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イノベーションとは?現状や課題・政府の取り組みを簡単紹介

投稿日2021.1.12
最終更新日2021.01.12
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

イノベーションとは、従来のやり方にとらわれず、新たな技術や知見、創意工夫などを活かして、新しいやり方や価値を創ろうとする活動のことです。

近年、政府は「イノベーション」を重視した政策を数多く打ち出しています。
ニュースなどで耳にする機会もあるのではないでしょうか。

今回の記事では

  • イノベーションの概念
  • 日本のイノベーションの現状と課題
  • イノベーション政策

について詳しく説明します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、イノベーションとは

イノベーション
イノベーションとは、「技術革新」「刷新」などと訳されますが、政策の中で使用される場合には、「広く社会のシステムや国民生活などに、新しい技術や考え方を取り入れて、経済的・社会的に新たな価値を生み出すこと」と考えられています。

イノベーションと聞くと科学技術面での革新や開発などをイメージしますが、それだけではありません。
政府の政策においてイノベーションという言葉が積極的に使用され始めたのは、2006年頃です。

総務省の調査では、「イノベーション」の語を使用した閣議決定の数は、1999~2005年度までは0〜2件を推移していましたが、2006年度には10件に増え、翌年度には20件となりました。

参考:イノベーション政策の推進に関する調査
参考:総務省

2、日本のイノベーションの現状と課題

国際競争力の維持・発展のためには、イノベーションの創出が必要不可欠であり、日本政府も近年イノベーション政策に力を入れています。

 しかし、日本の社会におけるイノベーションを促進するにあたって、2020年12月時点では、以下5つの課題に直面していると言われています。

(1)環境変化に対する対応の遅れ

現代社会には様々なものが普及し、好きな時に好きなものを手にすることができる人が少なくありません。

このように市場が成熟化されるに伴い、製品の「コモディティ化」が問題となってきます。
「コモディティ化」とは、市場に流通している製品について、どの企業の製品も同じような性能を持つようになることです。 

企業は競合相手よりも良い製品を生み出そうと企業努力をしますが、現代の情報社会では1社のみが技術を独占することは難しいです。

競合している企業の技術が均質化され、商品が一定の水準の機能を備えるようになると、低価格競争に陥り、企業の収益は下がっていきます。

こうした状況を脱するために、新たな顧客価値の獲得が必要となりますが、日本企業はこのような環境変化に対応が追いついていないと言われています。 

(2)自前主義的な研究開発

イノベーションの創造のには質の高い研究開発が重視されます。
そして、研究開発のための

  • 十分な投資費用
  • 優秀な研究者

が求められます。

 日本は、研究開発の投資額の大きさを表す指標である「企業の研究開発費の対GDP比率」において、世界トップ水準となっています。

しかしその実、「自前主義」からの脱却が遅れていると言われています。
「自前主義」とは、「研究、開発、製造、販売といったビジネス流れを、自社内で完結した上で、商品を提供する」という考え方です。

自前主義には、多様な商品を大量に生産する上で

  • 取引費用を抑えられえる
  • スピーディーな開発・提供できる

といったメリットがあります。

一方で、優れたビジネスアイデア・技術を発見した場合でも、自社内では実現が難しい場合、なかなか実現のための取り組みに移れないといったことがあります。 

(3)短期主義的な研究開発

また、企業の近年の傾向として、3年以内の短期的な研究に費用を使用する「短期主義」が問題となっています。

商品化まで3~5年を超えるような中長期の研究には消極的で、既存の製品改良などの短期的な研究(例えば、自動車のモデルチェンジや、携帯電話の「春・夏モデル」など)が主なものとなっています。

この要因としては

  • 製品サイクルの短期化
  • 中長期テーマのリスク

などが挙げられます。 

実感されている方もいるかもしれませんが、技術革新のスピードが速まり、企業間の競争が激しくなると、次々と新しいモデルの商品が打ち出されるようになります(製品サイクルの短期化)。

そうなると、やはり価格競争が生じて、企業の利益率の低下を招いてしまいます。

そうした状況では、技術的な飛躍や現状の技術では困難とされている分野への投資は避けられ、目先の利益を追求するようになるのです。

 しかし、イノベーションを生み出す為には長期的な研究が不可欠であり、民間企業のみならず、政府が主体となって研究支援を行う必要性が高まっています。 

(4)人やお金に関する流動性の低さ

前述の自前主義の脱却の為には、組織を超えた人材・資金の活用が一層求められます。
例えば、企業や大学、公的研究機関といった組織間での連携などです。

しかし現状では、これらの組織間での研究者の流動性は非常に低く、資金の流動性に関しても、研究費の大半が組織内で消費され、組織を超えた研究のやりとりは極めて限定的なものとなっています。

また、大企業の研究資金は豊富ですが、次世代のイノベーションの担い手であるベンチャー企業への投資が十分ではなく、日本経済の持続的な発展、新しい産業の創出の為にも、人や資金の流動性を高めることが求められています。

(5)グローバルネットワークからの孤立

日本は人材・資金の面において、グローバルネットワークから孤立している傾向にあると言われています。 

前述したように、日本国内における研究人材の流動性の低さに加えて、日本国外での研究者の移動も少なく、優秀な人材を十分に呼び込めていません。 

また資金面では、海外からの資金の割合は増加傾向にあるものの、主要国と比べると低い傾向にあります。
海外とのネットワークを充実させ、優秀な人材・資金を呼び込こみ、イノベーションを進めていく必要があります。

参考:経済産業省PDF

3、イノベーション政策|政府の取り組み

イノベーション
政府は、組織の枠を超えてアイデア・ノウハウ・技術等を活用する「オープンイノベーション」という考え方に基づき、イノベーション政策に取り組んでいます。

政府の重要なイノベーション政策・方針に関して、いくつかの事例を取り上げつつ、ご紹介します。 

(1)オープンイノベーション白書

政府は、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会が発行する「オープンイノベーション白書」によって、取り組み事例の発信・共有を促しています。

「オープンイノベーション白書」では、日本におけるオープンイノベーションの取り組みの現状を可視化し、関連するデータを集約しています。

また、既にオープンイノベーションによって一定の成果をあげている企業の事例等についてもまとめています。 

(2)中長期的な研究開発投資促進

民間企業における研究開発投資は、短期主義的な投資に偏っているといった問題がありました。

国内経済成長・国際競争力を強化していくために、政府は「研究開発税制」等によって、企業の不確実性の高い研究開発にも継続して投資できるよう促しています。

「研究開発税制」とは、研究費に一定割合(6~14%)を乗じた金額を法人税額から控除できる制度です。

(3)人材・技術の流動化促進

日本は他国に比べて、企業・大学・研究機関の人材・技術の流動化が遅れており、近年その促進に努めています。

2016年3月には、各大学が評価指標を活用してそれぞれの産学連携活動を検証するための、「大学における産学連携活動マネジメントの手引き」が作成されました。

この手引きを参照することで、自主的な連携による自大学のパフォーマンスを向上が期待されています。

また、国立研究開発法人の産業技術総合研究所(産総研)による、企業と研究者の橋渡しを行う「イノベーション・コーディネータ」と呼ばれる体制を強化しました。

産総研と企業が一体となって研究開発に取り組む通称「冠ラボ」(産総研の構内にパートナー企業名を冠した連携研究室)の設置等が進められています。

(4)イノベーション促進産学官対話会議

産学官(企業・民間・政府)の対話の場「イノベーション促進産学官対話会議」が設置されました。
この会議は、「日本再興戦略2016」に関して、産学官が対話しながら実行・実現していく場となっています。

 「日本再興戦略2016」の中でも 

  • これまで研究者個人と企業の一組織の連携にとどまっていた連携を、大学・国立研究開発法人・企業のトップが関与する、本格的でパイプの太い持続的な産学官連携(大規模共同研究の実現)へと発展させる
  • 2025年度までに大学・国立研究開発法人に対する企業の投資額を現在の3倍とすることを目指す
  • 産学連携のガイドラインを関係府省が連携して作成

等を中心に実現することを会議の目的としました。

参考:経済産業省PDF

(5)統合イノベーション戦略

統合イノベーション戦略は、グローバルな視点で従来の総合戦略を抜本的に見直し、各司令塔・各省庁間の連携による戦略として2018年に策定されました。

以降1年ごとに、実施状況の確認や、国内外の状況の変化に照らした施策の見直しを含んだ

  • 「統合イノベーション戦略2019」
  • 「統合イノベーション戦略2020」

などが策定されています。 

2020年7月に策定した「統合イノベーション戦略2020」では、新型コロナウイルス感染症の拡大などによる、国内外の状況が著しく変化したことなどを踏まえ、重点的に取り組むべき施策が策定されました。 

参考:首相官邸・統合イノベーション戦略推進会議 

まとめ

今回の記事では、イノベーションの意味、日本のイノベーションへの課題とそれに対する政府の政策をご紹介しました。

取り上げた例以外にも様々な政策を進めているので、この記事を読んで興味が湧いた方はぜひ調べてみてください。