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非正規雇用とは?メリットや政府の取り組みについて簡単解説

投稿日2021.4.19
最終更新日2021.04.19
この記事の監修者
山口和史
20年にわたって法律、税務、経営等の業界専門誌の編集長を歴任。
2020年から政治ドットコムの理念「政治をもっと身近に。」を実現するため、編集長に就任。
独自の視点と切り口で、政治にまつわる最新情報を発信する。

非正規雇用とは、パートや派遣社員など限定的な期間でのみ働く雇用形態のことです。

日本の労働者全体の3分の1以上を占め、多様な働き方を実現していると言われる一方、さまざまな問題点も指摘されています。

今回の記事では

  • 非正規雇用の概要・種類
  • 非正規雇用のメリット・デメリット
  • 非正規雇用の現状
  • 非正規雇用に対する政府の取り組み

などについて、わかりやすく解説します。
本記事がお役に立てば幸いです。

1、非正規雇用とは

非正規雇用
「非正規雇用」とは、「正規型ではない雇用形態」のことを指す働き方の1つです。

例えば、パートや契約社員のように一定期間に限定して働く労働者など、正社員以外のすべての労働者が、「非正規雇用労働者」に該当します。 

非正規雇用とは、あくまで雇用形態の違いであり、専門性や労働能力を基準としたものではありません。

(1)正規雇用との違い

正規雇用との大きな違いは

  • 労働時間
  • 雇用期間
  • 待遇

の3つです。 

非正規雇用では、雇用形態によって労働時間が変わる一方で、正規雇用の場合はフルタイム勤務となる傾向にあります。

待遇についても、正規雇用の方が給与や福利厚生が手厚くなる傾向にあります。

また、正規雇用で加入できる雇用保険や社会保険が、非正規雇用だと一定の要件を満たさなければ加入できない場合もあります。

2、非正規雇用労働者の種類

非正規雇用労働者の種類には、様々なものがありますが、ここでは

  • 派遣社員
  • 契約社員
  • パートタイム労働者
  • 業務委託(請負)
  • 家内労働者
  • 在宅(自営型)ワーカー

の6つについて、解説していきます。

(1)派遣社員

派遣社員とは、働く企業との直接契約ではなく、人材派遣会社との雇用契約を結び、派遣先の企業規定に沿って働く労働者です。 

給与や労働条件などは、人材派遣会社によって異なるため、同じ企業に勤める派遣社員でも条件が同じとは限りません。 

また法的には「労働者派遣法」が適用されます。

(2)契約社員

契約社員とは、正社員と違い、労働契約に期間の定めがある労働者です。

1回の契約期間の上限は、一般的に3年です。
契約期間を更新しなければ、労働契約は自動的に終了となります。

正社員と同じように働くことが多い一方、

  • 労働組合への参加の承認
  • 退職金の有無
  • 給与体系

などに関しては、正社員と異なるケースもみられます。

(3)パートタイム労働者

パートタイム労働者とは、一週間における所定労働時間が短い労働者です。

最近では、パートタイマーでも正社員へ転身する機会を与えるなど、事情に合わせて雇用形態を柔軟に変化させている企業が増加傾向にあります。

法的には、「パートタイム労働法」が適用されます。
パートタイム労働法では、パートタイム労働者に対し、

  • 公正な待遇を与える
  • 正社員になるための機会を与える

などが雇用主に義務付けられています。

(4)業務委託(請負)

業務委託(請負)とは、個人が企業から仕事を受けて、報酬を受け取る働き方です。

 正社員や派遣社員などが労働者としての保護対象であるのに対し、業務委託(請負)の場合は「事業主」として扱われ、原則労働者としての保護は受けられません。 

ただし、働き方によっては、労働法の保護を受けることも可能なので、それぞれのケースを把握しておくことが必要でしょう。

(5)家内労働者

家内労働者とは、メーカーや問屋などの依頼主から委託を受けて、物品の製造・加工などの作業をする労働者です。

代表的なものとしては、内職と言われるものがあり、他にも外交員や集金人なども含まれます。
家内労働者は、事業主に当たりますが、法的には「家内労働法」が適用されます。

 支払いトラブルなどを回避するため、

  • 家内労働手帳の交付
  • 最低工賃の尊守

などの対応が義務付けられています。 

(6)在宅(自営型)ワーカー

在宅ワーカー(自営型)とは、個人がオンライン上で委託を受け、自宅などからリモートで働く労働者です。

近年増加してきている働き方の1つで、一般的には個人事業主として扱われます。 

委託者と在宅ワーカーの間で、最低限守るべき契約上のルールとして「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」が定められています。 

参考:さまざまな雇用形態|厚生労働省

3、非正規雇用で働くメリット・デメリット

非正規雇用
柔軟な働き方を選択できる非正規雇用ですが、当然メリット・デメリットがあります。
ここからは、非正規雇用で働くメリット・デメリットについてみていきましょう。

(1)非正規雇用のメリット

非正規雇用のメリットは「自分の都合で働き方を選べること」です。
アルバイトや業務委託などでは、時給報酬で働くことが多いため、自分の生活スタイルに合わせて働くことができる傾向にあります。

異動や転勤を言い渡される可能性も少なく、希望する職種や土地で働けます。

また、内定まで複数回の面接・試験が必要な正規雇用とは異なり、一般的に非正規雇用では面接・試験の後、比較的短期間で採用の結果が出る場合が多いという特徴もあります。 

(2)非正規雇用のデメリット

非正規雇用のデメリットとしては「待遇面と安定性の低さ」が挙げられます。
非正規雇用では、正規雇用と比べて賃金が低い傾向にあり、昇給も難しい場合があります。

また賞与や退職金、住宅手当などが受け取れない可能性もあります。
具体的な賃金格差(時給換算)としては、内閣府による2016年時点でデータでは、

  • 所定内給与ベース:1.5倍
  • ボーナスや手当も含めた年収ベース:1.8倍

程度の差が付く結果となっています。

参考:正社員・非正社員の賃金差の現状

4、非正規雇用の現状

ここでは実際のデータを見ながら、

  • 非正規雇用の割合
  • 非正規雇用を選ぶ理由

について確認していきましょう。

(1)非正規雇用の割合

総務省統計局による「労働力調査」によると、就業者6637万人(2021年1月時点)のうち非正規雇用として働く人は、2058万人でした。

これは日本の労働者の3割以上に当たり、約3人に1人が非正規雇用にあるということです。

また、非正規雇用労働者数の傾向については、2020年度までは増加傾向にあったものの、2021年では約91万人の減少となりました。

参考:労働力調査(基本集計) 2021年(令和3年)1月分|総務省統計局

 (2)非正規雇用を選ぶ理由

厚生労働省の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、「自分の都合のよい時間に働ける」という回答が36.1%であり、最も多い理由となりました。

続いて「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立しやすいから」が29.2%で、2番目に多い理由でした。 

また、男女別で非正規雇用を選ぶ理由を見ると

  • 男性:「専門的な資格・技能を活かしたい」
  • 女性:「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立したい」

という回答が最も多く、ポジティブな意見が強いようです。

この結果から、働き方が多様化している現代では、個人の適性や事情に応じた職業選択がなされていることが伺えます。

一方、「正社員として働ける会社がない」と答えた人も一定数存在し、不本意ながら非正規雇用で働いているという労働者も少なくない、という実態もあるようです。 

参考:令和元年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況|厚生労働省

5、非正規雇用労働に対する政府の取り組み

非正規雇用
政府では、非正規雇用労働者の意欲や能力が存分に発揮できる環境づくりを目指し、さまざまな取り組みを進めています。

ここでは

  • 同一労働同一賃金の実現
  • 正社員転換・待遇改善実現プラン

の雇用対策事業についてご紹介します。

(1)同一労働同一賃金の実現

同一労働同一賃金とは、「同じ仕事内容なら、賃金も同じであるべき」という考えに基づき、正社員との格差を無くすことを目的とした取り組みです。

2020年4月1日から全国の大企業で施行されました。
中小企業に対しては2021年4月から適用されます。

具体的には

  • 基本給
  • 賞与
  • 各種手当
  • 福利厚生・教育訓練

の4つについての指針が示されています。

2021年3月時点では、明確な罰則は設けられていません。
ただ、不適切な待遇のまま事業を継続すれば、従業員から訴えられ、損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。 

非正規雇用労働者の待遇向上へのきっかけとして、活用が期待されています。

参考:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省 

(2)正社員転換・待遇改善実現プラン

正社員転換・待遇完全実現プランとは、非正規社員の意欲や能力に応じて、正社員への転換や待遇改善を図ることを目的とした取り組みです。

2016年1月、厚生労働省によって打ち出されました。
具体的な取り組みとしては、

  • 非正規雇用の正社員転換
  • 正社員と非正規雇用労働者の賃金格差の縮小
  • セクハラやマタハラへの迅速・厳正な行政指導
  • 被用者保険の適用拡大への準備・円滑な実施
  • ブラックバイト対策としての労働法制の周知

などが挙げられています。

参考:正社員転換・待遇改善実現プランの決定について|厚生労働省

まとめ

今回は、非正規雇用について解説しました。
非正規雇用がより望ましい働き方の1つになるよう、国や企業側の適切な対策や対応が求められています。