光害とは、過剰な光による悪影響を指します。
過剰な光によって、人間の生活サイクルを乱したり、動植物の生育に悪影響を与えたりするのです。
本記事では
- 光害とは
- 光害の具体例
- 光害への対策
- 光害に関する疑問
について解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、光害とは
光害とは、過剰な光による悪影響を指します。
環境省では、以下のように光害を定義しています。
光害とは
「良好な光環境」の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光
によって阻害されている状況、またはそれらによる悪影響のことである。
定義引用元:【光害】1.1 ガイドラインの目的 1章 ガイドラインの概要 光害対策ガイドライン
光害の原因は主に照明器具です。
近年は、宣伝や演出のための
- 投光器
- サーチライト
による光害が、増加傾向にあります。
投光器やサーチライトは、視認範囲が非常に広く、夜間の景観を乱したり、天体観測を妨げたりする場合があるのです。
2、光害の具体例
光害による具体的な悪影響である、
- エネルギーの浪費
- 周辺居住者への悪影響
- 野生生物への悪影響
- ドライバーへの悪影響
- 研究教育活動への悪影響
- 植物への悪影響
についてご紹介します。
(1)エネルギーの浪費
過剰に明るい照明は、エネルギーの浪費につながります。
また、不必要な方向に光が漏れると、明るさを損なうこともあります。
そのため、照明は明るさよりも、照らしたい場所を正確に照らすデザインが大切である、と言われています。
(2)周辺居住者への悪影響
店舗や駐車場などの照明の光は、周辺居住者の睡眠を妨げます。
環境省の資料によると、青色光(ブルーライト)は、体内時計に悪影響を及ぼすことが報告されています。
また、明かりが家の中を照らすことで、プライバシーの侵害にもつながる可能性があります。
(3)野生生物への悪影響
夜間の照明は、動物の活動にも影響を与えます。
ウミガメの例を挙げてみましょう。
ウミガメは月や星の明かりを頼りに行動します。
砂浜を照明で照らしてしまうと、
- ウミガメが、産卵のための上陸を避ける
- 稚ガメが海の方向を間違え、海にたどり着けず死んでしまう
といった事態につながります。
また、夜間照明は虫を引き寄せます。
強い光によって、虫の生息地域や生息数が変化し、生態系全体に影響を及ぼす可能性があるのです。
参考:3.1.2 動植物への影響 光害対策ガイドライン 環境省
(4)ドライバーへの悪影響
夜間の強すぎる照明は、自動車やバイクを運転するドライバーの視界を悪くする原因の1つでもあります。
夜間のまぶしい光により、視界が妨げられ、
- ドライバーが歩行者を見失う
- 信号や標識に気づかない
といった状況につながり、交通事故のリスクを高めるのです。
(5)研究教育活動への悪影響
夜空を照明が照らすことで、天体に関する研究教育活動にも支障を及ぼします。
天体の研究者(観察者)は、地上から大気を通して星を観察します。
星の観察に重要な役割を果たすのは「夜空の明るさ」です。
夜空の明るさとは、地上から星を観測する際の背景の明るさを指します。
一般的に、夜空の明るさが低い方が、星の観測条件は良いとされています。
夜間の地上光は、大気中であらゆる方向に散乱するため、星の観測を妨げる原因になるのです。
また、大気汚染等によるエアロゾルが大気中に分布していると、地上光の散乱はさらに大きくなります。
参考:2-a 「夜空の明るさ」について 2.「夜空の明るさ」問題について 環境省
(6)植物への悪影響
夜間の照明は、植物の成長を妨げる原因の1つと言われています。
植物は光を感知し、光合成をしたり花芽等を形成します。
しかし、夜間照明によって光を感知し続けると、
- 生育
- 開花
- 結実
などが、過度に促進または抑制されることがあります。
特に影響を受けやすい植物はイネやホウレンソウです。
光害による、イネやホウレンソウの収穫量減少や、品質の低下が報告されています。
環境省の資料によると、イネ(コシヒカリ)の場合、5lx (ルクス)以上の夜間照明で、出穂遅延が顕著になるそうです。
参考:環境省
3、光害対策
光害にはどのような対策があるのでしょうか。国と地方自治体の取り組みをご紹介します。
(1)国による光害対策
環境省では「光害対策ガイドライン」を発表しています。
光害対策ガイドラインとは、良好な照明環境を実現するためのガイドブックです。
光害対策ガイドラインでは、光害の定義や影響を解説しています。
また対象者別に、屋外照明等設置チェックリストやガイドを設けています。
(2)地方自治体による光害対策
地方団体の取り組みとして、「ながの環境パートナーシップ会議」の取り組み事例をご紹介します。
ながの環境パートナーシップ会議は、長野市の
- 市民
- 事業者
- 行政
などによる、協働のプロジェクトです。
プロジェクトの1つとして「光害対策プロジェクト」が取り組まれています。
光害対策プロジェクトでは、
- 目標設定
- 現状把握
- 行動計画
- 行動指針
の4つに段階を分け、進行されています。
参考:光害対策プロジェクト~ながの環境パートナーシップ会議の取り組み~(長野市) 長野市
4、光害に関する疑問
最後に、光害に関する疑問として挙げられる、
- イルミネーションなどは光害になるのか
- 光害は取り締まりの対象となるのか
について、解説していきます。
(1)イルミネーションなどは光害になるのか
店舗や自宅にイルミネーションを飾る人も多いと思いますが、イルミネーションは光害になるのでしょうか。
環境省では、これに対して以下のように回答しています。
「適度なイルミネーションは光害にはならないが、周囲住民や動植物、周辺環境との調和に配慮されていないものは、光害と考えられる」
引用:イルミネーションなどの演出照明は、街に華やかさをもたらしてくれるけど、そのような光も光害っていうの? 光害について 環境省
イルミネーションを光害にしないためには、
- 本来の目的以上にまぶしくないか
- 光が不必要な方向に漏れていないか
に注意することが大切です。
参考:イルミネーションなどの演出照明は、街に華やかさをもたらしてくれるけど、そのような光も光害っていうの? 光害について 環境省
(2)光害は取り締まりの対象となるのか
光害を生んでしまった場合、取り締まりの対象になるのでしょうか。
2021年の時点で、光害に対する法律の取り締まりはありません。
ただし、自治体によっては独自に条例をつくり、規制を行っている地域もあります。
例えば、岡山県美星町では1989年に光害防止条例を制定しています。
美星町の光害防止条例では、投光器の使用が制限されています。
「人工光による夜空の明るさの増加の程度が、自然の状態の夜空の明るさの1割を越えないこと」が数値的目標設定として掲げられているのです。
改善命令に従わない場合は、罰則として氏名などが公表されます。
参考:4-1 光害防止条例に関する国内の動向 第4章 光害防止条例の制定の現状と基本的な考え方 環境省
まとめ
今回は光害について解説しました。
光害は、過度な光による公害を指します。
夜間照明を用いる時には、環境省の光害対策ガイドラインを参考にしましょう。