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表現の自由とは?他の権利との関係など判例付きで簡単解説

投稿日2021.6.10
最終更新日2021.06.21
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

表現の自由とは、思想・意見・主張・感情などを、検閲されることなく表現できる権利です。

ここには

  • 報道
  • 出版
  • 放送

などの自由も含まれています。
プライバシーが重視される昨今ですが、表現の自由はどこまで適用されるべきなのでしょうか。

本記事では

  • 表現の自由とは
  • 表現の自由の歴史
  • 表現の自由の適用範囲
  • 表現の自由と知る権利の関係性
  • 表現の自由に関する判例及び事例
  • 海外における表現の自由

について解説します。
本記事がお役立てば幸いです。

1、表現の自由とは

表現の自由
表現の自由とは、思想・意見・主張・感情などを、規制されることなく表現できる権利です。

日本では、憲法第21条で「表現の自由」が保障されています。

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

条文引用:日本国憲法 e-GOV

2、表現の自由の歴史

表現の自由にはどのような歴史があるのでしょうか?

ここでは表現の自由の歴史に関して

  • フランス革命
  • 戦後の日本国憲法

について解説します。

(1)フランス革命

フランス革命は、封建主義を廃止し、資本主義を求めて起きた革命運動です。
このフランス革命によって、表現の自由が国民議会で宣言されました。

表現の自由に関する内容は、フランス人権宣言(人間と市民の権利の宣言)の第11条に記されています。

第11条では、「思想及び主張の自由な伝達は、人のもっとも貴重な権利の1つである」と定めています。

(2)戦後の日本国憲法

日本では、戦後の日本国憲法によって、表現の自由が保障されるようになりました。
戦前の大日本帝国憲法では、第29条で「表現の自由」について以下のように定めていました。

第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス

条文引用元:大日本帝国憲法 国立国会図書館

第29条の内容は、国民が「法律の範囲内」において、

  • 言論
  • 著作
  • 印行
  • 集会及び結社

に関する自由を有するという意味です。

一方、日本国憲法では「法律の範囲内」という記載はなく、表現の自由が拡大したことがわかります。

3、表現の自由と公共の福祉の関係

表現の自由は「公共の福祉」によって制限されることがあります。
表現の自由と公共の福祉の関係を理解するために

  • 公共の福祉とは
  • 基本的人権における表現の自由
  • 表現の自由と公共の福祉の関係性

について解説していきます。

(1)公共の福祉とは

公共の福祉とは、「社会全体の幸福と利益」を意味する言葉です。
この公共の福祉に反する場合、基本的人権が一部制限され得ることが、憲法第12条で定められています。

第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

条文引用元:日本国憲法 e-GOV

日本国憲法では、第12条以外にも

  • 第13条
  • 第22条
  • 第29条

で、国民の自由と公共の福祉の関係を記載しています。

表現の自由

資料引用元: 2「公共の福祉」による制約 基本的人権と公共の福祉に関する基礎的資料 衆議院

(2)基本的人権における表現の自由

日本では「基本的人権」を憲法で定めています。
基本的人権とは、人が当然に持つべき、以下の権利のことです。

  • 自由権
  • 平等権
  • 社会権
  • 参政権
  • 請求権

表現の自由には、上記の自由権が含まれています。

(3)表現の自由と公共の福祉とのの関係性

前述の通り、公共の福祉に反する場合、基本的人権(表現の自由を含む)は制限される可能性があります。

その理由は、個人の権利を重視するあまり、他者の基本的人権を侵害しないため、であると言わています。
数多くの専門家が「表現の自由と公共の福祉の関係性」を議論し、現在は大きく5つの考え方があります。

  • 一元的外在制約説
  • 内在・外在二元的制約説
  • 一元的内在制約説
  • 比較衡量論
  • 二重の基準論

参考:2.2「公共の福祉」に関する学説の展開 基本的人権と公共の福祉に関する基礎的資料 衆議院

4、表現の自由と知る権利の関係

表現の自由と知る権利にはどのような関係性があるのでしょうか。

ここでは

  • 知る権利とは
  • 表現の自由と知る権利の関係性

について解説していきます。

(1)知る権利とは

知る権利には、2つの意味があります。

  • 国の政治などについて知る権利
  • 言論の自由、報道の自由の基盤となる権利

政治について知る権利とは、「国の運営体制について、国民は知るべきである」という考え方に基づいた権利です。

例えば、行政機関の情報の公開を義務付けている「情報公開法」は、国民の知る権利を保障する法律です。

知る権利は、憲法第21条によって定められています。

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

条文引用元:日本国憲法 e-GOV

参考:「知る権利」のあり方について 衆議院

(2)表現の自由と知る権利の関係性

報道は、国民の知る権利を満たすものです。
しかし報道される個人は、プライバシー権を持っています。

プライバシー権とは、個人の私生活を勝手に公開されない権利です。
プライバシー権は憲法に明記されていないものの、憲法第13条に基づく権利なのではないかという考え方が一般的です。

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

条文引用元:日本国憲法 e-GOV

表現の自由と知る権利の関係性は

  • 国民の知る権利
  • メディアの言論の自由、報道の自由(表現の自由)
  • 個人のプライバシー権

といった権利が交差する、複雑な問題であると言えます。

参考:知る権利・アクセス権とプライバシー権に関する基礎的資料 衆議院

5、表現の自由の問題に関する具体的事例

ここでは、表現の自由の問題に関する事例である

  • 大阪市ヘイトスピーチの対処に関する条例
  • 石に泳ぐ魚事件
  • SNS等の誹謗中傷と表現の

についてご紹介します。

(1)大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例

大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例では

  • 表現内容の拡散防止措置の実施
  • 表現活動を行った者の氏名または名称等の公表

などを定めています。

この大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例は、表現の自由に反するのではないか、という内容で裁判が行われました。

裁判では、公共の福祉による合理的で必要やむを得ない程度の制限であり、容認されるものであるという見解が示されました。

参考:ヘイトスピーチに関する裁判例 法務省
参考:大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例の概要 大阪市

(2)石に泳ぐ魚事件

石に泳ぐ魚事件とは、文芸誌新潮1994年9月号に掲載された小説をめぐる事件です。

小説のモデルとされた女性が、

  • プライバシー権
  • 名誉権

の侵害を理由に、出版の差し止め及び損害賠償を求め、裁判を起こしました。

裁判では

  • 公共の利益にかかわらない女性のプライバシーを含んでいる
  • 公的立場にない女性の名誉、プライバシー及び名誉感情が侵害される
  • 女性に重大で回復困難な損害をもたらすおそれがある

という理由で、出版の差し止めが認められました。

参考:最高裁判所判例集 裁判例結果詳細 裁判例検索 裁判所

(3)SNS等の誹謗中傷と表現の自由の関係

日本には「プロバイダー責任制限法」という法律があります。

プロバイダー責任制限法とは、個人の権利を侵害する情報を発信した場合、その情報発信者に関する情報を開示請求できる権利、を定めた法律です。

誹謗中傷と表現の自由の線引きは難しい問題です。
政府ではプロバイダー責任制限法をはじめとした、

  • 被害者救済
  • 表現の自由

の両方に配慮したインターネット環境の整備に取り組んでいます。

表現の自由画像引用元:インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法) 総務省

6、海外における、表現の自由の問題に関する事例

海外における、表現の自由の問題事例として、フランスで発生した「コンフラン=サントノリーヌのテロ事件」をご紹介します。

コンフラン=サントノリーヌのテロ事件とは、2020年10月に起きたテロ事件です。
フランス人中学校教師が、授業内でイスラム教預言者の風刺画を紹介しました。

その後、授業を受けていたイスラム過激派の男性が、授業内容に対する報復として、フランス人教師を殺害した事件です。

フランスでは、こうした事件を筆頭に、表現の自由がテロなどの犯罪行為によって脅かされることが懸念されています。

同時に風刺画についても様々な議論がされています。

参考:風刺画めぐる波紋の行方 NHK

まとめ

今回は表現の自由について解説しました。

表現の自由は、憲法第21条で保障されている大切な権利です。
しかし、表現の自由によって他人の権利を侵害してしまう可能性もあります。

本記事が表現の自由について理解する上での助けとなれば幸いです。