RCEP(東アジア地域包括的経済連携)とは、東アジアの15カ国が参加する経済連携協定です(2020年11月15日合意時点)。
RCEPは『地域的な包括的経済連携』とも呼ばれます。
本記事では
- RCEPの目的や働き
- RCEPのメリットとデメリット
- RCEPと環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の違い
について解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。
1、RCEP(東アジア地域包括的経済連携 )とは
RCEPとは、
- ASEAN10カ国
- 中国
- 韓国
- オーストラリア
- ニュージーランド
- 日本
以上15カ国が参加する経済連携協定です。
ASEANには、
- ブルネイ
- カンボジア
- インドネシア
- ラオス
- マレーシア
- ミャンマー
- フィリピン
- シンガポール
- タイ
- ベトナム
が含まれています。
RCEPは“Regional Comprehensive Economic Partnership”の頭文字を取ったもので、それぞれの単語は
- Regional:地域の
- Comprehensive:包括的な
- Economic:経済の
- Partnership:連携
を表します。
RCEPは2020年11月15日の首脳会議で合意され、当初はインドも参加する予定でしたが、合意には不参加となりました。
下記の地図はRCEPの参加国の分布地図です。
RCEPは日本、アジア、オセアニア地域が含まれた地域協定であることがわかります。
画像引用元:RCEP協定(概要)外務省
(1)RCEP(東アジア地域包括的経済連携 )の目的
RCEPの目的は、東アジアにおける巨大な経済連携協定の構築です。
RCEPがどれほど大きい経済連携協定なのか、外務省が2020年に発表しているRCEPの人口やGDPを参考にしてみましょう。
- RCEP参加国の総人口:22.7億人(世界全体の3割)
- RCEP参加国のGDP:25.8兆米ドル(世界全体の3割)
- RCEP参加国の貿易総額(輸出):5.5兆米ドル(世界全体の3割)
参考:地域的な包括的経済連携(RCEP)協定への署名 外務省
RCEPは人口、GDP、貿易総額のどの分野でも世界全体の3割を占めており、世界最大規模の自由貿易圏(関税が撤廃、削減された地域のこと)となっています(2020年11月合意時点)。
(2)RCEP(東アジア地域包括的経済連携 )の働き
RCEPの働きは、関税の撤廃などによる自由貿易の促進です。
日本に関係するRCEPにおける輸出品・輸入品にかかる関税について、それぞれ確認していきましょう。
①日本に関係するRCEPにおける「輸出品」にかかる関税
RCEPにおける輸出品に関して、日本が輸出を促進したい『輸出関心品目』が関税撤廃がされます。
関税が撤廃される輸出関心品目には、
- 清酒
- 牛肉
- 醤油
- 菓子
- 切り花
などが含まれています。
また工業製品において約92%の品目が関税撤廃されます。
特に中国と韓国では、関税がかからない品目(無税品目)の割合が大幅に上昇しました。
(中国:8%⇨86%、韓国:19%⇨92%)
関税が撤廃された具体的な品目には、
- 電気自動車用の重要部品(中国)
- 自動車部品(韓国)
- 鉄鋼製品(インドネシア)
などが含まれています。
参考:地域的な包括的経済連携(RCEP)協定への署名 外務省
②日本に関係するRCEPにおける「輸入品」にかかる関税
RCEPにおける輸入品に関しては、工業製品の関税即時撤廃、または段階的な撤廃が決まっています。
ただし、以下については関税削減・撤廃の対象から除外されました。
- 農林水産品の重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)
- 中国の鶏肉調製品や野菜等
除外された理由には、国産の農作物等への配慮があります。
くわしくはRCEPのメリットとデメリットで確認していきましょう。
参考:地域的な包括的経済連携(RCEP)協定への署名 外務省
2、RCEP(東アジア地域包括的経済連携 )のメリットとデメリット
RCEPにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
それぞれ解説していきましょう。
(1)RCEP(東アジア地域包括的経済連携 )のメリット
RCEPのメリットは、大きな市場に国産製品または食品を輸出しやすくなることです。
前述の通り、RCEPでは中国と韓国への無税品目の割合が大幅に増えます。
中国と韓国は日本の貿易相手(輸出先)の2位と3位の国でもあるため、関税が撤廃されることで輸出産業が非常に活発になると言われています。
ちなみに2019年度の日本の輸出相手国の割合は、
- アメリカ:19.8%
- 中国:19.1%
- 韓国:6.6%
となっており、貿易相手としての中国の存在感が高まっています。
以下は外務省が発表している『日本の輸出に占めるRCEP参加国の割合』です。
画像出典:地域的な包括的経済連携(RCEP)協定への署名 外務省
(2)RCEP(東アジア地域包括的経済連携 )のデメリット
RCEPのデメリットは、低価格な輸入品の増加により、国産品の供給を圧迫する可能性があることです。
国産品の売上が落ちることを懸念し、RCEPでは
- 米
- 麦
- 牛肉、豚肉
- 乳製品
- 甘味資源作物
の重要5品目は、関税削減・撤廃から除外されています。
ただ一部の品目については、段階的な関税撤廃が決められており、その撤廃がどのように日本に影響を与えるのかを今後検討していく必要があるようです。
3、RCEP(東アジア地域包括的経済連携 )とTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の違い
RCEP(東アジア地域包括的経済連携 )とTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の主な違いは、参加国と対象地域です。
RCEPは前述の通り、東アジアの国々が参加している経済連携協定です。
一方、TPPは太平洋を囲む国々が参加している経済連携協定になります。
画像出典:1.TPPって何でしょう? 一般社団法人 日本貿易会
当初はアメリカもTPPに参加していましたが、2017年1月に離脱しました。
2020年時点でTPPには
- 日本
- カナダ
- ベトナム
- マレーシア
- シンガポール
- ブルネイ
- オーストラリア
- ニュージーランド
- チリ
- ペルー
- メキシコ
の11カ国が参加しています。
当初、
- TPPはアメリカとの自由貿易
- RCEPは中国との自由貿易
を促進する意味合いが強い経済連携協定でした。
しかし、TPPにおけるアメリカの離脱、中国のTPPへの参加意欲の表明などあり、日本の貿易におけるの中国の存在感はより強くなると言われています。
参考:中国 習主席 TPP参加に意欲示す 米離脱で主導したい狙いか NHK
日本のTPP貿易、RCEP貿易 ~TPPによる対米輸出への影響~ 一般財団法人 国際貿易投資研究所
TPPとは?メリットやデメリット|国内産業への影響について解説
まとめ
今回はRCEP(東アジア地域包括的経済連携 )について解説しました。
経済連携協定は経済的な協力関係の証しです。
アメリカと中国の貿易摩擦が生じているなか、どういった国と協力関係を結ぶのかは慎重になる必要がありそうです。
今後のアメリカと中国の動きに注目しつつ、日本の製品が世界で活躍するような経済連携を期待したいですね。