自衛隊とは日本国・日本国民の安心安全、平和と独立を守る組織です。
しかし守るとは言っても自衛隊は具体的に何をしているのだろうと疑問に思う方もいらっしゃると思われます。
そこで今回は
- 自衛隊がどのような組織なのか、仕事内容、
- 憲法9条との関り
などについてご紹介させて頂きます。
1、自衛隊とは
自衛隊とは、自衛隊法に基づき、日本の
- 安全
- 平和
- 独立
を守る為におかれた組織・機関です。
- 陸上自衛隊
- 海上自衛隊
- 航空自衛隊
の3部隊によってなり、国際法上は軍隊とみなされています。
最高指揮官である内閣総理大臣、隊務統括である防衛大臣のもと文民統制がしかれ、防衛省によって管理される組織です。
国際法上、国家には
「外国からの違法な攻撃、侵略に対して、自国を防衛するために必要な範囲で武力を行使する権利」
である、自衛権が認められています。
自衛隊は日本の自衛権を行使する為の組織とされています。
(1)陸上自衛隊
陸上自衛隊とは、全国に約160カ所駐屯地、約15万人の人員を要する自衛隊最大の部隊です。
陸上自衛隊は陸上における国土の防衛を主任務にしています。
戦後の発足当初は冷戦下のもと、主にソビエト連邦からの大規模侵攻に備え、日本国内で米軍来援までの内陸持久戦を行うことなどを想定してきました。
しかし90年代以降、ソ連崩壊にともなって想定任務が変化し、近年では
- 台頭する中国からの島嶼防衛
- 北朝鮮のテロリズム対処
- また阪神淡路大震災後に特に活発化した災害派遣
- 海外派遣など
陸所自衛隊の任務は幅が広くなっており、以前の北方重視から全国的な配置見直しなど改革が行われています。
(2)海上自衛隊
海上自衛隊は全国に約31の基地、約4万5千人の人員を要し、主たる戦力として護衛艦48隻、潜水艦19隻、また哨戒機やヘリコプターなどの航空機も配備しています。
主な任務では、哨戒機、護衛艦、潜水艦などを駆使して24時間体制で日本周辺海域の哨戒活動を実施しています。
近年は海外における日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動なども実施しており、現在はオマーン湾、アラビア海北部など中東地域への派遣も行われています。
(3)航空自衛隊
航空自衛隊は、昭和29年に陸自・海自に次いで最も新しくできた部隊で、現在は約5万人の人員を要し、およそ7つの基地に、350機程の戦闘機などの戦力を保持して活動しています。
主な任務は、平時は日本の領空に対する領空侵犯、もしくは可能性のある脅威の排除です。
有事の際には、陸自・海自と連携して、専守防衛(自衛に専念すること、積極的に戦おうとする姿勢ではない)の理念のもとで対艦攻撃、対地攻撃、航空輸送を実施します。
2、自衛隊の仕事
自衛隊の具体的業務を確認していきましょう。
(1)国を守る
自衛隊の仕事の第一は国を守ることです。
具体的には、平時には外国からの日本領海・領空への侵入を防ぐ活動をしています。
また近年では海上保安庁と連携し、海上における北朝鮮などの不審船の確保なども行っています。
(2)災害時の救助活動
近年では、増加傾向の自然災害にあたって、地震や台風などの災害が発生した際に、警察や消防などと連携し、救助活動を行っています。
また自衛隊の活動は国内だけでなく、災害派遣や国連PKO(国際連合の実施する平和維持活動:Peace Keeping Operation)への派遣など海外にも及びます。
海外の紛争地域において、その地域の平和を維持する為の活動をし、国際社会にも貢献しています。
(3)外国との共同演習
日本の安全保障は、米国との日米安保条約に基づく日米安全保障体制が軸となっています。
そのため自衛隊と米軍の緊密な連携は、日本の安全だけでなく東アジアや世界全体の安全保障にも重要な意味をもっています。
自衛隊は昭和60年度以降から、平時より米軍との共同演習を実施しており、近年は韓国、オーストラリアなどの外国軍隊との共同演習も実施しています。
(4)自衛隊と警察の違い
同じ武器使用をもって治安維持などにあたる自衛隊と警察ですが、両者には「逮捕権の有無」など違いがあります。
自衛隊には逮捕権がないので、例えば海上で不審船を確保する際にも、逮捕権を持つ海上保安庁と動向をして活動します。
逮捕権がないものの、航空機や戦車、護衛艦など保有する戦力としては自衛隊が圧倒的でありテロや戦争などの脅威から「国土、国民の生命、国民の財産を守る」自衛隊との、役割の違いがあるということでしょう。
また、警察は大多数が地方公務員であるのに対し、自衛隊は国家公務員であること、また管轄の省庁も、自衛隊は防衛省、警察は警察庁とで違いがあります。
3、自衛隊違憲論
ここまで自衛隊について簡単に概要を解説させて頂きました。ここからは自衛隊違憲論についてご紹介致します。
自衛隊違憲論とは「自衛隊が憲法9条に違反しているのではないか」という主張です。
憲法9条とは
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
という日本国憲法の条文になります。
内容を簡単に言い換えると「国際紛争を解決するために武力行使をすることを禁じ、日本は戦力と交戦権を持たない」ということです。
自衛隊は国を守るために充分な戦力を保持しているため、これが憲法に違反しているのではないかという主張が起きているのです。
これに対する政府の公式解釈は以下のようになっています。
つまり、憲法9条では戦争放棄を掲げているものの、それは主権国としての自衛権まで放棄したものではなく、日本の自衛隊はこれにあたるという解釈です。
また憲法13条より日本政府は日本国民を個人として尊重し、国民を保護しなくてはならないので自衛隊は必要不可欠と言えるでしょう。
よって自衛権が確実に行使できるようにするために、必要最低限の実力(自衛隊)を持つことは憲法に反しないという解釈になっています。
4、憲法改正|集団的自衛権について
ここまで日本は独立国であるために、自衛権を否定されず自衛隊も憲法違反ではないという政府の考え方をご紹介しました。
しかし自衛権は大きく二つの種類があるとされ、自国に対する侵害を排除するために行為を行う権利を「個別的自衛権」、自国を含む他国に対する侵害を排するための行為を行う権利を「集団的自衛権」といいます。
日本が憲法のもと「専守防衛」を基本とする限り、その許される範囲は「個別的自衛権」のみであり、アメリカとの情報共有や共同演習などは「集団的自衛権」にあたるのではないか、という議論も自衛隊違憲論にはあります。
集団的自衛権とは?なぜ必要なのか、日本に関わる2つの自衛権について簡単解説
ちなみに政府はアメリカとの協調や緊張感の高まる諸外国(北朝鮮や韓国)との関係の中で集団的自衛権を容認する方向に進んでいます。
こう言った背景から2020年時点の安倍政権は(2021年3月時点における現政権は菅政権)、自衛隊をもっと明確に位置付けるための憲法改正の必要性を訴えていました。
具体的には憲法9条を変更し(戦争の放棄や国際平和の希求は維持)
- 「自衛権の行使は妨げない」と条文を加える
- 「内閣総理大臣を指揮官とする国防軍の設置」を言及する
- 「自衛隊が違憲でない」と直接言及する
などの改正案が出されていました。
今後の動向に注目していきましょう。
憲法9条の改正についてより詳しく知りたい方は以下の関連記事をご覧下さい。
憲法9条とは?戦争の放棄と3つの憲法改正案について簡単解説
まとめ
東日本大震災の際や、昨年の台風・豪雨被害の際など、自衛隊が災害救助する姿をみることで、自衛隊に対して好意的に見る国民が増えているようです。
災害や、万一の有事の際も含め、いざという時に守ってくれる自衛隊についてよく知り、理解するために本記事が参考になればと思います。