有識者会議とは、学識経験者や実践的知識を持つ者などから構成され、行政庁の意思決定に際して、意見を聴取することを目的とした会議です。
メディアでもよく取り上げられる有識者会議ですが、具体的に何が行われているのでしょう。
本記事では、
- 有識者会議についての詳細
- 有識者会議がもたらす影響
について幅広く説明しています。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、有識者会議とは?
有識者会議とは、国や地方自治体の諮問機関(国の行政機関及び地方公共団体の執行機関の附属機関の一種。行政庁の意思決定に際して、専門的な立場から特別の事項を調査・審議する合議制の機関のこと)として存在し、学識経験者や実践的知識を持つ者などから構成され、意見を聴取することを目的とした会議です。
簡単に言うと問題のある議題について、有識者の「意見」を国民代表の「意見」として聞くための会議のことです。
実は、傍聴可能な有識者会議も中には存在します。
しかし有識者会議では、有識者の意見がそのまま「行政庁の意思」として決定されるわけではありません。
有識者会議は主に2種類の会議(審議会と研究会)のことを指し、詳しい内容は以下の通りとなります。
(1)審議会
審議会(委員会、審査会などの名称の場合があります)は、法令(法律や政令・省令)に基づき設置されるものです。
これらの審議会は、学識経験者や実務経験者などそのジャンルにおいて高い見識を持つ委員が任命され、総務大臣から諮問された政策課題について議論を進め、答申を行ったり、中立的な立場で問題の解決を目指したりすることが目的となります。
(2)研究会
対して、研究会(懇談会、検討会、タスクフォースなどの名称の場合があります)は、特に根拠法令を持たず、より機動的に議論を行う有識者会議です。
そのジャンルにおける有識者が構成員として任命される点は審議会と同じですが、人数は比較的少なく、開催期間も短い場合があります(長期間に渡って開催されている常設的な研究会もあります)。
特に短期的に開催される研究会においては、議論すべきテーマがあらかじめ明確で、議論のアウトプットを報告書(取りまとめ等と称されることもあります)として公表することが多いです。
(3)どこで開催されるのか
有識者会議が行われる場所は議題ごとに異なります。
- 厚生労働省の省議室
- 東京都庁第一本庁舎
- 全国都市会館
などこれまで多くの場所で開催されてきました。
ここで行わなければならないという明確な規定は存在せず、開催元が決定します。
(4)開催時期
会議の開催時期については議題ごとに様々で、検証報告の内容など現在の状況を踏まえた上で判断します。
主に1つの議題に関して、月に1度開催されることもあれば、5ヶ月に1度開催されるということもあり得ます。
2、そもそも有識者とは誰を指すのか
有識者会議に参加する有識者とは一体どのような人のことを指すのか、また、どのようにして有識者を決定するのでしょうか。
(1)有識者の定義
有識者とは、名実ともにある分野に関しての専門知識を有している人のことを示す言葉です。
似た言葉では、専門家、エキスパートなどが挙げられます。
例えば流行病やテロ行為などにより国の経済に甚大な損害が起きたとします。
その際政府は現金給付を行うなどの政策をとり、国民の生活を守るために動きます。
しかし、そのような思い切った政策の実施には日本の経済に流通する専門家などの意見に耳を傾け、慎重に行動する必要があるのです。
(2)有識者の決定方法
有識者は、経済界、マスコミ、文化人などのさまざまな知識に精通した人が選ばれ、実際の会議は偏りがなく幅広い観点を持った人々で行われます。
一般的にはその会議で取り上げられる事柄について、
- 専門的に研究している学者
- 事業として関わる企業経営者
などの一般人が選ばれます。
令和の元号を決める際には、ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中伸弥教授が有識者として招かれ、意見を交えました。
3、有識者会議のメリット
有識者会議を開くことにはメリットがあります。
詳しく見ていきましょう。
(1)国や自治体の関係者以外の意見を聞くことができる
有識者会議の最大のメリットは、国や自治体の関係者以外の意見を交えながら討論することができるという点です。
議員の観点のみでは偏ってしまう意見も、専門の意見を交えることで、中立性を保ちながら会議を進めることができます。
(2)国や自治体の負担を軽減する
もし有識者会議を行わずに、国や自治体による政策案だけで政策が実現するような場合、国や自治体は非常に重い役割と責任を抱えることになります。
国会議員が全ての事柄について知識を網羅しているわけではないからです。
有識者が議論をして、その結果に基づき国や自治体がガイドラインを定めることで、負担を軽減しています。
4、有識者会議のデメリット
有識者会議にはデメリットも存在します。
(1)有識者を国民が選ぶことはできない
有識者会議のメリットとして、専門知識をもった有識者の意見を交えて討論することができるという点がありました。
しかし、この有識者を国民が選ぶことはできず、実際には国や自治体が国民の代表として有識者を選択するにすぎません。
このことから、国や自治体によって議題に有利になる人を有識者として認定しているのではないかという懸念が存在します。
会議を開く前にすでに導き出したい結論の裏付けをしてくれる人を有識者として会議に招くことで、形だけの有識者会議が開かれる可能性があります。
(2)税金を多く使う
有識者会議に参加した評議員・非常勤役員および有識者には報酬(謝金及び原稿料)が与えられることになっており、評議員及び役員に対する1事業年度間の報酬等の総額は100万円以内とされています。
謝金の金額は会議等の区分、出席者の区分で分けることができ、以下の表のように与えられます。
会議等の区分 | 出席者の区分 | 会議等1回あたりの
謝金金額(税込) |
(1)会議 | 設置者・就業者 | なし |
有識者 | 20,000円 | |
(2)監査会 | 設置者・就業者 | なし |
有識者 | 30,000円 | |
(3)委員会 | 設置者・就業者 | なし |
有識者 | 10,000円 |
出典:一般財団法人 職業教育・キャリア教育財団 |評議員・役員の報酬等についての規程
他にも1か月に通勤21回分相当の往復運賃が支給される場合があるなど、有識者会議が行われるたびにこれらの額が税金から支出されます。
5、開催されたことのある有識者会議の議題の一例
議題としては様々な内容(テーマ)が取り上げられており、以下に開催されたことのある有識者会議をいくつか提示します。
- 子供の貧困対策に関する有識者会議(平成28年7月〜令和2年9月)
- 新型インフルエンザ等対策有識者会議(平成24年8月〜令和2年11月)
- 天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議(平成28年10月〜平成29年4月)
- すべての女性が輝く社会づくり本部(平成26年10月~ 令和2年 7月)
- 首里城再建有識者会議(令和2年1月〜令和3年27月)
(出典 内閣府)
他にも多くの有識者会議が存在し、その内容は様々です。
ここまで有識者会議についてまとめてきました。
有識者会議によって開かれる会議については、「1、有識者会議とは」でも触れましたが、これは別名で公聴会とも呼ばれます。
本メディアでは公聴会についての記事も作成しており、今回触れられなかった
- 具体的にどのような場面で
- どのように有識者が選抜され
- 会議が進んでいくのか
ということについて以下の関連記事で「予算案の策定と公聴会」というテーマのもと解説を行っています。
よろしければこちらの記事もご覧頂けますと幸いです。
公聴会とは?国家予算策定時に公聴会を開く重要な理由を簡単解説
まとめ
以上、簡単に有識者会議について説明しました。
有識者会議とは、問題のある議題について、有識者の「意見」を国民代表として聞くための会議のことです。
有識者とは、名実ともにある分野に関しての専門知識を有している人のことを指します。
有識者会議は年に複数回行われ、その議題もさまざまです。
有識者会議には専門的な知識や経験を得た人が招かれるため、一般の方でも有識者になることができます。
よりよい社会を作っていくために、有識者会議は行われているのです。