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公益法人とは?紛らわしい団体との違いや課題も併せて簡単解説

投稿日2020.5.23
最終更新日2020.05.23

「公益法人」とはどのような団体なのでしょうか?
最近、ニュースで耳にする日本医師会も公益法人のひとつです。このようにニュースや新聞では度々取り上げられるものの、具体的にどのような団体であるのか知っている方は少ないかもしれません。

また

  • 一般社団法人
  • 財団法人
  • NPO法人
  • 独立行政法人

などの紛らわしい団達との違いを明確に理解している方も少ないかもしれませんね。そこで今回は私たちの暮らしと関係のある公益法人について解説したいと思います。

1、公益法人とは


公益法人とは名前の通り、“公益に関する事業を行う法人”を指します。法人という名前が付いているものの、営利目的の企業とは別法人です。

公共の利益って何?と思う人もいるかもしれませんが、公共の利益については「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の第2条で定められています。

第2条 4

公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。

※ 学術 美術、工芸など芸術に関する技術

つまり、公共のためになると見なされる

  • 学問
  • 芸術
  • 慈善

の分野において社会の利益になる事業を行う法人が公益法人と見なされます。

公益法人にはどんな団体が含まれるのか下記の図を見てみましょう。

公益法人

引用:法人の分類 公益法人information

身近な例で挙げると、

  • 学校法人
  • 医療法人

が公益法人に含まれます。

学校法人は教育、医療法人は医療という公共の利益がありますよね。一方で公共の利益と思われがちな電気会社や鉄道会社は公益法人ではなく公共企業に分類されます。

(1)制度目的

公益法人制度の目的は社会全体の利益を生み出すこと。公共の利益を生む法人を国が支援することで公益事業を促進させる狙いもあります。

公益法人の存在目的を「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」から見てみましょう。

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業の実施が公益の増進のために重要となっていることにかんがみ、当該事業を適正に実施し得る公益法人を認定する制度を設けるとともに、公益法人による当該事業の適正な実施を確保するための措置等を定め、もって公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的とする。

簡単に要約すると、世界的に民間団体が公益のために事業を行うことが重要になってきているので、公益を生み出す団体の環境を整えることで、より多くの国民が支えあう社会を実現しますよ、ということです。

1898年の民法で、既に公益法人制度はあったものの、2008年に新制度が整備されるまでは古い制度のままになっていました。

1898年といえば明治31年。平成になるまで約110年もの間同じ法律が使われていたのは驚きですよね。新制度により従来の公益法人は公益と一般に分けられ、申請と認定がスムーズになりました。

(2)認定条件

公益法人の認定条件は「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の第5条の18項目が条件になります。18項目を記載すると長くなるのでポイントごとにまとめます。

①団体について

公益目的の事業を行うことが大前提であり、運営に必要な経済力と技術的能力を持っていることが求められます。また、公益法人なので私的利用はNGです。法人関係者に特別な利益を与えてはいけません。

団体の理事構成も配偶者、三親等内の親族、使用人など密接な関係者が3分の1を超えないように制限され、他団体の意思決定に関与できるほどの株式、財産は保有してはいけません。

②団体メンバーについて

理事、監事、評議員のメンバーに暴力団員等、5年以内に取り消しされた公益法人の理事だった者、その他前科がある者が含まれている場合は認定を受けることができません。

2、公的事業の定義

どこからどこまでが公的事業なの?と悩む方もいるかもしれませんが、公的事業の定義は「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の別表(第二条関係)で決められています。

公益目的23事業の一覧をチェックしてみましょう。

 

一 学術及び科学技術の振興を目的とする事業

 

二 文化及び芸術の振興を目的とする事業

 

三 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業

 

四 高齢者の福祉の増進を目的とする事業

 

五 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業

 

六 公衆衛生の向上を目的とする事業

 

七 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業

 

八 勤労者の福祉の向上を目的とする事業

 

九 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵かん養することを目的とする事業

 

十 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業

 

十一 事故又は災害の防止を目的とする事業

 

十二 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業

 

十三 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業

 

十四 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業

 

十五 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業

 

十六 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業

 

十七 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業

 

十八 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業

 

十九 地域社会の健全な発展を目的とする事業

 

二十 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業

 

二十一 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業

 

二十二 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業

 

二十三 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

 

出典:公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 衆議院

3、紛らわしい他の団体との違い

ここでは公益法人と混同されやすい「一般社団法人」、「財団法人」、「NPO法人」、「独立行政法人」のそれぞれの違いを説明したいと思います。

(1)一般社団法人との違い

「一般社団法人」は公益法人と同じ非営利ですが、公益法人と違って公益性は求められません。同窓会や自治会でも一般社団法人を設立することができます。誰でもすぐに設立しやすいのが特徴です。

(2)財団法人との違い

一般社団法人が人の集まりである団体に対して、財団法人は寄付金や個人または企業の財産によって設立、運営される団体です。一般財団法人と公益財団法人に分かれ、公益財団法人は公益性が求められますが一般には求められません。

(3)NPO法人との違い

NPO法人は設立のベースになる法律が公益法人や一般社団法人とは異なります。「特定非営利活動促進法」によって設立され、NPO法人と認定NPO法人に分けられます。法律で定められている20の分野のいずれかに該当する必要があり、認定NPO法人になれば税の優遇措置を受けることもできます。この20の分野は公益法人の23事業とは異なるものです。

(4)独立行政法人との違い

独立行政法人は公益法人、一般社団法人、NPO法人とは異なり、国の機関のひとつであることが大きな違いです。名前の通り、行政から独立して事業を行う機関で、民間には委ねられない国の事業を行います。

独立行政法人の中で国との関係がより深い団体を行政執行法人(旧特定独立行政法人)と呼びます。たとえば、国立科学博物館は独立行政法人、造幣局は行政執行法人となります。

独立行政法人とは?仕組みや課題について簡単解説

独立行政法人とは行政から独立して国家の事業を請け負う法人を指します。 そもそも法人とは社会的な活動を行う組織のことで、法律によってその権利能力が与えられている必要があります。 上記を言い換えれば「主体性が認められている」ということになりますので、個人と同じように売買ができたり、訴訟が可能ともいえます。 より簡単に表現すると人のような振る舞いができる組織が法律における法人です。 それ...

4、公益法人のメリットとデメリット

公益法人の最大のメリットは税金を抑えられることです。公益法人の法人税は収益事業から生じた所得が課税対象となりますが公益目的事業から生じた所得は課税対象にはなりません(一般社団法人や財団法人はすべての所得が課税対象)

引用:一般社団法人・一般財団法人と法人税 国税庁

また、公益社団法人、公益財団法人という名称が使えることで社会的な信頼を獲得することができます。団体に寄付する個人と法人も寄付金控除を受けられるため、寄付において円満な関係性を築きやすいメリットもあります。

公益法人の最大のデメリットは資産制限が厳しいこと(後段でくわしく解説)。事業内容も決められているため公益目的事業外の自由な行動はできません。

また、行政庁の監督も受け続けなくてはいけないので税金は抑えられるものの緊張感のある団体運用が求められることも公益法人のデメリットです。

5、公益法人における政策課題

公益法人制度は1898年の旧制度から2008年に新制度に変わりましたが、いくつかの課題もあります。2008年の経団連の報告から課題を読み解いていきましょう。

(1)分野の偏り

まずは公益法人のジャンルの偏りです。地域社会と子ども向けの団体が多く、生活に欠かせないジャンルではあるものの、公共利益のバランスを考えるとよりバラエティに富んだ公益法人が求められています。

(2)自由度の低さ

次に、公益法人制度の自由度の低さ。旧制度から新制度で法整備は緩やかになったものの、いまだに新規で公益認定を受ける団体は90団体ほどです。多くの団体が一般法人を選ぶ理由には公益法人の厳しい資産制限が理由にあります。

公益法人には、公益目的事業の費用に対して収入が上回ってはいけない収支相償原則(しゅうしそうしょうのげんそく)、使われていない財産額を年間事業費が上回ってはいけない遊休財産規制や公益目的事業が全体の50%以上を占めなければいけない公益目的事業比率規制があり、これらの制限によって団体規模のバランスを保つことが難しくなっています。

不正を防ぐための規制は必要ですが公益を生むハードルが高すぎれば意欲を削いでしまいます。より身近で挑戦しやすい公益制度改革も今後必要になってくるでしょう。

まとめ

今回は公益法人について解説しました。

公益法人、一般社団法人、財団法人、NPO法人、独立行政法人、さまざまな団体があるので混乱することもありますよね。それぞれの特徴を知れば見分けもつきやすくなります。

単なる寄付ではなくさらに規模の大きい社会支援事業を行いたいと思っている方は公益法人へのステップアップも考えてもいいかもしれません。

今後、公益法人の設立が活発化することによって日本全体に助け合いの輪が広がるといいですね。