益だけを考えたものなど「お土産法案」の頻発を防止しているためだといわれています。

(2)内閣提出法案の場合

内閣が政府を代表してつくるものを「内閣提出法案」といいます。
各省庁でつくられ、閣議(内閣での審議)に出す前に内閣法制局という法に対する深い知見を持った機関によって審査が行われます。

その後、閣議決定を経て、衆議院と参議院の両院へ送られます。
特徴は、国会議員の発議による法律案と比べて成立しやすいという点です。
理由のひとつに「与党の事前審査」があります。

これは文字通り、官僚がつくった法律案を国会に出す前に与党内で事前に審査するというものです。
自民党では政務調査会の各部会で、自分たちが担当する省庁の案を議論、審査しています。
つまり、自民党の議員たちは国会に法律案が出される前から内容について議論しているのです。

法律案とは、各議院で過半数の賛成を得られたときに成立するものです。
与党審査会ですでに法律案について了解している与党議員が国会では過半数を占めるので、必然的に成功率が高くなります。

内閣提出法案そのものについてより詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧下さい。

内閣提出法案とは?法律ができるプロセスを簡単解説

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2、法律ができるまで|内閣提出法案の場合


政府を代表して内閣がつくった法律案が成立し、わたしたちが知るようになるまでの流れを更に詳しくみていきましょう。

(1)法律案の作成

年間100~150本もの法律案が国会には出されていますが、そのうち約8割が内閣からの提案であるといわれています。
法律案は、基本的に担当する各省庁(たとえば、労働関係なら厚生労働省、文化観光に関するものなら文部科学省)によってつくられます。

このとき関係する省庁と意見調整だけでなく、内容によっては有識者(専門家)への諮問や公聴会などもおこなわれます。
ある程度意見が整って国会提出の見通しがつくと、文をつくりあげ、法律案の原案が完成します。

(2)内閣法制局の審査

第一原案がつくられると、次は法律面を補佐している内閣法制局が内容の妥当性(どこか矛盾点はないか、本当に必要があるか)などを審査します。

具体的な審査内容は以下の4つです。

  • 憲法や他の法律との整合性
  • 立案の意図に対する表現の正確性
  • 条文の表現や構成の正しさ
  • 文章中の用字・用語の誤り

各省庁の法律案担当者は、参事官や法制局の部長、次長や長官からの質問に何度も回答・説明しなければなりません。
この審査こそ、法律案提出の最大の関門ともいわれています。

(3)閣議

内閣法制局での審査が終われば、内閣総理大臣が議長、官房長官が進行役を務める閣議が首相官邸の閣議室にて開かれます。
あらゆる角度から検討し、「この内容で国会に提案しよう」という内閣の意思決定をおこないます。

決定の条件は全員一致です。

もし1人でも反対すれば、内閣総理大臣は閣議決定を諦める、もしくは反対する大臣を罷免するという2つの方法しかありません。
異議なく決定がおこなわれた法律案は、いよいよ国会に送られます。
ちなみに閣議の内容は、クレームや悪用などの恐れがあるため非公開となっています。

以下の関連記事ではこの閣議決定について更に詳しく解説していますので是非ご覧下さい。

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(4)閣僚懇談会

閣僚懇談会とは、閣議に続いておこなわれる意見交換の場です。
閣議のように何かを決定する場ではなく意見を交換共有するための場なので、とくに発言がないなら開いて数分で終了するということも珍しくありません。

(5)書類は皇居へ

閣議決定後、署名された書類は毎回、閣議後に皇居・御在所に提出されます。
これは天皇陛下による書類への署名・押印が必要だからです。

(6)記者会見

閣議後、内閣官房長官や大臣によって記者会見が開かれます。

記者会見では、

  • 検討中の法律案の発表
  • 提出手続きを行う予定の法律案の発表
  • 情報公開法に基づいた資料の公開
  • 記者との質疑応答

などが主におこなわれます。

(7)国会で審議

次は国会での審議となります。
提出を受けた議院の議長はふさわしい委員会(国会議員で構成される組織)に審査を委ねます。
このとき、最初に提出を受けた議院から審議・採決が始まります。

  • 委員会で討論、採決
  • 本会議で採決
  • 以下同じ手続きを再度おこなう

審議は衆議院、参議院と独立しておこないますが、方法は同じです。

委員会では提出理由や質疑応答がおこなわれ、委員会での審議が終われば本会議に移行します。
本会議では委員会討論での結果を踏まえて採決、議院としての最終的な意思を決めます。
終わればもう一方の議院に送られ、同様の手続きをおこないます。

(8)法律が成立

上記のように衆議院と参議院の両院での別々に審議がおこなわれ、両院ともが可決すれば、法律は成立となります。

(9)法律の公布

無事成立した法律が公布されるまでの過程をご紹介します。
後に可決した議長は内閣を経由して天皇陛下へ法律の公布を奏上し、30日以内に官報に掲載される形で公表されます。

間違いやすい言葉として「施行」がありますが、「公布」は成立した法律を国民が知れる状態であるものです。
これに対して、「施行」とは効力が実際に発動作用している状態をあらわします。

3、法律がつくられる上での注意点

注意点
最後に、法律がつくられる上で注意しておくべき点についてくわしくみていきましょう。

(1)公聴会

公聴会とは、利害が関係する者や専門的な知識を持つ者から意見を聴くために委員会が中央や地方で開くものです。
ここで意見を言う人のことを「公述人」と呼びます。

いわゆる「勉強会」のことで、委員会で審議する前に開きます。
住民から直接幅広く意見を聴けるのがメリットです。

法律案の審議の参考のため、総予算および重要な歳入法案では公聴会を開く義務があります。
ですが、公述人の意見を受けて予算案の内容が修正されることは現状では余りありません。

公聴会についてより詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧下さい。

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(2)衆議院に先議権がない

予算案の審議と違って、法律案に関しての先議権を衆議院は持ちません。

そのため、参議院が法律案を先に受けたのなら、衆議院への送付は参議院での審議後となります。

このように、参議院が先に受け取った法律案を「参議院先議法案」と呼びます。
実際には、衆議院から審議を始めるパターンが圧倒的に多く、参議院から始まるパターンはごく一部に限られています。

(3)衆議院の優越4つ

衆議院の優越には4つのパターンがあります。

  • 法律案の再議決
  • 予算案の議決
  • 条約の承認
  • 内閣総理大臣の指名

ここからは、参議院よりも衆議院の意見が採用されるケースについて、かんたんにみていきましょう。

①法律案の再議決

衆議院で可決も参議院が異議を唱えれば、本来ならそこで話は終わりです。
ですが、衆議院がどうしても法律として通したい場合、選択肢は2つあります。

  • 両院協議会を請求して、互いの妥協点を探る(国会法第84条)
  • 衆議院で再議決をおこない、再可決する(憲法59条2項)

再議決をおこなった場合、参議院がいくら異議を唱えても衆議院で出席議員の3分の2以上で再可決をすればその法律案は通ります。

また、60日以内に参議院が考えを集約しない場合も同様です。
もう1度議決をおこなって賛成多数での可決があれば通ります。(憲法59条4項)

ちなみに、反対のケースとして参議院で可決しても、衆議院が否決した場合はとくに方法がなく、その段階で廃案となるので注意しましょう。

②予算案の議決

両院で意見が合わない場合は、衆議院の意見が重視されます。
これは、予算をすばやく決めることで国政をスムーズに進ませる狙いがあります。
具体的には、以下の場合に当てはまれば、衆議院の意思を国会の議決とみなすとされています。(憲法60条2項)

  • 両院協議会が不調に終わる
  • 30日以内に参議院が考えを集約しない

③条約の承認

両院で意見が合わない場合は、予算案と同様なパターンで衆議院の優越権が発動します。(憲法61条)

  • 両院協議会が不調に終わる
  • 30日以内に参議院が考えを集約しない

ただし、予算案と異なり、衆議院に先議権はありません。
そのため、先に条約の承認決議をおこなう議院はどちらでも良いとされています。

④内閣総理大臣の指名

両院から1名、内閣総理大臣にふさわしい人物を選びますが、互いの指名が合わないときは衆議院の指名が優先されます。
これは、日本のトップが早急に決まらなければ、政治経済、防衛などあらゆる機能がストップしてしまうからです。

衆議院の意見が採用されるのは、以下のいずれかに該当する場合と定められています。(憲法67条2項)

  • 両院協議会が不調に終わる
  • 10日以内に参議院が考えを集約しない

上記に該当すれば、衆議院から選ばれた人物がそのまま日本の内閣総理大臣になります。

衆議院の優越については以下の関連記事でより詳しく解説していますので是非ご覧下さい。

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まとめ

今回は法律ができるまでについてわかりやすく解説いたしました。
法律は私たちが生きる社会のルールについて国が定めたものですが、私たちの人権もこれらの法律で守られているのだということを理解しておきましょう。

日頃の政治ニュースを漠然と見るのではなく、どのような法律案がどの段階にあるのか考えることで、国の政策や動きを知ることができます。