
2024年9月に実施された前回の自民党総裁選(正式名称:自由民主党総裁選挙)では、過去最多の9人が立候補するとともに、政治資金問題を受けた派閥の解散後初めての総裁選として注目を集めました。
また、2025年夏の参議院選挙に向けて、自民党内で「新総裁を選出すべき」とする意見も挙がっていることから、自民党総裁選について関心が高まっています。
以下では、自民党総裁選の概要や仕組み、ルール改定を巡る議論について詳しく説明します。
1. 自民党総裁選とは?
自民党総裁選とは、自由民主党の代表である「総裁」を選ぶ選挙のことを指します。
総裁の役割について、党則では「党の最高責任者であり、党を代表し、党務を総理する」と定められています。また、総裁には党の主要幹部を決定する権限があり、総務会の承認を得て幹事長・政調会長・選挙対策委員長を任命できるほか、副総裁を指名することも可能です。
現在、自民党は国会で多数派を占めているため、総裁選は事実上、内閣総理大臣を決める選挙と同じ意味を持ちます。このため、自民党総裁選は日本の政治において極めて重要な選挙と言えます。
引用:自由民主党党則
参考:日経新聞
2. 自民党総裁選の仕組み
では、誰がどのようにして総裁を選ぶのでしょうか?
自民党総裁選では、自民党所属の国会議員による投票(議員投票)と、全国の党員・党友による投票(党員投票)の2つで構成されています。議員票は国会議員1人につき1票が与えられます。
一方、党員票は全国から集められた投票結果を都道府県ごとに集計したうえで、議員票と同数になるように「総党員算定票」として換算されます。この換算には「ドント方式」という比例配分の方法が用いられます。たとえば、2024年9月の総裁選では議員票が368票だったため、党員票も368票分に換算され、それぞれの候補者に応じて比例配分されました。
このようにして集計された議員票と党員票を合算し、過半数を獲得した候補者が当選となります。
ただし、候補者が3人以上いる場合、1回目の投票で過半数に届かなかったときには、上位2名による決選投票が行われます。この決選投票では、国会議員による投票は引き続き1人1票ですが、党員票は47都道府県連に1票ずつ割り振られます。各都道府県でより多くの支持を得た候補者に1票が与えられる仕組みで、結果として議員票の比重が相対的に高まることになります。
他方で、どのような人が自民党総裁選の候補者となり得るのでしょうか?
自民党総裁選の候補者となるためには、いくつかの条件があります。まず、自民党所属の国会議員であることが必要です。加えて、同じく自民党に所属する国会議員20人の推薦人を確保しなければなりません。
この「推薦人20人の確保」は、実際には大きなハードルとなっています。たとえば2024年の総裁選では、野田聖子元総務相と斎藤健前経済産業相が、推薦人を十分に集めることができず、立候補を断念しました。こうした例からも、総裁選への出馬には、党内での広範な支持が必要であることが分かります。
3.自民党総裁選を巡る議論
自民党内では、総裁選のルールについて見直しを求める声が広がっています。特に、決選投票における地方票の比重や候補者乱立への対応策といった論点を中心に、議論が活発になっています。
地方票の比重に関して、現在の仕組みでは、1回目の投票では国会議員票と同数の党員票が用意される一方で、決選投票では国会議員1人に1票、そして都道府県連に各1票、合計47票の地方票が割り当てられます。これに対し、地方の党員の民意が十分に反映されていないとの指摘があり、改善を求める声が上がっています。
たとえば、森山裕幹事長は、総裁を選ぶ際に「都道府県連が47票でいいのか」と問題提起し、地方票の比重について見直しの必要性を強調しました。さらに、「来年3月の党大会に向けて、地方票の扱いを整理する必要がある」との意向を示しています。
さらに、候補者乱立への対策について、前回2024年の総裁選では9人が立候補するなど候補者の乱立も問題視されました。このため、党内では「予備選の導入」や、「立候補に必要な推薦人の数を20人から増やす」といった具体的な対応策が議論されています。
引用:NHK
参考:日テレNEWS NNN
まとめ
自民党総裁選は、党の最高責任者を決める重要な選挙であり、国会で多数派を占める現在の自民党の状況では、事実上、内閣総理大臣を選ぶ選挙と同義となっています。一方で、近年は総裁選の仕組みについて見直しを求める声が強まっており、地方の党員の意見をより反映させるための地方票の比重見直しや、候補者の乱立を防ぐための推薦人要件の引き上げといった改革案が議論されています。こうしたルール改定の行方や、実際の選挙戦の展開は、日本の政治の今後を左右する要素となる可能性があり、引き続き注目が集まっています。
