地方創生とは、地方の人口減少に歯止めをかけ、活力ある日本社会の実現を目的とした一連の政策を指します。
新型コロナウイルスの影響でテレワークなどの施策が推進された結果
- 地方移住
- 二拠点生活
など、地方での暮らしが注目されています。
そこで今回は地方創生について、以下のとおり解説します。
- 地方創生の概要
- 地方創生の背景
- 地方創生の基本方針
本記事がお役に立てば幸いです。
1、地方創生とは
地方創生とは、地方の人口減少に歯止めをかけ、活力ある日本社会の実現を目的とした一連の政策です。
実は「地方創生」という言葉の厳密な定義は、現段階では存在しません。
一般的には、第2次安倍内閣によって開始された「地方活性化への取り組みや事業」を指します。
具体的な取り組みとしては、2014年9月3日の第2次安倍改造内閣発足と同時に、「まち・ひと・しごと創生本部」の設置がなされました。
2014年12月2日には「まち・ひと・しごと創生法」の施行によって、「まち・ひと・しごと創生本部」は内閣設置の法定組織となっています。
まち・ひと・しごと創生総合戦略とは?地方創生の政策について解説
この本部の通称が「地方創生本部」であるため、地域活性化の取り組みが「地方創生」と呼ばれることが多いのです。
地方がより住みやすい環境となることで、日本全体を活気ある状態にすることを目指しています。
参考:地方創生
2、地方創生の背景
続いて、地方創生の背景となった
- 東京一極集中
- 人口減少
という日本における課題についてご説明します。
(1)東京一極集中
東京一極集中とは、政治・経済など国の高次中枢機能の大部分が首都・東京に集中している現象です。
東京はGDP(国内総生産)の約2割を占めていることからも、東京一極集中が起きていることがわかります。
例えば、都心三区(港区、中央区、千代田区)だけを見ても、
- 政治(国会)
- 経済(多くの上場企業など)
- 情報(マスメディアの集中)
- 教育(プログラミングなどの先端教育)
- 文化(芸能)
など、あらゆる分野が東京に集中しているのです。
「東京一極集中」の特に大きなデメリットは、首都圏で大きな災害などが起きた場合、日本全体に大きな影響を与えてしまうことです。
そこで、省庁機能の一部を地方へ移転するなど、東京だけが担っている機能を地方へ分散することが検討され始めました。
参考:東京一極集中の動向と要因
東京一極集中とは?コロナで見直される地方と東京の関係
(2)人口減少
また、人口減少の問題も地方創生が重視されるようになった背景の1つです。
日本では少子高齢化(若年人口が減少し高齢者が増加する現象)が急速に進展しており、2008年をピークに総人口が減少に転じています。
国の将来推計によれば、2050年には日本の総人口は、1億人を下回ると考えられています。
そして、働く世代の中心である15歳から64歳の生産年齢人口も減少しており、労働力不足が指摘されています。
そこで
- 限られた労働力でより多くの付加価値を生み出すこと
- 一人当たりの所得水準を高めること
などを実現するために地方創生が求められているのです。
日本全体の経済を発展させていくためには、どの地域においても豊かに生活できる環境整備が急務と言えるかもしれません。
参考:総務省 人口減少の現状
少子高齢化とは?問題点と解決策を簡単解説
3、地方創生を目指す政策について
ここでは、地方創生を目指す政策についてご説明します。
「まち・ひと・しごと創生」を掲げる政府の施策では、地域それぞれの特徴を活かした自律的・持続的な社会を創ることを目指しています。
具体的には、
- 人口減少の克服
- 将来にわたる成長力の確保
など実現するために、4つの基本目標を掲げました。
- 稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする
- 地方とのつながりを築き、地方への新しい人の流れをつくる
- 結婚・出産・子育ての希望をかなえる
- 人が集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる
また、これとあわせて
- 多様な人材の活躍を推進する
- 新しい時代の流れを力にする
という、2つの横断的な目標に向けた政策を進めています。
「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」では、新型コロナウイルスの問題により提唱された「新たな日常」に対応した
- 地域経済の構築
- 東京圏への一極集中の是正
があらためて急務であるとされました。
新たな日常に対応するためにも、ICT(情報通信技術)を活用しながら、
- 感染症の克服と危機に強い地域経済の構築(地方創生臨時交付金)
- 地方への移住・定着の推進
- 地域とのつながりの構築
という内容にも注力して取り組むことが決定しました。
参考:まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」「基本方針」
4、地方創生に関わる事例
最後に、地方創生に向けた以下の3つの取り組み事例をご紹介します。
- 群馬県片品村・地域資源を活用した若者の雇用創造プラン
- 北海道恵庭市・住民主体の花のまちづくり
- 那須烏山市・地域を再生するプロジェクト
(1)群馬県片品村・地域資源を活用した若者の雇用創造プラン
まず、群馬県利根郡片品村の事例をご紹介します。
片品村では、交流人口の拡大により雇用の場を作り、若者の雇用創造が計画されています。
村の中心地区に、観光ルートの拠点を整備し、外国人を含めた新たな旅行客の誘致をはかるのです。
それによって、商工観光分野だけでなく、農業分野を含めた若者の雇用創出を目指しています。
参考:尾瀬の郷・片品の地域資源を活用した若者の雇用創造プラン
(2)北海道恵庭市・住民主体の花のまちづくり
次に、北海道恵庭市の事例をご紹介します。
花苗の生産地である恵庭市では
- 住民主体の花のまちづくり
- 官民複合による賑わい拠点の整備
などが進められているのです。
住民主体の下
- 個人の庭を対象にしたオープンガーデンコンテスト
- 商店街の街並み景観整備
などが実施されています。
また、駅前に「賑わい拠点」を作ることで、さらなる人の流れを期待しています。
今後も
- 有料老人ホーム
- 商業施設
- 公共サービス
などの官民複合施設に留まらず、健康増進施設や図書館などの複合施設も整備予定です。
(3)那須烏山市・地域を再生するプロジェクト
最後に、栃木県那須烏山市の事例をご紹介します。
烏山市では、多様な分野において雇用創出を推進する取り組みを行っています。
豊かな地域資源を活かして、新たな産業と雇用を創出し、地域を再生するプロジェクトが進められているのです。
具体的には
- 高い付加価値をもつ商品の開発
- 商品開発のための人材育成
などが行われました。
あわせて、セミナーなどによるビジネススキルの向上をはかり、地方で働きたい人々のサポートを行っています。
まとめ
今回は地方創生についてご紹介しました。
地方創生は、日本社会全体の経済や暮らしに大きな変化を与えることが期待されています。
新型コロナウイルスによって「地方で暮らすこと」に改めてスポットが当たっている今、地方創生は重要なポイントであると言えるでしょう。