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法の下の平等とは?絶対的・相対的平等の違いから判例まで簡単解説

投稿日2021.6.28
最終更新日2021.06.28
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

法の下の平等とは、国家は国民を差別的に扱ってはいけないというルールです。
今回の記事では、

  • 法の下の平等の概要
  • 絶対的・相対的平等の違い
  • 代表的な判例

について解説していきます。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、法の下の平等とは

法の下の平等
「法の下の平等」とは憲法第14条に基づいた、「国家はどんな国民に対しても、等しく扱う必要がある」という人権に関する基本的な原則です。

「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」

引用:日本国憲法14条1項

この章では、

  • 法の下
  • 平等

の2つ意味に関して見ていきましょう。

(1)「法の下」の意味

「法の下」とは、法律の及ぶ範囲を意味します。
具体的な法律の範囲としては、

  • 法適用
  • 法内容

という2つの視点があります。

「法適用」の平等とは、「法の執行・適用を行う行政や司法は等しく国民を扱うべし」という行政権・司法権への要請を意味します。

「法内容」の平等とは、「内容も平等原則にしたがうべし」という立法への要請を指します。
上記の点を踏まえ、憲法14条1項に関する学説には、主に2つあります。

①立法者拘束説

「立法者拘束説」とは、「法適用」と「法内容」の両方が当てはまる、という主張です。
つまり「法の下」という縛りは、立法・行政・司法といった全てに適用されるという考え方です。

どれだけ正しく法を行使しても、法の内容がすでに差別的なものであれば、「平等の理念」が機能しているとは言えません。 

判例・通説はこの説に賛同しています。

②立法者非拘束説

「立法者非拘束説」とは、「法適用」のみが当てはまる、という主張です。

つまり、法を等しく適用さえすればよいとする考え方になります。

そのため、三権のうち行政と司法のみが縛られると解釈されています。

(2)「平等」の意味

「平等」の意味には

  • 機会の平等
  • 結果の平等

という、2種類があります。

「機会の平等」とは、どの人にも同等の機会を与えることを指します。
その機会を活かすかは、個人の努力次第というものです。

「結果の平等」とは、どの人にも同等に財産を分配すことを指します。
いわゆる社会主義に近い考え方です。

通説では、法の下の平等は、「機会の平等」に該当するとされています。

2、法の下の平等と自由|絶対的平等と相対的平等

平等には

  • 絶対的平等
  • 相対的平等

という2つの考え方も存在します。

法の下の平等では「相対的平等」を基礎としています。
ここからは、2つの平等についてみていきましょう。

(1)絶対的平等

「絶対的平等」とは、各個人の持つ違いは考慮せず、一様に扱うという、考え方です。

絶対的平等に則れば、

  • 女性に対する産後休暇
  • 未成年に対する少年法の適用

といったことは、認められなくなります。
他と違う扱いは、不平等行為にあたるのです。

(2)相対的平等

「相対的平等」とは、各個人の年齢や能力など、さまざまな違いを考慮した上で平等に扱うという、考え方です。

たとえば

  • 女性・高齢者に対する労働条件の保護
  • 所得税の累進課税
  • 少年犯罪への対処

などは、相対的平等の見解に基づき、実施されています。

大人や子ども、男性や女性で異なる扱いをしても、社会通念上合理的な理由があれば、不平等行為にはなりません。

3、法の下の平等に関わる判例

法の下の平等
最後に、法の下の平等に関する判例である、

  • 尊属殺重罰事件
  • 衆議員定数の不均衡訴訟
  • 非嫡出子に対する相続分差別訴訟
  • 婚外子による国籍訴訟

について紹介します。

参考:裁判所HP

(1)尊属殺重罰事件(最大判昭48.4.4)

尊属殺重罰事件とは、尊属殺人(身内の殺害)について、普通の殺人より重い罪を課す、当時の刑法200条について争われた事例です。

この事件の概要は、実父よって性的虐待を受けていた娘が、結婚させないための監禁をきっかけに、その父親を殺害したことで、重罪を課された、という内容です。

 争点となったのは、14条1項に対する以下2つの合憲性についてです。

  • 尊属殺人罪を設け、刑を加重すること
  • 尊属殺が死刑および無期懲役刑のみということ

当時の刑法200条では、直系尊属を殺害した場合、死刑または無期懲役という重い罰が規定されていました。

最高裁判所では「尊属への報恩の情を保護する」という目的は、合理的であるとしました。
一方で、その刑罰の重さは、目的達成の手段として著しく偏っているとし、違憲判決を下したのです。

これにより、刑法200条は1995年に削除されました。

(2)衆議院議員定数の不均衡訴訟(最大判昭51.4.14)

衆議院議員定数の不均衡訴訟は、衆議院議員選挙における一票の価値が、最大5倍まで格差が生じたことを理由に、選挙の無効を請求した事例です。 

争点となったのは投票価値に不平等がある場合、その選挙は有効なのか」という点です。

最高裁判所は、「14条1項は選挙人資格だけでなく、投票の価値の平等も要求している」として、最大5対1の格差について、違憲状態であることを認めました。

しかし、選挙の違法性については、判決主文の宣言にとどまり、選挙無効を訴えは棄却されました。

選挙を無効にすれば、国会の機能が停止し、国に混乱をまねく恐れがあったためです。

(3)非嫡出子に対する相続分差別訴訟(最大判平7.7.5)

非嫡出子による相続分差別訴訟は、被相続人の遺産分割に関する、非嫡出子への相続について争われた事例です。

争点となったのは、「非嫡出子の相続について規定していた、民法900条4号ただし書きの合憲性」についてです。

 民法900条4号ただし書きでは、「非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2とする」という内容が定められていました。

最高裁判所では、民法900条4号ただし書きは、

  • 法律婚の尊重
  • 非嫡出子に対する保護の調整

を目指したものであり、合理的な根拠があると肯定しました。

これにより、合理的理由のない差別とはいえないとして、原告の訴えを退けたのです。

しかしその後、2013年に、個人の尊重という観点から

  • 自己によって選択できない事柄を理由に、子が不利益を被ることは許されない
  • 子も個人として尊重し、権利を保障すべき

とされ「民法900条4号ただし書きは違憲である」との判決が下されました。

この判決を受け、民法も改正され、現在では民法900条4号ただし書きは、一部削除されています。

(4)婚外子による国籍訴訟(最大判平20.6.4)

婚外子による国籍訴訟は、婚姻していない両親から生まれた子の国籍取得に、ついて争われた事例です。

当時の国籍法3条1項では、父母の婚姻によって嫡出子となった場合に限り、日本国籍の取得を認めていました。

争点となったのは、以下の2つの点です。

  • 日本国籍を認めない当時の国籍法の合憲性
  • 婚姻要件を除いた要件を満たした場合の、子による日本国籍取得の可能性

最高裁判所は、「立法制定当時(1984年)は合理性があったが、その後の社会環境の変化によって、当該規定は合理性を欠いた要件となっていた」として、当時の国籍法について違憲判決を下しました。 

この判決を受けて、国籍法3条1項は改正されました。
また、未成年者についても、生後認知のみで、国籍取得が可能となったのです。

まとめ

今回は、「法の下の平等」について解説しました。 

日本国憲法14条「法の下の平等」では、国家は国民に対し理不尽な差別をしてはならないとし、平等原則の徹底化に努めています。

社会的な合理性を踏まえ、「平等」という理念をうまく使い分けていくことが、平和な国家には必要であるといえるでしょう。